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黒龍(クロ)との出会い
迎え
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黒龍の仕事が終わり、同僚に酒飲みに誘われるが、断った。
「ちょっと、ネコを拾ったから、飯を食わさないと…」
そう言って、嬉しそうに総菜屋に寄って買い物し、店から出ると、今朝の男がいた。
「…俺は聖の幼馴染みの、大輔だ。聖のもとへ案内しろ!」
「…こっちだ」
そう言って旧市街へと、入っていく。
「おい!嘘だろ。よりによってココかよ」
大輔はフードを深く被り、顔を隠す。
「何か問題でも?」
「大有りだ!急いで聖の所へ連れていけ!こんな所に一人で置いておくなんて、見つから無かっただけ、奇跡だぞ!」
「…誰かに追われていたのを、匿ったんだが…」
「旧市街に行くなって、あれほど言っていたのに…」
しばらく路地裏を歩き、部屋へたどり着き、扉を開けると、本を読む聖がいた。
「聖!」
大輔は部屋の中に駆け込み、聖を抱き締める。
「大ちゃん。迎えに着てくれたの?」
「ああ。」
「でも、もう少し待って。読み終わるから」
「…。」
そう言って、本読み始める。
黒龍は買ってきた惣菜を机に並べると、スプーンを取り出し、ご飯を乗せた。
「ほら、聖」
そう言って、ご飯を乗せたスプーンを口許に運ぶと、ぱくりと食べてモグモグと咀嚼する。
「…何やっているんだ?」
「こうしないと、飯を食わないから…」
「…。」
再びスプーンに乗せ、聖の口許に運ぶ。
「読み終わるまで、絶対に動かないぞ。早く連れて帰りたかったら、読み終わられるしかない」
「…ここが何処か分かっているのか?」
「…俺の部屋」
「…。」
大輔は顔をしかめて、目の前の光景を見て、不安を抱きながら黙るしかなかった。
食事が終わり、一時間もしない内に本を読み終えた聖は、帰りの支度を始めた。
本とノートの入った鞄を手持ち、ここへ来た時に着ていた、パーカーのフードを被り、玄関に立った。
「ちゃんと被ってろよ」
「心配症だな…」
聖は大輔を見上げる。
「お前は聖を抱えて走れるか?」
「…。抱えて歩くくらいは…。だが、走るとなると、早さにもよる。と、言うか、抱えて走らないと行けないのか?」
「状況にもよる。だから、できるだけ急いで。大通りまで足は止めるな」
「そんなにヤバい状況なのか?」
「旧市街は色々とな。聖みたいに可愛い系は、捕まったらどんな目にあわされるか…」
「…。」
それは、黒龍も心配していた事。
「取りあえず少し歩いて、大通りに向かう。人の出方を見て、最悪、聖を抱えて小納谷へ行け!」
「お前は?」
「あんたと違って場数は踏んでる。多少の時間稼ぎくらいは出来る」
「わかった」
「行くぞ!」
三人は部屋を出て、路地裏を足早に進み、しばらく行くと、後をてくる人の気配を感じた。
「…付けられている」
大輔が小声で、囁いてくる。
角を曲がり、大通りが、道の先に見えてきたとき、背後からバタバタと走る音がして、
「走れ!」
と、大輔の号令で聖を抱え、走り出した。
その勢いで聖のフードが落ち、慌て被り直す。
「いたぞ!あいつだ!」
「急げ!」
黒龍は聖を抱え、走っていくと、横道から男が急に出てきて、聖の腕を引っ張った。
それを奪い返すように、男を蹴り飛ばし、勢い余って、路地裏の壁に背中をぶつけ、痛みが走った。
立ち上がって来た男を、大輔が蹴り飛ばし、撃沈させ、大通りに向かって走り、明るい通りに出た。
いくら旧市街を出たからと言っても、日が沈み、薄暗くなってきているので、急いで小納谷に向かった。
聖はぎゅっと、黒龍にしがみつき、肩口に顔を埋めていた。
小納谷にたどり着き、正門の横から中へ入り、客用とは別の建物の方へ向かった。
「お帰りなさいませ。若様」
「ただいま」
黒龍は聖を地面に降ろし、ほっと息を付くと、急に背中が痛み出した。
なんか、冷や汗が出てくるんだけど…。
もしかして、俺、ドジった?
