女王候補になりまして

くじら

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脱・引きこもり姫

生還

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「ん…………んん…………」

 ぼやけた視界の中、明るい日差しが私の目に入り込む。

「まぶし…………」

 目をゴシゴシふいて視界をはっきりさせる。
 そして、ベッドに寝たまま背伸びをした。

「ん~っ、ふわぁあ………」

 私は起き上がり、すぐ横を見やると、口をあんぐり開けたレイアがいた。

「あ………あ……………あああ……………」

 レイアは声を震わせながら私を見る。

「えっと…………レイア?おはよう………?」

「エマ様!!!!!!」

「わぁ!!!レイア!?」

 レイアが急に抱きついてきて、わんわん泣き出した。

「ちょ、レイア!?どうかしたの?」

「どうかしたのじゃありません!一体………どれほどの期間寝込んでいたとお思いですか!!どれほど…………どれほど心配したことか…………!!すぐにお医者様を呼んできます。そこで安静にしていて下さいね!」

 バタバタと走り出したレイアに私はぽかんとする。
 どれほどの期間寝ていた……?この世界にカレンダーというものはないが、そんなに長く寝ていたのか。

 ベッドから降りると、額に僅かな痛みが走る。

「いてっ」

 そういえば、シーティアラを捕まえた時、前からナイフが飛んできて間一髪避けたんだった………。

 もしあの時避けられていなければ、私の顔面は大変なことになっていたかもしれない。

 (本当、小さな切り傷で良かった………ご令嬢の顔に傷がついたら、女王になれなかったとき嫁の貰い手がいなくなっちゃうし)

 鏡を見ると、額には丁寧にガーゼが貼られている。若干血が滲んで赤みがかっていた。

「んー………この様子だと、傷はつかないかな。良かった」

 ほっと一息ついて、安心した瞬間───

「エマあああああああああああ!!!!!」

 叫びながらバーンと私の部屋の扉を思いっきり開けて入ってきたアルビー様に私は目を見開いた。

「あ、アルビー様!?一体何故ここに………」

「何故って、お前が起きたという知らせを聞きつけて急いで来たんだ!!お前、一体どれだけこの俺を心配させたと思って………!!!」

 ガシッと肩を掴まれて、アルビー様はこちらを睨みつける。とても苦しそうに。

 掴まれた肩が少し痛い。

 それなのに、振り払わなかったのは、攻略対象だからという理由もあるが、アルビー様の手が震えていたからだ。

「………心配させて申し訳ありません。次からはなるべく気絶するほど無茶はしないようにします」

「…………なるべくなのかよ」

「将来何があるか分からないので…………」

「……………はぁ。確かにそうだな。俺が未来予知出来ていたらこんなことにもならなかっただろうに」

 そう言って落ち込むアルビー様。別に今回は私が無茶しただけであって、アルビー様に責任がある訳ではない。
 なのに、何故そんなに落ち込む必要が………?

「あの、アルビー様?今回の件は私が悪いので、アルビー様が別にお気に召すようなことは…………」

「っ、あのな!エマ、俺はお前が………───!」

「やぁ、お二人さん達」

 アルビー様の背後から聞こえた声に私はまたしても驚いた。

「ルイズ様!?」

「ルイズお前、絶対わざとだろ………」

 アルビー様はルイズ様の姿を確認するや否や顔をしかめた。
 その様子にルイズ様は顔をニコリとさせた。

「わざとだなんて心外だな。僕はエマが起きたと聞きつけてやって来たのに」

「あっ、ルイズ様も心配をお掛けして申し訳ありません」

 私は長時間寝ていたことで皆を心配させたと思い、ルイズ様にも頭を下げた。

「大丈夫だよエマ。僕は君のちょっと無茶なところも好きだから。だから君はもっとはしゃいで。そして僕をもっと楽しませて」

「は、はあ…………」

 これは期待されているのだろうか?微妙に違う気がする。いや、絶対に違う。

「でも、君が無事で良かった。ほんと、作戦が成功したと思ったら気絶して倒れちゃったからね。あ、あと額の傷は大丈夫?止血は急いでしたし、傷は残りはしないと思うけど………」

「あっ、はい!お陰様で大丈夫そうです。顔に傷が付かなくて安心しました。何か今度お詫びをさせて下さい」

「お詫び………か。ふむ」

 おや?紳士かつ優しいルイズ様ならお詫びと言ったら必要ないと言うと思ったのに。しかし、ルイズ様のお陰で助かったのは事実なので、私はそのまま考え込むルイズ様に尋ねた。

「何かありますかね………?」

「じゃあ、今度僕とデートしてよ」

「…………………………………はい?」

 何故私とデートを………?初めて会ったときに似たようなことを言われたけれど、結局一度も出来ていなかったような。

「なっ、デートって、ルイズお前………!」

「ん?どうかしたの?アルビー。エマを守ってここまで運んだのは僕のお陰だよ。言ってしまえば、君は何もしていないじゃないか。そんなアルビーに何の発言権があるの?」

「っ…………」

 黙ってしまったアルビー様。その顔は苦々しく、拳が震えるほど固く握られていた。

 (今のアルビー様にはかなりつらい言い方だったな…………)

「それじゃあエマ、もう少し一緒にいたかったけれど、公務があるから、今度また会いに行くよ。それじゃ」

 ルイズ様は流れるように私の左手を取って、手の甲にキスを落とす。

「なっ!」

「ルイズ!!」

 そして、私の顔───いや耳元に近づいて一言。

「エマ、あの日の夜の出来事は一生忘れないよ」

 ニコリと笑って、そのままルイズ様は去っていった。


「なっ、なっ、なんっ────!!」

「エマ」

 後ろにいたアルビー様に呼ばれて、慌てて振り返る。

「は、はい?」

 アルビー様の顔は見ただけで不機嫌だということが一瞬にして分かった。

「ルイズとはどういう関係なんだ」

「えっ、ただのビジネスパートナーだと思いますけど………」

「…………………………………そうか。俺ももう行く。起きたばかりなんだからしばらくは安静にしてろよ」

「は、はい。お気遣いありがとうございます………」

 珍しく真剣な顔つきでそう言われて、彼は静かに去って行った。

 (アルビー様、ルイズ様にあんなことを言われてプライドが傷ついたのかな……)

 今回の件に関しては確かにルイズ様にも感謝しているが、女王試験に協力してくれた仲間である、アルビー様にも感謝している。
 別にルイズ様だけが頼りになったとか、そういうことでは無いのだが。

 その後、レイアが医者を連れてきて、私の健康が証明された。なんと、私は一週間も寝込んでいたらしい。そりゃみんなが心配する訳だ。

 レイアが不在の間にアルビー様とルイズ様が来ていたことをレイアに伝えると、レイアの雰囲気が明らかに悪くなった。

「なぜあんな方々がのこのこエマ様に………」

 怖いことを呟いていそうだったが、何を言っていたのかまでは把握出来なかった。

 そして、私を危険な目にあわせたことについて、女王試験側から責任として、二週間の休暇を貰った。その間に試験が開かれることも無いし、街への自由なお出かけも許可された。

 レイアはそのことについて、もっと責任をとれと言っていたが、私にとっては十分だった。

 一緒に試験にいたベルジーナ様からも心配の手紙を貰った。

 私は丁寧にその手紙を返して、穏やかな日々を過ごそうと思った。

 しかし、そうはさせてくれなかった。

「エマ。あの時の約束を叶えて貰いに来たよ」

 ルイズ様のご登場である。






















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