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月見酒~静寂~

月見酒 1 *

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 雲の間から顔を覗かせた、美しい満月の光が庭を照らしていた。
 長い廊下の戸口から、庭を眺めれる事ができるこの場所は、僕のお気に入りの場所。
 あえて電気を灯さず、月明かりを楽しむ。
 静かな一人だけの時間。
 この静寂をひじりは気に入っていた。
 12歳のときから、この木造二階建ての家屋かおくに移り住んで暮らしている。
 始はお手伝いさんがいて、食事や掃除、洗濯など、家の事をしてくれていたり、家庭教師も、週に二、三回、訪れていた。
 20歳になったひじりは、一人で全てをこなしている。と、言っても、ある程度食事は定期的に運ばれてくるし、月に一度は庭の手入れをしに庭師がやって来る。
 全てと言う訳ではないが、聖は8年ほど、一人で暮らしていた。
 好きな本を読んで、小さな畑で野菜を育てて、時々知人達が訪ねてきて、廊下や庭で昼寝して、のんびりとした毎日を過ごしていた。
 ときとり風が吹き、木々の木の葉かサラサラと音を立てて、風情を楽しませてくれる。
 聖は庭先に腰を下ろして、甘めの果汁酒を小さなグラスに入れて、月を眺めながら飲んでいた。
 ぼーっと、この庭を眺めるのは日課だったが、今日は、空も月も綺麗で、台所からお酒を持ち出したのだ。
 一人で飲むのは勿体ない。
 そんなことを思っていると玄関横から庭へ入る柵が、ギーッと、音を立てて動いた。
 ジャリッと砂利を踏む音が響き、最近見慣れた男が近付いてきて、笑みが浮かぶ。
ひじり
「クロも飲む?」
 そう、笑い掛けてグラスを持ち上げる。
「…ああ。」
 男は近付いてきて、当たり前のように聖の左横に座り、聖はもう一つ用意していたグラスに果汁酒を注ぐ。
 …なんとなく用意していた。
 今までは、自分の分だけで、誰かが来ても、グラスを取りに行っていたのだが…。
 この男が出入りするようになってからは、つい、もう一つ、来るか来ないか分からない、この男の分も準備するようになってしまった。
 きっと以前の自分とは、少し変わったのだろう…。
 男にグラスを渡すと、何気なくグラスを月にかかげ、ソレを一気に飲み干し、顔をしかめる。
「…甘い…」
 その顔を見て、思わず笑ってしまう。
 男はグラスをお酒の入ったビンが置いてある、小さなテーブルの上に置き、月を見上げた。
「ここから見る月は綺麗だな…」
「周りに明かりが無いから、余計に輝いて見えるのかも…」
 聖は残りを飲み干し、グラスをテーブルに置く。
「今日は特に、空気が澄んでいて、綺麗に見える」
 そう答えると、男の手が左頬に触れ、男の方を見ると、顔が近付いて来て、唇がふさがれた。
 軽く触れただけの唇が離れると、男は聖にのし掛かって来て、身体が押し倒され、再び唇が触れてくる。
 今度は深く、舌が侵入してきて、口内をかき回され、身体が熱くなってきて、寝巻き浴衣の上から胸の突起を摘ままれ、ピクンと身体が反応する。
 布越しにね回され、硬くなって、腰に熱がまりだし、男に腰を押し付けてしまった。
「…あぁ…」
 無意識に腰を押し付けてしまい、恥ずかしくて顔が赤くなる。
 唇が離され、寝巻き浴衣の胸がはだけられ、今度は直接胸の突起に舌が触れ、硬くなった所に甘噛みされ声を上げてしまう。
 寝巻き浴衣の裾がはだけられ、男の手が下着を着けない聖の、ち上がりかけた起立をにぎり、こすり始めた。
「…はぁ…あぁ…」
 身体が熱くて、気持ち良くて、何も考えられない…。
 先端がこすられ、むずむずして、腰が揺れる。
「あっ…やっ…っ…」
 聖の身体が上を向いたとき、満月の輝く月が目に入る。
「…あぁ……」
 じっと月に見つめられている様な気がして、思わず目を背けた。
 そして、今の状況を思い出して、赤面する。
 いつ、誰が来てもおかしくない状況なのに、庭先で行為に更けるなんて…。
 男の顔を胸から引き離す。
「…月が…見てる…」
「…。部屋で続きをするか?」
 …止めれるわけか無い。
 止められても、この火照った身体を鎮められない…。
「…うん…」
 聖は男の後ろ首に回すと、軽く唇が触れ、先端部分を強く何度も擦られ、ビクンと腰が跳ねる。
「あっ…ああぁ…」
 快楽を覚え始めたばかりの聖は、あっさりと男の手の中に放ち、力が抜け、男の首後ろに捕まっていた手がほどける。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
 太股に感じる男の高ぶりに、ドキドキして、再びち上がり始めたのを感じた。
 聖が放った白濁は内股に塗られ、男に抱え上げられ、奥の部屋へと入っていった。
 ベッドの上掛けをめくり上げ、寝かせられると、男はおもむろに服を脱ぎ、体格のいい筋肉質を惜し気もなくさらし、おおかぶさってくる。
 唇が触れ、はたけられた寝巻き浴衣が、肩から引き下ろされ、色白い肌を露出させる。
「…クロ…」
 聖は男を引き寄せ、身を任せる。

 こんな風に、誰かの手を近くに感じる事になるとは思いもしなかった。
 この男の手で、まだ知らない、自分を見ることになるとは思いもしなかった。




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