与えられた欠陥で、俺は神に復讐する

こへへい

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真実を見ろ

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 ヒリヒリと癒える体(特に足を酷使していたので太ももや、トウカに蹴られた腹)を手でさすりながら気になっている事が二つあった。
 まずは一つ。

「なぁ、そういえば何でお前ら和解してんの?」

「ガチガチ頭の早とちりよ」

「あ?燃やすぞ」

「ほら、結構こいつ昔から短期でね」

 そこからカレンは、ジニアが国で同僚を燃やし殺して捕まった事、それが謎の黒ローブの黒いマントだった事、腕輪を着けているところを見て国の犬と思っていた事を話してくれた。

「で、こいつは今お尋ね者ってわけ」

「色々と大変だったんだな」

「同情される筋合いはない」

 澄まし顔のまま、ジニアは顔を此方に向けようとはしなかった。
 それともうひとつ。

「トウカの五感が鋭いとしても、何故彼女は自分で五感全てを失わせることができたんだろう?」

「五感全てが...よく逃げ切れたな」

 ジニアがお褒めの言葉をくれた。

「初めて五感全てを失ったときは、人ひとりの首をへし折っていたからな、反撃を食らっていたらお前は死んでいただろう。確かに固有スキルでの運気上昇はあるらしいな」

 首へし折る!?怖すぎるだろ、つーか普通に反撃食らってたんですけど腹に。あの時運気が上がらず、そして能転玉の力を持てていなかったらと思うとゾッとする。

「...ま、確かに気がかりではある。五感を全て失ったトリガーというのが私への悪口だとしても、何故そうなるのか検討もつかない。固有スキルにはまだ分からないことがあるということか」

 ジニアは顔を落とし、寝ているトウカの髪を撫でながら言った。まるで犬をなだめる図だ。

 それともう一つ、俺の固有スキルが「運気と魔力が連動する」、つまり「運に関する」というところから、ある一つの謎が解明されるのではないか?と考えていた。
 その謎解明に一歩近づくべく、角野トウカに話を聞く必要があった。

「あのぉ、トウカ、さん?」

「今トウカは眠っているんだ。起こしてやるな」

 静かにジニアが問いかけをぶったぎった。だがどうしても聞いておきたかった。

「...だがお前はお尋ね者だろ?次会うにもかなりリスキーだと思うんだよ、だから今聞いておきたい」

「何について聞きたいんだ?」

 ジニアが気になっているようだ。カレンも興味深そうにこちらを見ている。

「この世界の『固有スキル』と呼ばれているモノについてだ。俺の予想が正しいかどうかを確認したい」

「予想?何を予想しているというんだ?」

 妙に突っかかるな、言っても信じてもらえるかどうか分からないが、仕方がない。とりあえず結論から話そう。

「俺はこの『固有スキル』が、転移者の持つ『欠陥』だと思ってる」

「欠陥?それは弱点とかそういうニュアンスの?」

 カレンの問いに頷いた。
 続けてジニアが問うた。

「何故そうだと思うんだ?根拠はなんだ?」

「分からないけど、俺の場合、前の世界では不幸って『欠陥』があったんだ。それがこの世界に来たとたん、こうして『運気と魔力が連動する』固有スキルに変容したんだ。だからそうなんじゃないかって」

「おいおい、それはお前がそう思っているだけじゃないのか?確かにお前は不幸なんだろうが、それが本当にその『欠陥』かどうか断定はできない筈だぞ?」

 そうだよな。やっぱり、そう思われるよな。俺にとってその方がまだ良かったよ。思い込み、誰のせいでもない、何も介在しない。だが現実はそうじゃなかった。
 俺は視線を落とし、改めて顔を上げた。

「いやできる。この不幸は俺が出会った神が付与した『欠陥』なんだ。だから少なくとも、この不幸は思い込み何かじゃない。その神の仕業なんだ」

 自然と奥歯を噛んでいた。余計な事をしてくれた、ふざけやがって。あいつのせいで友を失うことになったんだ。そういった憎しみがまた煮えくり返る。

「...神に、会った?」

 カレンが目を見開き口をパカパカさせている。そういえばこれを信じるかも分からないよなぁ、まぁ信じないならそれで良いか。

「あぁ、俺はこの世界に来る前に、前の世界で死んで、でもって神に会ったんだ」

「死んだの!?」

「あー、そこも話してなかったか」

 俺はカレンとジニアに、死んでから神に会うまでの話をした。
 カレンは「たいへんだったのねぇ」と頬に手をあて同情してくれたが、ジニアはそうではないらしかった。

「それで、その神がお前に不幸を付与したって言ったんだな。言っただけなんだよな?その言葉が本当か分からないだろう?」

「え、」


「真実を知りたいのなら、他人の言葉を鵜呑みにせず、真実を見ることだ。誰かの言葉じゃない、お前の目で見た真実をな」


 いやどんだけ疑り深いんだよ、そりゃ警戒心バリバリになるわ。よくカレンは話し合いで解決したな。
 だが、自分では分からなかった。そうか、ナオキが死んでから友達は居なかったから、自分がどういう心なのかが第三者視点で見られなかったのた。
 もしかして、これも思い込み?俺が鵜呑みにしただけで、真実は別にある?

