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少年と少女 それぞれの理由
少年の怒り15
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床に伏したレイリアの姿を、見開いた漆黒の瞳に呆然と映し込んでいたウィリスがハッとして我に帰る。
「レイリア!!」
目の前でうつ伏せに倒れた少女の名を叫び、ウィリスがその体の傍らにしゃがみ込む。
「レイリア!レイリア!レイリアッ!!」
何度も少女を呼び、その背を揺らすも、少女は何の反応も返さない。
腹部を血で濡らした少女が伏せているという目の前の光景が姉の最期の姿と重り、ウィリスは最悪の結末しか思い浮かべられずその声を震わせた。
「嘘だろ、レイリア…。そんな…、嘘だ…」
認めたくない現実に、ウィリスの体が戦慄く。
「約束したのに…。ずっと、そばに居てくれるって…。一人にしないって…」
少女の体に縋り、嗚咽混じりに紡がれるのは、ウィリスが今を生きている理由。
「なのに、何で…。どうして…。何でレイリアまで!」
大切な人を、また失った。
目の前でまた、失った。
でも今回は以前と違い、生きる意味さえも失った。
大き過ぎる喪失感に襲われ、ウィリスは自分が死のうが生きようが、もうどうでも良いとさえ思えてきた。
だがその一方で、自分から生きる支えを奪った者達への怒りが沸々と湧き出した。
そして、怒りと共にどす黒い何かが身体を、心を覆い尽くしていく。
許さない…。
許さない!
レイリアを奪った奴も、その原因を作った奴も、全員、絶対許さない!
今や憤怒で塗り固められたウィリスの口から、不穏極まりない言葉が溢れ出る。
「殺してやる…。全員まとめて、殺してやる!」
そう呟いた時には、少女のそばに落ちていた剣に手が伸びていた。
ウィリスは剣を握るとすっくと立ち上がり、剣を左右にブンブンと何度か振り回した。
久しぶりに手にした剣だが、特に違和感を感じない。
むしろ、手の内にある剣という存在は、己の一部かの如く深く馴染んでいた。
(これなら戦える)
握った剣に目を落としながら、自分に対してそう断じたウィリスの耳に、不快な男の声が聞こえて来た。
「魔術士の方はやったのか!?」
声の主へとウィリスが憎悪を宿した瞳を向ければ、そこにはレイリアの魔法で壁に叩きつけられていた青髪の男が立っていた。
(まず一人目)
迷い無く青髪の男へとウィリスが駆ける。
ウィリスの手に剣がある事に気が付いた青髪の男が、一瞬驚いた顔をしたものの、直ぐに引き締めた表情となり、剣を構えた。
そこへ、ウィリスが下段から男の剣を跳ね上げるようにぶつかって行った。
キン、という短い金属音が響く。
ウィリスの攻撃を受け止めた青髪の男が、上から押し潰すかの様に剣へと力を込める。
十三才にしては小柄なウィリスでは、当然大人の男との力比べで敵うわけが無い。
このまま青髪の男がウィリスに押し勝つのかと思われた時、不意にウィリスが力を抜いた。
その瞬間、男がバランスを崩すと、ウィリスは素早く身体を横へと移しながら、剣を下へと滑らせるように動かし、そのまま男の腹部を斬り抜いた。
そして男の背後へ出ると、振り返りざまに背中へも斬りつけた。
男が獣の咆哮にも似た叫び声を上げながら崩れ落ちる。
それを目に入れたウィリスが、とどめとばかりに男の首へと狙いを定めて剣を振り上げた時だった。
「フィラ!」
目の前の男とは別の男の声と共に、横から顔ほどの大きさの火球がウィリスへと向かって来た。
ウィリスは直ぐに身体を回転させると、青髪の男を盾にして火球を避けた。
火球が悶絶している青髪の男を襲い、男の体をその火で包む。
「ぐぁぁぁ!」
切創の上に熱傷まで負う事になった男は絶叫を上げると、その手から剣を落とし、床へと転がった。
「た、助けて、くれぇ…」
体を燃やす男が、つい先程まで剣を向けていたウィリスへと手を伸ばす。
