異世界転生したのでのんびりスローライフを楽しみます!

レウ

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無垢の魔女

異世界で食べていくことの難しさ

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「いらっしゃい!ホテルアズサへ!」

「ほ、ホテル?」

エトちゃんとヌーコリン君のお家訪問という展開になり、お父さんとお母さんの仕事を聞いたところ……。

『人を消すお仕事って言ってたよ?』

などと言っていたため私はとてもバイオレンスな何かを想像していたのだが……。

「え、えっと……人を消すお仕事って……」

「人を?……ふふふ、多分それ私たちのホテルの終の土地に人を送る転送陣の事かしらね?」

「え?」

「飛ばす時姿が見えなくなるから消してるように見えなくもないけど」

びっくりした……なーんだ、そういう事だったんだ。

私てっきり
「知られたんじゃしょうがないねぇ……ほら、アンタ達!やーっておしまい!」

「あらほらさっさー!」
的な何かになるんだと思ってハラハラしてたのに……。

「よかった……」

「ところであなたお腹は空いてる?」

「はい!ペコペコです……」

実のところ、スライムとの戦い直後からお腹がすいて仕方がなかったのだ。

体を動かしてお腹が減るなんて中学生以来だったので、少し懐かしい気持ちになりながら私はここでの一番人気を頼むことにした。

「ここの一番人気?んー……だったらチキンドリアかしらね?」

「チキン……ドリア……」

じゅるりと美味しそうな響きに垂れ落ちそうな唾液を拭き取り、もう一度しっかり相手の目を見て注文することにした。

「チキンドリア……くださいっ!」

「わかったわ、あなたぁー!チキンドリアひとつ作って!」

奥を見やると無言でトントンと包丁で何かを切る旦那さんの姿があった。

「そういや、名前を聞いてなかったわね?」

「あ、私の名前は……」

名前……この際だし、異世界っぽい名前にしちゃおうかな?

別に怒らないよね……?お母さんとお父さん。

「ぺ……くちっ!」

「ペクチさん?……変わったお名前ね、どこか遠くから来た人?」

し、しまった……ペトラっていう名前にしようかなって思ったら言い切る前にくしゃみで遮られちゃった!

