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第三章 王立学園━大魔剣闘技祭━
十五話 ただ、認めてほしくて
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休憩時間を終えた私達は、闘技場へと戻ってきていた。
会場の電光板には、すでに対戦表が表示されていて……。
【Aステージ準決勝。一年生ルーシア・ミラ・ランドルフ対、一年生ローラ・アディール】
【Bステージ準決勝。二年生ウィリアム・スミス対、三年生アスカード・ゼル・デスティリア】
もしかしたらと期待していたけれど、やはり対戦相手はルーシアだった。
そう。私は今からルーシアと戦う。
この大会を見ていてわかったけれど、ミストとルーシアの強さは別格だ。
相手は上級生な上に勇者科という特待生だったのに、二人は圧勝してきているのだから。
きっと私では歯が立たないだろう。
それでも、情けない姿だけは見せたくない。
失望されたくない。
「ねえ、ミスト。アスカード先輩って、ミストと同じ闘気を使える人よね。やっぱり強いのかしら」
「闘気……?」
ルーシアの聞き慣れない単語に、ふと疑問を抱く私。
「ローラも見たはずよ。ミストが剣技を使う時に放つ、蒼白色の霊気を」
「あっ、確かに見た事あるね。そういえば、魔力とは少し、違うように感じた」
「まぁ、使ってる俺でも、よく知らないんだけどな。要領を教えてくれた婆さんも、もういないし……」
使用しているミストですら未知の力、闘気とは。
でも、彼の強さはそれだけではないと思う。
卓越した運動神経と、洗練された判断能力だってあるのだから。
『只今より。両ステージの。準決勝戦を開始します。各選手は。舞台上に入場してください』
その時、準決勝の始まりを告げるアナウンスが会場に流れた。
「さあ、ローラ! 行くわよ!」
「うん、行こう」
笑顔で立ち上がるルーシアは、そっと手を差し出してくれた。
私がその手を握ると、そのままルーシアに引かれて舞台へと駆け出していった。
そんな私達を、苦笑いを浮かべて見送ってくれるミスト。
『それでは、Aステージ準決勝戦、一年生ルーシア・ミラ・ランドルフ対、一年生ローラ・アディール。始め!』
試合開始と同時に、私は長弓エルフィンボウを構えた。
ルーシアもまた、魔力の杖と短剣ホークアイを両手に持つ。
「ルーシア、お願いがあるんだけど」
「何かしら。降参以外なら聞いてあげるわよ」
「手を、抜かないで」
「……ローラ」
真剣な私の一言に、ルーシアが無意識に武器を降ろしてしまう。
「……わかったわ。本気を見せてあげる」
「ありがとう、ルーシア」
そしてルーシアは、再び武器を構えた。
そんな彼女の意思が伝わった私は、笑顔を向けて一気に魔力を解き放つ。
「当たって!」
魔力の矢を創り出し、立て続けに九連射の先制攻撃を繰り出す。
すぐさま反応したルーシアもまた、魔力を纏わせた杖を旋風させ、次々と矢を叩き落とす。
「ローラ、遠距離なら私の独壇場よ! 水の精霊ウンディーネ、力を貸せ! 衝撃水魔法《アクアインパクト》!」
「私だって、魔法は使えるんだよ! 氷の精霊フェンリル、力を貸せ! 氷結槍魔法!」
ルーシアが放つ圧縮された水の球体を、私は氷の槍で貫く。
しかし、その行動さえもルーシアには想定内。
更に火炎魔法を撃ち出していたルーシアは、三つの魔法を重ねて爆散させた。
水飛沫と霧が舞台に舞い、視界が霞む。
「行っけぇ! 風刃魔法!」
濃霧の中、立て続けにルーシアが風の魔法を連発してくる。
まるで踊らされるように躱わす事しかできない私は、必死に目を凝らして魔法の射出地点を探す。
その時、霧の中からわずかな光が明滅していた。
「……そこだ!」
