3 / 8
第一話
しおりを挟む
「ということで、今回の入学手続きは終わりました。一年生の一学期の途中からですが、この私立真栄原高校の周りの生徒や先生たちとと仲良く過ごしてください」
クラスの担任である一 遊佳がそう言って話が終わった。
(明日から新しい生活が始まる…)
と転校するのが初めての人は思うだろうが、涼宮 悠人は違った。
(どうせまた今回も同じだろう…)と。
今の季節は梅雨。梅雨と言うぐらいだから月は六月である。
なぜこんな時期に転校してきたのか。
その理由は、『ただ単にその学校に飽きたから』ではなかった。前の学校で少しやり過ぎた暴行事件があり、それをきっかけに転校してきたのだ。詳しく言えば退学処分を受けたのである。
もともと悠人はおとなしい性格だった。柔和で静かで。勉強などはいつも中の上くらい。成績などはいつも悪くはなかった。
ではなぜ暴行事件が起きたのか。それは、『悠人が普通じゃなかったから』という風な内容で解決されている。だが、本当の理由は違った。ただ単に悠人が虐められていて心の傷が積もりに積もった後、爆発してしまったのだ。まぁ、それも言い訳でしかないのだが。
結論からするとなぜか悠人だけが悪者になり、退学処分を受けたと言うわけである。
前回、普通ではないと言う理由が引き起こした事件を気にして今回からは普通でいようとしたのだ。
話は進み、次の日。
「今回転校してきた涼宮くんです」
と言われ、自己紹介を始める。
「北中出身の涼宮 悠人です。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者とかがいたら、俺のところまで来い━━」
もちろんこの台詞は映画化にもなった有名なアニメのヒロインの台詞のもじりである。名字が偶然そのヒロインと同じなので軽いジャブのつもりで言ってみたのだ。もちろんこの後に「━━みたいな台詞が有名な某小説のヒロインと同じ名字です」と続けるつもりだった。
しかし現実はそう甘くなく、後に言う台詞までに五秒も間を開けてしまったのだ。台詞の続きを言おうとしたとたん、いきなり教室の前の方に座っていた少年がガタンと乱暴に席を立ったのだ。
「超能力者はかかってこいだと?いいだろう。その挑戦、受けて立つ!」
「は?」
戸惑う悠人。少年に続き、今度は数名の男女が次々と立ち上がった。
「こんな堂々と宣戦布告とはいい度胸だ」「腕が鳴るわね」「くくく、俺の最強の超能力で貴様など粉々にしてくれる!」「待て、最強の超能力者はこの俺だ!」
口々に訳のわからないことを言い出したクラスメート達に、悠人はますます混乱する。
「ククク、まさかこんなにも早く《儀式》の時が訪れようとはな……」
突然入ってきた副担当の先生が騒ぎ立てる生徒たちを見て邪悪な笑みを浮かべた。
まぁ、ホームルーム中だから入ってきても不思議ではないのだが。
「貴様ら!今から臨時で戦いの時間だ!お前らの《能力》を我に見せてみよ!」
「ええええ!?」
驚きを隠せなかった悠人に何人もの生徒が迫ってくる。
「ふふふ……覚悟するがいい……!死にたくなければお前の《能力》を見せてみよ!」
生徒達が悠人を取り囲み━━、
「━━なーんてな」
恐怖で目を閉じかけた悠人の前で誰かが軽い口ぶりで言った。
「へ……?」
ぽかんとする悠人を取り囲み、生徒達が笑っている。
「おいおい冗談だよ冗談!マジになってびびんなよ」
副担任も笑いながら、
「そろそろ席につけー。みんなノリがいい奴ばかりで嬉しいぞ!」といった。
「じょ、冗……談……?」
悠人は呆然として立ち尽くす。
からかわれた━━自分のスベった自己紹介を逆手にとって、からかわれたのだ。
その日の帰り道、
「おーい!」
突如として聞こえてきた声。その声の主はうちのクラスの委員長、一 かなえであった。どうやら担任とは血が繋がっていると噂されているが、実際のところわからない。
「悠人くんの家はこっち側なんだね!」
急に立ち止まってとてつもない笑顔でそう言われて、返す言葉に迷ってしまいただうんとしか答えられなかった。
「ところで悠人くんは転校してくる前はどんな学校にいたのかな?」
まるで天使の微笑みのように笑いながら話しかけてくる。いや、いっそのこともう天使なのではないか?と考えてしまうほど。
「前の学校か?」
そう聞くと、
「うん。もし答えたくなかったら答えなくてもいいんだよ?」
今にも泣きそうな目で訴えてくるその姿はまさに小動物に近いものを感じた。
「まぁ、今はその話を話すことはできないよ。ごめん」
そういったとたん、かなえはしょぼんとうつ向いた。そうなるとわかっていて聞いたはずなのにいざ聞いてみて話してくれなかった場合、かなえに対してのダメージがあることを一は忘れていた。
「…………そうだよね。ごめんね。こんな話、しちゃって。お詫びになにかおごるよ?」
かなえはあえて話をずらした。これ以上はダメージを受けたくなかったのだ。
「そうか?なら遠慮なく」
悠人はうなずき、帰り道を歩き始めた。
その晩、悠人は不思議な夢を見た。
周りには大きな箱がいくつもあり、その上に誰かわからない女の子が座っている。その子がいきなり杖を振りかざし、なにかをぶつぶつと唱え始めた。するとさっきまで彼女が座っていた箱が破裂し霧が出始めた。
というわけのわからない夢を見たのだ。
