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藤森あやめは農家になる(3)
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あやめと実岡は頑張り続ける。
販売プラットフォームである飯チョク、ポッケマートに野菜セットの写真をアップし、PC、スマホユーザーの需要を獲得する。
あやめが言った通りみっちゃんの取材による実岡農園の特集記事がアップされた途端に注文が山のように入るようになった。
都内の飲食店向けの納品もあやめのツテを頼って着実に増やしていく。
収穫期に入ると人手が足りなくなるため、実岡が臨時でパートを雇い入れる。近所に住んでいる佐藤さん、鈴木さん、田中さん。齢五十はすぎているパートのおばちゃんたちと朝は陽が出る前の深夜に近い時間から収穫を始め、その収穫された野菜を持ってあやめが都心まで出向き、納品が終わると今度は新規の販路を獲得するために都心を営業で駆け回るという過酷な日々をこなした。
その間実岡は畑で作物の世話をしつつタブレットで受注状況を確認し、消費者に向けて商品を箱詰めし宅配便で送るという生活をしている。
どちらにしても夏場は地獄のように暑いので、体力が求められる環境だった。
しかし、こうまでして頑張っても見つけられた販売先はまだ半分。千坪の敷地にたわわに実っていく作物たちの半分が行き場を求めて枝にその実をぶら下げたまま、収穫されるのを待ちわびていた。
パートの皆様に配っても、自分たちで食べても、まだまだ消費し尽くせない量がそこにはあった。ここままではいずれ廃棄せざるを得なくなる。
そしてこのような状況下にあってもなお家事を完璧にこなそうとするあやめに、ある日実岡が待ったをかけた。
二人で家に帰ってきた時のことである。
「実岡さん、お先にお風呂どうぞ。私、その間に農作業着の洗濯と夕飯の準備をしますから」
「藤森さん、料理に掃除にいつもとてもありがたいんだけどさ」
「はい」
パタパタと家の中に走り去ろうとするあやめを呼び止める。振り向いたあやめはどんなに化粧をしようとも隠しきれない疲労の色が浮かんでいる。当然だ、彼女は毎日ここ群馬と東京を往復し、野菜を搬入しては営業周りに出かけているのだ、疲れない方がどうかしている。「誰か雇う」と言っても「このくらいの量なら一人で行けますよ」と言って聞いてくれない。
農業に休みはない。土日は野菜が実らないという法則でもあればいいのだが、全くそういうわけにはいかないので二人ともぶっ続けて働き続けていた。
「家事はもっと手を抜いていこうよ。家でくらいはリラックスして欲しいんだ」
あやめは努力家で完璧主義の傾向があった。いつでも一部の隙なく身なりを整え、家事をこなそうとする。勿論家事は実岡と分業制にしてあったが、担当する家事は抜かりなくやろうとする。
「夕飯もいつも美味しいんだけど、畑で採れたトウモロコシを茹でただけとかそんなんでも全然構わないよ。すっぴんで部屋着でだらだらしてくれて構わないし、お風呂だって先に入りたいだろ。俺が夕飯の支度と作業着の洗濯するからさ、藤森さんは今日はもうのんびりしてて」
「え、でも……居候の身で申し訳ないと言いますか」
「居候だなんて思ったことは一度もないよ。藤森さんは大切な仕事のパートナーだ、そんな風に考えないで欲しい。ほらほら、お風呂どうぞ」
渋るあやめの背中を押し、半ば強引に風呂場へと押しやった。実岡はひとまず着替えだけでも済ませようと泥だらけの衣服を脱いで縁側に置いてあったタライへと突っ込む。手を綺麗に洗った後に夕飯の準備に取り掛かった。
夕飯はあえて簡単に。あんまり手の込んだ料理が作れないという理由もあるが、あやめに「このくらいのものでいい」という指標を見せたい。彼女は頑張りすぎるから、もっと肩の力を抜いて欲しい。
「お風呂、お先に頂きました……」
台所で夕飯の準備をしていると、あやめが風呂から出てくる。顔を隠してさささと自室に引っ込もうとするので、ガシッと腕を掴んで阻止した。
「ちょっと、放してください、すっぴんなんです!」
「すっぴんでもいいって言っただろ、気にしないよ本当に」
「私が気にするんです!」
「でも俺なんて四六時中すっぴんだよ」
「男の人だから当たり前でしょう!」
「そういうの気にしないって、ほらほら」
「うう……」
本気で嫌がっているようなら無体な真似は止めるが、そこまででもないようなので実岡は押した。不毛なやりとりをいくばくか続けた後に観念したあやめがそーっと手のひらを顔からどかす。
