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第二章 中央地域 南の街ギリアス
九話 蒼白の闘気
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激しい戦闘を重ね、俺達は飛竜に深手を負わせるところまで戦い抜いていた。
それでも尚、立ち続ける飛竜。
「なぁ、オフィーリア。まだ意識が残っているなら、聞いてくれ」
ローレライが危険を冒してまで助けたかった飛竜は、戦いの最中に悲しげな瞳をしていた。
だからわかる。呪いに抗っているのだと。
オフィーリアもまた、闘っているのだと。
なら、俺にできる事はただ一つ。
「必ず助けてやるから。だから、もう少しだけ待ってろ!」
大地を踏みしめ、飛竜に向けて全力で駆け出した俺は、大きく宙を舞った。
すぐさま迎撃態勢に入る飛竜。
その時、オフィーリアの精神が僅かに勝ったのか、動きが鈍った。
「やっぱりな。まだ意識があるのか」
ルーンソードとコルセスカを交差に構え、振り上げられた飛竜の尻尾を受け止める。
力ずくで尻尾を弾き返し、両手に魔力を込めた。
俺の魔力量は他者よりも遥かに少ない。
だから使える魔法なんて、初歩の属性付与魔法くらいだ。
だが今は、それで十分。
「なぁ、オフィーリア。今どんな気持ちなんだ。グローインを傷つけて、慕ってくれる人まで傷つけて。きっと、辛いだろうな……」
〈グルルルル〉
飛竜の動きが、更に鈍くなる。
オフィーリアの意識が反映されたのか。ただの偶然なのか。
その答えは……。
あとで訊いてやるとしよう。
「もうすぐ自由にしてやるから。だからもう少しだけ、痛いのを我慢してくれ!」
魔力を一気に解き放ち、冷気を生み出す。
「 氷結剣魔法。氷結槍魔法」
身体を操られているのなら、動けなくしてやればいい。
これだけ重傷の今なら、弱った飛竜なら、抗う事なんてできないはずだ。
ルーンソードを後ろに構え、コルセスカを前へと突き出す。
ただ一つの懸念は、この武器が反動に耐えられるかだ。
魔法剣を維持した状態で闘気の力を使えば、並みの強度では粉々に砕けてしまうのだから。
「だから一度だけでいい。悪いが、堪えてくれよ」
その時、飛竜が翼を広げ、羽ばたかせた。
ふわりと身体を浮かせ、突風と共に上空へ舞う。
その瞬間、重力と翼の速度を加えながら隕石の如く急降下してきた。
「良いね、自分から来てくれるのか。なら、空でご対面と行こうか!」
思いきり俺も飛びあがり、飛竜めがけて一直線に飛翔した。
「……鬼灯流奥義! 霧氷雪月花!
飛竜とぶつかり合う寸前、絶対零度の剣圧を繰り出し、飛竜の動きを鈍らせた。
空に舞い散る雪のように、蒼白の闘気を帯びた氷の槍を突き刺す。
すかさず闘気と氷の剣で弧月の斬撃を撃ち放つ。残された残月が、飛竜の身体を何度も斬りつけていく。
「これで、終わりだぁーっ!」
更に膨大な闘気を右手に圧縮させ、渾身の正拳突きを繰り出した。
飛竜の傷口からは、氷の結晶が次々と生み出されていく。
甲高い音と共に、飛竜の身体は大きな雪の結晶に包み込まれていった。
「悪いな。よく耐えてくれた」
成す術もなく落下した飛竜と共に、着地した俺はルーンソードとコルセスカにそう言う。
二つの武器は、静かに鋼色の輝きを放つ。
「お疲れさま、ミスト」
「あぁ、待たせたな」
ローレライの腰に手を回し、抱き起こして肩を貸した。
そして、倒れた飛竜の元へと向かう俺とローレライ。
その隣には、ルーシアとグローインも共に並んで歩く。
「ねえミスト、少しは魔力が上がったんじゃない? 今ならできるかもよ? 最弱魔法」
「馬鹿にしすぎだろ! できないけど」
「がっはっはっは! 本当に大した童じゃ! 今宵は存分に酒を奢っちゃるわい」
「まぁ、みんなのお陰だよ。っていうか、酒なんか飲めないって」
まるで普段のように笑い合いながら、私達は歩き続けた。
その時、飛竜の身体が柔らかな光に包まれ、氷が粉雪のように飛び去った。
光の輝きが消えていくと同時に、オフィーリアは少女の姿へと変わっていく。
「やっぱり、こっちが本当の姿なのか?」
「そんなの本人に訊いてみればいいじゃない。でしょ? ローレライ」
「うん、そうだね」
ローレライはオフィーリアの頭をひざに乗せ、口許に少しずつエリクシールを溢した。傷だらけだった彼女の身体が、瞬く間に癒されていく。
風貌は胡散臭い魔女だったが、これを見たら疑う余地は無い。
ゲイちゃんの知識と技術は本物だ。
「……ありがとう、ローレライ」
そう言いながら、オフィーリアがうっすらと瞼を開いた。
その顔を見た俺達は、本当に終わったのだと、安堵の笑みを溢す。
「遅くなって、ごめんね」
「貴方を守るつもりだったのに、かえって助けられてしまいましたね。私も、まだまだ未熟だわ」
「そんな事ないよ。オフィーリアは、ずっと私の心を、守ってくれてたんだから」
ローレライは、包み込むようにオフィーリアを抱き締めた。
その光景を眺めていたルーシアは涙を流して、微笑んでいて。
こんな二人の姿を見させられたら、俺でさえも胸を打たされる。
「おぉおぉ、おぉおぉ! 時にオフィーリアよ、なぜお前さんは、人の姿になっとるんじゃ?」
グローインの問いに、笑顔で返すオフィーリア。
エリクシールの治癒力が効いてきたのか、身体の自由が戻ってきたのだろう。
それでも心配したローレライに手を貸され、ゆっくりと身体を起こす。
「今まで黙っていてごめんなさい。ドラゴンの中には私のように人と竜、二つの姿を持つ者がいるのよ。私達の間では、竜人族と呼ばれているわ」
「ほう、そいつは初耳じゃな。まあ、細かい事は気にせんわい! お前さんは、お前さんのままじゃからなぁ! ガッハッハッハ!」
グローインが大きな声で笑うと、釣られて微笑むローレライ。
口元を手で押さえながら、小さく笑っていた。
「ミストさん、ルーシアさん、お二人にも迷惑をかけてしまいましたね。本当に、どうお詫びをしたらいいのか……」
申し訳なさそうに俯くオフィーリア。
「いや、俺の方こそ。荒いやり方で悪かった」
「オフィーリアさん、気にしないでください。もう終わったんですから」
「ありがとうミストさん、ルーシアさん。ローレライが、こんなにも良い友に巡り会えて、本当に良かった」
オフィーリアは少しだけ明るい表情になり、優しく微笑んだ。
「闘っている時、意識だけはありました。傷つけたくないのに、身体が言う事を聞かなくて。悲しくて、本当に辛かったわ」
「私も、たくさん傷つけちゃったんだよ。だから、気にしないで」
「ええ、とても痛かったわよ。でも嬉しかったわ。だって、貴方の成長を感じられたんだもの」
まるで心が通じ合う姉妹のように、手を握る二人。
「……うっ! ううっ」
その時、苦しむオフィーリアの身体から、紫色の霧が勢いよく飛び出した。
エリクシールの影響なのか、オフィーリアの身体から拒絶されたように。
『あーあ、負けてしまいましたか。まさか、わたくしの魔法を打ち消す薬があるだなんて』
再び聞こえてくる謎の声。
だが、その声はオフィーリアの身体ではなく、霧の中から響いていた。
それでも尚、立ち続ける飛竜。
「なぁ、オフィーリア。まだ意識が残っているなら、聞いてくれ」
ローレライが危険を冒してまで助けたかった飛竜は、戦いの最中に悲しげな瞳をしていた。
だからわかる。呪いに抗っているのだと。
オフィーリアもまた、闘っているのだと。
なら、俺にできる事はただ一つ。
「必ず助けてやるから。だから、もう少しだけ待ってろ!」
大地を踏みしめ、飛竜に向けて全力で駆け出した俺は、大きく宙を舞った。
すぐさま迎撃態勢に入る飛竜。
その時、オフィーリアの精神が僅かに勝ったのか、動きが鈍った。
「やっぱりな。まだ意識があるのか」
ルーンソードとコルセスカを交差に構え、振り上げられた飛竜の尻尾を受け止める。
力ずくで尻尾を弾き返し、両手に魔力を込めた。
俺の魔力量は他者よりも遥かに少ない。
だから使える魔法なんて、初歩の属性付与魔法くらいだ。
だが今は、それで十分。
「なぁ、オフィーリア。今どんな気持ちなんだ。グローインを傷つけて、慕ってくれる人まで傷つけて。きっと、辛いだろうな……」
〈グルルルル〉
飛竜の動きが、更に鈍くなる。
オフィーリアの意識が反映されたのか。ただの偶然なのか。
その答えは……。
あとで訊いてやるとしよう。
「もうすぐ自由にしてやるから。だからもう少しだけ、痛いのを我慢してくれ!」
魔力を一気に解き放ち、冷気を生み出す。
「 氷結剣魔法。氷結槍魔法」
身体を操られているのなら、動けなくしてやればいい。
これだけ重傷の今なら、弱った飛竜なら、抗う事なんてできないはずだ。
ルーンソードを後ろに構え、コルセスカを前へと突き出す。
ただ一つの懸念は、この武器が反動に耐えられるかだ。
魔法剣を維持した状態で闘気の力を使えば、並みの強度では粉々に砕けてしまうのだから。
「だから一度だけでいい。悪いが、堪えてくれよ」
その時、飛竜が翼を広げ、羽ばたかせた。
ふわりと身体を浮かせ、突風と共に上空へ舞う。
その瞬間、重力と翼の速度を加えながら隕石の如く急降下してきた。
「良いね、自分から来てくれるのか。なら、空でご対面と行こうか!」
思いきり俺も飛びあがり、飛竜めがけて一直線に飛翔した。
「……鬼灯流奥義! 霧氷雪月花!
飛竜とぶつかり合う寸前、絶対零度の剣圧を繰り出し、飛竜の動きを鈍らせた。
空に舞い散る雪のように、蒼白の闘気を帯びた氷の槍を突き刺す。
すかさず闘気と氷の剣で弧月の斬撃を撃ち放つ。残された残月が、飛竜の身体を何度も斬りつけていく。
「これで、終わりだぁーっ!」
更に膨大な闘気を右手に圧縮させ、渾身の正拳突きを繰り出した。
飛竜の傷口からは、氷の結晶が次々と生み出されていく。
甲高い音と共に、飛竜の身体は大きな雪の結晶に包み込まれていった。
「悪いな。よく耐えてくれた」
成す術もなく落下した飛竜と共に、着地した俺はルーンソードとコルセスカにそう言う。
二つの武器は、静かに鋼色の輝きを放つ。
「お疲れさま、ミスト」
「あぁ、待たせたな」
ローレライの腰に手を回し、抱き起こして肩を貸した。
そして、倒れた飛竜の元へと向かう俺とローレライ。
その隣には、ルーシアとグローインも共に並んで歩く。
「ねえミスト、少しは魔力が上がったんじゃない? 今ならできるかもよ? 最弱魔法」
「馬鹿にしすぎだろ! できないけど」
「がっはっはっは! 本当に大した童じゃ! 今宵は存分に酒を奢っちゃるわい」
「まぁ、みんなのお陰だよ。っていうか、酒なんか飲めないって」
まるで普段のように笑い合いながら、私達は歩き続けた。
その時、飛竜の身体が柔らかな光に包まれ、氷が粉雪のように飛び去った。
光の輝きが消えていくと同時に、オフィーリアは少女の姿へと変わっていく。
「やっぱり、こっちが本当の姿なのか?」
「そんなの本人に訊いてみればいいじゃない。でしょ? ローレライ」
「うん、そうだね」
ローレライはオフィーリアの頭をひざに乗せ、口許に少しずつエリクシールを溢した。傷だらけだった彼女の身体が、瞬く間に癒されていく。
風貌は胡散臭い魔女だったが、これを見たら疑う余地は無い。
ゲイちゃんの知識と技術は本物だ。
「……ありがとう、ローレライ」
そう言いながら、オフィーリアがうっすらと瞼を開いた。
その顔を見た俺達は、本当に終わったのだと、安堵の笑みを溢す。
「遅くなって、ごめんね」
「貴方を守るつもりだったのに、かえって助けられてしまいましたね。私も、まだまだ未熟だわ」
「そんな事ないよ。オフィーリアは、ずっと私の心を、守ってくれてたんだから」
ローレライは、包み込むようにオフィーリアを抱き締めた。
その光景を眺めていたルーシアは涙を流して、微笑んでいて。
こんな二人の姿を見させられたら、俺でさえも胸を打たされる。
「おぉおぉ、おぉおぉ! 時にオフィーリアよ、なぜお前さんは、人の姿になっとるんじゃ?」
グローインの問いに、笑顔で返すオフィーリア。
エリクシールの治癒力が効いてきたのか、身体の自由が戻ってきたのだろう。
それでも心配したローレライに手を貸され、ゆっくりと身体を起こす。
「今まで黙っていてごめんなさい。ドラゴンの中には私のように人と竜、二つの姿を持つ者がいるのよ。私達の間では、竜人族と呼ばれているわ」
「ほう、そいつは初耳じゃな。まあ、細かい事は気にせんわい! お前さんは、お前さんのままじゃからなぁ! ガッハッハッハ!」
グローインが大きな声で笑うと、釣られて微笑むローレライ。
口元を手で押さえながら、小さく笑っていた。
「ミストさん、ルーシアさん、お二人にも迷惑をかけてしまいましたね。本当に、どうお詫びをしたらいいのか……」
申し訳なさそうに俯くオフィーリア。
「いや、俺の方こそ。荒いやり方で悪かった」
「オフィーリアさん、気にしないでください。もう終わったんですから」
「ありがとうミストさん、ルーシアさん。ローレライが、こんなにも良い友に巡り会えて、本当に良かった」
オフィーリアは少しだけ明るい表情になり、優しく微笑んだ。
「闘っている時、意識だけはありました。傷つけたくないのに、身体が言う事を聞かなくて。悲しくて、本当に辛かったわ」
「私も、たくさん傷つけちゃったんだよ。だから、気にしないで」
「ええ、とても痛かったわよ。でも嬉しかったわ。だって、貴方の成長を感じられたんだもの」
まるで心が通じ合う姉妹のように、手を握る二人。
「……うっ! ううっ」
その時、苦しむオフィーリアの身体から、紫色の霧が勢いよく飛び出した。
エリクシールの影響なのか、オフィーリアの身体から拒絶されたように。
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