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少年と少女 それぞれの理由
少女の理由〜ゼピス侯爵令嬢誘拐事件〜5
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レイリアが浮かない表情で俯いていると、突然
「ガシャーン!」
というガラスの割れる、大きな音が聞こえた。
急いで音がした方へと目をやると、そこには割れた水槽があり、中に入っていたはずのあの魔族がいない。そして、それと共にどこからか女性の声音に似た笑い声が周囲に響いてきた。
『ククク…。契約により力を貸したが、やはり人の身では我が力の欠片かけらさえ扱えなかったか』
声の主あるじを探して、レイリアはキョロキョロと辺りを見回した。
「上だ!」
声に反応して顔を上に向けると、金色に輝く瞳とレイリアの水色の瞳がかち合った。
(キレイ…)
その顔立ちは人とは異なる造形だが、瞬く星のごとく煌めいたその大きな瞳は非常に美しい。
『人ごときがここに在るとはなんと忌々しいこと。その目障めざわりな剣諸共、我が手で消し去ってくれよう!』
赤に近い紫の体色に銀色の長い髪と美しい金の瞳を持った魔族は、背から生えた大きな羽と人よりも多い四本の腕を大きく広げながら、何故かレイリア目指して降下してくる。
「レイリア!」
レイリアは自分の名を叫ぶの父の声でハッと我に返り、自分が狙われていると気が付いた。
(え?私?)
これだけの数の大人が居るのに、なぜ子供の自分が狙われるのか?もしかして、目が綺麗だなと思ってしまったからなのか?
混乱に陥ったレイリアの頭はどうでも良い事を考えしまい、肝心の『逃げる』という選択肢がおざなりになる。
その間にもレイリアを標的と定めたであろう異形の者は、容赦無くどんどん近づいてきた。
(どうしよう。今度こそ殺されちゃうかも!)
今度は恐怖心から足が立ちすくんでしまい、レイリアは動けない。
そんな棒のように固まってしまったレイリアを、リジルは荷物のようにヒョイと肩に抱え上げると、こちらへと走り向かってくるファウス達と合流すべく駆け出した。
目標としたレイリアが移動したことで魔族もまた方向を変え、空を飛んで向かってくる。
その姿をリジルの肩越しに見ていたレイリアは、
(魔族って空を飛べるんだ)
などと改めて感心してしまった。
そこへ前方からファウスの声が飛んでくる。
「リジル!それをヴィモットへ!」
(『それ』って、私の事よね…)
レイリアは父から物扱いされたされたことに少々傷ついたが、この状況下のレイリアは荷物以外の何物でもない。
再びファウスと黒髪の剣士から成る一団とすれ違い、今度はヴィモットの元へと身柄を預けられる。
「ありがとう」
下へと降ろされたレイリアが強張らせた笑顔で礼を言うと、リジルは片膝をついてレイリアと目線を合わせ、ウィンク交じりの笑顔でこう言った。
「小さな姫君をお守するのも、我らの役目の一つですよ」
本来ならばこの場には似つかわしくないやり取りなのかもしれないが、小さな少女が抱いた恐怖心を取り払うには充分だった。
「ではオルドス様、後を頼みます」
立ち上がったリジルはそう告げると、レイリアをヴィモットへ託した。
ヴィモットの脇へと居場所を変えたレイリアがリジルの顔を見上げると、その顔からは既に笑みは消えており、戦いの場へと赴く精悍な男の面立ちへと変わっていた。
そのリジルへと、ヴィモットが魔族と戦うために必要な防御系の魔法をいくつか掛けた。
「リジル様、頑張って!」
レイリアの声援に、掛けられた魔法によって淡い金色の光をその身に纏ったリジルは小さく頷くと、他の騎士達と同じように銀色に輝く不思議な剣を右手に携え、魔族目がけて走り去っていった。
「ガシャーン!」
というガラスの割れる、大きな音が聞こえた。
急いで音がした方へと目をやると、そこには割れた水槽があり、中に入っていたはずのあの魔族がいない。そして、それと共にどこからか女性の声音に似た笑い声が周囲に響いてきた。
『ククク…。契約により力を貸したが、やはり人の身では我が力の欠片かけらさえ扱えなかったか』
声の主あるじを探して、レイリアはキョロキョロと辺りを見回した。
「上だ!」
声に反応して顔を上に向けると、金色に輝く瞳とレイリアの水色の瞳がかち合った。
(キレイ…)
その顔立ちは人とは異なる造形だが、瞬く星のごとく煌めいたその大きな瞳は非常に美しい。
『人ごときがここに在るとはなんと忌々しいこと。その目障めざわりな剣諸共、我が手で消し去ってくれよう!』
赤に近い紫の体色に銀色の長い髪と美しい金の瞳を持った魔族は、背から生えた大きな羽と人よりも多い四本の腕を大きく広げながら、何故かレイリア目指して降下してくる。
「レイリア!」
レイリアは自分の名を叫ぶの父の声でハッと我に返り、自分が狙われていると気が付いた。
(え?私?)
これだけの数の大人が居るのに、なぜ子供の自分が狙われるのか?もしかして、目が綺麗だなと思ってしまったからなのか?
混乱に陥ったレイリアの頭はどうでも良い事を考えしまい、肝心の『逃げる』という選択肢がおざなりになる。
その間にもレイリアを標的と定めたであろう異形の者は、容赦無くどんどん近づいてきた。
(どうしよう。今度こそ殺されちゃうかも!)
今度は恐怖心から足が立ちすくんでしまい、レイリアは動けない。
そんな棒のように固まってしまったレイリアを、リジルは荷物のようにヒョイと肩に抱え上げると、こちらへと走り向かってくるファウス達と合流すべく駆け出した。
目標としたレイリアが移動したことで魔族もまた方向を変え、空を飛んで向かってくる。
その姿をリジルの肩越しに見ていたレイリアは、
(魔族って空を飛べるんだ)
などと改めて感心してしまった。
そこへ前方からファウスの声が飛んでくる。
「リジル!それをヴィモットへ!」
(『それ』って、私の事よね…)
レイリアは父から物扱いされたされたことに少々傷ついたが、この状況下のレイリアは荷物以外の何物でもない。
再びファウスと黒髪の剣士から成る一団とすれ違い、今度はヴィモットの元へと身柄を預けられる。
「ありがとう」
下へと降ろされたレイリアが強張らせた笑顔で礼を言うと、リジルは片膝をついてレイリアと目線を合わせ、ウィンク交じりの笑顔でこう言った。
「小さな姫君をお守するのも、我らの役目の一つですよ」
本来ならばこの場には似つかわしくないやり取りなのかもしれないが、小さな少女が抱いた恐怖心を取り払うには充分だった。
「ではオルドス様、後を頼みます」
立ち上がったリジルはそう告げると、レイリアをヴィモットへ託した。
ヴィモットの脇へと居場所を変えたレイリアがリジルの顔を見上げると、その顔からは既に笑みは消えており、戦いの場へと赴く精悍な男の面立ちへと変わっていた。
そのリジルへと、ヴィモットが魔族と戦うために必要な防御系の魔法をいくつか掛けた。
「リジル様、頑張って!」
レイリアの声援に、掛けられた魔法によって淡い金色の光をその身に纏ったリジルは小さく頷くと、他の騎士達と同じように銀色に輝く不思議な剣を右手に携え、魔族目がけて走り去っていった。
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