与えられた欠陥で、俺は神に復讐する

こへへい

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優しい世界

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「魔力マイナスって何よ!?」

「マイナスなんて見たことないわね」

 カレンとメイちゃんが声を上げたのに反応し、数人の冒険者がこちらに反応した。流石に異質故に騒ぎにしたくないと思ったのか、メイちゃんが「何でもないわよ!カレンちゃんがこの子に振られて怒ってるだけだから」と誤魔化してくれた(新たなる火種は撒かれたが)。

魔力がマイナスって、逆に何かいいんじゃね?何が「逆に」なのかはさっぱり分からないが、こういう常識では測れない者が実は最強だったりするんだよな。多分。

「前例の転移者でも、必ず魔力が働いていたらしいわ。なのに、貴方魔力がないどころかマイナスよ!マイナス...」

カレンがさっきの勢いが無くなりガックリとしている。そんなに悪いことなのだろうか?

「なぁ、魔力がマイナスって何か悪いことなのか?」

「良いことがあると思う?借金みたいなものよ?」

借金って言われると悪いことしかないけれど、もしかしたら強そうじゃん?何の根拠もないけれど。
そういった、常識では測れない何かが実は強い!という、中二病心をくすぐるロマンを捨てきれない自分がいる。

「確かにカレンちゃんの言うことも分かるけど、前例がない事態なんだから、何か悪いことだけじゃなくて良いこともあるんじゃない?」

それだ!良いこと言った!メイちゃんの表情を見る限り苦し紛れ100%なのだろうが、言っていることは事実。そう、まだ分からない!

「そうだよ!もう少し向き合えば、このマイナスの魔力を上手く活用できるかもしれない!」

そのためには、他のパラメーターも見ておく必要がありそうだ。上手いこと連携できれば良い力になるかもしれん。
 自身のパラメーターを再度確認するため、視線を再度自分のパラメーターに向ける。

 種族:転生者
 レベル:1
 攻撃力:50
 防御力:70
 魔力:-5000
 運:-999
 敏捷性:120
 知力:100
 精神力:50

「マイナスと言えば、貴方そうとう運が悪いわね、こんな運の値見たことないわ」

改めて、しかも数字として説明されると、やはり気が滅入るな。マジで運気なんてあるんだ、いや俺には無いんだけれどもね。実際にパラメーターがあるんだなーって。

「あはは、自分昔から運だけは無いもので...」

 と頭をかいて悲壮感を漂わせるしかなかった。

 カレンはガバッ!とだらっとした体をピン!と正し、俺の肩を掴んだ。「そうだわ!」と言い、期待の眼差しがこちらの両眼を捉えている。

「貴方、極小流星群をかわしたり、ワイバーンから逃げるときだって、突風が来ることを見越して左に動くように言ってくれたわよね、それって『予知』なんじゃないの!?そうだと言ってよ!」

「...ん?」
 いやいや、何だよ予知って!知らねーよ!ただ不幸をよそくしてるだけで...ってそれを言っているのか?

 身に覚えがない能力の名称を聞いて冷や汗をかいた。それでも頑張ってこの空気を読み取る。
 ここで予知ではないことを告げるのは簡単だけど、もしも無いって分かったらこのカレンの期待が打ち砕かれ、本当に路頭に迷うんじゃ...。だからここは仕方がない...

「た...たま~にそういった未来が見える程度なのですけど、」

 パチン!とカレンは指を鳴らす。だが

「ほらね!
 ってたまに?いつでも見れるんじゃないの?冗談よねぇ!?」

 のり突っ込みの如く感情が起伏し、肩をまたガシッと掴み、期待の欠片もない目から涙が溢れていた。そんな顔を直視もできず、顔が明後日の方向になり冷や汗が出る。見れるんだから我慢しろ!いや見れないけど!

