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第三十一話
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「ご馳走するわ。男の子だからボリュームのあるものが良いかしら? ハンバーグプレートがオススメよ」
「えっと……お腹は減っているんですが、たぶんそこまで食べられません」
胃が小さくなっているだろうと思ってだったが、言ってから不適切な発言だったと気付く。しかし女性は「そう?」と気にしていなかった。
「じゃあ私と同じものにしましょう。珈琲と紅茶はどちらがお好み?」
「……それなら紅茶で」
ぽんぽんと注文が決まっていき、しばらくするとカフェテーブルにティーセットと砂時計が並ぶ。
女性が頼んだのはアッサム、佐藤はダージリン。食事は砂時計の砂の最後がこぼれ落ちる時に合わせて、テーブルへと運ばれてきた。
「わ、ぁ……」
大きな白い皿の半分は緑の鮮やかなサラダ、もう半分にはホットサンドを斜め半分に切ったものが二つ置かれている。一つはツナとトマト、もう一つはハムとチーズという王道の味だ。
遠くへ置いてきてしまった食欲という欲望が刺激される。
「どうぞ、遠慮せずに食べて?」
「……では、いただきます」
佐藤は紅茶で口を湿らせて、念の為サラダを二口食べてからツナのホットサンドにかぶりついた。じゅわりと熱されたトマトが口の端から溢れそうになり少し慌ててしまったが、なんとか汚さずに一口を食べきる。塩気がちょうどよく、もう一口、もう一口と食べていると、向かいから「ふふふ」と笑い声が聞こえた。
「ふふ、ごめんなさい。とっても美味しそうに食べるから……少し顔色も良くなったし安心したわ」
「顔色?」
「言わなかったけれど、ちょっと心配なくらいだったの。ごめんなさい。食事の邪魔をしてしまったわね。温かいうちに食べてしまいましょう」
そう言って女性が自分のぶんに口を付けたのを見て、佐藤も残りを平らげた。
「ご馳走様でした」
温かい食べ物と温かい紅茶で、お腹の中から指先まで温まった気がする。服装は季節に合わせていたつもりだったが、少し冷えていたらしい。
「ふぅ……お腹いっぱい。そういえば自己紹介もまだだったわね。私は高松陽子と言います。改めて、ユクスさんを拾ってくださってありがとう」
手元の赤いぬいぐるみを撫でながら、女性――高松が机の向かいで頭を下げた。
「えっと……お腹は減っているんですが、たぶんそこまで食べられません」
胃が小さくなっているだろうと思ってだったが、言ってから不適切な発言だったと気付く。しかし女性は「そう?」と気にしていなかった。
「じゃあ私と同じものにしましょう。珈琲と紅茶はどちらがお好み?」
「……それなら紅茶で」
ぽんぽんと注文が決まっていき、しばらくするとカフェテーブルにティーセットと砂時計が並ぶ。
女性が頼んだのはアッサム、佐藤はダージリン。食事は砂時計の砂の最後がこぼれ落ちる時に合わせて、テーブルへと運ばれてきた。
「わ、ぁ……」
大きな白い皿の半分は緑の鮮やかなサラダ、もう半分にはホットサンドを斜め半分に切ったものが二つ置かれている。一つはツナとトマト、もう一つはハムとチーズという王道の味だ。
遠くへ置いてきてしまった食欲という欲望が刺激される。
「どうぞ、遠慮せずに食べて?」
「……では、いただきます」
佐藤は紅茶で口を湿らせて、念の為サラダを二口食べてからツナのホットサンドにかぶりついた。じゅわりと熱されたトマトが口の端から溢れそうになり少し慌ててしまったが、なんとか汚さずに一口を食べきる。塩気がちょうどよく、もう一口、もう一口と食べていると、向かいから「ふふふ」と笑い声が聞こえた。
「ふふ、ごめんなさい。とっても美味しそうに食べるから……少し顔色も良くなったし安心したわ」
「顔色?」
「言わなかったけれど、ちょっと心配なくらいだったの。ごめんなさい。食事の邪魔をしてしまったわね。温かいうちに食べてしまいましょう」
そう言って女性が自分のぶんに口を付けたのを見て、佐藤も残りを平らげた。
「ご馳走様でした」
温かい食べ物と温かい紅茶で、お腹の中から指先まで温まった気がする。服装は季節に合わせていたつもりだったが、少し冷えていたらしい。
「ふぅ……お腹いっぱい。そういえば自己紹介もまだだったわね。私は高松陽子と言います。改めて、ユクスさんを拾ってくださってありがとう」
手元の赤いぬいぐるみを撫でながら、女性――高松が机の向かいで頭を下げた。
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