「えっと、その……ペクチではなくてですね?」

「はい!チキンドリアひとつお待ちどぉ!」

「話を聞いてほしい……」






「なーんだ、ぺクチさんじゃないのね?」

「はい、私ペトラ……バレンタインといいます」

バレンタインを名前に入れるのは前からの憧れだった。

私が外国人だったら間違えなく子供にバレンタインって付けるのにと日頃考えるくらいには憧れだった。

「バレンタインっていうとあれね?あの……なんとかの日……」

「チョコレートです!」

「そう!チョコレート工場の出来た日 よね!」

「え?」

今なんて?バレンタインが工場の設置日??いや……うそ……。

「えーと、あの、男の子に女の子がチョコレートを渡す日じゃあ……」

「ふふふ、勘違いしてるわね?それは、勤労感謝の日よ?日頃の疲れを癒してほしいという理由でチョコレートを旦那さんにあげるの」

「勤労……」 

チョコレートを渡す日がバレンタインじゃないことに驚いたわけじゃなくて、勤労感謝の日が異世界にあることに驚いた私だった。

「あはは……ぱくっ……ん!?このドリア美味しいです!」

「そうでしょうそうでしょう!!」

「はい!パクパク……すごくもぐもぐ……おいひいれす」

「うん……食べることに集中していいわよ?」

ここのチキンドリアはなんというか独特の味付けだった。

まず、ドリアの見た目はふつうのものだ、どこにでもあるような……ファミレスなどでよく見る感じのもの。

なのだが、味はまったくもって予想出来なかった!すごい!の一言で終わらせるのは勿体無い……が、すごいという言葉しかこれを表す言葉がない私を許して欲しい。

結局私は3分ほどで食べたんじゃないかな?うん、測ってないけど。

「ご馳走さまです!」

「はい、お粗末さま」

「すごく美味しかったです!なにか、隠し味使ってるんですか?」

「教えたら隠し味の意味なくなっちゃうなぁ……よし、ヒントだけ教えてあげる」

「ヒント?」

「愛情に似た何かよ」

それ答えなんじゃない?とか、思ったのだが、多分そんなに捻りのないヒントじゃないんだろう……。

愛情に似た何か……あいがも?いや……何か調味料って可能性も。

「んー……」

「答えは出ましたかな?ペトラ教授」

「とりあえず、隠し味は隠してるから意味があるのかなっていう答えには行き着きました」

「……ふっ、ふふ……あははははははは」

「!?」

いきなり笑ったので、失礼ながら壊れたのかなとか思ったけど、何か楽しそうだったので、私も釣られて楽しくなって笑ってしまった。

「ふふふ」

「「あはははははは」」

「……お姉ちゃん?」

「あはは……んー?どうしたの?ヌーコリン君」

「なんで二人共笑ってるの?」

二人して笑っているものだから気になったのだろうか、ヌーコリン君は拾ってきた木の実に糸を通してネックレスを作っていたのを放ったらかしにしてこちらの様子を伺っていた。

「ヌーコリン君には、まだ早いかなぁ」

「そうね、ヌー君があと五つ大きくなったら教えてもいいかもね?」

「いじわるっ!」

二人だけの秘密というのはいいものだ。

距離が一気に近づいた気がするし、なにより、ワクワク感が 半端ない。

「ごめんね、ヌーコリン君……でも、大人になればヌーコリン君もなんで内緒なのかわかるよ?」

「僕は絶対意地悪しない……」

「ヌー君はお利口さんになるもんねー」

「うん」

お母さんのいうことに頷いて満足気な表情……少しだけ、子供が欲しいかもと思ってしまった。

「さて、夜までは時間があるし、あの……」

「ん?」

「ここら辺で土地を買う為にはどうしたらいいんですか?」

「土地ねぇ……一旦ギルドに入って、ギルドハウスに入る方がお金かからないかもよ?」

「ギルドハウス?」 

なんでも、ギルドハウスとは、ギルドに入っているメンバーがマイホームを手に入れるまで住まわせてくれるいわば、仮住居のようなものなのだという。

ギルドに入るために必要なことはただただ魔法がひとつ使えればそれでOK、村によって条件が異なるのだが、ここは特別楽なのだそうだ。

「魔法……さっきの炎でいいのかな?」

「お姉ちゃんすごかったんだよ!スライムを7体倒したんだよ!」

「いやぁ、それほどでもぉ」

「炎……って、もしかしてスピリット・ファイアの魔法!?」

「す、すぴ?」

聞きなれない言葉に私が聞き返すと、お母さん……名前をアズサさんと言ったかな?
アズサさんが丁寧に教えてくれた。

「んとね、この世界にある属性は知ってる?」

「そ、そこまで無知じゃないですよ……基本的な四属性の他に二属性ですよね?」

全部天使ちゃんの受け売りだけど……。

「そうそう、で、その中での炎の魔法っていうのは攻撃力が最高に優れてるの」

「攻撃力……だから、スライムは一撃で……」

「でも、基本的な四属性のものを攻撃に利用する際、一番必要となるのは精霊との契約……それをしないとファイアボールみたいにちっちゃいのしか出せないの」

「だから、スピリット……精霊という意味なんですね?」

「なんだ、知ってたの?」

意味だけは昔ライトノベル作家になりたくてなんとなく調べていたので、知っていただけで……別に知識があるわけではなかった。

「えぇ、まぁ……少しだけ」

「であれば話が早いんじゃないかしら?今日のうちにギルド支部に行ってみるべきよ」

「ギルド支部……」

私はこの時自分がこの世界で最強の存在となって、力の無駄遣いをしながらスローライフを満喫するとは……思ってもみなかった。
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