「期待に添えなかったようで、ごめんなさい」

「いいえ、君のことをよく観察もせずにここに連れてきたこの子が悪い」

 ビシっとメイちゃんは俺の謝罪を遮った。腕を組み、顔が険しい。カレンにさらに言う。その言い方もどうかと思いますがね...。

「だから迷惑かけた分ちゃんとギルドメンバーシステム期間までは面倒見てあげなさい。君も頑張んなさいよ」

 ギルドメンバーシステムとは言っても、いわゆる試用期間ってやつだよな?3ヶ月たったら捨てられて正社員としての契約をさせてもらえない未来が見えるんですけど...?
 過去のバイト時代、そこでお世話になった社員さんの話を思い出していた。見るたびにやつれていく彼はある日ピタリといなくなった。話を聞く限り自主退職と言われているが、ある期間を過ぎた時にそういう人がとても多いという。そ世界は違えど人類の愚かさを勝手に想像した。
 カレンはというと、

「はぁ、無制限に使えるもんと思ってたわぁ」

「そんな意地悪言わないの」

 無情な言葉を吐いたものの、メイちゃんははぁ、とため息をついて、カレンに励ましの言葉をかけた。

「ま、転移して間もないから、能力をコントロールできてないだけだろうし、少し練習してみたらいいんじゃない?」

 メイちゃんはポケットからコインを取り出して、天井に弾く。交差した両手をパーからグーにする瞬間、左右に腕を広げた。コインが落ちていない所を見るに、どちらかにコインがあるようだ。

「どっちにあるのか、予知する練習したら良いんじゃない?」

 という話の流れがあり、カレンは俺の可能性を確かめ続けた。どうしても「予知能力」があると信じたいようだ。だが、それでも能力は発現せずである。





 なんやかんやカレンは夜通しで俺をワイバーンから逃げつつ人のいる場所に連れてってくれたり、ギルド登録をさっさと済ませてくれたりで疲れが生じたのか、カレンに眠気が襲ってきてきた。首がカクンカクンしている。

 そして俺も俺で、流星群が墜ちてきて死にそうになったり、ワイバーンに燃やされそうになったり、といった大変な経験をしたことで疲労困憊である。

 メイガスことオカマのメイちゃんは、ギルド登録として腕輪をしているから、ギルドメンバー限定の宿で寝泊まりを許可してくれた。とても気の良い店主である。俺とカレンはそこで別々に就寝。

 目が覚めたのは、次の日の朝だった。外に引っ張り出され、何処かに行くとのこと。眠くてボーッとしながら道中町並みを観察していると、ガンガンと木材の音がした。どうやらとび職の人が建築中らしい。そういえば、空から国を見てみた際には、木造の家が多かった。

「寝起きから何するっていうんだ?ふぁわぁ」

「一応期間に入っちゃったんだから、あなたには色々と教えないといけないでしょうよ。そのために行くところがあるの」

 ま、とりあえず力をつけないと、神の手がかりを探す所じゃないからな。俺に「不幸」を押し付け、そして友を死へと追いやったあいつを、このまま放置するなんてできねぇ。それに俺以外にも「不幸」みたいな欠陥を与えられた可能性があるんだ、この歴史を終わらせたい。ナオキへの弔いには十分だ。
 そう開き直り、この試用期間に臨むことにした。

「あーもう、思うように予知できないって何よ!」と小声で悪態をつき、嫌々教えないといけない気持ちが、カレンの声音に表れていた。
すみませんねぇ本当に、そんな高尚な力なくて!

「あー、着きました、ここが武具屋でーす」

 だるそうな口調で指をさしたのは、錆色ベースの一戸建て。一応出入り口には剣と盾と甲冑のマークがイラストされた旗のようなものがヒラヒラと屋根に突き刺さっていた。建物の看板には「武具屋」と書かれている。



「ちゃーっすポーウェン、元気してる?」

「おーカレンちゃん久しいね、ギルドでの仕事もう慣れ...」

 慣れ親しんでいる、先日メイちゃんに挨拶したのと同じ口調で、ポーウェンという武具屋の店主に話しかけた。優しそうな兄貴という感じで、木のテーブルで肘をつき笑顔で手を振っている。そんな彼の挨拶の言葉が途切れた。ニヤニヤとしている。

