神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

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魔女の森~対価~ *リーンの過去編です~ 

放逐と飼育

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 リーンは、しばらく立ち直れなかった。
 あの時、別れなければ…。連れて行けば…。
 そんな後悔が、渦巻いていた。
 魔女王ソフィアは、そんなリーンを優しく包み、城に囲っていた。
 リーンとしては、まだ、耳飾りを返してもらって無いのと、気力が戻ってこないので、ソフィアに甘えているのかもしれない。
 
 ソフィアが誘ってきたので、久しぶりに服を着て、部屋の外に出た。
 外と言っても、城と外壁の間にある庭園で、城門の反対側に、小さな丸太の小屋があった。
 その横に、石碑が立っていて、文字が刻まれていた。
「ユキが、ここに眠っているわ」
 ソフィアは右手を掲げ、ふわりと花束を呼び寄せ、リーンに持たせてきた。
「…ありがとう…」
 リーンは花束を石碑の前に置き、しゃがみこんで、目を閉じた。
 優しいユキの笑顔が脳裏に浮かぶ。
『リーン。笑って。大好き』
 そんな声が、聞こえてきた。
 リーンは涙を流しながら微笑んだ。
 もう少し、時間がかかるかもしれないが、ユキの事を思い出として、胸にしまえそうだった。


 少し落ち着きを取り戻したリーンは、ここが『魔女の森』で、満月の『魔女の宴』の時だけ、結界を解き放ち、『魔女の歌』に誘われた男達を森に引き入れているのだと知った。
 やはり、結界の狭間から出れたのは、ちょうど、『魔女の宴』があったからで、結界が解かれ、抜け出せたのだと分かった。
 だから今は、結界があるので、魔女の森からは出す事が出来なく、次の満月まで、ここに滞在するように言われ、リーンは耳飾りの事もあって、仕方なく魔女王の城に居ることになった。


 気を紛らせるように、魔女の森をぼんやりと散策していると、急に見えない壁で押し倒され、一瞬意識を失った。
「…つっ…!?」 
 何が起こったのか分からず、ゆっくりと意識を浮上させ、目を開けると、知らない男に押し倒されていた。
「なっ?!」
「遠目で見たよりも可愛い顔をしているじゃないか」
 ニヤニヤと笑う体格のいい男は、そう言いながらリーンの服の中に手を入れてくる。
「何をする!?」
「ハーレムも良いが、たまには純真そうなのを食べたい」
 言っている意味が分からない。
 男に服をめくり上げられ、胸を触られ気持ち悪くて吐き気がする。
「お前、男か?まあ、ヤる事は一緒だが…」
 そう言ってズボンの中に手を差し込んできた。
「止めろ!!」
「『断罪の十字架』!!」
 リーンが叫ぶのと同時に、ソフィアの魔法が男を捕らえ、鎖でリーンから引き離し、男を十字架にかけた。
 リーンはホッとして、乱れた服を直して立ち上がり、いつの間にか側にいたソフィアにお礼を言った。
「ありがとう…助かったよ」
 …警戒心が、緩んでいたみたいだ…。
 ソフィアは男を睨み付ける。
「…私の者に手を出すなんて、やはり監禁ね」
 『断罪の十字架』に捕まった男は、魔力奪われ、虚ろな目で、こっちを見ている。
「ここが何処どこで、何故、居るのかを、しっかりと認識してもらわないとね。…ミア。回収に来て」
 ソフィアが何処ともなく話しかけると、『移動』で黒髪の女性が姿を表し、微笑んだ。
「『放逐ほうちく』は、やはりダメでしたね」
「そうね。予定道理『飼育しいく』に回しておいて」
「分かりました」
 ミアは、ソフィアの『断罪の十字架』ごと、『移動』の魔法陣の中に男を連れ去っていく。
 そして残されたのは、呆然と見ていたリーンと、ソフィアだけだった。
「ここに来て、初めて男の人を見た」
「あれは『種馬』よ。女好きで、見境なく手を出して、人族の所から逃げてきたのを拾ったの。子供が欲しい魔女にとっては、願ったり叶ったりだったけど、最近ちょっと若い子にも手を出そうとしていて、困ってたの」
 ソフィアは苦笑いする。
「…。」
「まさか、貴方にまで触れようとするなんて…。ちょっと魔力が強いから、重宝していたのだけれど…」
 話の内容に、頭が付いていかず、気になった言葉を聞いてみる。
「『飼育しいく』って…」
 リーンはどういう意味か、聞きたいような、聞きたくないような気持ちで問うた。
 ソフィアは微笑んでリーンを見た。
「今まで通りと変わらないわ。豪華な部屋で魔女の相手をしながら、生活をするのよ。ただ、部屋から出れないだけ」
 …だから飼育…。
 知らない魔女の決まりのようなおきてが有るのかもしれない。
 と、言うことは、今の自分の状態は…。
「『放逐ほうちく』?」
 クスッと、ソフィアが笑う。
「リーンの場合は『魔女王のお気に入り』よ。私の城にいて、魔力が高くて、魔女に危害を加えない。貴重な存在よ」
「…。」
 いつの間にか、『魔女王のお気に入り』と、言うものになっていたらしい…。
「それより、森で何してたの?出るつもりは無いと思うけど…」
「森の中の方が落ち着くから…。『くいの枝』を作る枝でもないかな…と、思って…」
「『杭の枝』?」 
 ソフィアは不思議そうに首を傾げる。
「枝に魔法をかけて、地中に刺すと、木の根が地中に伸びて、大地を支え、横に並べてつたを伸ばして防御ネットにするんだけど、持てる本数が限られてるから、小まめに作らないといけなくて…」
 荷物になるから、余分に作れない。
「…持ち運ぶのに?」
「そう。なるべく身軽じゃないと、『風霊』達に運んでもらえないし…」
 森の中を移動するにも、体力を消耗する。
「…収納する場所が無いってことよね…」
「保管移動は?」
 空間全体を収納する分にはいいが、それは移動するための保管なので、使えない。
「まとめてだったら良いけど、小さいものだし、他にも薬草や薬の道具とか色々あるしね…」
 なるべく区別して、収納しないと、分からなくなってしまう。
「…引き出しみたいに、取り出せれば…良いのよね…?」
 ソフィアは思い出したかのように、微笑む。
「良いものが有るわ。…サラ。部屋にいる?」
 ソフィアは、また、誰も居ないし空間に話しかける。
「はい。ソフィア様」
 今度は女の子の声だ。
「今から行くわね。薬師の収納庫を見せて欲しいの」
「分かりました。カギを出しておきます」
 ソフィアがリーンの腕を掴むと『移動』して、街の中の一軒の家の前にいた。
「…。」
 驚くリーンにソフィアは言う。
「魔女の街の中は、皆、『移動』で家に行くのよ。道を歩いている者は、外から来た者達。分かりやすいでしょ」
 ソフィアはそう言って、家の扉を開いた。
 そこで待っていたのは、十歳くらいの幼い少女だった。
 ソフィアを見て、隣に立つリーンを見ると青ざめていく。
「大丈夫よ。貴方に触れないから」
 ソフィアはリーンを見て、苦笑いし、少女からカギをもらって、その家の地下へと歩き出した。


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