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第二章
第十八話 命の使い所
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(ここまでか……)
諦めかけた時、突如闇の色を払って金色の煌めきが視界を上塗りした。
「畜生風情が私の所有物に触れるなど、万死に値する」
凛然と、そして聞くものを圧倒する気高さを備えた美しい声。
その背中は、華麗なワンピースドレスの裾をなびかせながら割って入り、僕を後ろに庇った。そして身の丈を越える大剣でブラインの頭部を押し留めていた。
恐怖の縛めから解き放たれ、時の流れが正常に戻ると同時に彼女の名を叫ぶ。
「ガーネットさん!?なんでここに?」
「気持ちのいい朝でしたので、少々散歩をしてましたのよ」
本当にそうかと思わせる優雅な口調でそう言い、余計に僕を混乱させる。
突如現れた天敵にブラインが咆哮を上げると、至近距離にいるガーネットさん目掛けて念弾を発射する。しかしその時すでにガーネットさんは剣を引き抜き、僕を抱きかかえて大きく跳躍して後退した後だった。念弾は土塊を巻き上げ地面に大穴を穿っただけに終わる。
高々と舞い上がるガーネットさんに追い縋ろうとするブラインの行く手をアオイとギン、そして立ち直ったクロウが阻んでいた。見たところクロウに大事が無さそうで安心する。
木々を飛び越え、ブラインから大きく距離を取って着地した先には、予め待ち構えていたかのようにトキワさんが主人の帰還を迎えた。
「……ちなみにさっき、所有物とか言ってた気がしますけど、何のことですかね?」
「女に言葉を求めるなんて、無粋というものよ」
妖艶な笑みで微笑むガーネットさん。うん。会話が成立していないね。
「お前何しに来た!帰れ!」
「ふん。預けた品も守れない人が偉そうな口を叩かないでくださいます?」
アオイの声がレシーバーの向こうからキンキン響く。当のガーネットさんは涼しい顔で受け流すだけでなく、チクリと棘を刺すことも忘れない。
「みなさんだけズルいです。あんなかっこいい事言われたら、大人しく待ってなんていられませんよ」
そんな時、レシーバーから耳に入ってくるもう一人の声。
「その声はもしかして……君も来てるのか!?」
僕が周囲に視線を巡らせると、林の向こうから魔属を切り伏せて姿を見せたのはケイン君とヒルダさん。
「無線、全部聞こえてましたよ」
こちらを振り向いたケイン君が耳のレシーバーを指で叩いていた。どうやら僕らの会話は全て彼らに聞かれていたようだ。
「花を持たせてやるとは言いましたけど、メインディッシュを独り占めなんて許さなくってよ」
「そうですよ!勇者が三人ならまだ可能性もあるでしょう?倒せる算段があるならやりましょうよ!ね!?」
ガーネットさんに同調したケイン君は、鼻息荒くまくしたてる。気後れする僕は、ふとケイン君の後ろに立つヒルダさんと目が合う。ケイン君とは対照的に、不満の表情をありありと浮かべていた。
(ものすごく嫌そう……反対なんだろうなぁ)
それでも黙って何も言わないのは、ひとえに、彼の意思を尊重しているからに過ぎない。
「ここまで来たんだ。やるしかないだろ?レン」
そのアオイの一言に背中を押され、僕も腹をくくる。ガーネットさんらを含む、この場の全員に作戦の説明に入った。
説明と言っても、実はそんなに複雑なものではない。
僕がセンサーで転移した炉心の位置を把握し、それをポジションについた勇者に伝える。撃破したら転移先を特定し、次の勇者に指示する。たったこれだけだ。
要となるのは迅速に炉心を発見し、破壊するスピードだ。
「まずはブラインの動きを止めなくちゃいけません。ガーネットさん、アイツの足を止められますか?」
「いいですわ。私とボブの二人で――」
「いや、その役なら僕に任せてください。僕の"DEEP"なら一人でも可能です」
と、ケイン君が自ら進んで役を買って出た。どういった能力かはわからないが、彼も勇者だ。その自信に満ちた彼の眼差しを信じよう。
「わかった。頼むよ、ケイン君。タイミングも君に一任する。でも、無理はしないでね」
「わかってます」とケイン君は深く頷くけど、後の言葉はヒルダさんに向けて言ったようなものだ。
「トキワ、レンさんの護衛はあなたに任せますわ」
「かしこまりました。微力ながらレン様の安全はこの老体が命に代えてもお守りいたします」
「は、はぁ……」
恭しく頭を下げながら僕の側に立つトキワさん。確かに腰には細身の剣を携えてはいるものの、だいぶ高齢であることは間違いない。逆にこちらが心配になってしまう。
(まぁ僕が文句を言える立場じゃないか)
「それじゃみんな、準備はいいかい?」
僕の問いかけに一同が頷く。かくして作戦は開始される。
「鬨の声は盛大に参りましょう……ボブ」
「Yes,Boss」
いつもの受け答えをしながら、姿を見せたのはボブさん。背中に背負っていた濃緑色の長方体を地面に広げて置き、その一つを手にする。全長一メートルほどにもなるそれは、四連装ロケットランチャーだった。
前方のカバーを開け、重さ十五キロもあるロケットランチャーを軽々と構えたボブさんは、ブラインに狙いを定めると躊躇いなく引き金を引く。
爆風を噴き上げ、爆音を上げながら発射される四本のロケット弾。本来、それほど命中率が高い兵器ではないのだが、今回の場合は目標のサイズが規格外だ。むしろ外すほうが難しい。
厚さ500ミリの戦車装甲をも貫通する成形炸薬弾は、激突と同時に小爆発を起こし漆黒色の甲殻を一二〇〇度の炎で焼く。もっとも、その分厚さと再生能力の前に、その肉体深くまでダメージを与えることは適わない。
そんな事、知ったことではないとばかりにボブさんは無表情でランチャーを投げ捨てると、次のランチャーを拾い上げた。
ロケットランチャーは一つではない。ボブさんの目の前にはまだ五本ものロケットランチャーが無造作に転がっている。
(全部で百キロ近い重量なんだけど、これ、一人で運んできたの?)
考えてみれば、ボブさんはクロウと二人で落ちそうになったトレーラーを支えたんだ。この程度は重い内にも入らないんだろう。
ボブさんは機械のように素早い動作で淡々と、ランチャーを撃っては次を構え、矢継ぎ早に次々とロケット弾を斉射していく。
都合二四発ものロケット弾がその身に降り注ぎ、さしものブラインも怯んだ様子で、その動きを鈍らせることに成功する。
その爆発を嚆矢にしてクロウ、ギン、ヒルダさんの三人が飛び出して行き、取り囲むように散開。
一方、早くもロケットによるダメージから立ち直ったブライン。意識はあくまで天敵である勇者に向けられており、品定めするように首を巡らせる。
その眼前に現れる一つの影。
ギンだ。
彼は木刀を携え、悠然とした足運びでブラインの目の前にいた。
勇者ではない彼を、ブラインは気にも留めない。ただ虫でも払うかのように鋏が振り払われる。
大質量のその鋏をギンはギリギリまで引き付けると、くるりと鮮やかに跳躍。すぐ下を鋏が風圧を伴って過る。
さらに何度も鋏を振り回すが、跳躍と脚さばきだけで軽快に躱し、裾先に掠ることすら叶わない。
と、そのギンの姿が唐突にかき消える。そして――
ズドンッッッ!