だがウィリスはその姿を冷めた目で一瞥すると、男から少し離れたところに落ちていた剣を拾い上げた。
「頼むから、助けて、くれ…」
悲愴感を漂わせた男の声が、縋る様にウィリスの耳に纏わりつくも、その声は、ウィリスをただ苛立たせただけだった。
「お前も剣士なら、剣を向けた相手に助けを求めるなんて情けない真似をせず、潔くそこで死ねっ!」
鋭い眼光と共に放たれたウィリスの言葉に、男の顔が絶望に覆われた。
その男の顔に小さな愉悦を抱いたウィリスは、炎に包まれる男を無視し、火球魔法を放ったであろう相手へと視線を投げた。
そこには、あの赤髪眼鏡の男がぐったりとした様子で木箱の壁に寄り掛かっており、その手には次の魔法を放とうと、白い魔力玉を形作っていた。
ウィリスは赤髪の男をきっと睨み付けると、両手に剣を携え走り出した。
赤髪の男の手の中の魔力玉が、白から赤へと色が変わり始める。
「させるか!」
火属性の魔法が使われる前兆を見て取ったウィリスが、右手に持っていた剣を赤髪の男へ向けて投擲した。
ウィリスの投げた剣が真っ直ぐに男へと向かったため、男は呪文を詠唱する事も出来ずに魔力玉を霧散させて逃げるしかなかった。
よろよろとよろめきながらも投げつけられた剣を避けた男の前に、黒い影が過る。
男が影の主へと目を向ければ、漆黒の瞳に憎悪と憤怒の炎を燃えたぎらせた少年がすぐ目の前におり、男へ向けて剣を振り上げていた。
斬られる、と男が思った瞬間だった。
「ドーン!」
という爆音と共に床がわずかに揺れると、入口付近から人の声や何かが壊されるような音が幾重にも聞こえて来た。
この状況に少年の動きが一瞬止まった事を見逃さなかった男が、少年へと背を向け逃げ出そうとした。
だがその途端、
「逃すか!」
という少年の声の後、赤髪の男の背中を激痛が走る。
「うあぁっ!」
あまりの痛みに声が漏れる中、それでもその場から逃げたい一心で足を前へと進めようとするが、更に背中を斬られ、男はとうとう歩みを止めざるを得なかった。
床へとへたり込んだ男が少年を見上げる。
「頼む、助けてくれ!」
顔を歪ませ助命を乞う男へと、ウィリスが剣の切っ先を向けた。
「レイリアを奪ったお前に生きる価値なんて無い!お前はここで死ねっ!」
ウィリスがそう叫んで剣を振り上げた時だった。
「止めなさい!ウィリス!」
聞き覚えのある若い女性の甲高い声が耳に届いたが、ウィリスはその声を無視して剣を振り下ろそうとした。
するとそこへ、慌てた様な男の声が響いた。
「リーフェル!」
呪文の詠唱と同時に、ウィリスの体を青い光が包む。
(何だ!?)
ウィリスがそう思った瞬間、体から一気に力が抜けていき、そしてウィリスは直ぐに意識までも失った。
「レイリア!!」
目の前でうつ伏せに倒れた少女の名を叫び、ウィリスがその体の傍らにしゃがみ込む。
「レイリア!レイリア!レイリアッ!!」
何度も少女を呼び、その背を揺らすも、少女は何の反応も返さない。
腹部を血で濡らした少女が伏せているという目の前の光景が姉の最期の姿と重り、ウィリスは最悪の結末しか思い浮かべられずその声を震わせた。
「嘘だろ、レイリア…。そんな…、嘘だ…」
認めたくない現実に、ウィリスの体が戦慄く。
「約束したのに…。ずっと、そばに居てくれるって…。一人にしないって…」
少女の体に縋り、嗚咽混じりに紡がれるのは、ウィリスが今を生きている理由。
「なのに、何で…。どうして…。何でレイリアまで!」
大切な人を、また失った。
目の前でまた、失った。
でも今回は以前と違い、生きる意味さえも失った。
大き過ぎる喪失感に襲われ、ウィリスは自分が死のうが生きようが、もうどうでも良いとさえ思えてきた。
だがその一方で、自分から生きる支えを奪った者達への怒りが沸々と湧き出した。
そして、怒りと共にどす黒い何かが身体を、心を覆い尽くしていく。
許さない…。
許さない!
レイリアを奪った奴も、その原因を作った奴も、全員、絶対許さない!
