22 / 33
【第四章】影、点々と
21 : 痕(ルクス、エリオ)
しおりを挟む
シャワーの蒸気に白くけぶる中、ルクスはふと視線を落とした。
両の腿の内側に、淡く散る痕跡。
赤紫ににじんだそれは、打ち身にしては小さく、首をかしげる。
「何だろう、これ」
軽く指でなぞってみても痛みはなく、ただ皮膚に小さな模様が点々とある。
深く考えず、湯を浴び流して、そのままにした。
数日後。
エリオの部屋の寝室、乱れたシーツの上。
直前までの熱の余韻に溶けて、ルクスは横たわっていた。
まだ繋がっていたエリオの身体が離れ際、ルクスの腿にエリオの顔が寄せられる。
唇がやわらかく内腿をかすめた。
「あ」
唐突に思い至って、口をついて出た。
「そこにキスするの、好きなの?」
「……ん?」
エリオが顔を上げ、きょとんとする。
ルクスは、内腿に痕が残っていたことを説明した。
エリオは少し黙り込み、記憶をたどるように眉を寄せる。
「……言われてみれば、たしかにそうかもな」
エリオの唇の端に悪戯めいた笑みがのる。
「ルクス、君はキスの意味を知っているか?」
首を横に振るルクスを見下ろし、エリオはふいに身を沈める。
内腿に吸い付くような強い口付け。
重ねて浅く歯を立てられ、その刺激に、ルクスの身体に震えるような感覚が走る
「ここへのキスは、支配の意味がある」
低い囁きが、皮膚のすぐそばに落ちる。
「……今は、俺のものだろう」
その囁きは、内腿に触れた唇よりも熱く感じられた。
「……そうだね、今は……あなたのものだ」
どこか曖昧な響きが混じったが、そのこたえにエリオは満足げに笑った。
強く抱きしめられ、ルクスは瞬きをする。
「君なら、どこにキスする?」
問いかけの調子は睦言のようで、からかうようでもあった。
ルクスは、しばし考え、
「……ここかな」
そう呟きながら、エリオの胸ーー心臓のあたりへ指先をそっとあてる。
エリオは軽く眉をあげた。
ルクスは指先の位置へ顔を寄せ、鼓動を確かめるように、慎重に、唇を触れさせた。
一瞬の沈黙の後、エリオの喉が低く鳴る。
「熱烈だな」
笑みをこぼす声は楽しげだった。
しかし、その意味は語られない。
胸への口付けが何を示すのか、エリオは教えてはくれなかった。
両の腿の内側に、淡く散る痕跡。
赤紫ににじんだそれは、打ち身にしては小さく、首をかしげる。
「何だろう、これ」
軽く指でなぞってみても痛みはなく、ただ皮膚に小さな模様が点々とある。
深く考えず、湯を浴び流して、そのままにした。
数日後。
エリオの部屋の寝室、乱れたシーツの上。
直前までの熱の余韻に溶けて、ルクスは横たわっていた。
まだ繋がっていたエリオの身体が離れ際、ルクスの腿にエリオの顔が寄せられる。
唇がやわらかく内腿をかすめた。
「あ」
唐突に思い至って、口をついて出た。
「そこにキスするの、好きなの?」
「……ん?」
エリオが顔を上げ、きょとんとする。
ルクスは、内腿に痕が残っていたことを説明した。
エリオは少し黙り込み、記憶をたどるように眉を寄せる。
「……言われてみれば、たしかにそうかもな」
エリオの唇の端に悪戯めいた笑みがのる。
「ルクス、君はキスの意味を知っているか?」
首を横に振るルクスを見下ろし、エリオはふいに身を沈める。
内腿に吸い付くような強い口付け。
重ねて浅く歯を立てられ、その刺激に、ルクスの身体に震えるような感覚が走る
「ここへのキスは、支配の意味がある」
低い囁きが、皮膚のすぐそばに落ちる。
「……今は、俺のものだろう」
その囁きは、内腿に触れた唇よりも熱く感じられた。
「……そうだね、今は……あなたのものだ」
どこか曖昧な響きが混じったが、そのこたえにエリオは満足げに笑った。
強く抱きしめられ、ルクスは瞬きをする。
「君なら、どこにキスする?」
問いかけの調子は睦言のようで、からかうようでもあった。
ルクスは、しばし考え、
「……ここかな」
そう呟きながら、エリオの胸ーー心臓のあたりへ指先をそっとあてる。
エリオは軽く眉をあげた。
ルクスは指先の位置へ顔を寄せ、鼓動を確かめるように、慎重に、唇を触れさせた。
一瞬の沈黙の後、エリオの喉が低く鳴る。
「熱烈だな」
笑みをこぼす声は楽しげだった。
しかし、その意味は語られない。
胸への口付けが何を示すのか、エリオは教えてはくれなかった。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
後宮に咲く美しき寵后
不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。
フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。
そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。
縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。
ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。
情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。
狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。
縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ぽて と むーちゃんの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
狼の護衛騎士は、今日も心配が尽きない
結衣可
BL
戦の傷跡が癒えた共生都市ルーヴェン。
人族と獣人族が共に暮らすその街で、文官ユリス・アルヴィンは、穏やかな日々の中に、いつも自分を見守る“優しい視線”の存在を感じていた。
その正体は、狼族の戦士長出身の護衛騎士、ガルド・ルヴァーン。
無口で不器用だが、誠実で優しい彼は、いつしかユリスを守ることが日課になっていた。
モフモフ好きなユリスと、心配性すぎるガルド。
灰銀の狼と金灰の文官――
異種族の二人の関係がルーヴェンの風のようにやさしく、日々の中で少しずつ変わっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる