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俺の友達
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学校にて昼飯を食べるとき、何処が一番人目につかないだろうか?
トイレ?否。「便所飯」とは言うけれど、普通に人の循環が多いので却下だ。
屋上?否。普通に封鎖されている。中学時代ではそもそも立ち入ったことがない。この高校でも同様だ。
ならば、
「君、一浪してるんだって?凄いねその執念。あ、敬語のがいいかな?」
「...いや、どっちでも良いよ」
「ならタメ口で。よろしく」
俺はいつも昼時になると、弁当を携えて必ず校舎裏に来ている。それもゴミ焼却炉の近く。こんなところでは臭くて飯が不味いと思うかもしれないが、風向きが常に逆風で、ゴミの臭いがこちらに向くことはない場所だ。そんな場所に、キャンプ等をする際に使う折り畳みの椅子をセットして、昼食を摂っていた。誰も来たがらない場所だから。
にも関わらず、ブロンズ髪にしっかりと着たブレザーが良く似合う、そんなキラキラした優男がここに来た。誰も来たがらないここに。一体何しに来たんだろうか?こいつは確か、この学校ではかなり有名な奴だったはずだ。
「お前みたいな天才児が、俺みたいな出来損ないに用があって来た訳じゃないだろう?ゴミの日なら生憎明日だぜ?」
俺は親指でゴミ焼却炉を指す。
「いや山田サツキ、僕は君と友達になりに来たんだ、それに僕は『天才児』じゃないよ。ナオキ、海島ナオキだ」
「そりゃ知ってるが...」
何で俺と友達に?よくわからん。
「何で自分のことに興味を持ってるんだ?って顔してるね。君に興味を抱かない方がおかしい。こんなに面白いのに」
ニタニタと笑うその顔は子供っぽさ満点だ。こいつには世界の全てが輝いているのかもしれない。
「面白い?何が?」
「この校舎裏に来る時、君は階段を利用せずに、わざわざ近くのトイレの窓から縄を使って降りていたね、どうして?」
「...良く見てるな」
見られないように気を配った筈だが?
そう、今日は何だか嫌な予感がした。特に昼時にこの校舎裏に行くときの階段で、何か恐ろしいことが起こると思ったのだ。だから階段を経由しないルートを選んだ。しかし俺の教室は二階に位置するため、階段を使わざるを得ない。だから窓から降りたいものだが、人目憚らず窓から縄で飛び降りる勇気は流石になく、トイレの窓から縄で降りたわけだ。
「そりゃ見るさ、だって折角昨日のうちに階段を坂道にするトラップを仕込んだというのに、全部台無しにしちゃうんだから」
「はっ...えぇ!?階段を坂道に?」
怖い怖い怖い!意味が分からない!?いたずらの範囲越えてる!ただの犯罪だわ!
「そそ、あ、ちゃんと手すりに座って滑られることがないように、乗っかったら落ちるように仕掛けてるんだけどね?なのにそもそも階段を選ばないなんてねぇ。でも問題ないよ、仕掛けは手動だから他者に危害は加えない配慮はしてる」
「だが...いやそんなことも出来るのか?お前は」
「まぁこれでもロボット工学もちょっと齧ったからね」
この学校にそんな専攻はない。つまり独学でそれほどの技術を身につけたということだ。やることが学生の域を越えている。いや学生でなくてもやらないか。
だが、こいつなら何故か納得できる。学校でのテストの成績は全て一位。あらゆる分野において瞬時に極めることが出来る天才児。それがこの海島ナオキという男、らしい。
飽くまで聞いた話だが例を挙げると、剣道部の試合の助っ人では、決勝で相手校の主将を完封したり、水泳部の試合では対岸からのスタートダッシュだけで優勝したり(確かに水の抵抗が限りなく少なそうだ)。とまぁこのように、色んな部活の助っ人に参加しては相手学校のプライドをズタズタにして来るとか。
「でさ、そんな期待以上な立ち回りが出来る君と是非とも友達になりたいって思ったわけだよ!さぁなろう!今すぐなろう!今から学校を出て遊びにいこう!」
「ちょちょ、鬱陶しいからやめい、分かったよ友達はいいけれど遊ぶのは放課後な」
そこから俺は、よくこの海島ナオキと付き合うようになった。
ある休みの日、ゲームセンターでは、主に2プレイ100円で遊べる対戦型シューティングゲームをプレイしていた。ゾンビを倒したスコアで競う系統の対戦ゲームだ。おぞましいゾンビ達が襲いかかり、それをバシュバシュと撃ち殺していく。
「流石だねサツキ!このシューティングゲームで僕とタメを張るなんて君くらいだよ!」
「別に、よく意識寝ぼけた雀が飛び込んでくるものだから、水鉄砲でモーニングコールしていた時があっただけだ。避けたら雀が地面に激突して死んじゃうからな」
「...鳥とゾンビとではどっちが撃ちにくい?」
「んー、鳥かな?速いし的小さいし」
FINISH!!
