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少年と少女 それぞれの理由
少女の理由〜ゼピス侯爵令嬢誘拐事件〜6
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遠くに魔族と戦うファウス達の姿、近くにリジルの後姿を目に入れながら、レイリアは呟くようにヴィモットへと尋ねた。
「ヴィモット先生。父様達、魔族に勝てるかなぁ?」
「勝てなければ全員生きて戻れませぬ故、勝って頂かなければ困ります」
「それはそうなんだけれど…」
ヴィモットの妙に冷めた返答にレイリアが肩を落とす。
レイリアの希望としては『絶対勝ちますから大丈夫ですよ!』くらいの、前向きで力強い言葉が欲しかった訳だが…。
相変わらず何となく嚙み合わない魔術の師との会話を諦めたレイリアは、ヴィモットより掛けられたいくつかの防御系の魔法による金色の輝きを身に纏いながら、父達の様子を見守った。
暫く戦闘を見ていたレイリアは、そこで重大なあることに気が付いた。
「ねぇ。どうして父様は攻撃魔法を使わないの?」
「魔族には魔法はほとんど効きませぬ」
「そうなの!?」
「はい」
「それじゃあ魔術士はどうやって戦うの?」
「騎士達が手にする『破邪の剣』と呼ばれる剣のみが、魔族に対抗し得る手段です。ですから我ら魔術士は、戦う騎士を助ける事しか出来ませぬ」
「そんな…」
(魔法じゃ魔族には勝てないんだ……)
レイリアは今まで、剣士より圧倒的に数が少ない魔術士の方が、希少価値が高くて偉いのだと思い込んでいた。
だが、魔法では勝てない敵がいるという事実にレイリアは衝撃を受け、彼女の中で魔法、そして、魔術士というものの価値が一気に低くなった。
更に魔族と直接戦い剣を振るう騎士達の雄姿は、何とも格好良い。
特に父へと軽口を叩いていたあの黒髪の剣士は、子供のレイリアから見ても、他の誰よりも剣の扱いに卓越しているように見える。
何故なら、他の者が攻撃を避けることを重点とし、途中やっと一撃を与えている状況の中で、黒髪の剣士だけは巧みに攻撃をかわしつつ何度も魔族へと斬りかかっているのだ。
(あの方凄いわ!)
いつの間にかレイリアは、手に汗を握りしめながら、ひたすらその黒髪の剣士を目で追っていた。
魔族が放った魔法を魔導士が防ぐと、それを見越すかのように飛び込んでいった黒髪の剣士が素早く斬りかかる。
続いて、魔族の体より繰り出される意思を持った蔓つたの様な物も易々と斬り捨て、更にその体へと斬り付ける。
しかし、何度も斬り付けられているはずの魔族の体には全く傷跡が見つからず、斬り落とされたはずの腕が何故か存在している。
「ヴィモット先生」
疑問を放置出来ないレイリアは、仕方なく再びヴィモットへと質問を投げかける事にした。
「どうして魔族は、剣で斬られても平気なの?」
「平気では無い様に思われますが?」
血も流れておらず、その身に傷一つ無いあの状態のどこが平気なのだろう?
「だって、血も出てないし…」
「魔族に血など流れておりません」
「えっ!?」
見た目が少々人に似ているため、当然体の造りも似ているかと思いきや、そうではないらしい。
「魔族はその身に命の塊のようなものが存在しており、我らはそれを色に因んで『アーブレ・ロウス』、つまりは『紫の命』と呼んでおります。故に、その身に宿る『アーブレ・ロウス』を全てを消し去らなければ、滅びることはありませぬ」
(言っている意味が全然分からない…)
眉をひそめ、疑問符だらけの顔を向けるレイリアに、ヴィモットは咳払いを一つすると、以前行っていた魔術の講義のように説明を始めた。
「そもそも我らと魔族は似て非なるもの。我らのように心臓を持ち、血を流す生き物ではありませぬ。我らが知るは、魔法がほぼ効かぬ事。『アーブレ・ロウス』が尽きるまで、その身を何度傷つけられようとも再生される事。そして、破邪の剣によってのみ、『アーブレ・ロウス』は削られていくという事。これのみでございます」
「つまり魔族を倒すには、破邪の剣で魔族が持っている『アーブレ・ロウス』っていうのを壊さなきゃダメっていう事?」
「左様さようでございます。低位の魔族であれば、一閃を以って『アーブレ・ロウス』を破壊することが可能でございますが、あれは恐らく高位の魔族。『アーブレ・ロウス』を幾いくつも宿しているかと。そうなると、かなり面倒な相手ですな」
「ふ~ん。魔族の世界にも、偉いとか偉くないとかがあるんだ」
低位、高位という言葉から、レイリアは自分たちの世界に存在する身分社会を思い浮かべた。
「魔族の世界に、身分の上下というものがあるかどうかは分かりませぬ。ただ我ら人側がその存在を力の大小で分け、勝手にそう呼んでいるだけです」
「そうなんだ」
正直、今まで受けたヴィモットによる魔術の講義より、今聞かされる魔族についての話の方がよっぽど興味深い。
魔術の師に普段は抱かぬ畏敬の念を込め、レイリアは言った。