「まぁ、今は考えても何も進まないでしょ、欠陥だの不幸だの言ったってね。あ、まぁ不幸に関してはサツキの腕輪が物語っているからそこそこ間違いないんだけどね」

「いいや、その腕輪の数字も怪しいものだ。もしかしたらでたらめかもしれないぞ」

「はぁ!?あんったいっつもいっつも疑いすぎよ、だからこんな誤解招いて襲って来たんでしょ?」

「ぷっははははは!」

 バカらしくなって噴き出してしまった。そうだ、もしかしたら神の話も嘘かもしれない。だからその真実を確かめる為にも、俺は神の前にもう一度出てこないといけないんだ。真実を確かめるために。そして友の弔いのため。

 そんな予定を思案しながら、自分の運について思考を戻していた。自分はかなり不幸であると知っている。にもかかわらず、今回カレンが来てくれたというラッキーについてだ。

「いやーそれにしても、この場にカレンが来てくれて本当に良かったよ」

 カレンはそっぽ向いて少し照れながら言った。

「そりゃ一応研修相手を受け持ってやったんだから、目の届かない所へ行かれたら心配すー」

「俺って運がないって思ってたんだけど、もしかしたらそれほど運悪くないのかもしれないなぁ!いやー本当に、不幸中の幸いってやつ?助かったわ~はっは!」

 ピキッ
 腰に手を当て、ワッハッハ!と自らの境遇の良さに笑っていたのだが、カレンが睨んだ。

「あんた、今何て言ったの?」

「え、いやぁ、俺って意外に運が良かったのかも~ってことをね、ほら、怒るとこ?」

 ズンズンと迫るカレン。めっちゃ怖い顔してる!?何で?手を前に出し、慌てて制止した。

「怒るわ!当たり前でしょうが!私がここに来たのは『私の意思』!あんたの運なんてこれっっっっっっっっっぽっちも関係ないっつーの!」

 グイグイと迫りカレンは怒る。鬼の形相だ!怒った時のお母さんだ!

「ひぃー!ご、ごめんなさい!」

「『ご・め・ん・な・さ・い』!?
 言葉が違うでしょーが!」

「あ、ありがとうございます!!」

「うん、よろしい」

 ふカレンは満足げにうんうんと頷いた。
 怖いよぉ...カレンさんマジ怖いよぉ...。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「さて、もう遅いから帰るか、コボ郎、短い間だったが楽しかったぜ」

「あぁ!?ワイは全く楽しないわ!宝盗みよってほんまにぃ!」

 グヌヌヌ、というそれはそれは恐ろしい剣幕の白い玉がいたそうな。なぁ白い世界のお姉さん、この子全然味方してくれる雰囲気ないんだけど?
 そんなことはさておき、ジニア達の行く末を聞いてみた。神を相手にするならば、戦力は多いほうがいい。

「まぁそれはおいおい考えるとして、これからどうすんの?お前」

「私は引き続きディネクスの調査と能転玉捜索を続行する。お前らは巻き込まれない準備でもしておくんだな」

 ジニアがそうは言うものの、彼の恨みの根元である「転移者を監禁するところの目撃」について、不思議に思った。

「んー、何でディネクスは転移者を誘拐する必要があるんだろうか?」

「さぁな、まだそこまでは分かっていない」

 能転玉を集められて脅威になることを恐れるならば殺せばいいし(もしそうなら俺既に死んでそう)、利用するなら秘密裏に誘拐というのも、それはそれでしっくりこない。

「ま、今考えても仕方がないか、調べればすー!?」

 心の奥底で、何やらゾワっとした感覚が走った。この感覚は、いつも自分に不幸が降りかかる時の感覚「嫌な予感」だ。
 今、ゼロ・ハピネスの効果が解除されて不幸状態にある。だかこそ今感じ取ったのだ。

「はっ!」

「ん、どうしたトウカ」

 今まで寝ていたトウカが目を覚ましたことに、ジニアが落ち着いて話しかけた。眠い目を擦ることもなく、冷や汗をかきながら辺りをキョロキョロとしている。

「何か、います、」

「何か聴こえるのか?」

 ジニアはトウカに聞いた。

「はい、この場にいない、もう一人の鼓動が聴こえます」

 トウカのその意見に俺も賛同する。

「あぁかなりヤバイ感じだ、今すぐここから離れるんだ!」

 そう叫ぶと、カレン、トウカを抱えたジニアがその場所から離れた。だが俺は動くわけにはいかなかった。
 そして見上げると、夜空に煌めいていたはずの星空が、黒い影で塗りつぶされた!


 ドシン!

 重い...何者かの下敷きになってしまった。

「うぐぅっ、」

 それにヌメヌメして気持ち悪い、なんだこいつは...!

「ゲロゲロ、まずは一人目、ゲロリ」

 月明かりに照らされたのは、蛙の着ぐるみを着た忍だった。
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