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公爵邸での生活も、早二週間。
私の「業務改善」は順調に進んでいた。
メイド長マーガレットとの冷戦は続いているものの、現場の使用人たちは私の「効率化(=早く終わって休める)」方針を支持し始めており、屋敷の空気は目に見えて明るくなっている。
そんなある日の午後。
私が執務室で「鶏舎の卵産出量グラフ」を作成していると、アンナが怪訝な顔で入ってきた。
手には、ピンク色の封筒を持っている。
「お嬢様、お手紙が届いています。……なんというか、ものすごく甘ったるい匂いがするんですが」
「匂い?」
私は顔を上げた。
確かに、アンナが部屋に入った瞬間から、バラとジャスミンを煮詰めて砂糖をぶちまけたような、強烈な香水の匂いが漂っている。
「うっ……換気! アンナ、窓を開けて! 嗅覚への公害レベルよ!」
「はい! すぐに!」
私は鼻をつまみながら、アンナが机に置いた封筒をペーパーナイフ(先端恐怖症対策で刃は丸めてある)で慎重につついた。
差出人の名前を見る。
『未来の国母 リリィ・ホワイト男爵令嬢』
丸文字で、ハートマーク付きでそう書かれていた。
「……リリィ? ホワイト?」
私は首を傾げた。
「アンナ、誰かしら? 新しい洗剤のセールス? 『ホワイト(白)』って名前だし」
「お嬢様……本気ですか?」
アンナが窓を開け放ちながら、呆れたように言った。
「ロナルド殿下の新しい婚約者の方ですよ。お嬢様から殿下を奪った、あの男爵令嬢です」
「ああ!」
私はポンと手を打った。
「あの『慰謝料の支払い義務者(連帯保証人)』ね! すっかり忘れていたわ」
「忘れるのが早すぎます。まだ半月も経っていませんよ」
「私にとって、利益を生まない人間の名前は脳内のメモリ容量の無駄遣いです。キャッシュは常にクリアにしておかないと、新しい計算式が入りませんから」
私は興味なさげに封筒を手に取った。
「で、何の用かしら? まさか『慰謝料を支払いました』という通知? それなら優先度『高』で開封するけれど」
「いえ、書留ではなく普通郵便ですので、おそらく小切手は入っていないかと」
「じゃあ用はないわね。シュレッダー(手動)にかけて堆肥に混ぜましょうか」
「一応、読んでおいた方がいいのでは? 何か文句が書いてあるかもしれませんし」
アンナに促され、私は渋々封筒を開封した。
中から出てきたのは、これまたピンク色の便箋が三枚。
ビッシリと丸文字が踊っている。
私は溜息をつきながら、斜め読みを始めた。
『親愛なる(笑)お姉様へ』
『お元気ですか? いいえ、お元気なわけありませんよね。あんな風に王宮を追い出されて、今はきっと、薄暗い部屋で泣き暮らしていらっしゃるのでしょう?』
「……『薄暗い部屋』? 南向きの日当たりの良い執務室だけど」
『ロナルド様は毎日私に、「君こそが真実の愛だ」と囁いてくださいます。昨日は王都で一番高級なレストラン「銀の匙」で、特製ケーキを食べさせてくださいました』
「『銀の匙』のケーキ……原価率が低い割に値段が高いだけの観光客向けメニューね。味覚レベルが知れるわ」
『ドレスもたくさん買ってくださいました! 昨日はシルクのドレスを三着も! お姉様が着ていらした地味な紺色のドレスとは大違いですのよ』
「紺色は汚れが目立たないから実用的なのよ。それにシルクはクリーニング代が高い。維持費(ランニングコスト)を考えない買い物は素人のすることね」
読み進めるほどに、内容は「私はいかに愛されているか」「あなたはこれを見て悔しがれ」というマウントのオンパレードだった。
しかし、私の心にはさざ波一つ立たない。
むしろ、憐れみすら覚える。
(この子、ロナルド殿下の財布が破綻寸前だと知らないのかしら?)