「ヴィモット先生って、色んな事を知っていらっしゃるのね!」
「伊達に齢は重ねておりませぬ」
魔術の師弟によりそんな呑気な会話が交わされている一方、人と魔族による闘いは、いよいよ大詰めを迎えているようだった。
「ヴィモット先生。父様達、魔族に勝てるかなぁ?」
「勝てなければ全員生きて戻れませぬ故、勝って頂かなければ困ります」
「それはそうなんだけれど…」
ヴィモットの妙に冷めた返答にレイリアが肩を落とす。
レイリアの希望としては『絶対勝ちますから大丈夫ですよ!』くらいの、前向きで力強い言葉が欲しかった訳だが…。
相変わらず何となく嚙み合わない魔術の師との会話を諦めたレイリアは、ヴィモットより掛けられたいくつかの防御系の魔法による金色の輝きを身に纏いながら、父達の様子を見守った。
暫く戦闘を見ていたレイリアは、そこで重大なあることに気が付いた。
「ねぇ。どうして父様は攻撃魔法を使わないの?」
「魔族には魔法はほとんど効きませぬ」
「そうなの!?」
「はい」
「それじゃあ魔術士はどうやって戦うの?」
「騎士達が手にする『破邪の剣』と呼ばれる剣のみが、魔族に対抗し得る手段です。ですから我ら魔術士は、戦う騎士を助ける事しか出来ませぬ」
「そんな…」
(魔法じゃ魔族には勝てないんだ……)
レイリアは今まで、剣士より圧倒的に数が少ない魔術士の方が、希少価値が高くて偉いのだと思い込んでいた。
だが、魔法では勝てない敵がいるという事実にレイリアは衝撃を受け、彼女の中で魔法、そして、魔術士というものの価値が一気に低くなった。
更に魔族と直接戦い剣を振るう騎士達の雄姿は、何とも格好良い。
特に父へと軽口を叩いていたあの黒髪の剣士は、子供のレイリアから見ても、他の誰よりも剣の扱いに卓越しているように見える。
何故なら、他の者が攻撃を避けることを重点とし、途中やっと一撃を与えている状況の中で、黒髪の剣士だけは巧みに攻撃をかわしつつ何度も魔族へと斬りかかっているのだ。
(あの方凄いわ!)
いつの間にかレイリアは、手に汗を握りしめながら、ひたすらその黒髪の剣士を目で追っていた。
魔族が放った魔法を魔導士が防ぐと、それを見越すかのように飛び込んでいった黒髪の剣士が素早く斬りかかる。
続いて、魔族の体より繰り出される意思を持った蔓つたの様な物も易々と斬り捨て、更にその体へと斬り付ける。
しかし、何度も斬り付けられているはずの魔族の体には全く傷跡が見つからず、斬り落とされたはずの腕が何故か存在している。
「ヴィモット先生」
疑問を放置出来ないレイリアは、仕方なく再びヴィモットへと質問を投げかける事にした。
「どうして魔族は、剣で斬られても平気なの?」
「平気では無い様に思われますが?」
血も流れておらず、その身に傷一つ無いあの状態のどこが平気なのだろう?
「だって、血も出てないし…」
「魔族に血など流れておりません」
「えっ!?」
見た目が少々人に似ているため、当然体の造りも似ているかと思いきや、そうではないらしい。
「魔族はその身に命の塊のようなものが存在しており、我らはそれを色に因んで『アーブレ・ロウス』、つまりは『紫の命』と呼んでおります。故に、その身に宿る『アーブレ・ロウス』を全てを消し去らなければ、滅びることはありませぬ」
(言っている意味が全然分からない…)
眉をひそめ、疑問符だらけの顔を向けるレイリアに、ヴィモットは咳払いを一つすると、以前行っていた魔術の講義のように説明を始めた。
「そもそも我らと魔族は似て非なるもの。我らのように心臓を持ち、血を流す生き物ではありませぬ。我らが知るは、魔法がほぼ効かぬ事。『アーブレ・ロウス』が尽きるまで、その身を何度傷つけられようとも再生される事。そして、破邪の剣によってのみ、『アーブレ・ロウス』は削られていくという事。これのみでございます」
「つまり魔族を倒すには、破邪の剣で魔族が持っている『アーブレ・ロウス』っていうのを壊さなきゃダメっていう事?」
「左様さようでございます。低位の魔族であれば、一閃を以って『アーブレ・ロウス』を破壊することが可能でございますが、あれは恐らく高位の魔族。『アーブレ・ロウス』を幾いくつも宿しているかと。そうなると、かなり面倒な相手ですな」
「ふ~ん。魔族の世界にも、偉いとか偉くないとかがあるんだ」
低位、高位という言葉から、レイリアは自分たちの世界に存在する身分社会を思い浮かべた。
「魔族の世界に、身分の上下というものがあるかどうかは分かりませぬ。ただ我ら人側がその存在を力の大小で分け、勝手にそう呼んでいるだけです」
「そうなんだ」
正直、今まで受けたヴィモットによる魔術の講義より、今聞かされる魔族についての話の方がよっぽど興味深い。
魔術の師に普段は抱かぬ畏敬の念を込め、レイリアは言った。
「ヴィモット先生って、色んな事を知っていらっしゃるのね!」
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