眠り姫は夢の中

rui

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緑の大地の野蛮な人間

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「ねぇ、ジャックは運命の赤い糸って、信じてる?」

いつもの夢の中。
花がたくさん咲く庭園のベンチに、ジャックはテスと隣り合って座っていた。

ここはテスの住むお城の庭園だったか、と思い出す。
花をよく見てみれば、どれもこれも見たことのない花ばかりだった。

これも、自分の脳が作り出したものなのだろうか。
空に浮かぶ魔法の国なんて、存在しないのだろうか。

……と、ジャックが考えていると。

「もー、聞いてる?」

目の前にテスの顔がドアップに映し出されて、思わず固まってしまう。

どうやら、何か話しかけられていたらしい。
聞いてなかった。

「なんだ?」
「だから、運命の赤い糸。信じてる?」
「……なんだそれ」

何を聞かれたのかと思えば。
そういうのは、女同士でするような話だと思うのだが。

ジャックは興味なさげにつぶやくが、テスはどこか真剣な表情だ。
ならば、真剣に答えた方がよさそうだ。

……テスは拗ねると、めんどくさいのだ。
長年の付き合い、というとなんだかおかしいが、なんとなく彼女の事は分かるようになった。

「どうだろな。考えたことない」
「そっかー。……私も、よく分かんない。けど」

テスは空を見上げる。
ふわりとウェーブのかかった金色の髪が、ジャックの頬に触れて、なんとなくくすぐったい。

「好きな人がそうだったらいいなって、思うの」
「ふーん……」

好きな人、というのは異性のことだろう。
話の内容から察するに。

……妙に、面白くない。

むぅ、と無意識に眉間にシワをよせていると。

「ジャックが私の運命の相手だったら、いいな」

そう、テスがポツリとつぶやいた。

視線をテスに移すと、視線が絡まった。
そして、ニッコリと満面の笑みを浮かべながら、

「私ね、ジャックのことが、好きだよ」

そう口にすると。
ポカンとしているジャックに顔を近づけて、

--ちゅ、と、キスをしてきた。



「……は??」

ガバリ、と起きると、どうやら夢から覚めたらしい。

部屋のカーテンの隙間から、光が漏れている。
チュンチュン、と鳥の鳴き声が窓の外から聞こえてくる。

紛うことなき、現実の世界だった。


***

キスをしたら、ジャックの反応を見ることなく彼は消えてしまった。
きっと、目を覚ましたのだろう。

テスが自分の頬を両手でおさえると、熱かった。
熱くて仕方なかった。

「……怒ったかな?」

勝手にキスしてしまったこと。
それとも、軽蔑しただろうか。
はしたない、と。

けれど、どうしても初めてのキスの相手はジャックが良かったのだ。

どんなにテスが嫌だと言っても、眠りについてしまったら、運命の赤い糸の相手にキスされてしまうのだろう。

だから、後悔はしていない。

夢の中なら、きっと浮気にはならない、はず。
きっとジャックも、夢でのキスなんて気にも止めないだろう。

「ていうか……ジャックなら、現実でキスしても気にしないかも」

そんな気がする。
きっと次に会った時も、いつも通りの無愛想な彼なのだろう。

テスは想像したあとふふっ、と笑いながら背伸びをした。

「んーっ。明日も夢で会えるかな?」

会いたいな、と思う。
いつからジャックのことが好きなのか、自分でもよく分からない。
分からないけれど、きっと、ずっと昔から。

夢の中でいいから、ずっと彼のそばにいたい。
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