地が震えるほどの鈍い打撃音が響き渡り、ブラインの首は直角に折れ曲がっていた。
打ち放たれた一太刀は巨大なブラインの頭部を打ち据えて尚、衝撃が突き抜けていく。表面から血が吹き出たのは、その衝撃で内部を破壊された証拠だ。
それを成したギンは、砂煙を上げ、横滑りしながら制動をかけ、ザッと音を立てて止まると同時に油断なく木刀を構えブラインに正対した。
「手応えが薄い。やはり上級種は違うな」
ギンは苦々しく呟く。
ブラインの肉体奥まで達するほどの一撃。瞬きの間にブラインの首は戻り、出血も止まる。
しかし、今の一撃はブラインの注意を引くのに十分であったようだ。
完全にギンを標的と定め、両腕の鋏を次々と振り下ろしてくる。先程よりも明らかに速度も精度も上がっているが、やはりギンには当たらない。
「でかい図体の奴は、揃いも揃って大振り狙いの一発屋ばかりだな。やはり体がデカいと頭に血が回らないか?」
暗に誰かさんを皮肉った言動をブラインが理解できたわけではないだろうが、牙を剥き出しにし低い唸り声を上げる。そしてブラインは雄叫びを上げながら鋏を大きく振り上げ、ギンの脳天目掛けて振り下ろされる。ごうっという空気のうねりが音を上げ、爆撃に等しい衝撃が一帯を吹き飛ばす。
あんなものを人の身で受けたら、どれだけ屈強であろうと粉微塵だ。
受ければの話だが。
「挑発すると大振りになるところまで同じか。実にわかりやすくていいな」
その声は、ブラインの頭上から。
着物の裾をはためかせながらギンは宙高く舞っていた。
だが、それはブラインも把握していた。
滞空するギンへと迫る、空を切る擦過音。
ブラインの頭上に揺れていた尻尾が、肉眼で追うことできない速度で突き出された。
アオイをして回避するのが精一杯だった高速かつ正確無比な一撃。その先端が無惨にもギンを刺し穿つ――かに思われた。
瞬間、双の剣が閃く。
繰り出された木刀がその切っ先を反らし、ギンのすぐ脇を過ぎっていった。
必殺の一撃を難なくやり過ごし、涼しい顔で地面に降り立つギン。
振り回される鋏に尾針の打ち下ろしが加わるも、ギンはそれらを鮮やかに躱し続けていく。
ブラインの注意を引き付けるという己に課せられた役割を、彼は単身で十全に果たしてくれていた。これはギンでなければ不可能だっただろう。
――なんて言ったら、また怒っちゃうかな?
「ヌゥオォォォリャァァァァァ!」
側面から獣じみた雄叫びと、轟く爆音。
言わずもがな、チェーンソーを振りかぶったクロウだ。
「そいつ、すっげぇムカつくだろ?頭に血が上って、足元がお留守になっちまうんだぜ!」
唸りを上げて薙ぎ払われたチェーンソーが、激しく火花を散らしながらブラインの尖脚に食い込む。先の遭遇時にブラインの特性を鑑み、急遽カスタマイズした対装甲仕様のチェーンソーは、僕の計算通りブラインの甲殻に対しても通用した。
クロウの腕力を上乗せして叩きつけられた回転刃は甲殻の破片と鮮血をまき散らしながら、尖脚を断ち切ってみせた。
あれほどの巨体を、ブラインはたった八本の脚で支えているのだ。いかに上級魔属といえどもそれを奪われれば、機動性を削ぐことは可能である。
一方、反対側ではチェーンソーとは違う、重く響く爆裂音が断続的に響く。
ハンドガンを携えたヒルダさんだ。いかに対魔属用マグナム弾でもブラインの分厚い甲殻には弾かれてしまうだろう。しかし、ヒルダさんは至近距離を駆けながら、正確な射撃で甲殻の隙間である関節を撃ち抜いていた。可動部である関節部を狙うのは、彼女が魔属相手に戦い慣れている証拠だ。
連続して引かれる銃爪。無数の弾丸が吸い込まれるように一箇所に集中して着弾する。するとブラインの巨体がぐらりと揺れ、わずかに傾いた。
派手な破壊は必要ない。負荷のかかる箇所を見抜き、そこを狙い打てば最大限にダメージを与えることは可能なのである。
と、ヒルダさんは自分が撃った弾数以上に銃創が穿たれていることに気付き、怪訝な表情を作る。そうしているとまた一発、甲殻と甲殻の間に正確に銃弾が送り込まれた。
針の穴に糸を通すが如き精密な狙撃が関節の奥深くまで侵徹したかと思うと、内部から青白い炎が一瞬吹き出し、爆炎が甲殻内の組織を焼き焦がした。恐らく使用された弾丸は徹甲弾頭の内部に焼夷剤を封入した徹甲焼夷弾。すると使われているのは大口径のアンチマテリアルライフルであると予想できる。
狙撃手の正体は分からないが、とりあえず敵ではないと認識したヒルダさんは、狙撃の間に素早くマグチェンジを行うと気にすることを止めて銃撃に徹することにしたようだ。
彼女には知る由もないが、姿の見せない狙撃者が誰なのか、僕は知っている。
しかも彼女の狙撃はクロウとヒルダさんの部位破壊に完璧に連携していた。二人に傷を負わされたことで、より負荷が大きくなった箇所を正確に見抜き、そこを狙って狙撃しているのだ。
彼らの果敢な攻撃はしかし、ブラインに僅かのダメージを与えることも適わない。切断された部位は一瞬にして再生し、銃創は塞がれてしまう。いかに強力な攻撃も、上級魔属の再生力の前に、人間が傷を負わすことはできない。
それでも、ブラインの意識を勇者たちから引き離し、動きを鈍らせた。けっして無駄な攻撃ではない。
そうした微々たる積み重ねが、この人知を超えた不死の凶獣に間隙を作った。
それこそが彼ら従属の本懐であり、この作戦における役割でもある。
ブラインの注意が完全に分散し、かつ動きが緩慢になったその瞬間を見極め、彼が動き出す。
木々を抜け勢いよく飛び出してきたのは、勇者ケイン。彼は真っ向からブライン目掛けて一直線に接近。勇者の存在に気付いたブラインは威嚇の咆哮を上げるが、それでもその足はいささかも竦むことなく駆け続けた。
そして勢いもそのままに跳躍し、聖剣[アルジェント]の切っ先を頭部のど真ん中に突き立てた。剣は傷口を広げながら鍔元まで深々と突き入れられた。
「第一炉心破壊!」
ケイン君は素早く剣を引き抜き、頭を蹴って大きく後退。しかしそこで足を止め、どういうわけか剣を収めてしまう。そして空手になった両の掌を交差させて、指先をブラインに向けて突き出す。
「大人してもらいます!」
その言葉と共に指先から放たれる光線。
それは一本一本が二対一組の螺旋が絡みあう光の鎖であった。
鎖は目にも留まらぬ早さで宙を踊り、それぞれがブラインの足と体を十重二十重に絡みつくと、雁字搦めに縛り上げた。驚くべきことに、その鎖はブラインの動きを完全に封じ込めていた。
