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51話 9回の表 怒涛の連打

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『9回の表、プリンセスガーディアン・ハイスクールの攻撃は、5番・サード・イリス君』

 プリンセスガーディアン・ハイスクールの先頭打者が左打席に入る。
 1球目。
 龍之介が投球動作に入った。

(……とりあえずアウトコース低めで様子見だ)

 アウトコース低めは、ストライクゾーンの中でも最も無難なコースと言われている。
 なぜならば、打者の目や体から最も離れた位置だからだ。

 まず、ストライクかボールかを見極める難易度が高い。
 そしてボール球を振れば、大抵は空振りかファウルボールとなる。
 ストライクを見極めて打ちにいったとしても、体から遠いためスイングの力をボールに伝えることができない。
 結果的に、ボールがバットに当たったとしてもパワーのない打球になる可能性が高いのだ。
 ついでに言えば、万が一すっぽ抜けてコントロールが乱れても、デッドボールになるリスクは小さい。
 しかし、そのアウトコース低めの投球を……

「はぁっ!!」

 イリスは打ち返した。
 打球は鋭いライナーとなってレフト前へと落ちる。

(くっ……! これまでなら、あのコースをヒットにはできなかったはず……! やはり、さっきの【王女の勅命】の効果が……)

 龍之介は歯を食いしばる。
 この回を0点に抑えれば、その時点で勝ちなのだ。
 しかし、姫様からの激励を受けた今のプリンセスガーディアン打線相手には不安が残る。
 ――そして、その不安は的中した。

『プリンセスガーディアン・ハイスクール、最終回で怒涛の連打です! これでツーアウトながらもランナー満塁となりました!!』

 桃色青春高校は大ピンチを迎えていた。
 姫様からの激励により、相手打線の集中力は極限まで高まっている。
 ユイの存在により盗塁を許さず、アイリやノゾミの好守により何とかアウトを2つ取ることができた。
 しかしながら、ランナーは満塁だ。
 そして、迎えるのは――

『1番・ショート・ソフィ君』

 プリンセスガーディアン・ハイスクールのキャプテンであるソフィだ。
 彼女が左打席に入る。

「ふふふ……。今の私たちを相手に、ツーアウトを取ったことは称賛に値します。しかし、あなた方の命運もここまで。行きますよ……!!」

 ソフィはバットを構えると、静かに微笑んだ。
 その可愛らしい姿からは想像できないほどの威圧感だ。
 龍之介はごくりと唾を飲む。

「さぁ、龍之介さん! どこからでもかかって来なさい!!」

「ああ……。いくぞっ!!」

 龍之介が投球する。
 しかし、彼女の迫力に気圧されてしまったのか、ボール球が先行してしまった。

『ボール・ツー!』

「た、タイムですわ!!」

 キャッチャーのユイがタイムをかけて、ソフィとの勝負を一時中断させる。
 マウンドの龍之介に仲間たちが駆け寄っていく。
 龍之介は深呼吸をすると、冷や汗をぬぐった。

「はぁ……はぁ……。くそ……! まさかここまで劇的に変わるとはな……」

「そうですね……。わたくしたちも一生懸命に練習をしてきましたが、やはり元からの球児たちの底力は侮れませんわ」

「でも、負けるわけにはいきません! 龍様の、そして私たちの未来のために!!」

 龍之介が少しばかりの弱音を吐く。
 それにユイとミオが反応した。
 さらには、アイリとノゾミもそれに続く。

「うん。相手の守備も打撃も厄介だけど……。ボクだって、守備なら負けてないつもりだよ! 龍之介、こうなったらどんどん打たせちゃってよ!」

「センターの守備はわたしに任せてください。どんな打球だって、全力で追いかけますっ!」

 彼女たちの言葉に、龍之介は勇気づけられた。
 そして、彼はチームメイトを見て微笑む。

「やはり……俺たちは最高のチームだ! 最後の1人! 引き締めていくぞ!!」

「「「「おーーっ!!!」」」」

 龍之介の号令と共に、少女たちはグラウンドへと散っていく。
 彼女たちの瞳に迷いはない。
 最後の最後まで、勝利を信じて戦うのだ。

(頼むぜ、皆……)

 龍之介はキャッチャーのユイと再び目を合わせる。
 そして、大きく振りかぶったのだった。


     123456789 計
―――――――――――――――――
プリンセスガ|00000000 |0|
桃色青春|00010000 |1|
―――――――――――――――――
9回表、プリンセスガーディアン・ハイスクールの攻撃中
ツーアウト・ランナー満塁
バッター:1番遊・ソフィ
ツーボール・ノーストライク



【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ20【ダークホース桃色青春高校】

224:代走名無し@野球大好きオジサン
まだかろうじて無失点か……
あと1人で試合終了だが……

225:代走名無し@野球大好きオジサン
桃色青春高校、よく頑張ってる!
しかし、これはさすがにやばいな

226:代走名無し@野球大好きオジサン
プリンセスガーディアン・ハイスクールの打線が別物すぎる
姫様の激励がこれほどの効果を持つとは……
最初からやってたら、楽勝だったんじゃね?www

227:代走名無し@野球大好きオジサン
>>226 そう上手くはいかない
たぶんだが、一種の過集中状態だ
あんな精神状態で9イニング戦えるわけないだろ

228:代走名無し@野球大好きオジサン
そうだな、完全に限界を超えている……
この最終回の攻防に全てを賭けているっぽいな
桃色青春高校は、この大ピンチを乗り切ることができるのか……?
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