女神の雫〜ルタルニア編〜

山本 美優

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少年と少女 それぞれの理由

少女の理由〜ゼピス侯爵令嬢誘拐事件〜3

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「ジー」
という連続した機械音と、
「コポコポ」
という水音以外しなかった静かな空間に、外から複数の人間の足音が聞こえてきた。

「そろそろお迎えする準備をしなくては」

 そう言ってムウ=ウェイズが右手をポケットへと突っ込み、何かを取り出そうとした瞬間。

(今だ!)

 ガブリッ!

 レイリアは自分の右手首を掴んでいた男の左手に、思い切り噛み付いた!

「何をする!」

 血が出る程の突然の鋭い痛みに驚いたムウ=ウェイズは、取り出そうとした小瓶を落とすと共に、レイリアを掴んでいた左手を離した。

 腕を離されたレイリアは、すぐ近くまで来ているはずのファウスを目指して扉へと走り出した。そして、彼女が一番得意とする魔法を発動させるため、ありったけの魔力を込めて呪文を唱える。

「ファーナ!」

 その瞬間、部屋の中は猛烈な風が吹き#荒すさ__#んだ。
 そのせいで部屋の中にあった品々や埃が舞い上がり、視界をさえぎられたムウ=ウェイズは、走り去る小さなレイリアを見失った。

「おのれ…、ゼピスの小娘ぇ!」

 部屋の外を目指して逃げ走るレイリアの背後に、怒りに満ちたムウの声と共に、強大な魔力の波動が迫る。

(こんな強い魔法なんて受けたらきっと死んじゃう!早く父様の所へ逃げなきゃ!)

 必死の思いで全力疾走するレイリアの前に、扉を開けて入ってきたファウスの姿が見えた。

「レイリア!」
「父様!」

 父と娘の感動のさいかいよろしく、レイリアがファウスの元へと飛び込もうとすると、ファウスから大声が飛んだ。

「そのまま後ろまで走り抜けろ!」

 ファウスの言葉にレイリアは頷くと、言葉通りファウス達の脇を全速力ですり抜け、そして振り向いた。

「フォルグ・ラス・クレスティナ!」

 ファウスを含む数名の声が魔法を防ぐ呪文を唱えると、レイリア達のすぐ後ろまで迫ってきていたどす黒い炎が、出現した金色に輝く壁により行く手を阻まれた。

「うわぁ。危なかった~」

 寸での所で難を逃れたレイリアは、心底ほっとした。

「ヴィモット、リジル。レイリアを外へ連れ出せ!」
「父様はどうするの?」
「あやつが用のあるのは私だけだ。お前は下がっていなさい」

 ファウスはレイリアへと視線を移すことなく命じると、ただムウ=ウェイズのみをその目で捉えていた。

「お久しゅうございます、ファウス様」

 ムウは待ち焦がれた人物の登場に高揚こうようした表情となっていた。

「ムウ!お前はまだこのようなことを続けていたのか!言ったはずだ!三十年前のあの戦いで起きた惨劇を、再び我が国で起こすわけにはいかないと!」
「あれは功を焦ったあちら側が、中途半端な状態で力を利用したからです。私はあのような失敗は致しません。その証拠を見て頂くために、こちらまでご足労頂いたのです。
まぁ本当は、あなたの子供を使ってついでに記録を取ろうと思っていたのですが、少々計画が狂ってしまいました。おかげで私自身が手を下さなければならなくなってしまったので、詳細な記録が取れないことが唯一の心残りです」

 残念そうな表情を浮かべているムウ=ウェイズと、ムウを睨むファウスを尻目に、レイリアはヴィモットとリジルと呼ばれた赤髪の若い剣士に護られて部屋を出ようとしていた。

「逃がさん!」

 目ざとく気付いたムウ=ウェイズの一言で、どういう魔法を使ったのか分からないが扉が閉まり、目の前から扉自体が消え去った。

「扉が消えちゃった!」

 消えた扉へ向けてヴィモットがいくつかの呪文を唱えるが、扉は現れない。これでは外に出たくとも出られない。

「無駄ですよ。私以外は扉を元には戻せません。さぁ、これで心置きなく私の研究成果を見て頂けます」

 そこへ、一人の黒髪の剣士が前へと進み出た。
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