「なんだ、可愛いじゃん」
「お世辞はいりません」
「お世辞じゃないよ、可愛いと思う」
顔をタコのように真っ赤にしながら俯くあやめの素顔は可愛い。普段のメイクもそこまで厚塗りしているわけではないから、思っていた通りといった感じだ。
「じゃ、俺も風呂入ってくるから上がったら夕飯にしよう。化粧禁止ね」
「はい……」
普段の威勢の良さが鳴りを潜め、モジモジしているあやめを置き去りに風呂場へと向かう。素早く入浴を済ませたら作っておいた夕飯を座卓に並べた。
「「いただきます」」
二人で向かい合って夕飯を摂る。メニューはご飯にナスの味噌汁、トマトときゅうりのサラダ、茹でたトウモロコシ。野菜づくしのあえてシンプルなご飯にしている。あやめに、このくらいの内容でいいんだよ、と伝えるためだ。
「トウモロコシはこう持ってかじりつく」
実岡はトウモロコシを一本持つと豪快にかじりついた。くるくるトウモロコシを回しながら食べ進めていく。品がないけれど、これが一番美味しいトウモロコシの食べ方だと信じていた。かじりとる時のシャキッとした歯ごたえ、口の中で弾ける採れたてトウモロコシの甘み。トウモロコシは収穫してから時間が経つとどんどん甘みが抜けていくので、自宅で食べるものは夕刻に収穫するようにしている。
あやめは少しためらってトウモロコシを見つめていたが、やがてエイっと実岡に倣って口を大きく開けてかじる。口紅の塗られていない自然な色合いの唇をもぐもぐ動かし、飲み込むと言った。
「美味しいです……」
「よかった」
そうしてあやめはポツリと語り出す。
「私、いつでも完璧じゃないといけないと思ってて。前付き合っていた彼は、女の子らしい女の子が好きだったんです」
「うん」
「だからどんなに忙しくでも笑顔でお化粧をちゃんとして、家事ができるような人間じゃないといけないと思っていて」
「俺はそうは思わないよ」
その言葉にあやめは実岡の顔を見た。実岡は至極真面目に、けれど優しげな表情を浮かべている。
「そんなに完璧じゃなくても、もっとリラックスしてくれて構わないよ。出来ない事は二人でやればいいんだし、ちょっとくらいだらしない方が気兼ねしなくて済むだろう。ま、別に付き合ってるわけじゃないけど、一緒に住んでるとはいえあまり気を使わなくていいよ」
「はい……」
あやめは少し気の抜けたような顔をしてから、笑顔を作る。
「ありがとうございます」
化粧のしていない顔でトウモロコシをかじる姿は、今までに見たどんなあやめよりも新鮮でかわいらしく感じた。
販売プラットフォームである飯チョク、ポッケマートに野菜セットの写真をアップし、PC、スマホユーザーの需要を獲得する。
あやめが言った通りみっちゃんの取材による実岡農園の特集記事がアップされた途端に注文が山のように入るようになった。
都内の飲食店向けの納品もあやめのツテを頼って着実に増やしていく。
収穫期に入ると人手が足りなくなるため、実岡が臨時でパートを雇い入れる。近所に住んでいる佐藤さん、鈴木さん、田中さん。齢五十はすぎているパートのおばちゃんたちと朝は陽が出る前の深夜に近い時間から収穫を始め、その収穫された野菜を持ってあやめが都心まで出向き、納品が終わると今度は新規の販路を獲得するために都心を営業で駆け回るという過酷な日々をこなした。
その間実岡は畑で作物の世話をしつつタブレットで受注状況を確認し、消費者に向けて商品を箱詰めし宅配便で送るという生活をしている。
どちらにしても夏場は地獄のように暑いので、体力が求められる環境だった。
しかし、こうまでして頑張っても見つけられた販売先はまだ半分。千坪の敷地にたわわに実っていく作物たちの半分が行き場を求めて枝にその実をぶら下げたまま、収穫されるのを待ちわびていた。
パートの皆様に配っても、自分たちで食べても、まだまだ消費し尽くせない量がそこにはあった。ここままではいずれ廃棄せざるを得なくなる。
そしてこのような状況下にあってもなお家事を完璧にこなそうとするあやめに、ある日実岡が待ったをかけた。
二人で家に帰ってきた時のことである。
「実岡さん、お先にお風呂どうぞ。私、その間に農作業着の洗濯と夕飯の準備をしますから」
「藤森さん、料理に掃除にいつもとてもありがたいんだけどさ」
「はい」
パタパタと家の中に走り去ろうとするあやめを呼び止める。振り向いたあやめはどんなに化粧をしようとも隠しきれない疲労の色が浮かんでいる。当然だ、彼女は毎日ここ群馬と東京を往復し、野菜を搬入しては営業周りに出かけているのだ、疲れない方がどうかしている。「誰か雇う」と言っても「このくらいの量なら一人で行けますよ」と言って聞いてくれない。
