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日常
お土産
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紗羅は普段、隣町の学校で寮生活をしていた。
楽しみは、年末年始や、夏休みなどの長期の休みに、家に帰ること。
本宅とは別の場所で暮らす、聖兄さんに会いに行くこと。
あまり日に当たらないせいか、色が白く儚げで、時折、少し寂しげな、感情をあまり見せない人だ。
けれど、兄妹や気の知れた者には、笑いかけてくれるし、普通に話しかけてくれる。
ただ、あまり人馴れと言うか、世間なれしていないので、危うく感じるときもある。
そんな兄さんが大好きで、長期の休みになるとお土産を持って、会いに行くのが定番となっていた。
本宅から兄さんの住む家までは少し距離があるので、買い出しに出かける使用人に、兄さんの家まで送ってもらい、玄関から家の中へ入った。
ここには、私の部屋と修司兄さんの部屋もあり、よく泊まって宿題を見てもらった覚えもある。
「聖兄さん。帰省のお土産持ってきたわよ」
そう言って、いつも皆で集まる部屋の戸を開けた。
その瞬間、聖兄さんが屈み込んで、男の人の唇に触れさたところだった。
聖兄さんはハッとして男の人から唇を離し、こちらへ振り向き、目が合った。
「…紗羅」
紗羅は硬直し、お土産をポトリと落として、次第に顔を赤くなるを感じて、走り去った。
「ごめん!」
階段を上がり、二階の自分の部屋へと駆け込んだ。
いま、兄さんと男の人が…キス…してた?
兄さんから、してたよね…?
「兄さんと、男の人が…。どう言うこと?修司兄さんと、紅緒さん達は知っているの?知らないわけ無いわよね…」
紗羅ほ混乱し、独り言を呟きながら、部屋の中をうろうろとしていた。
ふと気が付くと、部屋の前に兄さんが居た。
紗羅は思い出して頬を染め、足を止めて、兄を見上げた。
「ごめん。驚かして…」
「あの人…と、一緒に暮らしているの?」
そんな事はないと思うけど…。
「暮らしてはいない」
でも、確かめて、おかないといけない。
「兄さんは、あの人の事が好きなの?」
「…わからない。ただ、側に居ると心地良い。だから、触れたくなるし、触れて欲しくなる」
聖兄さんは困ったように苦笑いする。
「…それって…」
私が教える事では無いけれど…。
好意を持っているのは確かよね…。
「あの人は兄さんの事をどう言っているの?」
「好きみたいだ」
「好きみたい?」
まるで他人事のよう…。
「…よく分からない…」
紗羅は部屋から出て、兄の服を掴んだ。
「ハッキリさせた方が良い!」
「…。」
聖兄さんは、感情の起伏が少なく無垢だ。
そんな兄さんに、好奇心だけで近付いているのなら、追い出さなくてはいけない。
後で悲しい思いをするのは、聖兄さんだから…。
紗羅は勢いよく二階から降りていった。
紗羅が階段を降りると同時に、男が部屋から出てきた。
「貴方、兄さんの事をどう思っているの!?」
それが肝心!
「いきなりだな。…紅緒さんそっくりだ。…聖の事は好きだぜ。だが当の本人が、あの感じだから、伝わっているか分からないが」
「…。」
…うん。…伝わってない。
「気長に待つよ。でなければ、小納谷の手伝いしないし、車の免許を取ろうなんて思わない」
「…。」
聖兄さんの側にいるために、小納谷で手伝いと、車の免許を取ろうとしているなら、本気なのだろう。
ただ、どうして知り合ったのか、気になるところだが…。
「経緯は、紅緒さんから聞いてくれ。説明するのが面倒臭い」
「面倒臭いって何よ!」
紗羅は顔を真っ赤にして、睨み付けた。
「色々複雑なんだよ」
男は苦笑いしている。
紅緒さんに聞いてみよう。
そんな事を言っていると、兄さんが遅れて階段を降りてきた。
「…なんか楽しそう」
ぼそりと兄さんが呟く。
「えっ?」
紗羅が驚いて聖の方に振り向くと、とょっとムッとした表情で、男を見ていた。
兄さんが!ムッとしている…。
「土産はお菓子なのか?」
男が紗羅に質問してきて、我に帰る。
「…ええ、そうよ」
「聖。土産を開けろよ。お茶をいれてくる」
「うん」
兄さんは部屋何事も無かったかのように部屋に入り、こたつに入ると、お土産の袋を開け始めた。
あれ…無意識…よね…。
男は台所へ行ってしまった。
紗羅は呆然と廊下に立ったまま、いそいそとお菓子の取り出している聖兄さんを見ていた。
…聖兄さん…。
「寒いから、部屋の中に入って、待ってろよ」
紗羅は、台所から顔を覗かせる男の方を向いた。
「…聖兄さんが、嫉妬した…」
驚きを隠せない様子でそう呟くと、部屋の中に入って戸を閉めた。
聖兄さんが、…焼きもちをやいた…。
ほんの些細な変化。
身内以外に興味を見せなかった、聖兄さんが、興味を持った人…。
この人なら聖兄さんを、外へ連れ出してくれるのだろうか…。
楽しみは、年末年始や、夏休みなどの長期の休みに、家に帰ること。
本宅とは別の場所で暮らす、聖兄さんに会いに行くこと。
あまり日に当たらないせいか、色が白く儚げで、時折、少し寂しげな、感情をあまり見せない人だ。
けれど、兄妹や気の知れた者には、笑いかけてくれるし、普通に話しかけてくれる。
ただ、あまり人馴れと言うか、世間なれしていないので、危うく感じるときもある。
そんな兄さんが大好きで、長期の休みになるとお土産を持って、会いに行くのが定番となっていた。
本宅から兄さんの住む家までは少し距離があるので、買い出しに出かける使用人に、兄さんの家まで送ってもらい、玄関から家の中へ入った。
ここには、私の部屋と修司兄さんの部屋もあり、よく泊まって宿題を見てもらった覚えもある。
「聖兄さん。帰省のお土産持ってきたわよ」
そう言って、いつも皆で集まる部屋の戸を開けた。
その瞬間、聖兄さんが屈み込んで、男の人の唇に触れさたところだった。
聖兄さんはハッとして男の人から唇を離し、こちらへ振り向き、目が合った。
「…紗羅」
紗羅は硬直し、お土産をポトリと落として、次第に顔を赤くなるを感じて、走り去った。
「ごめん!」
階段を上がり、二階の自分の部屋へと駆け込んだ。
いま、兄さんと男の人が…キス…してた?