「あれがケイン君の"DEEP"……ブラインの巨体を縫い付ける拘束力もだけど、そもそもあの若さですでに覚醒済みとは、末恐ろしいね」
あのブラインが身じろぎすらままならない光景に、僕は口の中で呟く。
己を縛り付けるケイン君に向かって、怨嗟の咆哮あげるブライン。同時に、その前方の空間が揺らぎ、無防備となったケイン君に念弾が発射される。
それも、彼には恐るるに足らず。
空気を押し潰して突き進む不可視の圧力を[アルジェント]のセンサーが感知し、鎧が形を変え銀の盾が正面に展開。凄まじい衝撃を受け止め激しく震えながらケイン君を身を守った。
ケイン君は両足を踏ん張り、歯を食いしばり、ブラインの動きを止めることに集中する。
「長くは持ちません!急いでください!」
「わかってる!次は頭部付け根より一八メートル半後方。中心線よりやや右、胴体の下側!」
「まかせろ!」と、ブラインの真横から迫ったのはアオイ。〈L粒子〉の加速でブラインに迫る彼女に、ブラインは唯一動ける尻尾を繰り、雨の如く尾針の乱打を浴びせかけてくる。だがアオイは速度を鈍らせること無く左右に体を切り返して鮮やかに躱し、胴体下へと滑りこむ。
すでに粒子は[ベルカ]の刀身をコーティングしている。逆手に握り、大きく振りかぶって叩きつけられる光の刃は分厚い甲殻もバターの如く容易く突き抜け、その奥の炉心を駆け抜け様に切り裂いた。モニター上でも、第二炉心)の消失と転移が確認できた。
「次は……ここか!胴体側面、左第二肢と第三肢の間!ガーネットさん、頼みます!」
「承知っ!」
アオイと入れ違いに側面から飛び出していくガーネットさん。[レジウスフラマ]の柄尻に手を当て、突進の勢いを切っ先の一点に集中させ突き出す。剣は甲殻を砕きながら内部へと侵入。先端は見事、炉心を貫いた。
「速い!もう転移してる!?最後は……くそっ!遠い!尻尾の付け根だ!」
「お任せなさい!」
その一言と共にガーネットさんは突き刺した[レジウスフラマ]を足場に跳躍。ブラインの背中に飛び乗ると、目的の場所まで一気に駆け抜ける。ワンピースドレスの裾をはためかせながら、背負ったもう一振りの聖剣[Λ]をすらりと抜く。
その真正面には黒く雄々しい尻尾の針が待ち構える。
と、その尻尾に一筋、また一筋と亀裂が走ったかと思うと、濁った体液を撒き散らし、花弁が開くがごとく複数に裂けた。分裂し、都合七本になった尾は、そのどれもが鋭い針を備えていた。
尾の群れは身震いの後、ガーネットさん目掛けて一斉に突き出される。元々高速だった尾が細く分裂したことで、より捉えることが困難な速度でガーネットさんへと迫った。
ガーネットさんは舌打ちしながら柄を握る手に力を込め、潜在力を送り込む。[Λ]で空間歪曲を展開させ、それを盾に強引に押し進む。だが、その局所的力場はガーネットさんの全身を守るには至らず、一本の尾針がガーネットさんの右足首を穿った。直撃ではなかったがガーネットさんの姿勢を崩すには十分であった。さらに別の一本が鮮血はドレスを引き裂き、その下の美脚を露わにする。それに見惚れる間もなく、小針は太ももに大穴を穿ち、鮮血がドレスを彩った。
「その程度でっ!」
傷を負って尚、覇気を漲らせて吠えるガーネットさん。傷などものともせず強く足を踏みしめた。鮮血にまみれながらも、速度を緩めず尾針の間合いへと身を投じる。
次々と繰り出される尾針を、ガーネットさんはもはや意に介さない。翳した左腕で頭部を守り、空間湾曲を最大にして体を守る。腕を、肩を、脇腹を、両足を尾針が次々と穿つ度に鮮血の桜花が舞い散る。それでもガーネットさんは倒れることを許さず、気迫だけで前のめりにひたすら前進する。
そうしてついに、目的の場所を目前に捉えた。
「これでトドメよ!」
倒れ込みながら切っ先を下に向け、タッチダウンよろしく甲殻の隙間から斜めに[Λ]を斜めに突き入れた。
満身創痍の状態からとは思えない力強い一撃は、炉心を確実に破壊していた。
目的は果たしたものの、さすがのガーネットさんも限界だったようだ。姿勢を保つことが出来ず、倒れた拍子にブラインの背中から滑り落ちてしまう。即座に駆け寄ったボブさんが間一髪キャッチし、ブラインに踏み潰されないよう大きく距離を取る。
ギリギリのタイミングではあったが、転移前に二つもの炉心を破壊してのけた。ネクストクラスの面目躍如といったところだ。
「よし!!これで――!?」
あげかけた喝采の声を僕は半ばで飲み込む。最後の炉心を潰されたはずなのに、ブラインは尚も息の根を止めていない。それどころかケイン君の光の鎖を引き千切らん勢いで暴れ出していた。
僕はモニタを見て愕然とする。
「どういうことだレン!?」
「そんな……炉心がまだ転移してるんだ!」
僕らが驚愕する中、いよいよ抑えきれなくなった光の鎖が一本、また一本と千切れていく。そして、
「ぐあぁぁぁぁ!」
「ケイン!」
ケイン君の身を守っていた[アルジェント]の銀の盾が何度目かの念弾を受け、粉々に砕け散った。おそらく許容ダメージの限界に達したのだ。
縦が破壊され、念弾の余波がケイン君の身に襲いかかる。[アルジェント]によって減殺されたとはいえ、十分に殺傷能力を残した余波の直撃が彼の身を吹き飛ばした。
地面を勢いよく転がったケイン君に、ヒルダさんは彼の名前を叫びながら駆け寄る。血を吐き、額から鮮血を迸らせながらも彼は気丈に立ち上がろうとするが失敗に終わる。見れば、右腕と左足があらぬ方向に曲がっていた。もはや彼が戦闘継続不可能なのは誰の目からも明らかだった。
正直、炉心が復活しても二人が無事なら、もう何度かリトライする時間的余裕はあった。
だがガーネットさんは満身創痍、ケイン君に至っては戦闘不能。
二人とも勇者だから時間を置けば回復するだろうが、その頃にはガルスは爆撃で焦土と化しているだろう。
束縛から解き放たれ、ブラインは再び動き出す。
「これまでなのか……」
「諦めるなレン!」
心に立ち込めた諦めをその声が払い飛ばした。
ただ一人、アオイだけは粒子加速で暴れ狂うブラインに肉薄し、必死に食らいついていた。彼女自身、すでにここまでの戦闘で潜在力を消費し、限界が近いというのに。
まだアオイは微塵も諦めていない。
そうだ。まだ可能性が潰えたわけじゃない。ここまで来て諦められるか!