農業に休みはない。土日は野菜が実らないという法則でもあればいいのだが、全くそういうわけにはいかないので二人ともぶっ続けて働き続けていた。
「家事はもっと手を抜いていこうよ。家でくらいはリラックスして欲しいんだ」
あやめは努力家で完璧主義の傾向があった。いつでも一部の隙なく身なりを整え、家事をこなそうとする。勿論家事は実岡と分業制にしてあったが、担当する家事は抜かりなくやろうとする。
「夕飯もいつも美味しいんだけど、畑で採れたトウモロコシを茹でただけとかそんなんでも全然構わないよ。すっぴんで部屋着でだらだらしてくれて構わないし、お風呂だって先に入りたいだろ。俺が夕飯の支度と作業着の洗濯するからさ、藤森さんは今日はもうのんびりしてて」
「え、でも……居候の身で申し訳ないと言いますか」
「居候だなんて思ったことは一度もないよ。藤森さんは大切な仕事のパートナーだ、そんな風に考えないで欲しい。ほらほら、お風呂どうぞ」
渋るあやめの背中を押し、半ば強引に風呂場へと押しやった。実岡はひとまず着替えだけでも済ませようと泥だらけの衣服を脱いで縁側に置いてあったタライへと突っ込む。手を綺麗に洗った後に夕飯の準備に取り掛かった。
夕飯はあえて簡単に。あんまり手の込んだ料理が作れないという理由もあるが、あやめに「このくらいのものでいい」という指標を見せたい。彼女は頑張りすぎるから、もっと肩の力を抜いて欲しい。
「お風呂、お先に頂きました……」
台所で夕飯の準備をしていると、あやめが風呂から出てくる。顔を隠してさささと自室に引っ込もうとするので、ガシッと腕を掴んで阻止した。
「ちょっと、放してください、すっぴんなんです!」
「すっぴんでもいいって言っただろ、気にしないよ本当に」
「私が気にするんです!」
「でも俺なんて四六時中すっぴんだよ」
「男の人だから当たり前でしょう!」
「そういうの気にしないって、ほらほら」
「うう……」
本気で嫌がっているようなら無体な真似は止めるが、そこまででもないようなので実岡は押した。不毛なやりとりをいくばくか続けた後に観念したあやめがそーっと手のひらを顔からどかす。
「なんだ、可愛いじゃん」
「お世辞はいりません」
「お世辞じゃないよ、可愛いと思う」
顔をタコのように真っ赤にしながら俯くあやめの素顔は可愛い。普段のメイクもそこまで厚塗りしているわけではないから、思っていた通りといった感じだ。
「じゃ、俺も風呂入ってくるから上がったら夕飯にしよう。化粧禁止ね」
「はい……」
普段の威勢の良さが鳴りを潜め、モジモジしているあやめを置き去りに風呂場へと向かう。素早く入浴を済ませたら作っておいた夕飯を座卓に並べた。
「「いただきます」」
二人で向かい合って夕飯を摂る。メニューはご飯にナスの味噌汁、トマトときゅうりのサラダ、茹でたトウモロコシ。野菜づくしのあえてシンプルなご飯にしている。あやめに、このくらいの内容でいいんだよ、と伝えるためだ。
「トウモロコシはこう持ってかじりつく」
実岡はトウモロコシを一本持つと豪快にかじりついた。くるくるトウモロコシを回しながら食べ進めていく。品がないけれど、これが一番美味しいトウモロコシの食べ方だと信じていた。かじりとる時のシャキッとした歯ごたえ、口の中で弾ける採れたてトウモロコシの甘み。トウモロコシは収穫してから時間が経つとどんどん甘みが抜けていくので、自宅で食べるものは夕刻に収穫するようにしている。
あやめは少しためらってトウモロコシを見つめていたが、やがてエイっと実岡に倣って口を大きく開けてかじる。口紅の塗られていない自然な色合いの唇をもぐもぐ動かし、飲み込むと言った。
「美味しいです……」
「よかった」
そうしてあやめはポツリと語り出す。
「私、いつでも完璧じゃないといけないと思ってて。前付き合っていた彼は、女の子らしい女の子が好きだったんです」
「うん」
「だからどんなに忙しくでも笑顔でお化粧をちゃんとして、家事ができるような人間じゃないといけないと思っていて」
「俺はそうは思わないよ」
その言葉にあやめは実岡の顔を見た。実岡は至極真面目に、けれど優しげな表情を浮かべている。
「そんなに完璧じゃなくても、もっとリラックスしてくれて構わないよ。出来ない事は二人でやればいいんだし、ちょっとくらいだらしない方が気兼ねしなくて済むだろう。ま、別に付き合ってるわけじゃないけど、一緒に住んでるとはいえあまり気を使わなくていいよ」
「はい……」
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