兄さんから、してたよね…?
「兄さんと、男の人が…。どう言うこと?修司兄さんと、紅緒さん達は知っているの?知らないわけ無いわよね…」
紗羅ほ混乱し、独り言を呟きながら、部屋の中をうろうろとしていた。
ふと気が付くと、部屋の前に兄さんが居た。
紗羅は思い出して頬を染め、足を止めて、兄を見上げた。
「ごめん。驚かして…」
「あの人…と、一緒に暮らしているの?」
そんな事はないと思うけど…。
「暮らしてはいない」
でも、確かめて、おかないといけない。
「兄さんは、あの人の事が好きなの?」
「…わからない。ただ、側に居ると心地良い。だから、触れたくなるし、触れて欲しくなる」
聖兄さんは困ったように苦笑いする。
「…それって…」
私が教える事では無いけれど…。
好意を持っているのは確かよね…。
「あの人は兄さんの事をどう言っているの?」
「好きみたいだ」
「好きみたい?」
まるで他人事のよう…。
「…よく分からない…」
紗羅は部屋から出て、兄の服を掴んだ。
「ハッキリさせた方が良い!」
「…。」
聖兄さんは、感情の起伏が少なく無垢だ。
そんな兄さんに、好奇心だけで近付いているのなら、追い出さなくてはいけない。
後で悲しい思いをするのは、聖兄さんだから…。
紗羅は勢いよく二階から降りていった。
紗羅が階段を降りると同時に、男が部屋から出てきた。
「貴方、兄さんの事をどう思っているの!?」
それが肝心!
「いきなりだな。…紅緒さんそっくりだ。…聖の事は好きだぜ。だが当の本人が、あの感じだから、伝わっているか分からないが」
「…。」
…うん。…伝わってない。
「気長に待つよ。でなければ、小納谷の手伝いしないし、車の免許を取ろうなんて思わない」
「…。」
聖兄さんの側にいるために、小納谷で手伝いと、車の免許を取ろうとしているなら、本気なのだろう。
ただ、どうして知り合ったのか、気になるところだが…。
「経緯は、紅緒さんから聞いてくれ。説明するのが面倒臭い」
「面倒臭いって何よ!」
紗羅は顔を真っ赤にして、睨み付けた。
「色々複雑なんだよ」
男は苦笑いしている。
紅緒さんに聞いてみよう。
そんな事を言っていると、兄さんが遅れて階段を降りてきた。
「…なんか楽しそう」
ぼそりと兄さんが呟く。
「えっ?」
紗羅が驚いて聖の方に振り向くと、とょっとムッとした表情で、男を見ていた。
兄さんが!ムッとしている…。
「土産はお菓子なのか?」
男が紗羅に質問してきて、我に帰る。
「…ええ、そうよ」
「聖。土産を開けろよ。お茶をいれてくる」
「うん」
兄さんは部屋何事も無かったかのように部屋に入り、こたつに入ると、お土産の袋を開け始めた。
あれ…無意識…よね…。
男は台所へ行ってしまった。
紗羅は呆然と廊下に立ったまま、いそいそとお菓子の取り出している聖兄さんを見ていた。
…聖兄さん…。
「寒いから、部屋の中に入って、待ってろよ」
紗羅は、台所から顔を覗かせる男の方を向いた。
「…聖兄さんが、嫉妬した…」
驚きを隠せない様子でそう呟くと、部屋の中に入って戸を閉めた。
聖兄さんが、…焼きもちをやいた…。
ほんの些細な変化。
身内以外に興味を見せなかった、聖兄さんが、興味を持った人…。
この人なら聖兄さんを、外へ連れ出してくれるのだろうか…。
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