そこから先の僕は、思考ではなく反射で動いていた。ディスプレイ上に表示される情報に素早くかつ細密に視線を走らせ、転移部位を探す。
「……これか!?」
その炉心はそれまでのに比べ、ともすれば見逃してしまいそうなくらいに小さかった。
「胴体の真上、ど真ん中だ!」
僕が叫ぶのと、ブラインの念弾がアオイ目掛けて撃ち込まれたのは同時だった。一瞬で激突した念弾のエネルギーは、舗装された道を抉り土煙を巻き上げた。
まともに直撃を受けたように見え、一瞬僕は言葉を失った。だが、それは錯覚だった。念弾の余波を利用し、一陣の疾風となって高々と跳躍したアオイが土煙を突き抜けて姿を現した。
アオイはブラインの頭上を越え、切っ先を真下に向けながら高速で落下していく。狙うは背中の一点のみ!
だが、それをやすやすと許すブラインではない。鎌首をもたげた尾針が一斉に上空のアオイを向くと弦を引いた弓のごとく身を引く。狙いを定め、今まさに放たれんとする。
その時だった。
「どっせぇぇぇい!」
そんな掛け声と共に、四本の尾が反り返りながら真逆の方向へと引っ張られた。
両手で尾を掴み取ったクロウがそこにいた。
静止した一瞬を狙って飛びかかったクロウは両腕を全開に広げ、ラリアットの要領で尾を絡み取っていた。
「はっはァっ!一度捕まえちまえばこっちのモンだぜ!」
着地と同時に四本の尾を束ねて抱き、寝技の体勢で締め上げて完全に動きを封じ込めるクロウ。分裂したことで、個別の力は一本だった頃よりも落ちている。クロウの怪力で抑えることは十分に可能であった。
しかし、全てを抑えこむことはクロウでも不可能だったようだ。残った三本はクロウを無視し、アオイ目掛けて放たれてしまった。
空を切り裂いて駆け昇る黒い尖鋭――それを、直下から迸る双の閃きが突き上げた。
着物の裾を激しくはためかせ、疾風の如く宙を駆け上るは、ギン。
彼の放つ、まるで鞘走りの幻聴が聞こえてきそうなほど鋭い神速の剣撃は、霞んで見えない速度の尾針の全てを正確に捉えていた。
耳鳴りのような甲高い擦過音が響いたと思ったのも一瞬のこと。一直線にアオイを貫く軌道にあった尾針は鮮血を撒き散らしながら、その全てが軌道を大きく逸れていった。
二人の奮闘により、アオイは阻まれること無くブラインの背へと着地。そのままの勢いで剣を突き立てた。
先ほどとは違い、切っ先は強い手応えに押され、半ばまでもいかないところで停滞してしまう。
どうやら背面の甲殻が特に厚いだけでなく非常に密度が高いみたいだ。さらにそこに魔属の高い再生能力が加わっているようだ。
傷口からは火花を盛大に吹き出す。甲殻を破壊する粒子と、即座に再生する甲殻の組織がせめぎ合っているのだ。
「こォんチクショォォォォ!」
顔を歪めて叫ぶアオイ。遠目でもわかるほど、彼女の周囲の空気が熱気で揺らいでいるのが見て取れた。
もはやアオイの限界はとっくに超えている。
刃が達するか、アオイが潜在力を使い切るか。
決着は、どちらかの死を意味する。
もう僕にできることはない。固唾を呑んで見つめていた、その時だった。
[ベルカ]の柄元、マテリアルドライブが甲高い唸りを上げ、刀身がこれまで見たことのない光を発しだす。
(一体、何が起こった……!?)
この明らかに通常の動作ではないこの現象に、僕は目を奪われてしまう。
異常なのは明らかだが、[ベルカ]の刀身を覆う粒子量が爆発的に増えた。噴き出す粒子が甲殻を溶断し、刃は少しずつ、しかし確実にブラインの体内へと押し進んでいた。
予期せぬ現象であるが、今この局面を確実に切り開きつつあった。
ブラインが雄叫びを上げながらアオイを振り落とそうと必死に全身を振り回す。アオイは死に物狂いで柄にしがみつき、決して手を放さんと全ての力を剣に集中させる。
もし魔属にも感情があるとすれば、今やつは確実に「恐怖」しているに違いない。これまで直面したことなど無いであろう「死の恐怖」から逃れようと、必死にあがいているのだろう。
「アァァァァァ!」
ブラインにも劣らない気迫に満ちた雄叫びとともに剣は押し込まれ、ついに切っ先は炉心を貫いた!
次の瞬間、ブラインはその場で激しくのたうち回り始める。その様は、苦しみもがいているように見受けられた。
(これが最後であってくれ……!)
