怪異に襲われる

醍醐兎乙

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僕と彼とカレンダーの印 全三話

僕と彼とカレンダーの印 後編

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 今日の彼は、普段しない反応をした。

 今日の彼は、僕のことを「きみ」彼自身のことを「ぼく」と呼んだ。

 そして、今、部屋にかけられているカレンダー。

 今日の日付に、待ち合わせの印がなにも書かれていない、大きなカレンダー。

 彼が僕との待ち合わせの日に、印をつけないなんて考えられない。

 そこまで気づくと、これまでとは別の不安が、僕の体を駆け巡った。

 以前この場所で、彼から貰った感謝のつぶやきを思い出し、ゆっくりと振り返る。


 そこには、透明な瓶を持った彼。
 彼の持つ瓶には、瓶の半分ほどまでミミズのようなものが詰まっていた。
 彼はゆらゆらと体を揺らし、生気の感じない眼を僕に向けている。

 僕の記憶にある、少し素直じゃなくて照れ屋な彼とは、全くの別人に見えた。


 僕が動揺していると、彼は瓶のフタを開け、中身を全て僕に投げつけた。
 ミミズのようなものは体長が10センチほどで、僕に当たると、素早く動き、服の下に潜り込んでくる。
 悲鳴を上げる暇もなく、数十匹のミミズに襲われ、服で外から見えない部分を、突き刺された。
 貫かれたような痛みと熱さ、そして体内に侵入してくるおぞましい感覚。
 頭を目指しているのか、皮膚の下を這いずり進んでくるのがわかる。
 
 僕は気づけば体に力が入らず、床に倒れていた。
 いつの間にか痛みも感じなくなっている。
 唯一動いた、目だけを動かし、彼を見上げた。
 
 彼はおぼつかない足取りで、ふらつきながら手に持った空の瓶を床に置いた。
 そして、彼の体は支えを失ったように、崩れ落ちる。
 
 崩れた彼の体から皮膚を突き破り、大小無数のミミズのようなものが這い出てきた。
 そのミミズたちは意思を持つのか、空の瓶に殺到する。
 空だった瓶がミミズたちで、満杯になった。
 
 それが、僕が見た最後の光景。


 見えず、聞こえず、話せず、体の痛みも感じず。
 それでも僕の意識は残っていた。

 僕にわかるのは、自分の意志とは無関係に動く体の感覚と、肌の内側に触れるミミズの蠢きだけ。
 
 どれだけの時間が経ったのか、僕の中でミミズが増えていき、僕の体には肉も骨も残って無いようだ。
 動くたびミミズたちに支えられ、ゆらゆらと揺れる体。
 皮膚の下はミミズたちが詰まっていて、ぶよぶよとしていた。
 皮膚の触覚は残っているので、今にも内側から弾け飛びそうなのがわかる。
 
 とうとうミミズたちは、僕という皮を食い破って出て行った。

 体の支えを失い、僕は崩れ落ちる。
 

 あのときの彼も今の僕と同じだったのだろうか。

 もしそうなら、あのとき腕を掴んだのが僕だと彼は気づいただろうか。


 そんなことを思い浮かべ、僕の意識は途絶えた。 
 
  





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