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二人の春

日常

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 聖が、クロと出会って、二年が経とうとしていた。
 クロも宿の仕事を覚え、車の送迎と、接客も少しするようになっていた。
 大輔いわく、『優しいイケメン、表で使わないと損だ』だそうだ。
 …イケメン?
 大輔の言っていることは、よく分からなかったが、物腰が優しいのは、よく知っている。
 最近、クロは、武道、護身術も習いに行っている。
 大輔に『弱い』と、言われ、週に一回、昼の休憩に通っていて、みっちりしごかれているらしい。
 仕事を、終えるとクロは車に乗って、聖の家に帰って来る。
「ただいま」
 クロが帰ってくると玄関まで迎えに行く。
「お帰り」
「今日は、差し入れのケーキをもらった。後で食べようぜ」
「うん」
 このやり取りが、聖の胸を暖かくしてくれる。
 
 夕食後、二人の共有スペースとなった居間にケーキの箱を持ってきて置く。
「お茶と、コーヒーと、紅茶、どれがいい」
 聖はケーキの箱を開けながら、中を見て、
「コーヒーがいい」
と、言った。
 クロは台所から皿とフォークと、コーヒーを持ってきた。
「また、嫌な季節がやって来る…」
 聖はケーキを食べながら、そう、呟いた。
「新年会か。今年はどうするんだ?」
「…出たくないけど、クロが一緒なら…。それで、側にいて」
 聖は真剣にクロに言う。
「ああ。今度は声をかけられても、すぐに戻るから」
「うん」
 聖は嬉しくて、頬が緩む。
「ほっぺたにクリーム付いてる」
 そう言って、クロが聖のほほに付いたクリームを舐めとると、聖は真っ赤になった。


 クロがこの家から、仕事に行くようになってから、二人でいる時間が増えて、とても嬉しかった。
 たまに、仕事の都合で泊まる時は、別館の僕の部屋に布団を敷いて眠っているそうだ。
 今度、一緒に泊まろう。


 一緒に暮らし初めて、毎日、目覚めると隣にクロがいる。
 嬉しくなって、クロの胸に顔を埋める。
 …暖かい。
 もう少しだけ…。
 寒い朝は、布団から出たくなくなる。
 だけど、ほんの少しだけ…。
 クロを遅刻させるわけにはいかない。
「クロ…」
 クロと一緒に暮らしだして、規則正しい生活になった。
 朝と夜はだいたい一緒に食事をする。
 昼はいまだに、時々、忘れるけれど、体力は少し付いたかな?
 夜遅くまで、一緒に起きていれるようになったから…。
「クロ。朝だよ」
 クロがゆっくりと目を開ける。
「…おはよう、聖」
 平穏な日常。
 クロが側にいて居てくれる幸せを感じなから、一日が始まる。
「おはよう、クロ」


 聖の、目覚めたばかりの恋心は成長中。
 まだ知らない、ドキドキもハラハラも、幸せの恋の、糧になっていく。


★★★★★

 ご閲覧、ありがとうございます。

 聖~ひじり~ソレを恋と呼ぶならば。
は、ここで終わります。
 この後は、聖の兄、修司と紅緒、二人の同級生、和也の話になります。(別のページにて、進行中)

 結~ゆい~ ソレを愛と呼ぶならば。

 こちらもまた、よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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