ゆうみお

あまみや。旧

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2章 夏休み。

89.罪悪感

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(海斗side)


「あ、未来斗がこんなところで寝てる…………」


のぼせたのか、全身真っ赤で……着ていた服も半袖なのに暑いのか、無意識にうちわをぱたぱたさせながら、長椅子の上に倒れていた。



「……こーら、こんなところで無防備に寝てたら襲われるぞー………」



可愛いんだからそんな無防備な格好でいるなよ………

未来斗の前でしゃがんで、なんとなくほっぺたをぷにぷにしているうちに…………未来斗が目を覚ました。



「……!」
「ん……?かいと………?」




暑さと眠気でぼーっとしているのか、すぐに意識がはっきりする様子はなかった。


それを言い事に、未だにほっぺたをぷにぷにしてる俺。




「こんなところで寝るなよな、ここ一応男湯だぞ?」
 


いやまあ、男湯で男が襲われるなんて話、聞いたことないけど。




「…………かいと、しってる?」
「なに?」



まだぼーっとしたまま、未来斗は俺と目を合わせて…………







「カイトって、たこ揚げのたこって意味らしいぞ」
「その情報今必要?」







果てしなくどうでもいい内容だった。






ーーー





「未来斗、具合どう?あ、海斗もいる………」
「郁人ー!見て見てタコ!!」


俺を指さすな。  




「…………そ、相当のぼせたみたいだね………」


郁人が苦笑いして、「じゃあ未来斗は部屋に連れてこっか」と未来斗を無理食いに背負った。



「えぇ……やだ、卓球する…………」
「休んでからね。」



俺は荷物を持たされて、とりあえず一旦3人で部屋に戻った。





ーーー


(優馬side)





(さっきのって…………何だったんだろ)





詮索するなとか、容赦しないとか…………





(あれは、詮索する内容の問題じゃなくて、単に郁人が……これ以上澪との仲を深めて欲しくないって意味に聞こえた)







そう考えれば、確かに当たり前だ。







小さい頃から澪のことを好きで、一途に思ってたあいつが、そう簡単に諦めるなんて………今まで一緒にいたけど、あいつは何気に決めたことはやりとげる奴だ。



莉音さんがいるからって、少しあなどってた………






「澪は……絶対に俺が貰う」









そう呟いた、瞬間







「僕、物じゃないんだけど」

「……!」







広場にある窓の外をずっと見ていたから気付かなかったけど………すぐ横に、澪がいた。





着替えを持っていたから、きっとこれから入りに行くんだと思う。






「今から?ゆっくりしてき……「優馬」」






誤魔化そうとしたけど、流石の澪もそこまで馬鹿じゃなかった。





「…………どうか、した?」
「言っておくけど…………僕は、誰とも付き合わないよ」






………………




何を今更って感じだけど、澪は本気だった。






「恋愛の何がいいのかわかんない、襲われるのもつけられるのも…………もう散々」






着替えをぎゅっと強く抱き締めて、俺と視線をあわせずに、言った。







……澪の周りは変な奴ばっかだからね。でも俺なら…………







そう言おうと思ったけど、やめた。




これ以上嫌われたくないと、作り笑顔で






「俺はそんな事しないよ…!ただ純粋に澪が好きなだけ、絶対澪の嫌がる事はしないから。」






………………






「そ、っか…………」




そう聞けて少しほっとしたのか、全身の力が抜けて……深くため息をついた。




「うん!早く入ってきなよ、後で一緒に卓球しよ?」
「う…うん!」





そう言うと澪はいつもみたいに小動物のような走り方で温泉の方へ向かっていった。





「優馬」
「ん?」




でも、急に立ち止まって、俺の方に振り向いた。






「優馬に会えて良かった。ありがとね……!」








………………!






ーーー




信用してもらえているって高揚感と、騙してはいないけど騙してるような気がしてしまう罪悪感。




なんだかやり切れなくて、また窓の外を見た。








ーーー




(未来斗side)




「遅れてごめーん!!メシアが来たぞーっ!」
「誰がメシアだ」



数十分後に体調が戻って、先に行った郁人と海斗を追うように卓球台がある広場に来た。




「えへっ」
「未来斗……もう大丈夫?」



優馬が心配そうな表情でこっちに来た。




「おーっ!元気百倍あんぱん……「そっか分かった」」



ーーー




「澪が来るまで練習してもいい?僕卓球は体育の授業でしかやったことなくて…………」
「……あ、うん俺も………」



…………ん?




なんか、優馬の様子がおかしい。





ーーー







そう思っていたのもつかの間…………







「っ…あ、ひえっ……!!っあぁぁ……!」

「ほらほらどうした桜木君よぉぉぉ」






練習しているうちに、元に戻ってた。







右、左とボールを容赦なく打ち返して………郁人が動けなくなるまでひたすらいじめまくっていた。





「これで終わりだァ!!」
「っ……しまった!!」








ぱこーーーーん










「っ……はぁ、はぁ…くっそ…………くそぉぁあぁ!!」



郁人が膝から崩れ落ちて、スポーツものの少年漫画みたいなことを言ってる。






「っ……優馬のくせに!!!」
「残念俺だからだよ!!!」






………………






さて、






 「じゃあ次は俺やるーーっ!!」










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