細剣エストックを抜き、全速力で駆け出す私。
でも、このまま行けば先に魔法をぶつけられてしまう。
そう予測した私は、重心を下げて更に加速する。
「見えた!」
間合いを詰め、斬りかかろうとした瞬間。
「……これは、光魔法」
そこには、微弱に輝く光の球体が浮いてるだけだった。
「残念だったわね! それは囮よ」
「えっ?」
光の球体のすぐ後ろで、微かにルーシアの声が聞こえた。
そこには、ホークアイを構えて微笑むルーシアが。
そう。これは罠だ。
「光の精霊ウィスプ、力を貸せ! 照明魔法!」
気づいた時にはすでに間に合わず、至近距離で閃光を撃ち出された私は、咄嗟に手のひらで視界を覆ってしまった。
「それ!」
ルーシアは巧みにホークアイを操り、連続で斬りつけてくる。
「……はぁっ!」
すぐにエストックでホークアイを受け流し、ルーシアに斬り返す私。
「おっと! 退却退却!」
攻勢に転じたのも束の間、忽然とルーシアの姿が霧の中へと消えた。
次第に霧が晴れてくると、舞台の端まで後退したルーシアが立っていた。
「ふぅ、危なかったわ。速さならローラの方が上だものね」
「ううん、ルーシアの方が、やっぱりすごいよ」
私は微笑み、エストックを構えた。
ルーシアもまた、魔力の杖を構える。
「行くわよ! 火の精霊サラマンダー、力を貸せ! 火炎壁魔法《フレイムウォール》!」
ルーシアは両手に魔力を溜め、三連続で炎の魔法を放つ。
巨大な炎が地面から噴き出すと、私を囲むように三方向から炎の壁が押し寄せてきていた。
「……逃げ場が、無い」
魔法の発現場所をここまで精密に操作できる人はそう多くはない。
もしかしたら、本当にルーシアは学園最強の魔導師なのかもしれない。
「それでも私は、諦めない!」
ルーシアと私では魔力の差が違いすぎるのだから、魔法を撃ち合ったところで負けは見えている。
ならここは、上に逃げるしか……。
ううん、それも罠だ。
「氷結細剣魔法!」
咄嗟に判断した私は、エストックを氷の細剣へと変化させた。
そして、一気に正面の炎壁へ走り出す。
頭上からルーシアが放つ光の柱が降り注ぐ中を、軽快に左右に飛び退いて紙一重で躱していく。
もしあのまま上に跳んでいたなら、今頃は光魔法にやられていた。
本当に、ルーシアは恐ろしい。
「行くよ。スウェプトヒルト!」
勢いよく背面で飛び上がり、弧を描くように炎の壁へと飛び込む私。
身体に回転をかけ、氷の竜巻と化して炎の壁を斬り裂いた。
「嘘でしょ!? 炎を突き破ってきたの!?」
「はぁーっ!!」
炎の壁を突き破ると共にルーシアを飛び越し、数発の斬撃を浴びせた。
「痛たた……。やるわね、ローラ」
「ルーシアも、すごいよ。戦いの中で、何重もの罠を仕掛けられるなんて」
私の全力が、少しでもルーシアに届いたんだ。
そう思うと、不思議と心が高揚してくる。
確かに今の私では勝ち目なんてない。
でも、奇跡が起きれば……。
「よくわかったわね。その通り、これも罠よ」
でも、そんな夢は一瞬にして砕け散る事となった。
余裕の笑みで空を見上げるルーシアの顔は、勝利を確信していたのだから。
「……あれは、雷の上級魔法」
ルーシアが掲げていた右腕の上空には、雷鳴が轟く黒雲が顕現されていた。
「ごめんね。炎の壁は、上級魔法を撃つ為の時間稼ぎだったの」
その直後、ルーシアの掲げられた右手が勢いよく振り下ろされた。
「行っけぇーっ! 雷神怒槌魔法!!」
無数の落雷が一点に収束し、雷鳴が喧騒する。
瞬時にエルフィンボウを真上に向けた私は、遥か上空を狙う。
大量の魔力を解き放ち、光の矢を創り出した。
「見ててね、ミスト、ルーシア。これが私の、全身全霊の一撃だよ!」
エルフィンボウの弦を最大まで引き絞り、光の矢が閃光を放つ。
「届いて! 時雨燕!」
全魔力を注いだ光の矢を放し、巨大な光の鳥の姿へと変えさせた。
