王立学園の二人〜平穏に暮らしたい少年と、平凡を知りたい少女が出会ったら〜

緋色

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第一章 始まりの地 アルへム村

十一話 新たな冒険者

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「ねえねえ、ローラ。他の冒険者の人ってどんな人達なの? やっぱり、厳つい顔の強面な人とか?」

 ドリアスへと向かう途中、ルーシアがそんな事を尋ねる。

「うん、恐そうな人もいるよ。でも、依頼は何かと戦うだけじゃないから、意外と普通の人も多いかな」

「へぇ、子供は?」

「年齢制限とかは、特には無いよ。そういえば王立学園の生徒も、ギルドに来てるかな」

 ローラが言うには、冒険者ギルドは王立学園の隣に建っており、学園の生徒も兼業で依頼を受けているそうだ。
 まぁ、寮生は仕送りだけでは生活に困るだろうからな。

 そんな何気ない会話をしながら、一時間ほどかけて街道を進む俺達。
 いつの間にかドリアスに到着していた。
 ローラがいれば、退屈なはずの通学路も飽きなさそうだ。

 ━王立学園・教室━

 ローラとは一旦別れ、俺とルーシアは教室に入った。
 今日で二日目とは思えないほど賑わっている室内。
 それはすでに個々の集団ができているからなのだろう。
 ……もし俺単品で教室にいたら、間違いなく孤立してたな。
 ルーシアがいて、本当に良かった。

 カラーン! カラーン!

 始業の鐘が鳴ると、のんびり歩く担任、通称頭領が教室に入ってきた。
 早速生徒達に用紙を配るのだが……。
 動作がゆっくり過ぎて、五分はかかる。

「キジ先生って動きがスローモーションだけど、私達の講義は平気かな。うちのクラスだけ遅れたりして」

「俺にはちょうど良いかもな」

「馬鹿だもんね」

 そして、黒板に文字を書き始める頭領は、何かを囁く。

【先日お話しした通り、今配ったアンケート用紙に専攻を記入、提出してください】

 隣の席のルーシアは、やはり商業科ディーラーと記入していた。
 元々決めていたみたいだし、迷う道理もないか。

 そして俺は……。俺は、何を選択するべきか。
 父さんが言う。やりたい事をやる……か。

 少し考えた俺は、剣術科アサルトと記入した。
 その様子を見ていたのか、ルーシアは笑顔で頷く。

「言っておくが、俺は騎士団には入らないからな。上司に媚びるのなんか、ごめんだし」

「わかってるわよ。そもそも、そんなミストなんて見たくないしね」

 そして、あっという間に迎えた午後。
 新入生の俺達はここで終業な訳なんだが、俺とルーシアは村へ戻らず、ローラが待つ冒険者ギルドに立ち寄る事に。
 せっかくドリアスまで来たんだし、ローラも混ぜて街の探索でもするか。

 ━ドリアスの街・ギルド━

 カラーン、カラーン。

 鐘の音を鳴らしながら、ギルドの玄関を開く。

「うわぁ。なんだか、賑やかなところね」

 少し居づらいのか、雰囲気に萎縮するルーシア。
 俺の背中を掴みながら、ぎこちなくギルドの中を見回している。
 続いて俺も辺りを見回したが、ローラの姿は見当たらない。
 昼には迎えに行くと約束したはずなんだが……。

「とりあえず、あそこで訊いてみるか」

 そして俺は、依頼掲示板リクエストボードの隣にある受付で、ローラの事を尋ねてみる事にした。

『……ローラさんを捜してるって事は、君達がミスト君とルーシアさんね?』

 そう返してきたのは、大人の魅力に溢れた受付のお姉さんだった。
 ローラの居場所を聞いたのに、なぜか逆に質問されているが、一体どういう事なのか。それに、どうして俺達の名前知っているのだろうか。
 疑問に思った俺とルーシアは、互いに顔を見合う。

『ローラさん、つい先ほど仕事に出ちゃったんです。それで、二人に宛てた手紙を預かったんですけど……』

 そう言って、受付さんは一通の封筒を差し出した。
 何やら気まずそうに手渡してきだが、そこには一枚の手紙が入っていた。
 ルーシアにも見えるように、その手紙を広げてみると……。

「……何だよ、これ」

 何度も読み返してはみたが、突然の事で内容が頭に入らない。それは、現実を受け止めたくないという意思の表れなのかもしれない。
 
 そして、ギルドに併設されな食堂の椅子にへたりと座り、俯いてしまうルーシア。
 俺達の間に、しばらくの沈黙が続く。

「……やっぱり、気に入らない。納得できねえな」

 不服そうに立ち上がった俺は、落ち込むルーシアの両肩に手を添えた。
 一瞬背中をビクッとさせるルーシアは、恐るおそる顔を上げて。

「い、いきなりどうしたの? 」

「俺達になんの相談もなく、勝手にいなくなられたら許せないよな。そうだろ?」

「きっと私達に迷惑をかけたくなかったのよ。頼ってもらえなかったのは悲しい、悔しいけど。でも仕方ないわ……」

 だが、ルーシアとは違う結論を導き出した俺は再び受付へと向かった。
 これ以上構うのは迷惑かもしれない。余計なお世話かもしれない。
 ……でも、本当は助けてほしいのかもしれない。そう思ったから。

「すみません。今から俺とこの子、今から冒険者登録します」

 先ほどの受付さんに声をかけ、そんな提案をする。

『登録ですか? まあ、それは構いませんけど……』

 不思議そうな顔をしていた受付さんだったが、すぐに俺が企んでいる事を悟ったのか、笑顔に変わっていく。
 ああ、そういう事ですか。そう言いたげに。

『では、王立学園の学生証の提出と、こちらの用紙に記入をお願いします』

 手際よく二枚の登録用紙をテーブルに乗せ、羽ペンを手渡してくる受付さん。
 まるで状況を飲み込めていないルーシアもとりあえず学生証を渡し、用紙に記入をする。

『はい、これで冒険者登録が完了しました。では、これが冒険者の証となる腕輪になります』

 記入した用紙をファイルに閉じた受付さんは、俺達に腕輪を渡してくれた。
 早速自分の腕に腕輪を嵌め、同じようにルーシアの腕にも腕輪を嵌めてやる。

「あっ、ありがとう……」

 少し顔を赤らめながら、俺の顔を見つめるルーシア。
 ふと腕輪を見ると、ローラが身に付けていたものとは少し異なっていた。
 王立学園に在籍する特権として、俺達は初めからランクⅢ。
 ローラはランクⅡだと言っていたから、施された刻印の模様で見分けられるようにしているのだろう。

「でもミスト、どうして冒険者になったの?」

「さっきギルドについての講義を受けただろ? 基本的な規則として、誰かが受けた依頼クエストは重複して他の人が受ける事ができない。何より、依頼の張り紙は一枚しか無いからな。なら、一つの依頼クエストを複数人でやるなら、どうする?」

「ローラとパーティーを組むって事ね!」

 俺の説明を聞いて、やっと気が付いたルーシア。
 ようやく表情にも明るさを取り戻したみたいだ。

『ふふふ。やっぱり、そう考えていたんですね。お二人とローラさんが知人なのは承知しておりますので、パーティー登録はやっておきましたよ』

 さすがはギルドの受付嬢。
 こんなにも察しが良いとは、毎日たくさんの冒険者の相手をしているだけあるな。

『但し、今回だけの特例措置です。この事が上司に見つかったら私も処罰を受けてしまうんですから、くれぐれも内密でお願いしますよ』

 そう言いながらデスクから身を乗り出し、人差し指を立ててくる受付さん。

「もちろん。約束だ」

「なんか受付さんまで巻き込んでしまって、すみません」

 そして、受付さんからローラが受けた依頼クエストを説明してもらった。

『以上が依頼内容です。しかし最近、近くの炭坑付近で非常に大きな魔物の影を見た。という情報が相次いでいるんです』

「それでランク表記が曖昧なんですね。この辺は大した魔物なんて出ないのに……」

 ドリアスの街周辺に現れる魔物は、冒険者ギルドで言うところのランクⅡが相場だ。
 稀に変異種が出たところで、ランクⅤ相当の魔物らしいのだが。
 ランクⅦの魔物なんて、辺境にしかいないはずなのに。

『決して無理はしないで、危険を感じたらすぐに逃げてください』

「あぁ、わかった」

 受付さんは、不安げな表情で俺達を見送ってくれた。
 しかし、ギルドを出た瞬間、顎に手を添えながら頭を悩ますルーシア。

「ごめん、先に行って待っててくれない?」

「まぁ、それは構わないけど……。急いでローラを捜しに行った方が良いんじゃないのか?」

「もちろん、そうよ。でも、ローラの為にも必要な物があるから。だから、お願いね」

 そう言い残し、ルーシアは商店街へと駆け出してしまった。

 ルーシアの行動を不思議に思うも、一足先に街の入口にある馬小屋に到着した俺。
 預けていた馬を引き取り、しばらくルーシアを待つ。
 急がないといけないのに。そう思うと、時間の流れが早く感じてしまう。

「はぁ、はぁ、お待たせ」

 予想より早く戻ってきたルーシアは、息を切らしながら馬へと跨がる。
 特に目立った変化はないが、さっきより鞄がパンパンに張っている気がするな。

「よし、グロース山に向かうぞ」

 すぐさま俺も馬に跨がり、手綱を力いっぱいに引いた。
 最高速度でグロース山を目指す為に。
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