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第四章 雪原の森 リバースノウ
二話 チームドギーリア
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再び王立学園に集まった俺達は、理事長であるドギーマンとの面会を果たしていた。
それはフリージアの正体を探る為に。
そして彼女の真意を知る為に。
「良いか。決してローレライ姫の事は他言無用で頼む。敵の戦力も規模も定かではない現状、我々の行動は必要最低限に抑えるんだ。なに、心配する必要はない。生徒評議会の情報網を駆使すれば、いずれ明確な情報を得られるだろう」
ドギーマンにそこまで言い切らせるとは、生徒評議会の人間は学園外でも地位と権力を持った集団のようだ。
「理事長、その件に関して王家転覆派の傘下うち三名の貴族を洗い出せましたよ。そこから波状に調査を進めていくつもりだから、詳細がわかり次第また報告しますね」
そう話すアスカードの言う事が確かなら、生徒評議会は無駄に手をこまねいて時間を浪費していた訳ではないようだ。
だが、現時点で三つもの貴族家が敵対しているとは、それだけでも敵の規模は驚異的だ。
領地に駐留している騎士団は勿論、私兵部隊も雇っているはずなのだから。
「それと、サイフォンの残党とエヴァは僕の領地で拘留しているよ。彼女達には王女の正体を知られてしまったからね」
エヴァか。その人物はグランドリエ公爵家の娘で、ローレライにやたらと敵意を剥き出しにしていた勇者科の生徒だ。
確かに野放しにはできないが、秘密裏に公爵家の人間を捕らえるとは。
ずいぶんと危険な橋を渡るな。
「あの、エヴァさんが私の事を話すとは限りません。だから、エヴァさんを自由にしてもらえませんか?」
唐突にそんな提案をするローレライ。
決して事態を軽視している訳ではない。それでも彼女には、なにか思うところがあるのだろう。
「姫様、申し訳ございませんが承認致しかねますわ。先ほど理事長が仰った通り、他者を信用してはなりませんので」
「でも……」
「どうかご理解を」
「……わかりました」
きっとローレライは断られる事などわかっていたのだろう。
それでも何かをしたかったのは、自分のせいでエヴァが幽閉されている事が悲しかったからだ。
過去に軟禁されていた彼女だからこそ、その過酷さや不安さを理解しているのだから。
「ローレライ姫、すまないが次の話に移らせてもらうよ」
「はい、お願いします」
ドギーマンが話を区切らせ、再び資料を捲り始める。
「フリージアとやらは犬の獣人族セリアンスロープだという話だが、かの種族は本来帝国領の一部を与えられた一族だ。フリージアがその末裔かはわからんが、戦乱の時に少数のセリアンスロープが移り住んできたようでな」
「そうなんですか? 領地を捨ててまで移り住んでくるだなんて、帝国はそんなに住み心地が悪かったのかしら」
ルーシアは頬に人指し指を添えながら、楽観的にそう言う。
言われてみて気付いた事だが、フリージアの所作や雰囲気には気品がある。
もしかしたら、彼女の家系は貴族か上流階級の出なのかもしれない。
「ランドルフ君、その答えは直接彼等に訊いてみるといい。君達には、これから彼等の隠れ家に向かってもらう予定だからな」
「えっ? フリージアの居場所がわかったんですか?」
「少し違うわね。その隠れ家に行けばフリージアの手掛かりが見つかると、ドギーマンはそう考えているのよ」
「その通りだ。そこにはフリージアの実の母、アマリリス・フォークテリアという人物がいるはずだ。正確に言えば、そこに逃げ延びているはず、だな」
「……アマリリス、フォークテリア」
微かに聞こえる声で、そう呟くオフィーリア。
そんな彼女の様子を眺め、少しばかりの間沈黙するドギーマン。
だが、その次にドギーマンの視線が送られたのはローレライだった。
「ローレライ姫、フリージアのアマリリスは王妃の侍女として仕えていたのだよ。十六年前までな」
「お母様の、侍女……」
「しかし、フリージアを出産したアマリリスは王宮を追放され、追われる身となった。どれだけ調べても父親の存在は不明なままだったのだが、私はこの一件に復讐の根幹があるのではと踏んでいる」