の文字と共にゲームが終了。結果はタッチの差でナオキが勝った。だが、ナオキは何だか嬉しくなさそうだ。完封して初めて勝利ってか?
「なんだ、勝ったのにショボくれてよ」
「いや、これが本当にゾンビとの戦いだったらどうなってたのかなってさ」
少し興味深い。そういう「もしも無人島にいたら」的な心理テストは好きだ。だがそういった「もしも」なら
「俺なら絶対に逃げるね、あんな無尽蔵に来られたら弾切れで終わりだ」
「...あはは、確かに」
ナオキは時々、勝ったのにこうやって暗くなる。
またある日には、よく近くの商店街で色んなものを買い食いしたものだ。そしてナオキが酷評を浴びせ回るのにひやひやした。小声で止めてもきかなかったものな。
「んー、揚げすぎ。油の温度を9℃下げて、あと4.2秒ほど早く取り出したらそこそこましなコロッケになるかも」
「(ちょ、店長の前で言うなよなそういうの!)」
プルプルとイライラを押さえようと必死なおじさんがいた。目を合わせられないよ...。
「でもだよ、実際前に調理実習で作った僕のコロッケのが旨い。しかもやろうと思えば大量生産も出来るだろうから、うん!確かにここと比べること自体が────」
「失礼しましたー!」
俺はいつもナオキを回収する係りだった。そしていつも後日には、商品がアドバイスを反映し美味しくなっているのだった。
ある時は河原で水切りをした。薄い石を水面に投げて跳ねさせるあれだ。
ナオキが河に目掛けて、水平線をなぞって薄い石を...あれ?すこし歪んでる?大丈夫か?
ピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッ
「よし、31回!」
「31!?しかもこれっ、おい!」
ただ31回跳ねさせただけではない。わざと「ただ薄い石」を選んだのでなく「歪んだ石」を選ぶことで、本来まっすぐ投げたら対岸まで31回も跳ねられない所を、軌道を曲げることで渦を描き、回数を増やしやがった!
「へっへーん!」
「なるほど、」
これは俺も本気を見せないといけないらしい。小学生の時、水族館のピラニアゾーンに誤って入り込んでしまった時に、ピラニアに食われないためにしたあれが役に立つ。
俺は薄い石を広い、体を大きく回転させ、そして石を放つ。
「はぁっ!」
ピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッ。
「なっ、さ、30回!?しかもこれ...」
「ふぅ、これはかなり疲れるな」
体を大きく、そして速く回転させた遠心力を利用し、そして放った石は、突き進むことなく、その場で跳ねさせたのだ。
過去に俺は、血の臭いを滲ませた薄い石を、今のようにその場で石を跳ねさせてピラニアを誘導したことがある。
小学生の時、たまたまくじ引きで当たった「水族館の裏側体験」に参加する機会があった(当時は超絶ラッキーと思っていた)。
そこで誤ってピラニアゾーンに落ちてしまい、慌てて上がった所がなんと出入り口とは違う足場だったのだ。
戻るためにはまたピラニアがいる水の中に入らないといけない。だが落ちた拍子に足を擦りむいてしまい、血の臭いを嗅ぎ付けてピラニアが足場に集まっていたのだ。
そこで考え付いたのが、足下に転がっていた薄い石に血を滲ませて、それを跳ねさせてピラニアを誘導する手法だったということだ。
その話をしていると、
「ねぇ、それ普通に水族館のスタッフに助けを呼べば良くない?」
「あ...ほら、小学生だからさ、そんな冷静になれないじゃん?」
その手があったか!と、6~7年の時を経て後悔した。
そしてある時。学校からの帰り道である。日が傾く時間が早くなり、いつも見る道路や木々、公園を橙色に照らしていた。
俺たちは近くに新しくできたクレープ屋に行って、どんなに旨いものかと値踏みしに行く所だった。
「もう10月も終わりか、時間が経つのって早いな」
「そうだね、君と出会って3、4ヶ月くらいかな?」
「そんなもんだな、で?この前のバスケ部の試合どうだったよ」
