聖～ひじり～ ソレを恋と呼ぶならば。⦅完結⦆

海

昼寝

　日曜日の午前中。
　今日はいつもより少し早く布団からでて、クロが車の座席を触っているのを見ていた。
　真ん中の座席に有る頭の部分？枕？を外して、前に動かして、背もたれを倒して…。
　面白いくらいに変形していく。
　そんな風に作ってあるのだろうけれど、始めてみる動きに目を奪われた。
「すごい…」
　車の座席が平らになって、後部座席と繋がって、ソフィアみたいに長椅子になる。
「聖。寝転がってみろよ」
　クロにそう言われて、座席だった場所に座り、靴を脱いでその上に上がった。
　少し凸凹しているが、クッションは座席だったので、しっかりとしている。
　聖が身体を横たえて、足を伸ばすと、ちょうど横になれたが、少しでも動けば、足か頭を打ってしまいそうだ。
　これがクロだと足を曲げないと、横になれない。
「ちょうど良いな」
　クロは満足そうに、横たわる聖を見る。
「でも、頭を打ちそうだよ」
「そこはもうちょっと、座席を動かして…」
　聖が身体を起こし座ると、クロはそう言って、後の荷物置きの扉をあける。
　後ろに入っていた、荷物を下ろし、再び後部座席の後ろ側を少し動かした。
「ココまでが限界だな…」
　そんな事を呟きながら、聖の座る座席の背もたれを倒す。
「今度はどうだ？」
　聖が再び横たわると、ほんの少しだが、頭上にゆとりが出来た。
「これなら大丈夫」
　そう言って聖は微笑んだ。
　一旦、車がら降りると、クロが下ろした荷物をもってきた。
「使わない毛布が有ったから持ってきた。これを下に敷けば痛くないだろ」
　そう言って平たくなった座席に毛布を被せる。
「使わない毛布なら、まだ、有るよ」
　聖は家の中に入って、押し入れから、入れっぱなしになっていた毛布を取り出す。
　少し埃っぽいが、叩いて干せば大丈夫だろう。
　聖は毛布を抱えて、クロの元に戻る。
「これも使って」
　そう言ってクロに毛布を渡す。
　なんか楽しいな。
　こうやって、自分達の好きなように座席を変えて、過ごしやすいように整えていくのも…。
　そうすると、テーブルも欲しいかな…。
　二人で考えながら、車の中を整えていこう。


　昼になり、聖は先にお昼を準備しに家の中に戻った。
　温めて、いつものように、テーブルに並べる。
　そうだ、部屋に余っているクッションが有るから、それを枕にしたらどうかな…。
　聖は自分の部屋に入り、押し入れに入っている、クッションを二個取り出す。
　確かこれ、紅ちゃんにもらったやつ…。
　ごそごそとやっていると、クロが部屋に戻ってきた。
「なにやっているんだ？」
「クッション、枕にならないかなって思って…」
「…なると思うが…車で昼寝するつもりか？」
　クロは驚いて聖をじっと見てくる。
「せっかくだし、寝心地、確かめたい」
　ダメかな…。
　聖はクロを見上げる。
「…。そしたら、先に毛布とクッションをちょっと干しておいてだな…」
　クロはクッションを日当たりの良い、廊下に置いて、もう一度外に出ていった。
　毛布を干すため？
　聖はクスリと笑った｡
　昼寝が楽しみだ。


　昼食が終え、食器を片付けると、干してあったクッションをはたき、抱えて車に向かった｡
　先に来ていたクロは毛布を中に敷き直していた。
「そのまま、奥に詰めて横になって」
「俺だと足がはみ出る」
「良いから！」
　聖はクッションを後部座席に置いて、クロを横にならせる。
　聖も車の中に入ると、ドアを閉めた。
「聖…」
　戸惑うクロが可愛い。
　聖はクロの横に少し身体を重ねるようにして、横たわった。
　少し狭いけど、二人で寝転がれる。
　クロが落ちないように、腕で支えてくれる。
「温かいな…」
　聖は目を閉じた。
　少し触れるクロから暖かな体温を感じ、眠気を誘う。
「ちょっとだけ…」
　そう言って、聖は眠りについていた。