ドギーマンの予想が正しければ、アマリリスが王宮で働いていた頃に王族との間に何かが起きたという事。
いや、もしかしたら彼女の復讐は別に原因があるのかもしれない。
そのどちらにしても、ローレライが無関係なのは確かなはずだ。
「わかりました。私達はすぐにでも発ちます。ローレライも同行させますが、それでいいかしら」
「無論だ。こちらからはシエラを同行させよう。生徒評議会の表の顔は副会長君に引き継がぐ手筈になっている」
「そうですか。そういう事なら、 お言葉に甘えてシエラさんにも来てもらうわ」
シエラという強力な戦力が増えるとは、本当に心強い。
アスカードとシエラの強さは、俺が出会った中でも別格。それは西方地域に限らず、この国の中でも相当な実力を兼ね備えているだろう。
「良いか、みんな。おそらくセリアンスロープの隠れ家はここだ。北方地域の中心に位置する雪原の森、リバースノウ。推測ではあるが、まず間違いないだろう」
そう説明するドギーマンは、国内の地図を広げて伸ばした手で指し示す。
「うわぁ、結構遠いんですね……」
「わしは寒いのは不得手なんじゃがなぁ。こりゃ、厚手の服を調達せにゃならんか」
「あっ! 私も新しいコートが欲しい!」
「物資の調達でしたら私もご一緒させていただきますわ。王都で流行りのお召し物を、是非ご覧にいれましょう」
グローインがそう提案した瞬間、突然はしゃぎ出すルーシア達。
張り詰めた空気など吹き飛び、理事長室が和やかな雰囲気に変貌する。
「ところでオフィーリア、出発する前に冒険者ギルドにも寄ってもらいたい。そこで私の依頼を受注してくれたまえ。少しでも疑念を持たれぬようにする為の処置なのでな」
「ええ、わかりました」
「君が不在の間は、この私が直々に教鞭を執ろうと思っている。後の事は任せなさい」
「あら、貴方が教育の場に出るなんて珍しいわ。じゃあ、お願いしますね」
そして旅の準備をする事になった俺達は、踵を返して部屋を後にした。
「君達、必ず無事に帰って来なさい! チームドギーリアの再会を、心より願っているよ!」
「理事長、そのチーム名はやめようって言ったじゃないですか……」
ドギーマンとアスカードの二人に見送られながら、俺達はフリージアの真実を確かめに向かった。
更なる脅威が待ち受けている事も知らず、まるで観光に行くかのようにはしゃいで。
それはフリージアの正体を探る為に。
そして彼女の真意を知る為に。
「良いか。決してローレライ姫の事は他言無用で頼む。敵の戦力も規模も定かではない現状、我々の行動は必要最低限に抑えるんだ。なに、心配する必要はない。生徒評議会の情報網を駆使すれば、いずれ明確な情報を得られるだろう」
ドギーマンにそこまで言い切らせるとは、生徒評議会の人間は学園外でも地位と権力を持った集団のようだ。
「理事長、その件に関して王家転覆派の傘下うち三名の貴族を洗い出せましたよ。そこから波状に調査を進めていくつもりだから、詳細がわかり次第また報告しますね」
そう話すアスカードの言う事が確かなら、生徒評議会は無駄に手をこまねいて時間を浪費していた訳ではないようだ。
だが、現時点で三つもの貴族家が敵対しているとは、それだけでも敵の規模は驚異的だ。
領地に駐留している騎士団は勿論、私兵部隊も雇っているはずなのだから。
「それと、サイフォンの残党とエヴァは僕の領地で拘留しているよ。彼女達には王女の正体を知られてしまったからね」
エヴァか。その人物はグランドリエ公爵家の娘で、ローレライにやたらと敵意を剥き出しにしていた勇者科の生徒だ。
確かに野放しにはできないが、秘密裏に公爵家の人間を捕らえるとは。
ずいぶんと危険な橋を渡るな。
「あの、エヴァさんが私の事を話すとは限りません。だから、エヴァさんを自由にしてもらえませんか?」
唐突にそんな提案をするローレライ。
決して事態を軽視している訳ではない。それでも彼女には、なにか思うところがあるのだろう。
「姫様、申し訳ございませんが承認致しかねますわ。先ほど理事長が仰った通り、他者を信用してはなりませんので」
「でも……」
「どうかご理解を」
「……わかりました」
きっとローレライは断られる事などわかっていたのだろう。