「え、いつも通りだけど?」
この言葉が意味するのは、「ただ投げて篭に入れただけ」ということだ。こいつのせいでバスケのルールが変わるかもしれない。
「よくもまぁ易々と3ポイントできるもんだ」
「逆に走って入れにいく意味が分からない。投げて入れたら走る必要ないんだからそうすればいいのに。あ、でもダンクは格好いいかも」
他愛もない会話の最中、信号が俺たちの進行を妨げた。
左右から行き来する車をぼおっと眺めていた。何も考えることがなかったので、「時は早いなぁ」と、さっきと同じ事を思い黄昏ていた。すると、
「...サツキが友だちでいてくれてよかったよ」
「夕焼けた空気にあてられたか?...そういや、ナオキが俺以外のやつとつるんでいる所見たことないな」
忙しすぎて、それと楽しくて考えもしなかったが、こいつが他の人と時間を共にする様子を見たことがない。
「ほら、僕何でもできちゃうだろ?だから皆僕と比べて自己嫌悪しちゃうんだ」
「自己嫌悪ねぇ、若いな」
「そりゃサツキは一年多く生きてるからね」
「いや違う、お前と自分を比べるなんて、そんなのチーターに短距離走で負けて悔しがってるようなもんだ」
そうこうしているうちに、信号が青く灯った。ナオキが足を運ぶ。
...おっといけない、嫌な予感だ。このまま先に進めば、俺だけコンクリートが割れてできた穴に落ちることになりそうだな。迂回しなければ─────
「ほらサツキ、早く来いよ、でないと売り切れる!」
と、ナオキが俺の手を掴み引っ張ってくる。俺の手にナオキの手が触れた瞬間、先ほど感じた嫌な予感が急にでかく感じた!
「ちょまっ─────」
ドゴゴゴゴゴッ─────ドォン!
「「!?」」
確かに穴が空いた。地面のコンクリートがぶっ壊れた。
面積にして、大体グラウンド一つ分。
真っ暗な世界に続く大穴の出来る地盤沈下が発生した。
地に足つかなくなったため、一瞬狼狽える。しかし、俺には考えがあった。
ナオキの手をがっしりと掴み─────
パァン!
「え、」
ドン!
ナオキは俺の差し伸べた手を払いのけ、地上まで押し上げた!何を考えてっ!
「ナオキ!」
「へっ」
その時落下していくナオキの不敵な笑顔が、今でも鮮明に思い出せるのだった。
トイレ?否。「便所飯」とは言うけれど、普通に人の循環が多いので却下だ。
屋上?否。普通に封鎖されている。中学時代ではそもそも立ち入ったことがない。この高校でも同様だ。
ならば、
「君、一浪してるんだって?凄いねその執念。あ、敬語のがいいかな?」
「...いや、どっちでも良いよ」
「ならタメ口で。よろしく」
俺はいつも昼時になると、弁当を携えて必ず校舎裏に来ている。それもゴミ焼却炉の近く。こんなところでは臭くて飯が不味いと思うかもしれないが、風向きが常に逆風で、ゴミの臭いがこちらに向くことはない場所だ。そんな場所に、キャンプ等をする際に使う折り畳みの椅子をセットして、昼食を摂っていた。誰も来たがらない場所だから。
にも関わらず、ブロンズ髪にしっかりと着たブレザーが良く似合う、そんなキラキラした優男がここに来た。誰も来たがらないここに。一体何しに来たんだろうか?こいつは確か、この学校ではかなり有名な奴だったはずだ。
「お前みたいな天才児が、俺みたいな出来損ないに用があって来た訳じゃないだろう?ゴミの日なら生憎明日だぜ?」
俺は親指でゴミ焼却炉を指す。
「いや山田サツキ、僕は君と友達になりに来たんだ、それに僕は『天才児』じゃないよ。ナオキ、海島ナオキだ」
「そりゃ知ってるが...」
何で俺と友達に?よくわからん。
「何で自分のことに興味を持ってるんだ?って顔してるね。君に興味を抱かない方がおかしい。こんなに面白いのに」
ニタニタと笑うその顔は子供っぽさ満点だ。こいつには世界の全てが輝いているのかもしれない。
「面白い?何が?」
「この校舎裏に来る時、君は階段を利用せずに、わざわざ近くのトイレの窓から縄を使って降りていたね、どうして?」
「...良く見てるな」
見られないように気を配った筈だが?
そう、今日は何だか嫌な予感がした。特に昼時にこの校舎裏に行くときの階段で、何か恐ろしいことが起こると思ったのだ。だから階段を経由しないルートを選んだ。しかし俺の教室は二階に位置するため、階段を使わざるを得ない。だから窓から降りたいものだが、人目憚らず窓から縄で飛び降りる勇気は流石になく、トイレの窓から縄で降りたわけだ。
「そりゃ見るさ、だって折角昨日のうちに階段を坂道にするトラップを仕込んだというのに、全部台無しにしちゃうんだから」
「はっ...えぇ!?階段を坂道に?」
怖い怖い怖い!意味が分からない!?いたずらの範囲越えてる!ただの犯罪だわ!
「そそ、あ、ちゃんと手すりに座って滑られることがないように、乗っかったら落ちるように仕掛けてるんだけどね?なのにそもそも階段を選ばないなんてねぇ。でも問題ないよ、仕掛けは手動だから他者に危害は加えない配慮はしてる」
「だが...いやそんなことも出来るのか?お前は」
「まぁこれでもロボット工学もちょっと齧ったからね」
この学校にそんな専攻はない。つまり独学でそれほどの技術を身につけたということだ。やることが学生の域を越えている。いや学生でなくてもやらないか。
だが、こいつなら何故か納得できる。学校でのテストの成績は全て一位。あらゆる分野において瞬時に極めることが出来る天才児。それがこの海島ナオキという男、らしい。
飽くまで聞いた話だが例を挙げると、剣道部の試合の助っ人では、決勝で相手校の主将を完封したり、水泳部の試合では対岸からのスタートダッシュだけで優勝したり(確かに水の抵抗が限りなく少なそうだ)。とまぁこのように、色んな部活の助っ人に参加しては相手学校のプライドをズタズタにして来るとか。
「でさ、そんな期待以上な立ち回りが出来る君と是非とも友達になりたいって思ったわけだよ!さぁなろう!今すぐなろう!今から学校を出て遊びにいこう!」
「ちょちょ、鬱陶しいからやめい、分かったよ友達はいいけれど遊ぶのは放課後な」
そこから俺は、よくこの海島ナオキと付き合うようになった。
ある休みの日、ゲームセンターでは、主に2プレイ100円で遊べる対戦型シューティングゲームをプレイしていた。ゾンビを倒したスコアで競う系統の対戦ゲームだ。おぞましいゾンビ達が襲いかかり、それをバシュバシュと撃ち殺していく。
「流石だねサツキ!このシューティングゲームで僕とタメを張るなんて君くらいだよ!」
「別に、よく意識寝ぼけた雀が飛び込んでくるものだから、水鉄砲でモーニングコールしていた時があっただけだ。避けたら雀が地面に激突して死んじゃうからな」
「...鳥とゾンビとではどっちが撃ちにくい?」
「んー、鳥かな?速いし的小さいし」
FINISH!!
の文字と共にゲームが終了。結果はタッチの差でナオキが勝った。だが、ナオキは何だか嬉しくなさそうだ。完封して初めて勝利ってか?
「なんだ、勝ったのにショボくれてよ」
「いや、これが本当にゾンビとの戦いだったらどうなってたのかなってさ」
少し興味深い。そういう「もしも無人島にいたら」的な心理テストは好きだ。だがそういった「もしも」なら
「俺なら絶対に逃げるね、あんな無尽蔵に来られたら弾切れで終わりだ」
「...あはは、確かに」
ナオキは時々、勝ったのにこうやって暗くなる。
またある日には、よく近くの商店街で色んなものを買い食いしたものだ。そしてナオキが酷評を浴びせ回るのにひやひやした。小声で止めてもきかなかったものな。
「んー、揚げすぎ。油の温度を9℃下げて、あと4.2秒ほど早く取り出したらそこそこましなコロッケになるかも」
「(ちょ、店長の前で言うなよなそういうの!)」
プルプルとイライラを押さえようと必死なおじさんがいた。目を合わせられないよ...。
「でもだよ、実際前に調理実習で作った僕のコロッケのが旨い。しかもやろうと思えば大量生産も出来るだろうから、うん!確かにここと比べること自体が────」
「失礼しましたー!」
俺はいつもナオキを回収する係りだった。そしていつも後日には、商品がアドバイスを反映し美味しくなっているのだった。
ある時は河原で水切りをした。薄い石を水面に投げて跳ねさせるあれだ。
ナオキが河に目掛けて、水平線をなぞって薄い石を...あれ?すこし歪んでる?大丈夫か?
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「よし、31回!」
「31!?しかもこれっ、おい!」
ただ31回跳ねさせただけではない。わざと「ただ薄い石」を選んだのでなく「歪んだ石」を選ぶことで、本来まっすぐ投げたら対岸まで31回も跳ねられない所を、軌道を曲げることで渦を描き、回数を増やしやがった!