祈る気持ちでモニターを見つめ続けていると、ブラインは動きを止め、天に向かって都市中に響き渡らんほどの一際激しい甲高い奇声を上げた。
それは、断末魔だったのだろうか。声は尾を引きながら空の彼方へと消えていく。
するとブラインの脚が力無く投げ出され、その巨躯は地面に沈むと、ブラインはそのまま沈黙する。
「やった……のか?」
油断なく木刀を構えるギンが呟く。僕はハッと我に返り、センサーを向けてディスプレイに視線を落とす。
「炉心の熱源反応は消えてる……僕達の勝ちだよ!」
僕の一言に、その場の全員が喝采の声をあげた。大きくガッツポーズをしたクロウは、側にいたギンと強引に肩を組んだ。「暑苦しい!寄るな!」と顔をしかめるギンだが、喜びを共有していることはその表情から読み取れた。
「レンさん!早くランス大佐に連絡を!」
ヒルダさんに抱き起こされたケイン君に言われ、僕はハッとなる。
そうだ。これで終わりではない。僕はレシーバーに手を当てて通信のスイッチを入れる。
「HQ、聞こえますか!こちらレン・シュミット!」
『こちらHQ、ランス。聞こえてるぞ』
「やりました!ブラインを倒しました!」
『ああ。こちらのレーダーでも、ブラインの反応が消失したのを確認した』
無線の向こうにいるランス大佐の後ろでも、歓声に沸く様子が聞こえてきた。どうやらこちらの様子は向こうに伝わっていたようだ。
「すぐに爆撃の中止を――」
『ああ。すぐに国連に中止を要請した。爆撃機には帰投命令が下るとのことだ』
それを聞いて僕はほっと胸を撫で下ろすと同時に、こちらに視線を向けるみんなに親指を立てて合図を送る。
『それよりもそっちは大丈夫なのか?』
「はい。負傷者は出ていますが、全員生きています!」
『了解した。すぐに迎えを送る。そこで待て』
そしてランス大佐は最後に『よくやってくれた』という短い言葉を残し、交信を終える。努めて冷静に振舞っていたが、その最後の声には喜びと安堵が滲み出ていたのを僕は確かに感じ取っていた。
「やったねアオイ!」
興奮に拳を振り上げながら駆け寄っていく僕に、ブラインの背に立つアオイは満面の笑みを浮かべ拳を突き出し――ブラインの背中から倒れ落ちた。
「アオイ……?アオイ!」
立ち上がるどころか身動きする様子さえ無いアオイに、僕は慌てて駆け寄り、ひたすら呼びかけ続けた――
諦めかけた時、突如闇の色を払って金色の煌めきが視界を上塗りした。
「畜生風情が私の所有物に触れるなど、万死に値する」
凛然と、そして聞くものを圧倒する気高さを備えた美しい声。
その背中は、華麗なワンピースドレスの裾をなびかせながら割って入り、僕を後ろに庇った。そして身の丈を越える大剣でブラインの頭部を押し留めていた。
恐怖の縛めから解き放たれ、時の流れが正常に戻ると同時に彼女の名を叫ぶ。
「ガーネットさん!?なんでここに?」
「気持ちのいい朝でしたので、少々散歩をしてましたのよ」
本当にそうかと思わせる優雅な口調でそう言い、余計に僕を混乱させる。
突如現れた天敵にブラインが咆哮を上げると、至近距離にいるガーネットさん目掛けて念弾を発射する。しかしその時すでにガーネットさんは剣を引き抜き、僕を抱きかかえて大きく跳躍して後退した後だった。念弾は土塊を巻き上げ地面に大穴を穿っただけに終わる。
高々と舞い上がるガーネットさんに追い縋ろうとするブラインの行く手をアオイとギン、そして立ち直ったクロウが阻んでいた。見たところクロウに大事が無さそうで安心する。
木々を飛び越え、ブラインから大きく距離を取って着地した先には、予め待ち構えていたかのようにトキワさんが主人の帰還を迎えた。
「……ちなみにさっき、所有物とか言ってた気がしますけど、何のことですかね?」
「女に言葉を求めるなんて、無粋というものよ」
妖艶な笑みで微笑むガーネットさん。うん。会話が成立していないね。
「お前何しに来た!帰れ!」
「ふん。預けた品も守れない人が偉そうな口を叩かないでくださいます?」
アオイの声がレシーバーの向こうからキンキン響く。当のガーネットさんは涼しい顔で受け流すだけでなく、チクリと棘を刺すことも忘れない。
「みなさんだけズルいです。あんなかっこいい事言われたら、大人しく待ってなんていられませんよ」
そんな時、レシーバーから耳に入ってくるもう一人の声。
「その声はもしかして……君も来てるのか!?」
僕が周囲に視線を巡らせると、林の向こうから魔属を切り伏せて姿を見せたのはケイン君とヒルダさん。
「無線、全部聞こえてましたよ」
こちらを振り向いたケイン君が耳のレシーバーを指で叩いていた。どうやら僕らの会話は全て彼らに聞かれていたようだ。
「花を持たせてやるとは言いましたけど、メインディッシュを独り占めなんて許さなくってよ」
「そうですよ!勇者が三人ならまだ可能性もあるでしょう?倒せる算段があるならやりましょうよ!ね!?」
ガーネットさんに同調したケイン君は、鼻息荒くまくしたてる。気後れする僕は、ふとケイン君の後ろに立つヒルダさんと目が合う。ケイン君とは対照的に、不満の表情をありありと浮かべていた。
(ものすごく嫌そう……反対なんだろうなぁ)
それでも黙って何も言わないのは、ひとえに、彼の意思を尊重しているからに過ぎない。
「ここまで来たんだ。やるしかないだろ?レン」
そのアオイの一言に背中を押され、僕も腹をくくる。ガーネットさんらを含む、この場の全員に作戦の説明に入った。
説明と言っても、実はそんなに複雑なものではない。
僕がセンサーで転移した炉心の位置を把握し、それをポジションについた勇者に伝える。撃破したら転移先を特定し、次の勇者に指示する。たったこれだけだ。
要となるのは迅速に炉心を発見し、破壊するスピードだ。
「まずはブラインの動きを止めなくちゃいけません。ガーネットさん、アイツの足を止められますか?」
「いいですわ。私とボブの二人で――」
「いや、その役なら僕に任せてください。僕の"DEEP"なら一人でも可能です」
と、ケイン君が自ら進んで役を買って出た。どういった能力かはわからないが、彼も勇者だ。その自信に満ちた彼の眼差しを信じよう。
「わかった。頼むよ、ケイン君。タイミングも君に一任する。でも、無理はしないでね」
「わかってます」とケイン君は深く頷くけど、後の言葉はヒルダさんに向けて言ったようなものだ。
「トキワ、レンさんの護衛はあなたに任せますわ」
「かしこまりました。微力ながらレン様の安全はこの老体が命に代えてもお守りいたします」
「は、はぁ……」
恭しく頭を下げながら僕の側に立つトキワさん。確かに腰には細身の剣を携えてはいるものの、だいぶ高齢であることは間違いない。逆にこちらが心配になってしまう。
(まぁ僕が文句を言える立場じゃないか)
「それじゃみんな、準備はいいかい?」
僕の問いかけに一同が頷く。かくして作戦は開始される。
「鬨の声は盛大に参りましょう……ボブ」
「Yes,Boss」
いつもの受け答えをしながら、姿を見せたのはボブさん。背中に背負っていた濃緑色の長方体を地面に広げて置き、その一つを手にする。全長一メートルほどにもなるそれは、四連装ロケットランチャーだった。
前方のカバーを開け、重さ十五キロもあるロケットランチャーを軽々と構えたボブさんは、ブラインに狙いを定めると躊躇いなく引き金を引く。
爆風を噴き上げ、爆音を上げながら発射される四本のロケット弾。本来、それほど命中率が高い兵器ではないのだが、今回の場合は目標のサイズが規格外だ。むしろ外すほうが難しい。
厚さ500ミリの戦車装甲をも貫通する成形炸薬弾は、激突と同時に小爆発を起こし漆黒色の甲殻を一二〇〇度の炎で焼く。もっとも、その分厚さと再生能力の前に、その肉体深くまでダメージを与えることは適わない。
そんな事、知ったことではないとばかりにボブさんは無表情でランチャーを投げ捨てると、次のランチャーを拾い上げた。
ロケットランチャーは一つではない。ボブさんの目の前にはまだ五本ものロケットランチャーが無造作に転がっている。
(全部で百キロ近い重量なんだけど、これ、一人で運んできたの?)
考えてみれば、ボブさんはクロウと二人で落ちそうになったトレーラーを支えたんだ。この程度は重い内にも入らないんだろう。
ボブさんは機械のように素早い動作で淡々と、ランチャーを撃っては次を構え、矢継ぎ早に次々とロケット弾を斉射していく。
都合二四発ものロケット弾がその身に降り注ぎ、さしものブラインも怯んだ様子で、その動きを鈍らせることに成功する。
その爆発を嚆矢にしてクロウ、ギン、ヒルダさんの三人が飛び出して行き、取り囲むように散開。
一方、早くもロケットによるダメージから立ち直ったブライン。意識はあくまで天敵である勇者に向けられており、品定めするように首を巡らせる。
その眼前に現れる一つの影。
ギンだ。
彼は木刀を携え、悠然とした足運びでブラインの目の前にいた。
勇者ではない彼を、ブラインは気にも留めない。ただ虫でも払うかのように鋏が振り払われる。
大質量のその鋏をギンはギリギリまで引き付けると、くるりと鮮やかに跳躍。すぐ下を鋏が風圧を伴って過る。
さらに何度も鋏を振り回すが、跳躍と脚さばきだけで軽快に躱し、裾先に掠ることすら叶わない。
と、そのギンの姿が唐突にかき消える。そして――
ズドンッッッ!
地が震えるほどの鈍い打撃音が響き渡り、ブラインの首は直角に折れ曲がっていた。
打ち放たれた一太刀は巨大なブラインの頭部を打ち据えて尚、衝撃が突き抜けていく。表面から血が吹き出たのは、その衝撃で内部を破壊された証拠だ。
それを成したギンは、砂煙を上げ、横滑りしながら制動をかけ、ザッと音を立てて止まると同時に油断なく木刀を構えブラインに正対した。
「手応えが薄い。やはり上級種は違うな」
ギンは苦々しく呟く。
ブラインの肉体奥まで達するほどの一撃。瞬きの間にブラインの首は戻り、出血も止まる。
しかし、今の一撃はブラインの注意を引くのに十分であったようだ。
完全にギンを標的と定め、両腕の鋏を次々と振り下ろしてくる。先程よりも明らかに速度も精度も上がっているが、やはりギンには当たらない。
「でかい図体の奴は、揃いも揃って大振り狙いの一発屋ばかりだな。やはり体がデカいと頭に血が回らないか?」
暗に誰かさんを皮肉った言動をブラインが理解できたわけではないだろうが、牙を剥き出しにし低い唸り声を上げる。そしてブラインは雄叫びを上げながら鋏を大きく振り上げ、ギンの脳天目掛けて振り下ろされる。ごうっという空気のうねりが音を上げ、爆撃に等しい衝撃が一帯を吹き飛ばす。
あんなものを人の身で受けたら、どれだけ屈強であろうと粉微塵だ。
受ければの話だが。
「挑発すると大振りになるところまで同じか。実にわかりやすくていいな」
その声は、ブラインの頭上から。
着物の裾をはためかせながらギンは宙高く舞っていた。
だが、それはブラインも把握していた。
滞空するギンへと迫る、空を切る擦過音。
ブラインの頭上に揺れていた尻尾が、肉眼で追うことできない速度で突き出された。
アオイをして回避するのが精一杯だった高速かつ正確無比な一撃。その先端が無惨にもギンを刺し穿つ――かに思われた。
瞬間、双の剣が閃く。
繰り出された木刀がその切っ先を反らし、ギンのすぐ脇を過ぎっていった。
必殺の一撃を難なくやり過ごし、涼しい顔で地面に降り立つギン。
振り回される鋏に尾針の打ち下ろしが加わるも、ギンはそれらを鮮やかに躱し続けていく。
ブラインの注意を引き付けるという己に課せられた役割を、彼は単身で十全に果たしてくれていた。これはギンでなければ不可能だっただろう。
――なんて言ったら、また怒っちゃうかな?
「ヌゥオォォォリャァァァァァ!」
側面から獣じみた雄叫びと、轟く爆音。
言わずもがな、チェーンソーを振りかぶったクロウだ。
「そいつ、すっげぇムカつくだろ?頭に血が上って、足元がお留守になっちまうんだぜ!」
唸りを上げて薙ぎ払われたチェーンソーが、激しく火花を散らしながらブラインの尖脚に食い込む。先の遭遇時にブラインの特性を鑑み、急遽カスタマイズした対装甲仕様のチェーンソーは、僕の計算通りブラインの甲殻に対しても通用した。
クロウの腕力を上乗せして叩きつけられた回転刃は甲殻の破片と鮮血をまき散らしながら、尖脚を断ち切ってみせた。
あれほどの巨体を、ブラインはたった八本の脚で支えているのだ。いかに上級魔属といえどもそれを奪われれば、機動性を削ぐことは可能である。
一方、反対側ではチェーンソーとは違う、重く響く爆裂音が断続的に響く。
ハンドガンを携えたヒルダさんだ。いかに対魔属用マグナム弾でもブラインの分厚い甲殻には弾かれてしまうだろう。しかし、ヒルダさんは至近距離を駆けながら、正確な射撃で甲殻の隙間である関節を撃ち抜いていた。可動部である関節部を狙うのは、彼女が魔属相手に戦い慣れている証拠だ。
連続して引かれる銃爪。無数の弾丸が吸い込まれるように一箇所に集中して着弾する。するとブラインの巨体がぐらりと揺れ、わずかに傾いた。
派手な破壊は必要ない。負荷のかかる箇所を見抜き、そこを狙い打てば最大限にダメージを与えることは可能なのである。
と、ヒルダさんは自分が撃った弾数以上に銃創が穿たれていることに気付き、怪訝な表情を作る。そうしているとまた一発、甲殻と甲殻の間に正確に銃弾が送り込まれた。
針の穴に糸を通すが如き精密な狙撃が関節の奥深くまで侵徹したかと思うと、内部から青白い炎が一瞬吹き出し、爆炎が甲殻内の組織を焼き焦がした。恐らく使用された弾丸は徹甲弾頭の内部に焼夷剤を封入した徹甲焼夷弾。すると使われているのは大口径のアンチマテリアルライフルであると予想できる。
狙撃手の正体は分からないが、とりあえず敵ではないと認識したヒルダさんは、狙撃の間に素早くマグチェンジを行うと気にすることを止めて銃撃に徹することにしたようだ。
彼女には知る由もないが、姿の見せない狙撃者が誰なのか、僕は知っている。
しかも彼女の狙撃はクロウとヒルダさんの部位破壊に完璧に連携していた。二人に傷を負わされたことで、より負荷が大きくなった箇所を正確に見抜き、そこを狙って狙撃しているのだ。
彼らの果敢な攻撃はしかし、ブラインに僅かのダメージを与えることも適わない。切断された部位は一瞬にして再生し、銃創は塞がれてしまう。いかに強力な攻撃も、上級魔属の再生力の前に、人間が傷を負わすことはできない。
それでも、ブラインの意識を勇者たちから引き離し、動きを鈍らせた。けっして無駄な攻撃ではない。
そうした微々たる積み重ねが、この人知を超えた不死の凶獣に間隙を作った。
それこそが彼ら従属の本懐であり、この作戦における役割でもある。
ブラインの注意が完全に分散し、かつ動きが緩慢になったその瞬間を見極め、彼が動き出す。
木々を抜け勢いよく飛び出してきたのは、勇者ケイン。彼は真っ向からブライン目掛けて一直線に接近。勇者の存在に気付いたブラインは威嚇の咆哮を上げるが、それでもその足はいささかも竦むことなく駆け続けた。