今や憤怒で塗り固められたウィリスの口から、不穏極まりない言葉が溢れ出る。
「殺してやる…。全員まとめて、殺してやる!」
そう呟いた時には、少女のそばに落ちていた剣に手が伸びていた。
ウィリスは剣を握るとすっくと立ち上がり、剣を左右にブンブンと何度か振り回した。
久しぶりに手にした剣だが、特に違和感を感じない。
むしろ、手の内にある剣という存在は、己の一部かの如く深く馴染んでいた。
(これなら戦える)
握った剣に目を落としながら、自分に対してそう断じたウィリスの耳に、不快な男の声が聞こえて来た。
「魔術士の方はやったのか!?」
声の主へとウィリスが憎悪を宿した瞳を向ければ、そこにはレイリアの魔法で壁に叩きつけられていた青髪の男が立っていた。
(まず一人目)
迷い無く青髪の男へとウィリスが駆ける。
ウィリスの手に剣がある事に気が付いた青髪の男が、一瞬驚いた顔をしたものの、直ぐに引き締めた表情となり、剣を構えた。
そこへ、ウィリスが下段から男の剣を跳ね上げるようにぶつかって行った。
キン、という短い金属音が響く。
ウィリスの攻撃を受け止めた青髪の男が、上から押し潰すかの様に剣へと力を込める。
十三才にしては小柄なウィリスでは、当然大人の男との力比べで敵うわけが無い。
このまま青髪の男がウィリスに押し勝つのかと思われた時、不意にウィリスが力を抜いた。
その瞬間、男がバランスを崩すと、ウィリスは素早く身体を横へと移しながら、剣を下へと滑らせるように動かし、そのまま男の腹部を斬り抜いた。
そして男の背後へ出ると、振り返りざまに背中へも斬りつけた。
男が獣の咆哮にも似た叫び声を上げながら崩れ落ちる。
それを目に入れたウィリスが、とどめとばかりに男の首へと狙いを定めて剣を振り上げた時だった。
「フィラ!」
目の前の男とは別の男の声と共に、横から顔ほどの大きさの火球がウィリスへと向かって来た。
ウィリスは直ぐに身体を回転させると、青髪の男を盾にして火球を避けた。
火球が悶絶している青髪の男を襲い、男の体をその火で包む。
「ぐぁぁぁ!」
切創の上に熱傷まで負う事になった男は絶叫を上げると、その手から剣を落とし、床へと転がった。
「た、助けて、くれぇ…」
体を燃やす男が、つい先程まで剣を向けていたウィリスへと手を伸ばす。
だがウィリスはその姿を冷めた目で一瞥すると、男から少し離れたところに落ちていた剣を拾い上げた。
「頼むから、助けて、くれ…」
悲愴感を漂わせた男の声が、縋る様にウィリスの耳に纏わりつくも、その声は、ウィリスをただ苛立たせただけだった。
「お前も剣士なら、剣を向けた相手に助けを求めるなんて情けない真似をせず、潔くそこで死ねっ!」
鋭い眼光と共に放たれたウィリスの言葉に、男の顔が絶望に覆われた。
その男の顔に小さな愉悦を抱いたウィリスは、炎に包まれる男を無視し、火球魔法を放ったであろう相手へと視線を投げた。
そこには、あの赤髪眼鏡の男がぐったりとした様子で木箱の壁に寄り掛かっており、その手には次の魔法を放とうと、白い魔力玉を形作っていた。
ウィリスは赤髪の男をきっと睨み付けると、両手に剣を携え走り出した。
赤髪の男の手の中の魔力玉が、白から赤へと色が変わり始める。
「させるか!」
火属性の魔法が使われる前兆を見て取ったウィリスが、右手に持っていた剣を赤髪の男へ向けて投擲した。
ウィリスの投げた剣が真っ直ぐに男へと向かったため、男は呪文を詠唱する事も出来ずに魔力玉を霧散させて逃げるしかなかった。
よろよろとよろめきながらも投げつけられた剣を避けた男の前に、黒い影が過る。
男が影の主へと目を向ければ、漆黒の瞳に憎悪と憤怒の炎を燃えたぎらせた少年がすぐ目の前におり、男へ向けて剣を振り上げていた。
斬られる、と男が思った瞬間だった。
「ドーン!」
という爆音と共に床がわずかに揺れると、入口付近から人の声や何かが壊されるような音が幾重にも聞こえて来た。
この状況に少年の動きが一瞬止まった事を見逃さなかった男が、少年へと背を向け逃げ出そうとした。
だがその途端、
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床へとへたり込んだ男が少年を見上げる。
「頼む、助けてくれ!」
顔を歪ませ助命を乞う男へと、ウィリスが剣の切っ先を向けた。
「レイリアを奪ったお前に生きる価値なんて無い!お前はここで死ねっ!」
ウィリスがそう叫んで剣を振り上げた時だった。
「止めなさい!ウィリス!」
聞き覚えのある若い女性の甲高い声が耳に届いたが、ウィリスはその声を無視して剣を振り下ろそうとした。
するとそこへ、慌てた様な男の声が響いた。
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