「へっへーん!」
「なるほど、」
これは俺も本気を見せないといけないらしい。小学生の時、水族館のピラニアゾーンに誤って入り込んでしまった時に、ピラニアに食われないためにしたあれが役に立つ。
俺は薄い石を広い、体を大きく回転させ、そして石を放つ。
「はぁっ!」
ピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッピチャッ。
「なっ、さ、30回!?しかもこれ...」
「ふぅ、これはかなり疲れるな」
体を大きく、そして速く回転させた遠心力を利用し、そして放った石は、突き進むことなく、その場で跳ねさせたのだ。
過去に俺は、血の臭いを滲ませた薄い石を、今のようにその場で石を跳ねさせてピラニアを誘導したことがある。
小学生の時、たまたまくじ引きで当たった「水族館の裏側体験」に参加する機会があった(当時は超絶ラッキーと思っていた)。
そこで誤ってピラニアゾーンに落ちてしまい、慌てて上がった所がなんと出入り口とは違う足場だったのだ。
戻るためにはまたピラニアがいる水の中に入らないといけない。だが落ちた拍子に足を擦りむいてしまい、血の臭いを嗅ぎ付けてピラニアが足場に集まっていたのだ。
そこで考え付いたのが、足下に転がっていた薄い石に血を滲ませて、それを跳ねさせてピラニアを誘導する手法だったということだ。
その話をしていると、
「ねぇ、それ普通に水族館のスタッフに助けを呼べば良くない?」
「あ...ほら、小学生だからさ、そんな冷静になれないじゃん?」
その手があったか!と、6~7年の時を経て後悔した。
そしてある時。学校からの帰り道である。日が傾く時間が早くなり、いつも見る道路や木々、公園を橙色に照らしていた。
俺たちは近くに新しくできたクレープ屋に行って、どんなに旨いものかと値踏みしに行く所だった。
「もう10月も終わりか、時間が経つのって早いな」
「そうだね、君と出会って3、4ヶ月くらいかな?」
「そんなもんだな、で?この前のバスケ部の試合どうだったよ」
「え、いつも通りだけど?」
この言葉が意味するのは、「ただ投げて篭に入れただけ」ということだ。こいつのせいでバスケのルールが変わるかもしれない。
「よくもまぁ易々と3ポイントできるもんだ」
「逆に走って入れにいく意味が分からない。投げて入れたら走る必要ないんだからそうすればいいのに。あ、でもダンクは格好いいかも」
他愛もない会話の最中、信号が俺たちの進行を妨げた。
左右から行き来する車をぼおっと眺めていた。何も考えることがなかったので、「時は早いなぁ」と、さっきと同じ事を思い黄昏ていた。すると、
「...サツキが友だちでいてくれてよかったよ」
「夕焼けた空気にあてられたか?...そういや、ナオキが俺以外のやつとつるんでいる所見たことないな」
忙しすぎて、それと楽しくて考えもしなかったが、こいつが他の人と時間を共にする様子を見たことがない。
「ほら、僕何でもできちゃうだろ?だから皆僕と比べて自己嫌悪しちゃうんだ」
「自己嫌悪ねぇ、若いな」
「そりゃサツキは一年多く生きてるからね」
「いや違う、お前と自分を比べるなんて、そんなのチーターに短距離走で負けて悔しがってるようなもんだ」
そうこうしているうちに、信号が青く灯った。ナオキが足を運ぶ。
...おっといけない、嫌な予感だ。このまま先に進めば、俺だけコンクリートが割れてできた穴に落ちることになりそうだな。迂回しなければ─────
「ほらサツキ、早く来いよ、でないと売り切れる!」
と、ナオキが俺の手を掴み引っ張ってくる。俺の手にナオキの手が触れた瞬間、先ほど感じた嫌な予感が急にでかく感じた!
「ちょまっ─────」
ドゴゴゴゴゴッ─────ドォン!
「「!?」」
確かに穴が空いた。地面のコンクリートがぶっ壊れた。
面積にして、大体グラウンド一つ分。
真っ暗な世界に続く大穴の出来る地盤沈下が発生した。
地に足つかなくなったため、一瞬狼狽える。しかし、俺には考えがあった。
ナオキの手をがっしりと掴み─────
パァン!
「え、」
ドン!
ナオキは俺の差し伸べた手を払いのけ、地上まで押し上げた!何を考えてっ!
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「へっ」
その時落下していくナオキの不敵な笑顔が、今でも鮮明に思い出せるのだった。
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