それでも何かをしたかったのは、自分のせいでエヴァが幽閉されている事が悲しかったからだ。
過去に軟禁されていた彼女だからこそ、その過酷さや不安さを理解しているのだから。
「ローレライ姫、すまないが次の話に移らせてもらうよ」
「はい、お願いします」
ドギーマンが話を区切らせ、再び資料を捲り始める。
「フリージアとやらは犬の獣人族セリアンスロープだという話だが、かの種族は本来帝国領の一部を与えられた一族だ。フリージアがその末裔かはわからんが、戦乱の時に少数のセリアンスロープが移り住んできたようでな」
「そうなんですか? 領地を捨ててまで移り住んでくるだなんて、帝国はそんなに住み心地が悪かったのかしら」
ルーシアは頬に人指し指を添えながら、楽観的にそう言う。
言われてみて気付いた事だが、フリージアの所作や雰囲気には気品がある。
もしかしたら、彼女の家系は貴族か上流階級の出なのかもしれない。
「ランドルフ君、その答えは直接彼等に訊いてみるといい。君達には、これから彼等の隠れ家に向かってもらう予定だからな」
「えっ? フリージアの居場所がわかったんですか?」
「少し違うわね。その隠れ家に行けばフリージアの手掛かりが見つかると、ドギーマンはそう考えているのよ」
「その通りだ。そこにはフリージアの実の母、アマリリス・フォークテリアという人物がいるはずだ。正確に言えば、そこに逃げ延びているはず、だな」
「……アマリリス、フォークテリア」
微かに聞こえる声で、そう呟くオフィーリア。
そんな彼女の様子を眺め、少しばかりの間沈黙するドギーマン。
だが、その次にドギーマンの視線が送られたのはローレライだった。
「ローレライ姫、フリージアのアマリリスは王妃の侍女として仕えていたのだよ。十六年前までな」
「お母様の、侍女……」
「しかし、フリージアを出産したアマリリスは王宮を追放され、追われる身となった。どれだけ調べても父親の存在は不明なままだったのだが、私はこの一件に復讐の根幹があるのではと踏んでいる」
ドギーマンの予想が正しければ、アマリリスが王宮で働いていた頃に王族との間に何かが起きたという事。
いや、もしかしたら彼女の復讐は別に原因があるのかもしれない。
そのどちらにしても、ローレライが無関係なのは確かなはずだ。
「わかりました。私達はすぐにでも発ちます。ローレライも同行させますが、それでいいかしら」
「無論だ。こちらからはシエラを同行させよう。生徒評議会の表の顔は副会長君に引き継がぐ手筈になっている」
「そうですか。そういう事なら、 お言葉に甘えてシエラさんにも来てもらうわ」
シエラという強力な戦力が増えるとは、本当に心強い。
アスカードとシエラの強さは、俺が出会った中でも別格。それは西方地域に限らず、この国の中でも相当な実力を兼ね備えているだろう。
「良いか、みんな。おそらくセリアンスロープの隠れ家はここだ。北方地域の中心に位置する雪原の森、リバースノウ。推測ではあるが、まず間違いないだろう」
そう説明するドギーマンは、国内の地図を広げて伸ばした手で指し示す。
「うわぁ、結構遠いんですね……」
「わしは寒いのは不得手なんじゃがなぁ。こりゃ、厚手の服を調達せにゃならんか」
「あっ! 私も新しいコートが欲しい!」
「物資の調達でしたら私もご一緒させていただきますわ。王都で流行りのお召し物を、是非ご覧にいれましょう」
グローインがそう提案した瞬間、突然はしゃぎ出すルーシア達。
張り詰めた空気など吹き飛び、理事長室が和やかな雰囲気に変貌する。
「ところでオフィーリア、出発する前に冒険者ギルドにも寄ってもらいたい。そこで私の依頼を受注してくれたまえ。少しでも疑念を持たれぬようにする為の処置なのでな」
「ええ、わかりました」
「君が不在の間は、この私が直々に教鞭を執ろうと思っている。後の事は任せなさい」
「あら、貴方が教育の場に出るなんて珍しいわ。じゃあ、お願いしますね」
そして旅の準備をする事になった俺達は、踵を返して部屋を後にした。
「君達、必ず無事に帰って来なさい! チームドギーリアの再会を、心より願っているよ!」
「理事長、そのチーム名はやめようって言ったじゃないですか……」
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