私が送った請求書の支払い期限は来月末だ。
今こんなに散財していて、果たして支払えるのか。
「……ある意味、貴重な資料だわ」
私は赤ペンを取り出した。
「アンナ、これを見て。殿下の最近の出費リストが具体的に書かれているわ」
「え? 自慢話ですよね?」
「いいえ、これは『浪費の証拠』よ。レストランの代金、ドレス代、宝石代……ざっと計算して金貨五十枚。殿下の小遣いの範囲を超えているわね」
私は手紙の余白に、サラサラと計算式を書き込んでいった。
『被服費:過剰投資』
『食費:カロリー過多』
『交際費:予算オーバー』
「よし。これを証拠として保管しておきましょう。もし慰謝料が未払いになった時、『支払能力がないのではなく、浪費による自業自得』であることを証明する材料になります」
「……リリィ様も、まさか自分の自慢話が『債務不履行の証拠書類』になるとは思わないでしょうね」
アンナが苦笑する。
その時、ドアがノックされ、ジェラルドが入ってきた。
「キャンディ、例の牧草の件だが……ん? なんだその毒々しい色の紙は」
ジェラルドは私の手にあるピンクの便箋を見て、顔をしかめた。
「ああ、ジェラルド様。ちょうどよかった。これ、見ていただけますか?」
私は赤ペンで添削済みの手紙を彼に渡した。
「元婚約者の新しいお相手からの手紙です。『私たちはこんなに無計画にお金を使っています』という詳細なレポートを送ってきてくれました」
「……普通はそれを『自慢』と呼ぶんだが」
ジェラルドは手紙を受け取り、目を通した。
『ロナルド様との愛の巣は最高です!』
『お姉様には一生縁のない幸せですわね!』
そんな文言が並ぶ手紙を見て、彼は不快そうに眉を寄せた。
「……下品な手紙だ。わざわざこんな物を送ってくるとは、性格の悪さが透けて見える」
彼は私を気遣うように見た。
「キャンディ、こんな戯言、気にする必要はないぞ。すぐに捨ててしまえ」
「ええ、内容は気にしていません。ですが、裏面がもったいないので」
「裏面?」
「紙質はそこそこ良いので、メモ用紙として使えます。ほら、ここ」
私は手紙をひっくり返した。
裏面の白紙部分には、すでに私が書き殴った『来月の鶏飼料の配合比率』の計算式がビッシリと埋まっていた。
「……君は、マウントを取られた手紙の裏で、ニワトリの餌の計算をしていたのか?」
「はい。紙は資源ですから」
ジェラルドは手紙の表と裏を交互に見て、やがて肩を震わせ始めた。
「くっ……ははっ! リリィ男爵令嬢も浮かばれないな! 渾身の嫌がらせが、ニワトリの餌の計算用紙にされるとは!」
「有効活用です。彼女も少しは公爵家の農業改革に貢献できたと知れば、草葉の陰で喜ぶでしょう」
「死んでない、死んでないぞ」
ジェラルドは笑い涙を拭いながら、手紙を私に返した。
「分かった。君が傷ついていないならそれでいい。……むしろ、傷ついているのは向こうのプライドだろうな」
「そういえば、返事はどうしましょう? ビジネスマナーとしては返信すべきでしょうか?」
私は首を捻った。
「『レポート受領しました。支出のバランスが悪いので、ファイナンシャルプランナーへの相談をお勧めします』とアドバイスを送るべき?」
「やめておけ。それが一番の煽りになる」
ジェラルドが止めた。
「無視が一番だ。それに、君にはもっと重要な仕事があるだろう?」
「ええ、そうです! 今日はこれから、領内の休耕地を『サツマイモ畑』にする計画の現地視察があるんです!」
私はリリィの手紙(計算用紙)をファイルに挟み込み、立ち上がった。
「サツマイモは荒地でも育つし、保存も効くし、何より甘くて美味しい! 最高の投資物件です!」
「また食べ物の話か……まあ、君らしい」
ジェラルドは呆れつつも、愛おしそうに目を細めた。
「行くぞ。馬車を用意させてある」
「はい! アンナ、お弁当(試作のサツマイモご飯)持った?」
「バッチリです!」
私たちは意気揚々と部屋を出た。
机の上には、ピンク色の封筒だけが取り残された。
強烈な香水の匂いも、窓から吹き込む爽やかな風に流され、すぐに消えていった。
リリィ・ホワイト。
その名前は、私の脳内データベースの「その他・雑費」フォルダに分類され、二度と引き出されることはなかった――少なくとも、向こうが自滅して泣きついてくるまでは。
私の「業務改善」は順調に進んでいた。
メイド長マーガレットとの冷戦は続いているものの、現場の使用人たちは私の「効率化(=早く終わって休める)」方針を支持し始めており、屋敷の空気は目に見えて明るくなっている。
そんなある日の午後。
私が執務室で「鶏舎の卵産出量グラフ」を作成していると、アンナが怪訝な顔で入ってきた。
手には、ピンク色の封筒を持っている。
「お嬢様、お手紙が届いています。……なんというか、ものすごく甘ったるい匂いがするんですが」
「匂い?」
私は顔を上げた。
確かに、アンナが部屋に入った瞬間から、バラとジャスミンを煮詰めて砂糖をぶちまけたような、強烈な香水の匂いが漂っている。
「うっ……換気! アンナ、窓を開けて! 嗅覚への公害レベルよ!」
「はい! すぐに!」
私は鼻をつまみながら、アンナが机に置いた封筒をペーパーナイフ(先端恐怖症対策で刃は丸めてある)で慎重につついた。
差出人の名前を見る。
『未来の国母 リリィ・ホワイト男爵令嬢』
丸文字で、ハートマーク付きでそう書かれていた。
「……リリィ? ホワイト?」
私は首を傾げた。
「アンナ、誰かしら? 新しい洗剤のセールス? 『ホワイト(白)』って名前だし」
「お嬢様……本気ですか?」
アンナが窓を開け放ちながら、呆れたように言った。
「ロナルド殿下の新しい婚約者の方ですよ。お嬢様から殿下を奪った、あの男爵令嬢です」
「ああ!」
私はポンと手を打った。
「あの『慰謝料の支払い義務者(連帯保証人)』ね! すっかり忘れていたわ」
「忘れるのが早すぎます。まだ半月も経っていませんよ」
「私にとって、利益を生まない人間の名前は脳内のメモリ容量の無駄遣いです。キャッシュは常にクリアにしておかないと、新しい計算式が入りませんから」
私は興味なさげに封筒を手に取った。
「で、何の用かしら? まさか『慰謝料を支払いました』という通知? それなら優先度『高』で開封するけれど」
「いえ、書留ではなく普通郵便ですので、おそらく小切手は入っていないかと」
「じゃあ用はないわね。シュレッダー(手動)にかけて堆肥に混ぜましょうか」
「一応、読んでおいた方がいいのでは? 何か文句が書いてあるかもしれませんし」
アンナに促され、私は渋々封筒を開封した。
中から出てきたのは、これまたピンク色の便箋が三枚。
ビッシリと丸文字が踊っている。
私は溜息をつきながら、斜め読みを始めた。
『親愛なる(笑)お姉様へ』
『お元気ですか? いいえ、お元気なわけありませんよね。あんな風に王宮を追い出されて、今はきっと、薄暗い部屋で泣き暮らしていらっしゃるのでしょう?』
「……『薄暗い部屋』? 南向きの日当たりの良い執務室だけど」
『ロナルド様は毎日私に、「君こそが真実の愛だ」と囁いてくださいます。昨日は王都で一番高級なレストラン「銀の匙」で、特製ケーキを食べさせてくださいました』
「『銀の匙』のケーキ……原価率が低い割に値段が高いだけの観光客向けメニューね。味覚レベルが知れるわ」
『ドレスもたくさん買ってくださいました! 昨日はシルクのドレスを三着も! お姉様が着ていらした地味な紺色のドレスとは大違いですのよ』
「紺色は汚れが目立たないから実用的なのよ。それにシルクはクリーニング代が高い。維持費(ランニングコスト)を考えない買い物は素人のすることね」
読み進めるほどに、内容は「私はいかに愛されているか」「あなたはこれを見て悔しがれ」というマウントのオンパレードだった。
しかし、私の心にはさざ波一つ立たない。
むしろ、憐れみすら覚える。
(この子、ロナルド殿下の財布が破綻寸前だと知らないのかしら?)