激しい轟音と共に、渦雷と激突した。
光の鳥が渦雷を食い千切り、渦雷が光の鳥を突き破る。
相殺された二人の攻撃が、舞台に激しい衝撃を巻き起こした。
隣の舞台で戦う生徒すらも、戦闘を中断せざるを得なくなるほどに。
「はぁ、はぁ……。もう、魔力が……」
瞬発的に魔力を解放した影響で、視界が眩む。
でも、試合はまだ続いている。
そう思った私は、意識を保とうと額を押さえ、ふらつく手でエルフィンボウを構えた。
その時。
「ごめんね、ローラ。上級魔法は、もう一つ用意していたの」
至近距離から声が聞こえ、すぐさま後ろへと振り返った。
「風の主神スサノオ、神罰を下せ! 風神狂飆魔法!!!」
目の前にまで接近を赦してしまったルーシアの左手が、私へと迫り来る。
荒ぶる嵐を、その腕に纏って。
「駄目、避けられ……ない」
私は避ける間も、エストックに持ち換える猶予も無かった。
両腕を交差に構えて身構えるしか、できなかった。
「うぅっ! かはっ!」
ルーシアの左手が、地面から振り上げるように打ち込まれた。
身構えた両腕をすり抜けられ、腹部に突き立てられる。
呼吸器官が乱れ、言う事を聞かない。
凝縮された嵐が暴れ出し、抉られるような激痛が走る。
「うぅっ! あぁぁーっ!!」
「終わりよ、ローラ! ふっ飛べぇーっ!!」
ルーシアは莫大な魔力を放出させ、左手の嵐を巨大化させた。
激しい竜巻が私もろとも観客席の壁まで吹き荒ぶ。
「きゃあ!」
ものすごい勢いで叩き付けられ、その場に両ひざを突いてしまった私。
場外負けで戦闘不能。文句なしの完敗だ。
霞んだ瞳で舞台を見つめると、そこにはルーシアが立っていた。
息ひとつ乱さず、私を見つめながら。
『そこまで! 勝者、ルーシア・ミラ・ランドルフ!』
会場からは、大きな歓声が響く。
やっぱり、負けちゃったね。
ルーシア、わざと私を飛ばして場外負けを狙ってたんだ。
これ以上、怪我をさせないように。
フフフ。本当に、敵わない、な……。
「……ーラ! ねぇ! 大丈夫なの!? 起きて! ロー……」
あれ……なんだか。
ルーシアの顔が、ぼやけて……。
会場の電光板には、すでに対戦表が表示されていて……。
【Aステージ準決勝。一年生ルーシア・ミラ・ランドルフ対、一年生ローラ・アディール】
【Bステージ準決勝。二年生ウィリアム・スミス対、三年生アスカード・ゼル・デスティリア】
もしかしたらと期待していたけれど、やはり対戦相手はルーシアだった。
そう。私は今からルーシアと戦う。
この大会を見ていてわかったけれど、ミストとルーシアの強さは別格だ。
相手は上級生な上に勇者科という特待生だったのに、二人は圧勝してきているのだから。
きっと私では歯が立たないだろう。
それでも、情けない姿だけは見せたくない。
失望されたくない。
「ねえ、ミスト。アスカード先輩って、ミストと同じ闘気を使える人よね。やっぱり強いのかしら」
「闘気……?」
ルーシアの聞き慣れない単語に、ふと疑問を抱く私。
「ローラも見たはずよ。ミストが剣技を使う時に放つ、蒼白色の霊気を」
「あっ、確かに見た事あるね。そういえば、魔力とは少し、違うように感じた」
「まぁ、使ってる俺でも、よく知らないんだけどな。要領を教えてくれた婆さんも、もういないし……」
使用しているミストですら未知の力、闘気とは。
でも、彼の強さはそれだけではないと思う。
卓越した運動神経と、洗練された判断能力だってあるのだから。
『只今より。両ステージの。準決勝戦を開始します。各選手は。舞台上に入場してください』
その時、準決勝の始まりを告げるアナウンスが会場に流れた。
「さあ、ローラ! 行くわよ!」
「うん、行こう」
笑顔で立ち上がるルーシアは、そっと手を差し出してくれた。
私がその手を握ると、そのままルーシアに引かれて舞台へと駆け出していった。
そんな私達を、苦笑いを浮かべて見送ってくれるミスト。
『それでは、Aステージ準決勝戦、一年生ルーシア・ミラ・ランドルフ対、一年生ローラ・アディール。始め!』
試合開始と同時に、私は長弓エルフィンボウを構えた。
ルーシアもまた、魔力の杖と短剣ホークアイを両手に持つ。
「ルーシア、お願いがあるんだけど」
「何かしら。降参以外なら聞いてあげるわよ」
「手を、抜かないで」
「……ローラ」
真剣な私の一言に、ルーシアが無意識に武器を降ろしてしまう。
「……わかったわ。本気を見せてあげる」
「ありがとう、ルーシア」
そしてルーシアは、再び武器を構えた。
そんな彼女の意思が伝わった私は、笑顔を向けて一気に魔力を解き放つ。
「当たって!」
魔力の矢を創り出し、立て続けに九連射の先制攻撃を繰り出す。
すぐさま反応したルーシアもまた、魔力を纏わせた杖を旋風させ、次々と矢を叩き落とす。
「ローラ、遠距離なら私の独壇場よ! 水の精霊ウンディーネ、力を貸せ! 衝撃水魔法《アクアインパクト》!」
「私だって、魔法は使えるんだよ! 氷の精霊フェンリル、力を貸せ! 氷結槍魔法!」
ルーシアが放つ圧縮された水の球体を、私は氷の槍で貫く。
しかし、その行動さえもルーシアには想定内。
更に火炎魔法を撃ち出していたルーシアは、三つの魔法を重ねて爆散させた。
水飛沫と霧が舞台に舞い、視界が霞む。
「行っけぇ! 風刃魔法!」
濃霧の中、立て続けにルーシアが風の魔法を連発してくる。
まるで踊らされるように躱わす事しかできない私は、必死に目を凝らして魔法の射出地点を探す。
その時、霧の中からわずかな光が明滅していた。
「……そこだ!」
細剣エストックを抜き、全速力で駆け出す私。
でも、このまま行けば先に魔法をぶつけられてしまう。
そう予測した私は、重心を下げて更に加速する。
「見えた!」
間合いを詰め、斬りかかろうとした瞬間。
「……これは、光魔法」
そこには、微弱に輝く光の球体が浮いてるだけだった。
「残念だったわね! それは囮よ」
「えっ?」
光の球体のすぐ後ろで、微かにルーシアの声が聞こえた。
そこには、ホークアイを構えて微笑むルーシアが。
そう。これは罠だ。
「光の精霊ウィスプ、力を貸せ! 照明魔法!」
気づいた時にはすでに間に合わず、至近距離で閃光を撃ち出された私は、咄嗟に手のひらで視界を覆ってしまった。
「それ!」
ルーシアは巧みにホークアイを操り、連続で斬りつけてくる。
「……はぁっ!」
すぐにエストックでホークアイを受け流し、ルーシアに斬り返す私。
「おっと! 退却退却!」
攻勢に転じたのも束の間、忽然とルーシアの姿が霧の中へと消えた。
次第に霧が晴れてくると、舞台の端まで後退したルーシアが立っていた。
「ふぅ、危なかったわ。速さならローラの方が上だものね」
「ううん、ルーシアの方が、やっぱりすごいよ」
私は微笑み、エストックを構えた。
ルーシアもまた、魔力の杖を構える。
「行くわよ! 火の精霊サラマンダー、力を貸せ! 火炎壁魔法《フレイムウォール》!」
ルーシアは両手に魔力を溜め、三連続で炎の魔法を放つ。
巨大な炎が地面から噴き出すと、私を囲むように三方向から炎の壁が押し寄せてきていた。
「……逃げ場が、無い」
魔法の発現場所をここまで精密に操作できる人はそう多くはない。
もしかしたら、本当にルーシアは学園最強の魔導師なのかもしれない。
「それでも私は、諦めない!」
ルーシアと私では魔力の差が違いすぎるのだから、魔法を撃ち合ったところで負けは見えている。
ならここは、上に逃げるしか……。
ううん、それも罠だ。
「氷結細剣魔法!」
咄嗟に判断した私は、エストックを氷の細剣へと変化させた。
そして、一気に正面の炎壁へ走り出す。