「カレンちゃん、やっと男できたのか、良かったねぇ誠実そうな人じゃないか」

「違うわよ、彼は転移者。良さげな能力があるも思って唾つけたんだけど、残念ながらハズレを引いちゃったわ」

「ははは、転移者とは珍しいね」

 どうやら恋仲だと思われたらしいが、そんな茶化しをカレンは冷静にスルー。「ハズレ」という言葉にポーウェンも苦笑いである。

「ハズレって、酷いなぁ」

「ハズレよハズレ!あなた程のハズレを私は見たことがないわ。転移者ならもっと使い勝手のいい便利な固有スキルか、せめて常識的なパラメーター持ってきてよね」

「そんなこと言われても...」

 運と魔力がマイナス表記という、前代未聞らしい事態とも知らずに慎重さを欠いて登録させたのはそっちだろう!とは言えず、事実なため文句を飲み込んだ。吐きそう。

「彼のパラメーターから、合いそうな装備あるかしら」

 というので、ポーウェンに腕ごと腕輪を差しだし、パラメーターを見せた。


 種族:転生者
 レベル:1
 攻撃力:50
 防御力:70
 魔力:-5000
 運:-999
 敏捷性:80
 知力:120
 精神力:50


「うわ、マイナスって何?ある物がないって何?」

「こっちが聞きたいわよ」

 カレンははぁ、とため息をついて、ポーウェンの驚きをあしらった。
 しかし、顎を撫でてポーウェンが続ける。

「だけど、敏捷性とか知力とか、レベル1にしてはかなりの方だよ。
 特に敏捷性が高いなら、素早く立ち回る戦法に向いている。なら重い鎧よりも...ちょっと待っててね」

 と、ポーウェンは裏へ入った。何かを探しているのだろう、ガサガサガチャガチャドドドドと、何やら騒がしい。ドカァン!シュゥゥゥ。

「おまたせ、これなんて良いんじゃない?」

 え、さっきの音何!?怖いんだけど!?
色々と引っ張り出してきたらしい。まず取り出したのは茶色のマントだった。これで何が出来るのだろうか?そんな疑問を心から読み取ったのか、ポーウェンは自慢げに説明した。

「これは魔法をいなすマントだよ、これならある程度の魔法は防げるだろうが、炎属性の時は燃えるから逃げることをすすめる」

 魔法をいなすか、ひらりマント的なやつだろうか?何にしても背中につければ、背後からの攻撃を回避するのに一役買ってくれそうだ。だがその前に、ある疑問が浮かんだ。

「炎属性?他にはどんな属性があるの?」

 すかさずカレンが説明した。

「属性は全部で6つ
 炎、水、雷、風、大地、そして支援特化の無属性
 で、単純に布は燃えるから炎はダメってこと。ワイバーンの炎も魔法から構築されているわ」

「え、あれ魔法だったのか?」

 魔法を使うのは人間だけと思っていた。だが某RPGでは普通にモンスターも魔法を使っていることを思い出した。まぁ確かに、普通に考えて口から火を吐く体の作りになっている生き物なんて居ないわな。いたら多分ガスの代わりのエネルギーとして利用されていた事だろう。
 馬鹿にするようなジト目をこちらに向けて、カレンは続ける。

「はぁ、当たり前でしょ、魔力は基本的に全ての生命に宿るものよ。あんたがマジでレアケースなの。悪い意味で」

 指をさして言われた「レアケース」という言葉に、「悪い意味で」と言われてもやはり悪くない気持ちを覚える。ならば、そのレアケースを利用できないだろうか?と考えているからだ。
だが今のところ悪いパラメーターを利用できるといえば、不幸によって「嫌な予感」を見ること以外に考え付かないし、あれもあれで不規則だから利用するにはちと弱い。

 カレンはマントを触り、感心した。

「ま、その魔力の攻撃をいなせるって訳ね。
 へぇ、良い肌触りになってるじゃない、私が買ったときにはザラザラで使いづらかったのに、やるわね」

「ありがとよ、カレンちゃんの様なリピーターがいてこそ技術が進歩するってもんよ。そうだな、ここはカレンちゃんに免じて、これ兄ちゃんに譲ろう!」

 カレンにおだてられたせいなのか、ポーウェンは気前よくこのマントを譲ってくれるとの事だった。ちょろいなおい、だがとてもありがたい。

「ありがとうございます!」

「ま、他のも見てってくれよ、良いもの揃えてるからさ」

 ポーウェンに感謝を。だが上手い。これで下手に「何も買わない」選択肢が失われた。商売人だよポーウェンさん。
それにしても、マジで優しい世界じゃないか。もしかしたら運が良いのかもしれないなぁ。
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