眠り姫は夢の中

rui

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眠り姫は夢の中

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***

目を覚ましたミリアは、なんだかすごくスッキリした気分だった。
いつもなら、朝から色々と悩んでしまい憂鬱な気分になるところだが……今日は違う。

『でも、人生は一度きりなんだよ? 私、あなたに後悔してほしくない』

誰だったか、その顔はもうぼんやりとしか思い出せないけれど。
夢の中でかけられた言葉を、しっかりと覚えていたから。

よし、とミリアは一度深呼吸をすると、起き上がって服を着替えた。
そして向かうのは、

「おはようございます」

朝食を待つ両親の元。

「おや、おはようミリア」
「よく寝れたかしら?」
「お父様、お母様。……だ、大事なお話があります!」

顔を見合わせる両親に、ミリアは意を決意して自分の気持ちを口にしたのだった。


「--ミリア様、なにか良いことでもありました?」

外を散歩していると、ジーグが声をかけてきた。

「こ……こんにちは、ジーグ様」

赤くなるのを感じながら、ミリアはお辞儀をする。

ずっとジャックの付き人だった彼は今、確かジャックの実家の主人……領主の手伝いをしているらしいことを思い出した。

「分かりますか……?」
「ええ、嬉しそうですね」

ニコニコとおっとりした笑みで頷くジーグに、ミリアはなんだかホッと安心する。
ジャックと婚約破棄をしたけれど、変わらず接してくれることに安堵したのだ。

「じ、実は……えっと……その……」

思わず話を聞いてもらおうと口を開いたが。
関係のないジーグに、そんな話を聞かせてもいいのだろうか、とミリアは躊躇してしまう。

興味のない話なんて聞かされても困るだろうか。

ミリアがもじもじしていると、ジーグがニコニコしながら、

「ぜひ知りたいですね」

そう、話をして促してくれた。
ジーグの笑顔は、とても安心する。

「えっと……両親に……結婚相手は自分で探したいと……。そう話したら……了承してくれて……」
「! それは良かったですね!」

自分のことのように喜んでくれるジーグに、ミリアはつい嬉しくて笑顔を浮かべた。

「あの……私、あの方にお礼を……」

無意識にそこまで口にして、ミリアはハッとする。
あれは、彼女はただの夢なのだ。
何を言おうとしているのだろうか。
恥ずかしい。

「? あの方とは?」
「え、えっと…その、ジャック様は、頑張っているのでしょうか……?」

慌ててミリアは、話題を変えた。

ジャックが飛空船技師の修行のために王都へ行って、ひと月は経つだろうか。

「そうですねぇ。便りがないのは良い便り、と言いますし。きっと頑張ってますよ。そういえば、結局ジャック様のキスした相手って誰だったんですかね? 最後まで教えてくれなかったんですよ」

長年の付き合いなのに、と少し拗ねた表情で話すジーグに、クスクスと笑ってしまった。

と、そこでふと鮮明に思い出すのは。

胸のあたりまで伸びた、ゆるやかなウェーブのかかった艶やかな金色の髪。
人形のような長いまつ毛に、宝石のような緑色の美しい瞳。
きめ細かで、思わず触れたくなる陶器のような白い肌をした……美しい少女の笑った顔だ。

「……まさかね?」

そんなこと、あるわけがない。

「どうかされました?」
「い、いいえ……」
「あっ今度僕、領主様からの指示で抜き打ちで王都まで様子を見に行くんですよ。もし興味がおありなら、ご一緒にいかがです?」

ほんわかとした雰囲気のジーグのお誘いに、ミリアは思わず「ぜひ……!」と返事をした。
が、すぐに我にかえる。

「王都……行ったことがなくて……。でもお父様が許してくださるかしら……」

男と二人で王都に行くなんて、さすがに許されないだろう。
確か、馬車で三日はかかると聞いたことがある。
使用人が一緒だとしても……どうだろうか。

ミリアがしゅんとした表情を浮かべていると、

「そんなに行きたいのなら、僕からもお願いしてみますから……そんなに落ち込まないでください」

ジーグが慌てて、落ち込むミリアを慰めてくれた。

そういえば、彼は昔から誰に対しても優しい人だった。

「あ……ありがとうございます……」

耳まで赤くなるのを、感じる。
だが、いつもとは違って……胸が、ドキドキとしていることに、気がついた。

「……?」

何かしら、と首をかしげるミリアが初恋を自覚するのは、もう少し先。
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