頭上からルーシアが放つ光の柱が降り注ぐ中を、軽快に左右に飛び退いて紙一重で躱していく。
もしあのまま上に跳んでいたなら、今頃は光魔法にやられていた。
本当に、ルーシアは恐ろしい。
「行くよ。スウェプトヒルト!」
勢いよく背面で飛び上がり、弧を描くように炎の壁へと飛び込む私。
身体に回転をかけ、氷の竜巻と化して炎の壁を斬り裂いた。
「嘘でしょ!? 炎を突き破ってきたの!?」
「はぁーっ!!」
炎の壁を突き破ると共にルーシアを飛び越し、数発の斬撃を浴びせた。
「痛たた……。やるわね、ローラ」
「ルーシアも、すごいよ。戦いの中で、何重もの罠を仕掛けられるなんて」
私の全力が、少しでもルーシアに届いたんだ。
そう思うと、不思議と心が高揚してくる。
確かに今の私では勝ち目なんてない。
でも、奇跡が起きれば……。
「よくわかったわね。その通り、これも罠よ」
でも、そんな夢は一瞬にして砕け散る事となった。
余裕の笑みで空を見上げるルーシアの顔は、勝利を確信していたのだから。
「……あれは、雷の上級魔法」
ルーシアが掲げていた右腕の上空には、雷鳴が轟く黒雲が顕現されていた。
「ごめんね。炎の壁は、上級魔法を撃つ為の時間稼ぎだったの」
その直後、ルーシアの掲げられた右手が勢いよく振り下ろされた。
「行っけぇーっ! 雷神怒槌魔法!!」
無数の落雷が一点に収束し、雷鳴が喧騒する。
瞬時にエルフィンボウを真上に向けた私は、遥か上空を狙う。
大量の魔力を解き放ち、光の矢を創り出した。
「見ててね、ミスト、ルーシア。これが私の、全身全霊の一撃だよ!」
エルフィンボウの弦を最大まで引き絞り、光の矢が閃光を放つ。
「届いて! 時雨燕!」
全魔力を注いだ光の矢を放し、巨大な光の鳥の姿へと変えさせた。
激しい轟音と共に、渦雷と激突した。
光の鳥が渦雷を食い千切り、渦雷が光の鳥を突き破る。
相殺された二人の攻撃が、舞台に激しい衝撃を巻き起こした。
隣の舞台で戦う生徒すらも、戦闘を中断せざるを得なくなるほどに。
「はぁ、はぁ……。もう、魔力が……」
瞬発的に魔力を解放した影響で、視界が眩む。
でも、試合はまだ続いている。
そう思った私は、意識を保とうと額を押さえ、ふらつく手でエルフィンボウを構えた。
その時。
「ごめんね、ローラ。上級魔法は、もう一つ用意していたの」
至近距離から声が聞こえ、すぐさま後ろへと振り返った。
「風の主神スサノオ、神罰を下せ! 風神狂飆魔法!!!」
目の前にまで接近を赦してしまったルーシアの左手が、私へと迫り来る。
荒ぶる嵐を、その腕に纏って。
「駄目、避けられ……ない」
私は避ける間も、エストックに持ち換える猶予も無かった。
両腕を交差に構えて身構えるしか、できなかった。
「うぅっ! かはっ!」
ルーシアの左手が、地面から振り上げるように打ち込まれた。
身構えた両腕をすり抜けられ、腹部に突き立てられる。
呼吸器官が乱れ、言う事を聞かない。
凝縮された嵐が暴れ出し、抉られるような激痛が走る。
「うぅっ! あぁぁーっ!!」
「終わりよ、ローラ! ふっ飛べぇーっ!!」
ルーシアは莫大な魔力を放出させ、左手の嵐を巨大化させた。
激しい竜巻が私もろとも観客席の壁まで吹き荒ぶ。
「きゃあ!」
ものすごい勢いで叩き付けられ、その場に両ひざを突いてしまった私。
場外負けで戦闘不能。文句なしの完敗だ。
霞んだ瞳で舞台を見つめると、そこにはルーシアが立っていた。
息ひとつ乱さず、私を見つめながら。
『そこまで! 勝者、ルーシア・ミラ・ランドルフ!』
会場からは、大きな歓声が響く。
やっぱり、負けちゃったね。
ルーシア、わざと私を飛ばして場外負けを狙ってたんだ。
これ以上、怪我をさせないように。
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