その夢を同じ自分が見ていることを今の悠人は知るよしもない。
クラスの担任である一 遊佳がそう言って話が終わった。
(明日から新しい生活が始まる…)
と転校するのが初めての人は思うだろうが、涼宮 悠人は違った。
(どうせまた今回も同じだろう…)と。
今の季節は梅雨。梅雨と言うぐらいだから月は六月である。
なぜこんな時期に転校してきたのか。
その理由は、『ただ単にその学校に飽きたから』ではなかった。前の学校で少しやり過ぎた暴行事件があり、それをきっかけに転校してきたのだ。詳しく言えば退学処分を受けたのである。
もともと悠人はおとなしい性格だった。柔和で静かで。勉強などはいつも中の上くらい。成績などはいつも悪くはなかった。
ではなぜ暴行事件が起きたのか。それは、『悠人が普通じゃなかったから』という風な内容で解決されている。だが、本当の理由は違った。ただ単に悠人が虐められていて心の傷が積もりに積もった後、爆発してしまったのだ。まぁ、それも言い訳でしかないのだが。
結論からするとなぜか悠人だけが悪者になり、退学処分を受けたと言うわけである。
前回、普通ではないと言う理由が引き起こした事件を気にして今回からは普通でいようとしたのだ。
話は進み、次の日。
「今回転校してきた涼宮くんです」
と言われ、自己紹介を始める。
「北中出身の涼宮 悠人です。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者とかがいたら、俺のところまで来い━━」
もちろんこの台詞は映画化にもなった有名なアニメのヒロインの台詞のもじりである。名字が偶然そのヒロインと同じなので軽いジャブのつもりで言ってみたのだ。もちろんこの後に「━━みたいな台詞が有名な某小説のヒロインと同じ名字です」と続けるつもりだった。
しかし現実はそう甘くなく、後に言う台詞までに五秒も間を開けてしまったのだ。台詞の続きを言おうとしたとたん、いきなり教室の前の方に座っていた少年がガタンと乱暴に席を立ったのだ。
「超能力者はかかってこいだと?いいだろう。その挑戦、受けて立つ!」
「は?」
戸惑う悠人。少年に続き、今度は数名の男女が次々と立ち上がった。
「こんな堂々と宣戦布告とはいい度胸だ」「腕が鳴るわね」「くくく、俺の最強の超能力で貴様など粉々にしてくれる!」「待て、最強の超能力者はこの俺だ!」
口々に訳のわからないことを言い出したクラスメート達に、悠人はますます混乱する。
「ククク、まさかこんなにも早く《儀式》の時が訪れようとはな……」
突然入ってきた副担当の先生が騒ぎ立てる生徒たちを見て邪悪な笑みを浮かべた。
まぁ、ホームルーム中だから入ってきても不思議ではないのだが。
「貴様ら!今から臨時で戦いの時間だ!お前らの《能力》を我に見せてみよ!」
「ええええ!?」
驚きを隠せなかった悠人に何人もの生徒が迫ってくる。
「ふふふ……覚悟するがいい……!死にたくなければお前の《能力》を見せてみよ!」
生徒達が悠人を取り囲み━━、
「━━なーんてな」
恐怖で目を閉じかけた悠人の前で誰かが軽い口ぶりで言った。
「へ……?」
ぽかんとする悠人を取り囲み、生徒達が笑っている。
「おいおい冗談だよ冗談!マジになってびびんなよ」
副担任も笑いながら、
「そろそろ席につけー。みんなノリがいい奴ばかりで嬉しいぞ!」といった。
「じょ、冗……談……?」
悠人は呆然として立ち尽くす。
からかわれた━━自分のスベった自己紹介を逆手にとって、からかわれたのだ。
その日の帰り道、
「おーい!」
突如として聞こえてきた声。その声の主はうちのクラスの委員長、一 かなえであった。どうやら担任とは血が繋がっていると噂されているが、実際のところわからない。
「悠人くんの家はこっち側なんだね!」
急に立ち止まってとてつもない笑顔でそう言われて、返す言葉に迷ってしまいただうんとしか答えられなかった。
「ところで悠人くんは転校してくる前はどんな学校にいたのかな?」
まるで天使の微笑みのように笑いながら話しかけてくる。いや、いっそのこともう天使なのではないか?と考えてしまうほど。
「前の学校か?」
そう聞くと、
「うん。もし答えたくなかったら答えなくてもいいんだよ?」
今にも泣きそうな目で訴えてくるその姿はまさに小動物に近いものを感じた。
「まぁ、今はその話を話すことはできないよ。ごめん」
そういったとたん、かなえはしょぼんとうつ向いた。そうなるとわかっていて聞いたはずなのにいざ聞いてみて話してくれなかった場合、かなえに対してのダメージがあることを一は忘れていた。
「…………そうだよね。ごめんね。こんな話、しちゃって。お詫びになにかおごるよ?」
かなえはあえて話をずらした。これ以上はダメージを受けたくなかったのだ。
「そうか?なら遠慮なく」
悠人はうなずき、帰り道を歩き始めた。
その晩、悠人は不思議な夢を見た。
周りには大きな箱がいくつもあり、その上に誰かわからない女の子が座っている。その子がいきなり杖を振りかざし、なにかをぶつぶつと唱え始めた。するとさっきまで彼女が座っていた箱が破裂し霧が出始めた。
というわけのわからない夢を見たのだ。
その夢を同じ自分が見ていることを今の悠人は知るよしもない。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる