38 / 62
少年と少女 それぞれの理由
少年の怒り4
しおりを挟む
普通ならばバカバカし過ぎて破いて捨てる内容なのだが、どうにも引っかかる部分があった。
『上手くいけば、レイリアが追い求める物を捧げる事が出来るだろう』
レイリアがずっと追い求めている物と言えば…。
(石板しか無いけれど、そう簡単に手に入る物では無いし…)
そう思ったレイリアだったのだが、そこでふと、以前交わしたヴィモットとの会話を思い出した。
(先生は確か、ガトーレで発掘された石板が、リシュラスに運ばれる途中で盗まれたとおっしゃっていたはず…)
そしてレイリアは、まさかの事態を想定する。
(もしかしてアトスは、ガトーレで盗まれた石板を取り戻す気じゃ?)
手紙に書かれていた悪党に正義の鉄槌を下すやら、レイリアが追い求めている物を捧げるやらという文言からして、どうにもそんな予感がする。
盗まれた石板をまだ軍は見つけ出せていないらしいが、ファルムエイド家の力を使えば、裏からいくらでも探しようがあるだろう。
そして、アトスがその石板を取り戻し、更には盗んだ者達をも一網打尽にしたとなれば、社交界でのアトスの評判は、家柄や見た目も合わさり最高のものとなるだろう。
そうなってしまえば、いかにレイリアがアトスを拒否しても、実力・能力主義を掲げる我がゼピス家の思想の下では、アトスとの婚約が認められてしまいかねない。
(まずいわね…)
どうにかしてアトスの目論見を潰さなければと考えていたところに、ウィリスの冷ややかな声がした。
「レイリア。まさかとは思うけれど、このアトスの招待を受けるつもりは無いよね?」
「いいえ。受けるわ」
躊躇無く答えたレイリアに、ウィリスの切れ長の目が見開いた。
「はぁ!?何考えてるんだよっ!?」
非難の声を上げるウィリスに、思わずレイリアは声を荒げて返した。
「仕方がないでしょ!?行かなきゃいけない理由が出来たんだから!」
「何だよ、その理由って!?」
「アトスの野望を打ち砕くためよ!」
「意味わかんないよ…」
頭を抱えるウィリスを前に、レイリアは自分の推測を話した。
但し、何故アトスが石板をレイリアに贈ろうとしているかの説明については、レイリアが本当は魔族を調べる為に石板を探しているという事実を隠し、石板の封印を解いて破邪の剣を手に入れる為との嘘を付いた。
レイリアがウィリスに魔族の存在を明かせないのには、れっきとした理由があった。
ルタルニアを含めた大陸各国は、魔族の存在を公にすれば人々に混乱をもたらすとし、魔族の情報を機密事項扱いとしていた。
そのため、魔族の存在を知る者はその存在を無闇に明かすことが出来ず、もし明かせば法により罰せられるのだ。
取り敢えず最後までレイリアの話を聞いていたウィリスが、難しい顔をして聞いてきた。
「それって、あくまでもレイリアの予想だよね?」
「そうよ。でも状況的にはあり得ない話では無いと思うの」
「そうだけれどさ…」
「だから、アトスが何をしようとしているかを確かめに行きたいの」
「うーん」
腕を組みながら唸るウィリスに、レイリアは話続けた。
「行ってみて、もし私の予想通りならそれこそ守備隊に知らせるべきだし、違うのならそれはそれで問題ないでしょ?そういう訳だから、アトスの招待を受けようと思うの」
行かせたくないウィリスからすれば、どっちにしても問題があるだろうと言いたいが、レイリア本人が行くと言っている以上、止める事は難しい。納得出来ない部分は大いに有るが、ウィリスはレイリアを引き止める事を諦めた。
「分かった。もう止めない」
ため息混じりに了承したウィリスにレイリアは顔をパッと明るくしたが、続くウィリスの言葉に目を丸くした。
「だけど、レイリアを一人でアトスの所へ行かせるなんて流石に心配だから、僕も付いて行く」
「えっ!?」
そのレイリアの反応に、すかさずウィリスがレイリア落としの会心の一撃を放つ。
「駄目かな?」
小首を傾げてしょんぼりと眉尻を下げる可愛らしいウィリスは、まるで捨てられた仔犬のように憐憫を誘い、レイリアの心を打ち震わせた。
「ううん!全然駄目じゃないわ!だから安心して一緒に行きましょう!」
ポニーテールを振り乱すほど首を振り、それからにっこりと微笑みながら少しズレた了承の言葉を口にしたレイリアに、ウィリスは内心黒い笑みを浮かべていた。
『上手くいけば、レイリアが追い求める物を捧げる事が出来るだろう』
レイリアがずっと追い求めている物と言えば…。
(石板しか無いけれど、そう簡単に手に入る物では無いし…)
そう思ったレイリアだったのだが、そこでふと、以前交わしたヴィモットとの会話を思い出した。
(先生は確か、ガトーレで発掘された石板が、リシュラスに運ばれる途中で盗まれたとおっしゃっていたはず…)
そしてレイリアは、まさかの事態を想定する。
(もしかしてアトスは、ガトーレで盗まれた石板を取り戻す気じゃ?)
手紙に書かれていた悪党に正義の鉄槌を下すやら、レイリアが追い求めている物を捧げるやらという文言からして、どうにもそんな予感がする。
盗まれた石板をまだ軍は見つけ出せていないらしいが、ファルムエイド家の力を使えば、裏からいくらでも探しようがあるだろう。
そして、アトスがその石板を取り戻し、更には盗んだ者達をも一網打尽にしたとなれば、社交界でのアトスの評判は、家柄や見た目も合わさり最高のものとなるだろう。
そうなってしまえば、いかにレイリアがアトスを拒否しても、実力・能力主義を掲げる我がゼピス家の思想の下では、アトスとの婚約が認められてしまいかねない。
(まずいわね…)
どうにかしてアトスの目論見を潰さなければと考えていたところに、ウィリスの冷ややかな声がした。
「レイリア。まさかとは思うけれど、このアトスの招待を受けるつもりは無いよね?」
「いいえ。受けるわ」
躊躇無く答えたレイリアに、ウィリスの切れ長の目が見開いた。
「はぁ!?何考えてるんだよっ!?」
非難の声を上げるウィリスに、思わずレイリアは声を荒げて返した。
「仕方がないでしょ!?行かなきゃいけない理由が出来たんだから!」
「何だよ、その理由って!?」
「アトスの野望を打ち砕くためよ!」
「意味わかんないよ…」
頭を抱えるウィリスを前に、レイリアは自分の推測を話した。
但し、何故アトスが石板をレイリアに贈ろうとしているかの説明については、レイリアが本当は魔族を調べる為に石板を探しているという事実を隠し、石板の封印を解いて破邪の剣を手に入れる為との嘘を付いた。
レイリアがウィリスに魔族の存在を明かせないのには、れっきとした理由があった。
ルタルニアを含めた大陸各国は、魔族の存在を公にすれば人々に混乱をもたらすとし、魔族の情報を機密事項扱いとしていた。
そのため、魔族の存在を知る者はその存在を無闇に明かすことが出来ず、もし明かせば法により罰せられるのだ。
取り敢えず最後までレイリアの話を聞いていたウィリスが、難しい顔をして聞いてきた。
「それって、あくまでもレイリアの予想だよね?」
「そうよ。でも状況的にはあり得ない話では無いと思うの」
「そうだけれどさ…」
「だから、アトスが何をしようとしているかを確かめに行きたいの」
「うーん」
腕を組みながら唸るウィリスに、レイリアは話続けた。
「行ってみて、もし私の予想通りならそれこそ守備隊に知らせるべきだし、違うのならそれはそれで問題ないでしょ?そういう訳だから、アトスの招待を受けようと思うの」
行かせたくないウィリスからすれば、どっちにしても問題があるだろうと言いたいが、レイリア本人が行くと言っている以上、止める事は難しい。納得出来ない部分は大いに有るが、ウィリスはレイリアを引き止める事を諦めた。
「分かった。もう止めない」
ため息混じりに了承したウィリスにレイリアは顔をパッと明るくしたが、続くウィリスの言葉に目を丸くした。
「だけど、レイリアを一人でアトスの所へ行かせるなんて流石に心配だから、僕も付いて行く」
「えっ!?」
そのレイリアの反応に、すかさずウィリスがレイリア落としの会心の一撃を放つ。
「駄目かな?」
小首を傾げてしょんぼりと眉尻を下げる可愛らしいウィリスは、まるで捨てられた仔犬のように憐憫を誘い、レイリアの心を打ち震わせた。
「ううん!全然駄目じゃないわ!だから安心して一緒に行きましょう!」
ポニーテールを振り乱すほど首を振り、それからにっこりと微笑みながら少しズレた了承の言葉を口にしたレイリアに、ウィリスは内心黒い笑みを浮かべていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる