王立学園の二人〜平穏に暮らしたい少年と、平凡を知りたい少女が出会ったら〜

緋色

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第二章 中央地域 南の街ギリアス

二話 いざ、中央地域へ

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 今回俺達が受けた依頼クエストの依頼主は、国内各地に魔法具を売っている行商人だ。
 その依頼主と待ち合わせた場所へ向かう為、しばらく街の中を歩く。

「ねぇ、ちょっとだけ寄り道しても、平気よね」

 だが、突然ルーシアが洋菓子店の前で立ちどまった。
 陳列窓ショーウインドウに張り付きながら、店内も窺い出して。

「ルーシア、ローレライは少しでも早くギリアスに行きたいんだぞ。また今度にしろよ。なぁ、ローレライ」

 俺は賛同を求めるように、ローレライの方へ振り向いた。
 しかし、さっきまで俺の後ろにいたはずだったローレライは、忽然と姿を消していた。

「ちょっとだけ。……ちょっとだけなら、いいよね」

 いつの間にか、ルーシアの隣で窓に張り付いているローレライ。
 ……店員さん、苦笑いしてるじゃないか。

 カラーン、カラーン。

 結局二人に押し負けてしまい、店の扉を鳴らす俺達。
 休日だからなのか、多くの客は若者ばかりだ。
 ショーケースには彩り豊かなケーキやスフレなどが並び、それを見て楽しげに相談するルーシアとローレライ。
 どうやらこの店は、先に会計してから好きな席で食べる仕組みのようだ。

「お待たせ」

 先に席を確保していた俺の隣に、少し遅れて座るローレライ。
 その手にあるのは、ミルクティーと苺のミルフィーユだった。
 うん、実に女の子らしい。

「遅くなってごめんね! どれにしようか迷っちゃったわ!」

 そう言うルーシアが台車カートで運んできたのは……。
 キャラメルマキアートとモンブラン、ミルクレープ、ショートケーキ、ティラミス、フルーツタルト、ブラウニー……。

「って、おい! どんだけ持ってきてんだよ! 大食い選手フードファイターかお前は!」

「えへへ。気づいたら全部頼んじゃってて……」

 照れたように笑うルーシアだったが、その表情には後悔なんてものを微塵も感じられない。

「「  いただきまーす! 」」

 しかし、さすがはお嬢様と可憐を具現化した人物だ。
 二人とも上品にスイーツを嗜んでいる。
 一名だけ、尋常ではない量だが。

 ━ドリアスの街・宿屋━

 待ち合わせの時間に到着した俺達は、早速依頼主と予定を話し合う事に。
 と言っても、ただ荷馬車に並走して王都まで行くだけなのだから、話はすぐに終わった。
 まぁ、ランクの低い仕事だしな。

「あれ? ローレライ、そんなの着てたか」

「ううん、今着たんだよ」

 いつの間にか、ローレライは腰丈ほどの白いローブマントを羽織っていた。
 きっと冒険者の先輩として、この仕事に気合いを入れている証なのかもしれない。

「さあ、みんな! 王都に出発よ!」

 先頭の馬に乗るルーシアが叫び、拳を掲げてやる気を見せる。
 その後ろに荷馬車が追従し、俺とローレライが後ろを警戒する陣形な訳だが。
 ちょっとした隊商キャラバンの出来上がりだな。

 ━西方地域・森の中━

 ドリアスを出てからしばらくが経った頃、俺達は魔物の群れと退治していた。
 普段なら簡単に撃退できる相手だが、護衛ともなると話は違う。
 荷馬車を襲われて積み荷に傷が付けば、報酬は無いのだから。

「氷の精霊フェンリル。力を貸せ!氷結魔法アイス!」

「雷の精霊ボルト。力を貸せ! 雷撃魔法ライトニング!」

 ルーシアが氷の礫を打ち出し、同時にローレライも雷の矢を放った。
 二人の攻撃が魔狼ウェアウルフを一瞬で貫き、再び陣形へと戻る。

「ローレライ! あと何匹いる?」

「あと二匹かな。森に、隠れてるよ」

 その時、二匹のウェアウルフが荷馬車に飛びかかった。

剣閃けんせん!」

 ルーンソードを構えた俺は、飛ぶ斬撃を放ち、二匹纏めて両断した。
 そして、再び静かな森へと返っていく。
 ローレライの言うとおり、この二匹が最後の魔物だったようだ。

『みんなお疲れ様。少し先に湖があるから、今日はそこで夜営をしようじゃないか』

 戦闘が終わったと判断したのか、荷馬車を守っていた行商人がそう提案してくれた。

 王都へ行くには、俺達のいる森の獣道を走るのが一番の近道らしい。
 だが、比例して魔物との遭遇率が上がるのだから、さすがに俺達にも疲労が見えていた。

 ━翌日・森の湖━

 朝早くから出発した俺達は、ついに草木が鬱蒼としていた森の中を抜けた。
 それはまさしく、西方地域に別れを告げたという事。
 代わりに見えてくるのは、所々に聳える枯れた木々だ。

「うわっ、恐いな……」

 荒れた谷にさしかかると、崖の下には深い谷が。
 水を叩く音を響かせた激流が流れ、恐怖と緊張感を煽ってくる。

「ミスト、昔から高いところ苦手だもんね。木登りした時なんか、恐くて泣き喚いてたし」

「いつの話だよ」

「えっ、去年だよ? 大樹のてっぺんで泣いてたじゃん」

「あんなの木登りじゃねえわ! っていうか、ルーシアが上級魔法で吹っ飛ばしたんだろ!」

 苦い思い出に出てきた大樹とは、アルヘム村の近くにある巨大な老齢の木だ。
 どれだけ季節が変わろうとも緑を絶やさず、どんな嵐が吹き荒れても決して折れないという逸話を持つ。
 そんな神聖な大樹に好きこのんで登る罰当たりなんて、まずいないだろう。

『みなさん! お話し中すまんが、また魔物だよ!』

「あっ、本当だわ!」

「ルーシア、先頭なんだから前見て走れよ」

 行商人が叫んだ通り、前方から一〇体の魔骸スケルトンが隊列を組んで襲いかかってきていた。
 こいつ等は過去の戦で死んだ兵士の亡骸。なんて噂もあるが、当然定かではない。

 〈ゲギャギャギャー!〉

 崖の上からも一〇体のスケルトンが現れ、一斉に飛び降りてくる。

 〈ギャギャギャ……アゥアァ!〉

 だが、着地の衝撃で数体のスケルトンが足を骨折してしまっていた。
 痛覚があるのか、足を押さえてもがき苦しんでいる。

「アホだ」

「アホね」

「お気の毒」 

 その時、前方から現れていたスケルトン達が突然走り出す。狙いはやはり荷馬車だ。
 すかさず間に割って入った俺は、片手剣ルーンソードと短槍コルセスカでスケルトンの猛攻を捌く。

「光の精霊ウィスプ。力を貸せ! 聖柱降魔法ホーリーレイ!」

 後衛に陣を構えたルーシアが、両手を空に掲げて魔法を唱えた。
 空がきらきらと煌めき、いくつもの光の柱を降り注がせる。

「さすが天才魔導師。相手の弱点も見極めてるとは」

「当然だわ。魔法は闇雲に撃つだけじゃないのよ」

 光属性の魔法が効果覿面だった様子で、粉々に砕け散った一〇体のスケルトンが魔石に変わる。

「ローレライ、後ろは平気か?」

「うん、平気だよ」

 しかし返事とは真逆に、ローレライは六体のスケルトンに包囲されていた。
 すかさず応援に向かおうとしたが、細剣エストックを構えたローレライが突然走り出す。
 優雅に舞い踊るようにスケルトンの剣閃を躱し、すり抜けていく。
 そのすれ違いざま、流麗な剣技で斬り伏せていった。

「ごめんね。急いでるの」

 小さくそう言うと、ローレライは骨折してもがき苦しんでいた哀れなスケルトン達を介錯してやった。
 まさか、武器を持ったローレライがここまで強かったとはな。

 その後も、辺りを警戒しながら馬を走らせると、ようやく殺風景な谷を抜けた。
 眼前には、広大な草原が一面に姿を見せてくれる。

『ここからは王国の中央地域、ウェスティア大草原だよ! 明日の昼前には、王都ハルモニアだ!』

「わあーっ! まるで緑色の海みたいね! 」

「あぁ、確かに。すごいな」

「 ……。」

 これがグランフィリア王国の中心、中央地域なのか。
 俺は、産まれて初めて王都に足を踏み入れた。
 そう思ったら、なんだか感慨深い。
 旅っていうのも、案外悪くないな。
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