そして勢いもそのままに跳躍し、聖剣[アルジェント]の切っ先を頭部のど真ん中に突き立てた。剣は傷口を広げながら鍔元まで深々と突き入れられた。
「第一炉心破壊!」
ケイン君は素早く剣を引き抜き、頭を蹴って大きく後退。しかしそこで足を止め、どういうわけか剣を収めてしまう。そして空手になった両の掌を交差させて、指先をブラインに向けて突き出す。
「大人してもらいます!」
その言葉と共に指先から放たれる光線。
それは一本一本が二対一組の螺旋が絡みあう光の鎖であった。
鎖は目にも留まらぬ早さで宙を踊り、それぞれがブラインの足と体を十重二十重に絡みつくと、雁字搦めに縛り上げた。驚くべきことに、その鎖はブラインの動きを完全に封じ込めていた。
「あれがケイン君の"DEEP"……ブラインの巨体を縫い付ける拘束力もだけど、そもそもあの若さですでに覚醒済みとは、末恐ろしいね」
あのブラインが身じろぎすらままならない光景に、僕は口の中で呟く。
己を縛り付けるケイン君に向かって、怨嗟の咆哮あげるブライン。同時に、その前方の空間が揺らぎ、無防備となったケイン君に念弾が発射される。
それも、彼には恐るるに足らず。
空気を押し潰して突き進む不可視の圧力を[アルジェント]のセンサーが感知し、鎧が形を変え銀の盾が正面に展開。凄まじい衝撃を受け止め激しく震えながらケイン君を身を守った。
ケイン君は両足を踏ん張り、歯を食いしばり、ブラインの動きを止めることに集中する。
「長くは持ちません!急いでください!」
「わかってる!次は頭部付け根より一八メートル半後方。中心線よりやや右、胴体の下側!」
「まかせろ!」と、ブラインの真横から迫ったのはアオイ。〈L粒子〉の加速でブラインに迫る彼女に、ブラインは唯一動ける尻尾を繰り、雨の如く尾針の乱打を浴びせかけてくる。だがアオイは速度を鈍らせること無く左右に体を切り返して鮮やかに躱し、胴体下へと滑りこむ。
すでに粒子は[ベルカ]の刀身をコーティングしている。逆手に握り、大きく振りかぶって叩きつけられる光の刃は分厚い甲殻もバターの如く容易く突き抜け、その奥の炉心を駆け抜け様に切り裂いた。モニター上でも、第二炉心)の消失と転移が確認できた。
「次は……ここか!胴体側面、左第二肢と第三肢の間!ガーネットさん、頼みます!」
「承知っ!」
アオイと入れ違いに側面から飛び出していくガーネットさん。[レジウスフラマ]の柄尻に手を当て、突進の勢いを切っ先の一点に集中させ突き出す。剣は甲殻を砕きながら内部へと侵入。先端は見事、炉心を貫いた。
「速い!もう転移してる!?最後は……くそっ!遠い!尻尾の付け根だ!」
「お任せなさい!」
その一言と共にガーネットさんは突き刺した[レジウスフラマ]を足場に跳躍。ブラインの背中に飛び乗ると、目的の場所まで一気に駆け抜ける。ワンピースドレスの裾をはためかせながら、背負ったもう一振りの聖剣[Λ]をすらりと抜く。
その真正面には黒く雄々しい尻尾の針が待ち構える。
と、その尻尾に一筋、また一筋と亀裂が走ったかと思うと、濁った体液を撒き散らし、花弁が開くがごとく複数に裂けた。分裂し、都合七本になった尾は、そのどれもが鋭い針を備えていた。
尾の群れは身震いの後、ガーネットさん目掛けて一斉に突き出される。元々高速だった尾が細く分裂したことで、より捉えることが困難な速度でガーネットさんへと迫った。
ガーネットさんは舌打ちしながら柄を握る手に力を込め、潜在力を送り込む。[Λ]で空間歪曲を展開させ、それを盾に強引に押し進む。だが、その局所的力場はガーネットさんの全身を守るには至らず、一本の尾針がガーネットさんの右足首を穿った。直撃ではなかったがガーネットさんの姿勢を崩すには十分であった。さらに別の一本が鮮血はドレスを引き裂き、その下の美脚を露わにする。それに見惚れる間もなく、小針は太ももに大穴を穿ち、鮮血がドレスを彩った。
「その程度でっ!」
傷を負って尚、覇気を漲らせて吠えるガーネットさん。傷などものともせず強く足を踏みしめた。鮮血にまみれながらも、速度を緩めず尾針の間合いへと身を投じる。
次々と繰り出される尾針を、ガーネットさんはもはや意に介さない。翳した左腕で頭部を守り、空間湾曲を最大にして体を守る。腕を、肩を、脇腹を、両足を尾針が次々と穿つ度に鮮血の桜花が舞い散る。それでもガーネットさんは倒れることを許さず、気迫だけで前のめりにひたすら前進する。
そうしてついに、目的の場所を目前に捉えた。
「これでトドメよ!」
倒れ込みながら切っ先を下に向け、タッチダウンよろしく甲殻の隙間から斜めに[Λ]を斜めに突き入れた。
満身創痍の状態からとは思えない力強い一撃は、炉心を確実に破壊していた。
目的は果たしたものの、さすがのガーネットさんも限界だったようだ。姿勢を保つことが出来ず、倒れた拍子にブラインの背中から滑り落ちてしまう。即座に駆け寄ったボブさんが間一髪キャッチし、ブラインに踏み潰されないよう大きく距離を取る。
ギリギリのタイミングではあったが、転移前に二つもの炉心を破壊してのけた。ネクストクラスの面目躍如といったところだ。
「よし!!これで――!?」
あげかけた喝采の声を僕は半ばで飲み込む。最後の炉心を潰されたはずなのに、ブラインは尚も息の根を止めていない。それどころかケイン君の光の鎖を引き千切らん勢いで暴れ出していた。
僕はモニタを見て愕然とする。
「どういうことだレン!?」
「そんな……炉心がまだ転移してるんだ!」
僕らが驚愕する中、いよいよ抑えきれなくなった光の鎖が一本、また一本と千切れていく。そして、
「ぐあぁぁぁぁ!」
「ケイン!」
ケイン君の身を守っていた[アルジェント]の銀の盾が何度目かの念弾を受け、粉々に砕け散った。おそらく許容ダメージの限界に達したのだ。
縦が破壊され、念弾の余波がケイン君の身に襲いかかる。[アルジェント]によって減殺されたとはいえ、十分に殺傷能力を残した余波の直撃が彼の身を吹き飛ばした。
地面を勢いよく転がったケイン君に、ヒルダさんは彼の名前を叫びながら駆け寄る。血を吐き、額から鮮血を迸らせながらも彼は気丈に立ち上がろうとするが失敗に終わる。見れば、右腕と左足があらぬ方向に曲がっていた。もはや彼が戦闘継続不可能なのは誰の目からも明らかだった。
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「諦めるなレン!」
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僕が叫ぶのと、ブラインの念弾がアオイ目掛けて撃ち込まれたのは同時だった。一瞬で激突した念弾のエネルギーは、舗装された道を抉り土煙を巻き上げた。
まともに直撃を受けたように見え、一瞬僕は言葉を失った。だが、それは錯覚だった。念弾の余波を利用し、一陣の疾風となって高々と跳躍したアオイが土煙を突き抜けて姿を現した。
アオイはブラインの頭上を越え、切っ先を真下に向けながら高速で落下していく。狙うは背中の一点のみ!
だが、それをやすやすと許すブラインではない。鎌首をもたげた尾針が一斉に上空のアオイを向くと弦を引いた弓のごとく身を引く。狙いを定め、今まさに放たれんとする。
その時だった。
「どっせぇぇぇい!」
そんな掛け声と共に、四本の尾が反り返りながら真逆の方向へと引っ張られた。
両手で尾を掴み取ったクロウがそこにいた。
静止した一瞬を狙って飛びかかったクロウは両腕を全開に広げ、ラリアットの要領で尾を絡み取っていた。
「はっはァっ!一度捕まえちまえばこっちのモンだぜ!」
着地と同時に四本の尾を束ねて抱き、寝技の体勢で締め上げて完全に動きを封じ込めるクロウ。分裂したことで、個別の力は一本だった頃よりも落ちている。クロウの怪力で抑えることは十分に可能であった。
しかし、全てを抑えこむことはクロウでも不可能だったようだ。残った三本はクロウを無視し、アオイ目掛けて放たれてしまった。
空を切り裂いて駆け昇る黒い尖鋭――それを、直下から迸る双の閃きが突き上げた。
着物の裾を激しくはためかせ、疾風の如く宙を駆け上るは、ギン。
彼の放つ、まるで鞘走りの幻聴が聞こえてきそうなほど鋭い神速の剣撃は、霞んで見えない速度の尾針の全てを正確に捉えていた。
耳鳴りのような甲高い擦過音が響いたと思ったのも一瞬のこと。一直線にアオイを貫く軌道にあった尾針は鮮血を撒き散らしながら、その全てが軌道を大きく逸れていった。
二人の奮闘により、アオイは阻まれること無くブラインの背へと着地。そのままの勢いで剣を突き立てた。
先ほどとは違い、切っ先は強い手応えに押され、半ばまでもいかないところで停滞してしまう。
どうやら背面の甲殻が特に厚いだけでなく非常に密度が高いみたいだ。さらにそこに魔属の高い再生能力が加わっているようだ。
傷口からは火花を盛大に吹き出す。甲殻を破壊する粒子と、即座に再生する甲殻の組織がせめぎ合っているのだ。
「こォんチクショォォォォ!」
顔を歪めて叫ぶアオイ。遠目でもわかるほど、彼女の周囲の空気が熱気で揺らいでいるのが見て取れた。
もはやアオイの限界はとっくに超えている。
刃が達するか、アオイが潜在力を使い切るか。
決着は、どちらかの死を意味する。
もう僕にできることはない。固唾を呑んで見つめていた、その時だった。
[ベルカ]の柄元、マテリアルドライブが甲高い唸りを上げ、刀身がこれまで見たことのない光を発しだす。
(一体、何が起こった……!?)
この明らかに通常の動作ではないこの現象に、僕は目を奪われてしまう。
異常なのは明らかだが、[ベルカ]の刀身を覆う粒子量が爆発的に増えた。噴き出す粒子が甲殻を溶断し、刃は少しずつ、しかし確実にブラインの体内へと押し進んでいた。
予期せぬ現象であるが、今この局面を確実に切り開きつつあった。
ブラインが雄叫びを上げながらアオイを振り落とそうと必死に全身を振り回す。アオイは死に物狂いで柄にしがみつき、決して手を放さんと全ての力を剣に集中させる。
もし魔属にも感情があるとすれば、今やつは確実に「恐怖」しているに違いない。これまで直面したことなど無いであろう「死の恐怖」から逃れようと、必死にあがいているのだろう。
「アァァァァァ!」
ブラインにも劣らない気迫に満ちた雄叫びとともに剣は押し込まれ、ついに切っ先は炉心を貫いた!
次の瞬間、ブラインはその場で激しくのたうち回り始める。その様は、苦しみもがいているように見受けられた。
(これが最後であってくれ……!)
祈る気持ちでモニターを見つめ続けていると、ブラインは動きを止め、天に向かって都市中に響き渡らんほどの一際激しい甲高い奇声を上げた。
それは、断末魔だったのだろうか。声は尾を引きながら空の彼方へと消えていく。
するとブラインの脚が力無く投げ出され、その巨躯は地面に沈むと、ブラインはそのまま沈黙する。
「やった……のか?」
油断なく木刀を構えるギンが呟く。僕はハッと我に返り、センサーを向けてディスプレイに視線を落とす。
「炉心の熱源反応は消えてる……僕達の勝ちだよ!」
僕の一言に、その場の全員が喝采の声をあげた。大きくガッツポーズをしたクロウは、側にいたギンと強引に肩を組んだ。「暑苦しい!寄るな!」と顔をしかめるギンだが、喜びを共有していることはその表情から読み取れた。
「レンさん!早くランス大佐に連絡を!」
ヒルダさんに抱き起こされたケイン君に言われ、僕はハッとなる。
そうだ。これで終わりではない。僕はレシーバーに手を当てて通信のスイッチを入れる。
「HQ、聞こえますか!こちらレン・シュミット!」
『こちらHQ、ランス。聞こえてるぞ』
「やりました!ブラインを倒しました!」
『ああ。こちらのレーダーでも、ブラインの反応が消失したのを確認した』
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「はい。負傷者は出ていますが、全員生きています!」
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そしてランス大佐は最後に『よくやってくれた』という短い言葉を残し、交信を終える。努めて冷静に振舞っていたが、その最後の声には喜びと安堵が滲み出ていたのを僕は確かに感じ取っていた。
「やったねアオイ!」
興奮に拳を振り上げながら駆け寄っていく僕に、ブラインの背に立つアオイは満面の笑みを浮かべ拳を突き出し――ブラインの背中から倒れ落ちた。
「アオイ……?アオイ!」
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過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
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「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
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