男子高校生の休み時間

こへへい

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タイムリミット

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 キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。

先生「授業はここまで。テスト頑張れな~」

和樹「始まった!」

隆太「急げ!」

 俺達は今窮地に立たされていた。2人の高校生が一体どのような窮地に立たされているかと言われると、客観的に言って世界の命運と比べればスズメの涙というか、人間の目に映るうねうねっとした、顕微鏡で見た埃の繊維のようなアレ程度だけれど。
 留年になってしまうかどうかという瀬戸際は、主観的に見れば世界の命運よりも優先すべき事柄だった。

隆太「10分だけだ! はやく写せ!」

和樹「分かってるよ! ったく、隆太の英作文いちいち難しい単語使わないでよね! 難しい単語使ってれば頭良いように見えると思っているのかもしれないけれど、頭悪く見えるからねそれ!」

隆太「うるせぇ今すぐノート取り上げるぞ! 若松の野郎、昔英作文の宿題を出さなかった生徒を数人ほどを進級させなかったって聞いたことがあるからな。あれだけ先生も俺もお前に言っておいたのに!」

和樹「あースペルミスした! もう止めてマジで! 消しゴム擦るのもタイムロスなんだから!」

隆太「慎重にな、ゆっくり擦るんだ。これでその宿題のプリントを破ってみろ、マジでもう間に合わねぇぞ」

和樹「その言葉が焦っちゃうから! ええと、アイアムアパーフェクトヒューマン……ってそれは流石に言いすぎなんじゃ」

隆太「そんなところで無駄に読解力を発揮するな! 今はその筆跡を写すことだけに集中するんだ!」

 テクテクテク。

和樹「……ば、ばかな、早すぎる!」

隆太「あいつ、まさか嬉々として留年させようとしているんじゃ。俺が引き付けておくから、お前は気にせず写すんだ!」

 テクテクテク。

若松「といれカイ? サッサト済マシナ、今日ハ特別ナ授業サ」

隆太「そうなんすけど、ちょっと先生に質問したいことがありましてね、それも教室では話しづらいことなんですよ」

若松「フム、ソンナノ放課後ニデモ聞イテヤルサ、ソコヲ通シタマエぼーい。ソレトモ留年シタイノカイ? 教室デ今必死ニ他人ノヲ写シテイル、アノ男ノヨウニ」

隆太「……あの、男? 和樹のことか……和樹のことかぁ!」

若松「ンナ、覚醒シタダト!? ほわい!?」

隆太「あんな宿題、和樹にできるわけないだろ! あいつの成績はあなたが一番分かっているはずだ!」

若松「フ、ダカラコソノ試練ナノダヨ、下等ナさいや人如キガ、チョット怒ッタクライデ――」

 キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。

若松「ナ、マ、マサカ!?」

隆太「時間稼ぎ成功。さぁそろそろ写せているころだろうぜ」

和樹「や、破れた……」

隆太、若松「「おーまいごっど」」
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