「聖さんも御一緒でしたか。さぁ、中へ。温かいお茶でもいれましょう」
そう促され、聖と大輔が屋敷の方に足を向けた。
付いてこない黒龍に聖が、振り返る。
「…クロ?」
ヤバい。
立っていられない…。
黒龍はその場に膝を付く。
「どうし…」
屋敷の明かりに照らされて、黒龍の背中が赤く染まっていることに気が付く。
「クロ?!」
黒龍の身体が傾き、倒れかかるのを、聖がふらつきながら、受け止めて、側に座り込む。
「おい!どうした?!」
大輔が異変に気付いて、近付いてくる。
「あっ。あっ…」
聖の中で幼い頃の情景がフラッシュバックする。
「ダメ…」
聖は、血で濡れた背中に手を近付けて、目を見開いた。
「止めろ!聖!」
「逝っちゃダメ!」
眩い光が一瞬、二人を包み込んで光が収まると、聖は意識を失い、黒龍に覆い被さるように身体が崩れた。
「ちょっと、ネコを拾ったから、飯を食わさないと…」
そう言って、嬉しそうに総菜屋に寄って買い物し、店から出ると、今朝の男がいた。
「…俺は聖の幼馴染みの、大輔だ。聖のもとへ案内しろ!」
「…こっちだ」
そう言って旧市街へと、入っていく。
「おい!嘘だろ。よりによってココかよ」
大輔はフードを深く被り、顔を隠す。
「何か問題でも?」
「大有りだ!急いで聖の所へ連れていけ!こんな所に一人で置いておくなんて、見つから無かっただけ、奇跡だぞ!」
「…誰かに追われていたのを、匿ったんだが…」
「旧市街に行くなって、あれほど言っていたのに…」
しばらく路地裏を歩き、部屋へたどり着き、扉を開けると、本を読む聖がいた。
「聖!」
大輔は部屋の中に駆け込み、聖を抱き締める。
「大ちゃん。迎えに着てくれたの?」
「ああ。」
「でも、もう少し待って。読み終わるから」
「…。」
そう言って、本読み始める。
黒龍は買ってきた惣菜を机に並べると、スプーンを取り出し、ご飯を乗せた。
「ほら、聖」
そう言って、ご飯を乗せたスプーンを口許に運ぶと、ぱくりと食べてモグモグと咀嚼する。
「…何やっているんだ?」
「こうしないと、飯を食わないから…」
「…。」
再びスプーンに乗せ、聖の口許に運ぶ。
「読み終わるまで、絶対に動かないぞ。早く連れて帰りたかったら、読み終わられるしかない」
「…ここが何処か分かっているのか?」
「…俺の部屋」
「…。」
大輔は顔をしかめて、目の前の光景を見て、不安を抱きながら黙るしかなかった。
食事が終わり、一時間もしない内に本を読み終えた聖は、帰りの支度を始めた。
本とノートの入った鞄を手持ち、ここへ来た時に着ていた、パーカーのフードを被り、玄関に立った。
「ちゃんと被ってろよ」
「心配症だな…」
聖は大輔を見上げる。
「お前は聖を抱えて走れるか?」
「…。抱えて歩くくらいは…。だが、走るとなると、早さにもよる。と、言うか、抱えて走らないと行けないのか?」
「状況にもよる。だから、できるだけ急いで。大通りまで足は止めるな」
「そんなにヤバい状況なのか?」
「旧市街は色々とな。聖みたいに可愛い系は、捕まったらどんな目にあわされるか…」
「…。」
それは、黒龍も心配していた事。
「取りあえず少し歩いて、大通りに向かう。人の出方を見て、最悪、聖を抱えて小納谷へ行け!」
「お前は?」
「あんたと違って場数は踏んでる。多少の時間稼ぎくらいは出来る」
「わかった」
「行くぞ!」
三人は部屋を出て、路地裏を足早に進み、しばらく行くと、後をてくる人の気配を感じた。
「…付けられている」
大輔が小声で、囁いてくる。
角を曲がり、大通りが、道の先に見えてきたとき、背後からバタバタと走る音がして、
「走れ!」
と、大輔の号令で聖を抱え、走り出した。
その勢いで聖のフードが落ち、慌て被り直す。
「いたぞ!あいつだ!」
「急げ!」
黒龍は聖を抱え、走っていくと、横道から男が急に出てきて、聖の腕を引っ張った。
それを奪い返すように、男を蹴り飛ばし、勢い余って、路地裏の壁に背中をぶつけ、痛みが走った。
立ち上がって来た男を、大輔が蹴り飛ばし、撃沈させ、大通りに向かって走り、明るい通りに出た。
いくら旧市街を出たからと言っても、日が沈み、薄暗くなってきているので、急いで小納谷に向かった。
聖はぎゅっと、黒龍にしがみつき、肩口に顔を埋めていた。
小納谷にたどり着き、正門の横から中へ入り、客用とは別の建物の方へ向かった。
「お帰りなさいませ。若様」
「ただいま」
黒龍は聖を地面に降ろし、ほっと息を付くと、急に背中が痛み出した。
なんか、冷や汗が出てくるんだけど…。
もしかして、俺、ドジった?
「聖さんも御一緒でしたか。さぁ、中へ。温かいお茶でもいれましょう」
そう促され、聖と大輔が屋敷の方に足を向けた。
付いてこない黒龍に聖が、振り返る。
「…クロ?」
ヤバい。
立っていられない…。
黒龍はその場に膝を付く。
「どうし…」
屋敷の明かりに照らされて、黒龍の背中が赤く染まっていることに気が付く。
「クロ?!」
黒龍の身体が傾き、倒れかかるのを、聖がふらつきながら、受け止めて、側に座り込む。
「おい!どうした?!」
大輔が異変に気付いて、近付いてくる。
「あっ。あっ…」
聖の中で幼い頃の情景がフラッシュバックする。
「ダメ…」
聖は、血で濡れた背中に手を近付けて、目を見開いた。
「止めろ!聖!」
「逝っちゃダメ!」
眩い光が一瞬、二人を包み込んで光が収まると、聖は意識を失い、黒龍に覆い被さるように身体が崩れた。
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