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85話 元
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「フンッ! こんなショボい野球部で、よくやるわね!!」
「その辺にしておけよ。ハルカ」
ここでようやく、龍之介が止めに入った。
ハルカと旧知の間柄なのは彼だけなのだが、ここまでは様子を見ていたのだ。
「本当のことを言って、何が悪いの? 噂は聞いているわよ。学園長の肝いりとかで、最低限の設備を整えられたらしいけど……。まだまだ部員数も揃っていない。こんな環境じゃ、満足に練習だってできないでしょ」
「問題ない。野球ロボがいるからな。彼らが練習の補助をしてくれる」
「こんな出来立ての野球部じゃ、ロボの性能だって最低限に制限されてるでしょ? それじゃあ、とてもじゃないけど無理だわ」
ハルカが龍之介の言葉を突っぱねる。
そして、再び自信たっぷりに胸を張った。
「野球素人の女子選手たちに、最低レベルのロボ。こんなカスみたいな環境で練習するあんたたちが、哀れで仕方な――」
「お前、喧嘩を売りに来たのか?」
龍之介がドスを利かせた声を出す。
すると、ハルカがビクッと体を震わせた。
「そ、そんなに怒らなくてもいいじゃない。私とあんたの仲でしょ? 固い絆で結ばれたチームメイトで……」
「……『元』だろ? もう分かってるんだよ。お前がどういう人間かは」
龍之介はそう吐き捨てる。
彼は中学時代、ハルカと共に野球を頑張った。
中学大会で優勝した後に彼女へ告白したが、盛大に振られてしまったのだ。
激しい罵倒の言葉と共に。
あの時のショックは、今でも忘れられない。
ハルカは、思わせぶりな態度で弄んでいただけだったのだ。
龍之介はそのように感じ、野球から距離を置くことになった。
「俺をバカにするのはいいだろう。だが、愛するチームメイトをバカにすることは許さない。帰ってくれ」
「くう……! ふ、ふんっ! あんたなんか知らないっ!!」
ハルカは悔しそうな表情を浮かべると――踵を返した。
そして、グラウンドの出口へと去っていく。
その背中は、どこかションボリしているようにも見えた。
「その辺にしておけよ。ハルカ」
ここでようやく、龍之介が止めに入った。
ハルカと旧知の間柄なのは彼だけなのだが、ここまでは様子を見ていたのだ。
「本当のことを言って、何が悪いの? 噂は聞いているわよ。学園長の肝いりとかで、最低限の設備を整えられたらしいけど……。まだまだ部員数も揃っていない。こんな環境じゃ、満足に練習だってできないでしょ」
「問題ない。野球ロボがいるからな。彼らが練習の補助をしてくれる」
「こんな出来立ての野球部じゃ、ロボの性能だって最低限に制限されてるでしょ? それじゃあ、とてもじゃないけど無理だわ」
ハルカが龍之介の言葉を突っぱねる。
そして、再び自信たっぷりに胸を張った。
「野球素人の女子選手たちに、最低レベルのロボ。こんなカスみたいな環境で練習するあんたたちが、哀れで仕方な――」
「お前、喧嘩を売りに来たのか?」
龍之介がドスを利かせた声を出す。
すると、ハルカがビクッと体を震わせた。
「そ、そんなに怒らなくてもいいじゃない。私とあんたの仲でしょ? 固い絆で結ばれたチームメイトで……」
「……『元』だろ? もう分かってるんだよ。お前がどういう人間かは」
龍之介はそう吐き捨てる。
彼は中学時代、ハルカと共に野球を頑張った。
中学大会で優勝した後に彼女へ告白したが、盛大に振られてしまったのだ。
激しい罵倒の言葉と共に。
あの時のショックは、今でも忘れられない。
ハルカは、思わせぶりな態度で弄んでいただけだったのだ。
龍之介はそのように感じ、野球から距離を置くことになった。
「俺をバカにするのはいいだろう。だが、愛するチームメイトをバカにすることは許さない。帰ってくれ」
「くう……! ふ、ふんっ! あんたなんか知らないっ!!」
ハルカは悔しそうな表情を浮かべると――踵を返した。
そして、グラウンドの出口へと去っていく。
その背中は、どこかションボリしているようにも見えた。
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