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僕と彼とカレンダーの印 全三話
僕と彼とカレンダーの印 中編
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忙しさが落ち着き、少しさびしさを覚えた頃、フィールドワークから帰ってきた彼から、久しぶりの着信が入る。
「久しぶりにアわないカ?」
フィールドワーク帰りで疲れているのか、彼の声はしゃがれていた。
待ち合わせの日時と場所は、珍しく僕の予定に合わせてくれるそうで、僕の予定の空いている日に彼と会う約束をし、電話を切った。
数日後、講義も終わり、僕が待ち合わせ場所に向かうと、彼はすでに到着していた。
日も沈み始め、肌寒いのか、身体を左右に揺らし、僕のことを待っている。
待ち合わせ時間の10分前に着いた僕は、彼を少しからかった。
「しっかり、カレンダーの効果があるみたいで安心したよ」
僕のからかう言葉を受け、虚ろな目をしている彼は、表情を変えず、視線を僕からそらした。
いつもなら、少しでもからかわれたら、眉間にシワをつくり、睨みつけてくる彼。
そんな彼が今まで見たことのない反応をしたことに、言いようのない不安が僕にまとわりついた。
沈黙が流れる。
僕たちの間に、これほど気まずい空気がつくられたのは、初めてのことだ。
そんな空気を壊すように、彼が口を開いた。
「きみにソウ談したいことがアって、今からぼくの部ヤにきてホしい」
電話口で聞くより、彼の声はよりかすれて聞きこえる。
体調を心配しながらも、彼の頼みを快諾した。
彼と横並びになって一緒に部屋へと向かう。
夕焼けがやけにまぶしい。
夕日を避けるように、横目でちらりと彼の様子を観察した。
よほど深刻な相談なのか、彼は黙り、空虚な瞳を前だけに向け、フラフラと歩いている。
夕暮れの日差しで気が付かなかったが、彼の顔を近くで見ると肌は青白く、頬も少し痩せていた。
彼に対する不安がさらに強まり、心配で声をかけた。
しかし「ヘヤでハなス」と言って、彼はなにも答えてくれない。
言葉にできない不安で早足になる。
彼の腕を掴み、引きずるように彼の部屋に急いだ。
不安で手の感覚が鈍くなったのか、掴んだ彼の腕にブヨブヨとした弾力を感じた。
彼の部屋に着き、暗闇の中電気をつけ、早速相談を聞こうと、早速椅子に腰掛る。
しかし。
「マて……じゅンびアる」
彼はそうささやいて、ふらつきながら僕を置いて部屋を出て行った。
明らかに普段と違う彼の様子を見るたびに、僕を襲う不安の正体がもう少しでわかりそうな気がする。
僕は気持ちを落ち着かせるため、部屋の中を見回した。
窓は分厚いカーテンがしっかり閉められていて、夕日が室内に入るのを完全防いでいた。
机の上には海外のお土産なのか、なにかのミイラや、虫の死骸のようなものが瓶に入れられ、飾られている。
そのどれも僕には見覚えがないものばかりだ。
僕の不安は収まらず、更に視線を彷徨わせる。
壁にかけられた、何も書かれていない大きなカレンダーが目に入った。
食い入るようにそのカレンダーで今日の日付を確認した。
僕を襲っていた不安の正体がわかった。
「久しぶりにアわないカ?」
フィールドワーク帰りで疲れているのか、彼の声はしゃがれていた。
待ち合わせの日時と場所は、珍しく僕の予定に合わせてくれるそうで、僕の予定の空いている日に彼と会う約束をし、電話を切った。
数日後、講義も終わり、僕が待ち合わせ場所に向かうと、彼はすでに到着していた。
日も沈み始め、肌寒いのか、身体を左右に揺らし、僕のことを待っている。
待ち合わせ時間の10分前に着いた僕は、彼を少しからかった。
「しっかり、カレンダーの効果があるみたいで安心したよ」
僕のからかう言葉を受け、虚ろな目をしている彼は、表情を変えず、視線を僕からそらした。
いつもなら、少しでもからかわれたら、眉間にシワをつくり、睨みつけてくる彼。
そんな彼が今まで見たことのない反応をしたことに、言いようのない不安が僕にまとわりついた。
沈黙が流れる。
僕たちの間に、これほど気まずい空気がつくられたのは、初めてのことだ。
そんな空気を壊すように、彼が口を開いた。
「きみにソウ談したいことがアって、今からぼくの部ヤにきてホしい」
電話口で聞くより、彼の声はよりかすれて聞きこえる。
体調を心配しながらも、彼の頼みを快諾した。
彼と横並びになって一緒に部屋へと向かう。
夕焼けがやけにまぶしい。
夕日を避けるように、横目でちらりと彼の様子を観察した。
よほど深刻な相談なのか、彼は黙り、空虚な瞳を前だけに向け、フラフラと歩いている。
夕暮れの日差しで気が付かなかったが、彼の顔を近くで見ると肌は青白く、頬も少し痩せていた。
彼に対する不安がさらに強まり、心配で声をかけた。
しかし「ヘヤでハなス」と言って、彼はなにも答えてくれない。
言葉にできない不安で早足になる。
彼の腕を掴み、引きずるように彼の部屋に急いだ。
不安で手の感覚が鈍くなったのか、掴んだ彼の腕にブヨブヨとした弾力を感じた。
彼の部屋に着き、暗闇の中電気をつけ、早速相談を聞こうと、早速椅子に腰掛る。
しかし。
「マて……じゅンびアる」
彼はそうささやいて、ふらつきながら僕を置いて部屋を出て行った。
明らかに普段と違う彼の様子を見るたびに、僕を襲う不安の正体がもう少しでわかりそうな気がする。
僕は気持ちを落ち着かせるため、部屋の中を見回した。
窓は分厚いカーテンがしっかり閉められていて、夕日が室内に入るのを完全防いでいた。
机の上には海外のお土産なのか、なにかのミイラや、虫の死骸のようなものが瓶に入れられ、飾られている。
そのどれも僕には見覚えがないものばかりだ。
僕の不安は収まらず、更に視線を彷徨わせる。
壁にかけられた、何も書かれていない大きなカレンダーが目に入った。
食い入るようにそのカレンダーで今日の日付を確認した。
僕を襲っていた不安の正体がわかった。
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