【完結】うーむ……。ワシの弟子が天才過ぎて困る

チョロケロ

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第二話 弟子のボケにツッコんでやるのも、師匠の務めじゃ

 マーガルは本当に素晴らしい薬を作りおった。
 この薬は、全世界に広めるべきじゃ。
 そうすれば、救われる者がたくさんいる!
 ワシは早速マーガルに、この薬は量産出来るのか確認した。
 じゃが、マーガルはふるふると首を横に振った。
 どうやらこの薬は、入手困難な材料をたくさん使うらしい。
 マーガルも集めるのに数年のときを費やしたそうじゃ。
 世界一の大魔法使いのマーガルがそれほど苦労したのなら、一般人では到底材料を集められないじゃろう。

 残念じゃが、量産するのは諦めるしかないの。
 それよりも、そんな貴重な薬をワシなんかに使ってくれたことに感謝せねば。
 ワシはマーガルの頭をよしよしと撫でてから、優しく微笑んだ。

「そうか……。ならば良い。それより本当にありがとうのぉ。なにかお礼をしなければ気が済まん。マーガルよ、欲しいものはあるか?」

 国宝級の魔導書。
 幻の龍のヒゲから作った杖。
 過去を映し出す水晶など、ワシは今まで集めたコレクションを思い浮かべていた。
 マーガルになら、その全てをやっても良い。
 それほどのことをしてもらったからの。

 じゃが、マーガルは予想外の答えを口にした。

「では、お師匠さまのヴァージンをください」
「……?」

 ヴァージン?
 処女のことか? なにを言っとるの? ワシは男じゃよ? アホなことを言うなと怒鳴りそうになったが、少しだけ考える。
 ……いや、待てよ。
 もしかしてこれは、マーガルなりのジョークなんじゃないか? なぜこんなときにジョークを言うのか謎じゃが、マーガルは天才じゃからの。天才は、ときに不思議なことを言って周囲を呆然とさせるものなのじゃ。
 ならば師匠として、しっかりツッコんでやらねば。
 ワシはお笑い芸人のようにマーガルの胸をペシーンと叩いた。

「ワシは男じゃ! 男にヴァージンもクソもあるかーい」

 ワシの渾身のツッコミに対し、マーガルは真面目に返した。

「いいえ。男にもヴァージンはあります。アナルセックスの経験がない男のことを、ヴァージンと言うのです」
「……」

 ……え?
 な、なに大真面目に言ってるのこの子……?
 アナルセックスとかヴァージンとか、普通この空気で言う……?
 ちょっと疲れているんじゃろうか……?
 秘薬作りに相当苦労したようじゃしの。
 ワシはだんだん心配になってきて、マーガルのおでこに手をやり熱がないか確認した。
 大丈夫。平熱じゃな。
 ホッと一安心してから、熟考する。

 うーむ……。
 やっぱりこれは、マーガルなりのジョークなのじゃろう。
 全然面白くないが、マーガルは昔からちょっと変わった子じゃったからの。
 ここは一つ、大爆笑したフリをしてやるか。
 笑ってやれば気が済むじゃろう。
 そう結論づけて、ワシは腹を抱えてガハハと笑った。

「ふぉっふぉっふぉっ。マーガルは面白いのぉ!」
「別に笑わせているわけではありません」

 まだボケるか!?
 ツッコんでも笑ってもボケ続けるその精神……さすがは世界一の大魔法使いじゃのう。

「分かった分かった。――ところで腹は減っとらんか?」
「誤魔化さないでください。私は本気です」
「はいはい。じゃあ、久しぶりにワシがオムライスを作ってやろうか?」

 ボケに対応するのが面倒になったワシは、適当に流して食事の話に切り替えた。
 すると、マーガルの目の色が変わる。

「お師匠さまのオムライス……」

 マーガルは子供の頃、ワシの作ったオムライスが大好物だったのじゃ。
 作ると小躍りして喜んでいた幼きマーガルを思い出し、微笑ましい気持ちになる。
 
「お前は卵をたっぷり使ったオムライスが好きじゃったのぉ」

 ワシが作ったオムライスの味を思い出しているのか、マーガルの目がキラキラと輝き出した。
 それからゴクンと喉を鳴らし、大きな声で叫んだ。

「食べます! お師匠さまのオムライス、もう一度食べたいです!」
「よし! 良い子じゃ!」

 オムライスでマーガルの気が逸れたことにホッとしたワシは、張り切って台所に向かったのじゃった。
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