【完結】私を食べて

チョロケロ

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後編

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 それから私は鬼さん……いいえ、カクツと暮らし始めた。美味しく食べてもらいたかった私は、カクツが出してくれる料理をモリモリ食べた。食べるだけじゃ上質な肉は育たないと思い、お外でたくさん遊んで運動もした。それとカクツはなぜか、私のお勉強まで見てくれた。賢い方が美味しいお肉になるのかしら? 真意は分からないけど、カクツがそうしたいならそれで良いと思い、お勉強に運動に食事と、私は全てに手を抜かなかった。
 結果、六年の月日が経過して私は十八歳となった。
 姿見鏡で自分の姿を見ながら、私は一人つぶやく。

「私、そろそろ食べ頃じゃない?」

 十二歳だった頃に比べてだいぶ背が伸びた。これなら体の大きなカクツでも、お腹いっぱい食べられるんじゃないかしら?
 よし。そろそろカクツに食べてもらいましょう。
 私はウキウキと自室を出て、お風呂場に向かった。
 食べてもらうからには体を綺麗にしておくべきだと思ったのだ。髪と体を念入りに洗い、バスタオルを一枚巻いてお風呂場を出た。

 今は夜の九時。カクツは寝室で寝ていると思うので、そこに向かう。
 ノックも無しに部屋に入ると、ベッドでくうくう寝息を立てているカクツの上に馬乗りになった。
 私の重みにびっくりしたカクツが、『なんだ?』と寝ぼけた声を出しながら目を開けた。
 私はニッコリ微笑み、巻いていたバスタオルを床に放り投げた。
 
「カクツ。私を食べて」

 カクツはなぜかほんのり頬を染め、気まずそうに私から目を逸らした。

「な、何言ってんだお前は。退け!」
「やだ。私もう十八歳だよ? そろそろ食べ頃だと思うの」
「ば……! 馬鹿なこと言うな!」

 なにが馬鹿なことなんだろう?
 よく分からないけど、カクツに早く食べてもらいたい。食べられたところを想像しただけで、お股がきゅうきゅうする。
 そこ触ると凄く気持ち良いんだよね。でも、こんな時に触ったらカクツに呆れられちゃうような気がした。
 私は触りたい欲求をなんとか抑えて、モジモジ腰を揺らしながら、もう一度懇願した。

「カクツ。私を食べて」
「……っ」

 カクツはガバリと起き上がり、私の体をベッドに押さえ付けた。
 今度はさっきと体勢が逆だ。
 カクツが上で、私が下。
 カクツは着ていたスウェットを勢いよく脱ぎ捨てた。
 逞しい上半身があらわになり、胸がドキドキする。
 きっと、食べたときに私から血が噴き出るだろうから服を脱いだのだろう。

「クソったれ! お前が誘ったんだからな! 俺は我慢してたのに!」

 食べてくれる気になったのか、カクツが私の胸を大きな手のひらで揉み始めた。
 私のお肉を柔らかくしようとしてるんだわ。

――どうぞカクツ、召し上がれ。

 骨まで残さず食べてね。

※※※※

 次の日の朝、私は生きたまま目を覚ました。
 隣を見ると、カクツが私の腰に腕を巻き付けながらくうくう寝息を立てている。
 あれ? なんで私生きているのかしら? 不思議に思いながら、カクツの胸を叩く。

「カクツ。起きて」

 カクツは『なんだよぉ』と寝ぼけた声を上げながら、うっすらと目を開けた。

「カクツ。私まだ生きてるよ? 食べてくれなかったの?」
「んあ? 食ったわ」
「食べてない」
「?」
「頭も胴体も手足も残ってるわ。残さず綺麗に食べてくれなきゃ嫌」
「……は?」

 カクツは起き上がり、胡座あぐらをかいてベッドに座り込んだ。

「なに言ってるんだ? お前……」
「私のお肉美味しいと思うよ。ご飯いっぱい食べたし、運動もたくさんしたから」

 私の言葉に、カクツがプッと噴き出した。
 お腹を抱えて大笑いをしている。
 
「あはは! 『食べる』ってそう言う意味の『食べる』だったのかよ!」
「?」

 カクツは笑い過ぎて、目に涙を溜めていた。その涙を指先で拭いながら話を続ける。

「馬鹿だなぁ、ミレイユは。女が全裸で『私を食べて』なんて言ったら、男は別の意味にとらえるんだよ!」
「別? どういう意味?」

 私は意味が分からずコテンと首を傾げた。だが、カクツはそれ以上説明してくれない。
 
「アホだなぁ、お前は。それより昨日の夜は痛くなかったか? 初めてだったろ?」
「痛くなかった。気持ち良くてこのまま死んじゃいたいと思った」

 カクツは私の言葉にニヤニヤと満足げな笑みを浮かべた。

「ミレイユのくせに男冥利おとこみょうりに尽きること言うじゃん」

 男冥利? もうっ。
 さっきからカクツの言ってること分からない!
 私はプンプン頰を膨らませながら、カクツの肩をゆすった。
 
「それよりカクツ。私を食べて」
「また食うよ。だけど、お前が言ってる『食べる』とは、別の意味だけどな」
「?」
 
 カクツはチュッとキスをすると、私の体をベッドに押さえつけた。
 
「しっかり喘げよミレイユ。その方が興奮するからな」
「え?」
「ふふ……、アホなお前に一つだけ教えといてやる。鬼は人を食わない」
「!?」

 衝撃事実にびっくりしていたら、下半身をなにか太いものが貫いた。

「あんっ」
 
 昨夜と同じだ。これを入れられると、体がおかしくなってしまう。

「やあ……っ」
「やあ……じゃねーだろ。股びっしょり濡らしてなに言ってやがる」

 そんなこと言ったってしょうがないじゃない。
 抗議するために睨もうとしたが、カクツが腰を揺らし始めたので、私は気持ち良くて頭が真っ白になってしまった。

 カクツに揺さぶられながら朦朧もうろうとしていたら、もう一度チュッと口付けられた。
 それからカクツの唇が耳元に移動し、ゾクゾクする声でポツリとなにかを囁かれた。

「愛してるぜミレイユ。お前はもう、俺のものだ」

 その瞬間、私は変な声を上げながら、ビクビクと体を震わせたのだった。
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