私が送った請求書の支払い期限は来月末だ。
今こんなに散財していて、果たして支払えるのか。
「……ある意味、貴重な資料だわ」
私は赤ペンを取り出した。
「アンナ、これを見て。殿下の最近の出費リストが具体的に書かれているわ」
「え? 自慢話ですよね?」
「いいえ、これは『浪費の証拠』よ。レストランの代金、ドレス代、宝石代……ざっと計算して金貨五十枚。殿下の小遣いの範囲を超えているわね」
私は手紙の余白に、サラサラと計算式を書き込んでいった。
『被服費:過剰投資』
『食費:カロリー過多』
『交際費:予算オーバー』
「よし。これを証拠として保管しておきましょう。もし慰謝料が未払いになった時、『支払能力がないのではなく、浪費による自業自得』であることを証明する材料になります」
「……リリィ様も、まさか自分の自慢話が『債務不履行の証拠書類』になるとは思わないでしょうね」
アンナが苦笑する。
その時、ドアがノックされ、ジェラルドが入ってきた。
「キャンディ、例の牧草の件だが……ん? なんだその毒々しい色の紙は」
ジェラルドは私の手にあるピンクの便箋を見て、顔をしかめた。
「ああ、ジェラルド様。ちょうどよかった。これ、見ていただけますか?」
私は赤ペンで添削済みの手紙を彼に渡した。
「元婚約者の新しいお相手からの手紙です。『私たちはこんなに無計画にお金を使っています』という詳細なレポートを送ってきてくれました」
「……普通はそれを『自慢』と呼ぶんだが」
ジェラルドは手紙を受け取り、目を通した。
『ロナルド様との愛の巣は最高です!』
『お姉様には一生縁のない幸せですわね!』
そんな文言が並ぶ手紙を見て、彼は不快そうに眉を寄せた。
「……下品な手紙だ。わざわざこんな物を送ってくるとは、性格の悪さが透けて見える」
彼は私を気遣うように見た。
「キャンディ、こんな戯言、気にする必要はないぞ。すぐに捨ててしまえ」
「ええ、内容は気にしていません。ですが、裏面がもったいないので」
「裏面?」
「紙質はそこそこ良いので、メモ用紙として使えます。ほら、ここ」
私は手紙をひっくり返した。
裏面の白紙部分には、すでに私が書き殴った『来月の鶏飼料の配合比率』の計算式がビッシリと埋まっていた。
「……君は、マウントを取られた手紙の裏で、ニワトリの餌の計算をしていたのか?」
「はい。紙は資源ですから」
ジェラルドは手紙の表と裏を交互に見て、やがて肩を震わせ始めた。
「くっ……ははっ! リリィ男爵令嬢も浮かばれないな! 渾身の嫌がらせが、ニワトリの餌の計算用紙にされるとは!」
「有効活用です。彼女も少しは公爵家の農業改革に貢献できたと知れば、草葉の陰で喜ぶでしょう」
「死んでない、死んでないぞ」
ジェラルドは笑い涙を拭いながら、手紙を私に返した。
「分かった。君が傷ついていないならそれでいい。……むしろ、傷ついているのは向こうのプライドだろうな」
「そういえば、返事はどうしましょう? ビジネスマナーとしては返信すべきでしょうか?」
私は首を捻った。
「『レポート受領しました。支出のバランスが悪いので、ファイナンシャルプランナーへの相談をお勧めします』とアドバイスを送るべき?」
「やめておけ。それが一番の煽りになる」
ジェラルドが止めた。
「無視が一番だ。それに、君にはもっと重要な仕事があるだろう?」
「ええ、そうです! 今日はこれから、領内の休耕地を『サツマイモ畑』にする計画の現地視察があるんです!」
私はリリィの手紙(計算用紙)をファイルに挟み込み、立ち上がった。
「サツマイモは荒地でも育つし、保存も効くし、何より甘くて美味しい! 最高の投資物件です!」
「また食べ物の話か……まあ、君らしい」
ジェラルドは呆れつつも、愛おしそうに目を細めた。
「行くぞ。馬車を用意させてある」
「はい! アンナ、お弁当(試作のサツマイモご飯)持った?」
「バッチリです!」
私たちは意気揚々と部屋を出た。
机の上には、ピンク色の封筒だけが取り残された。
強烈な香水の匂いも、窓から吹き込む爽やかな風に流され、すぐに消えていった。
リリィ・ホワイト。
その名前は、私の脳内データベースの「その他・雑費」フォルダに分類され、二度と引き出されることはなかった――少なくとも、向こうが自滅して泣きついてくるまでは。
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