君と猫の。

ひなた

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#02

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「はーい、じゃあ授業開始までには座っとけよー」
朝のホームルームが終わり、担任が出席簿片手に教室を出ていく。現国担当のこのクラスの担任は年齢が若いのと、性格の緩さに男子からも女子からも人気が高い。気だるそうに話す口調は、私はどうも好きになれない。
先生が出ていった教室はすでに騒音にまみれていた。
「昨日発売のCAMCAM買ったー?」
「見て見て!! これ、この前出た新色!超発色いいのー!!」
「月9の田岡!いいよねー!! 超カッコいいんだけど」
「お前、このミッションクリアした?」
聞こえてくる会話の端々。どれも自分には向けられないような話題ばっかり。高校生の流行ってどんどん変わって正直ついていけてないのが現状だ。ファッションもドラマも映画もコスメも…よくわかんない。
美羽なら話題の中心にすぐ溶け込めるんだけどなー…。
机に突っ伏し、窓の方を向きながらふと思う。幼馴染みと言うだけで一緒にいるけど、タイプ的には全然違う。いつも羨ましく思っては心の奥底に隠して笑ってる。
「キャー!!!!」
突然黄色い声が劈くように聞こえた。
慌てて顔を上げ、声のした方を向く。その先には廊下の窓を埋める女子の群れ。端の方に美羽の姿もばっちり見つけた。
隣のクラスは体育なのか…。女子の群れの隙間から王子の顔が見える。
「莉菜は行かないの?」
自分の席の斜め後ろの席でなにやら熱心に書いている莉菜に声をかける。…いつも何書いてるんだろう。
「私はいいの。王子に興味はないから」
「そっか…」
一言、呟いてまた突っ伏す。
きっぱりとそう言い切る莉菜がカッコいい。私には興味が無いと言い切る勇気もあの群れに混ざっていく勇気もないから。何も無かったかのようにただただ寝たふり。
実際王子に興味ないのはほんとだもんね。
自分に言い聞かせる。好きなのは藍原くんだ。私の王子は藍原くんだもん。
「あ…」
小さく呟いて、顔を上げ、今思い出したかのように授業の準備を始める。
別に誰が聞いてるわけでも、誰かが注目してるわけでも、誰かが見てる訳でもないんだけど。…なんて、自意識過剰だよね。なんで動くのに一言、言っちゃうんだろ。それも聞こえてないよね、って確信できるくらいすごく小さい声で。
準備が終わって教科書を流し見してたら、ざわざわと教室がまた五月蝿くなり、ほどなく先生が入ってきた。


終わったー…、と軽く背中を伸ばす。パキパキッと自分にだけ聞こえるくらいの骨の音がする。どうも凝りやすい体らしい。授業が終わってからの伸びが癖づいてもう何年になるだろうか。
「陽菜!陽菜!! 大変!」
伸ばし終わったばかりの背中を慌てた様子の美羽に叩かれた。
授業でわからないとこでもあったのかな…。
そんな呑気なことを思いながら、美羽の方を無言で振り向く。お昼前だということもあり、正直お腹が空いてしかたない。
「王子がうちの教室来てる!」
「…は?」
王子…つまり、みんなの言う王子、神永くんは隣のクラスのはずだ。学年は同じだから廊下で会うことはあっても教室に来ることはまずない。そもそも他教室に今まで来てなかった人物がいきなり来るようになるなんてこと、今までではありえない。
美羽の言ってる意味がよく頭の中に入ってこないまま、まぬけに口を半開きにしている私はいつも以上にイケてない顔なんだろう。神永くんが教室に現れたことにより、興奮している美羽はポニーテールが揺れまくっていた。
「だから!王子が来てんの!!」
「いや…なんで急に?」
高校2年、二学期。クラス替えがあって約半年。1度も来たことは無かったはずだ。それも1人で。誰かと来ることもなかったような人物が、1人で。
どういう風の吹き回しだろう…。というか、誰に用事なんだろう。
普段気にもしないくせに、こういう時だけ気になって仕方がない。気にしたところで自分に関係なんてないんだろうけど。
あー…ほら、またネガティブモード。なんでこうも自己評価下げちゃうかな…。少しくらい明るく高校生活してみたいのに。
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