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「さあ、キャンディ様! あなたを王都で一番の『花の妖精』に変身させてみせますわ!」
公爵邸の応接室。
そこに、甲高い声が響き渡った。
目の前に立っているのは、王都で人気のオートクチュール・デザイナー、マダム・セシル。
派手な羽飾りのついた帽子を被り、両手には巻き尺とピンを持っている。
彼女の後ろには、大量の生地見本と、きらびやかなドレスを抱えたアシスタントたちが控えていた。
「よろしくお願いします、マダム。ですが訂正を。『妖精』ではなく『戦士』です」
私は仁王立ちで答えた。
「は?」
マダムの手が止まる。
「今回の夜会は、私にとって『隣国ビュッフェ攻略戦』という重要なミッションを含んでいます。よって、求めるドレスの要件は『可愛さ』ではありません。『機能性』と『収納力』です」
「き、機能性……? 収納力……?」
マダムが助けを求めるように、ソファで紅茶を飲んでいるジェラルドを見た。
ジェラルドは「俺は関知しない。彼女の望む通りにしてやってくれ」と肩をすくめるだけだ(ただし、顔はすでに笑っている)。
「では、キャンディ様。具体的にはどのようなデザインをご希望で?」
気を取り直したマダムが、スケッチブックを開く。
私はホワイトボード(自作)を用意し、指示棒でパンパンと叩いた。
「まず、第一の要件。コルセットは廃止、もしくは極限まで緩めてください」
「なっ……!?」
マダムが絶句する。
「正気ですか!? コルセットは淑女の嗜み! ウエストを細く見せ、美しいラインを作るための必須アイテムですわ!」
「美しいラインよりも、胃の容量(キャパシティ)が優先です」
私は断言した。
「今回の敵(ビュッフェ)には、フォアグラ、トリュフ、キャビアなどの強敵が待ち構えています。コルセットで胃を圧迫すれば、摂取可能カロリーが半減してしまう。これは明らかな機会損失です」
「い、胃の圧迫……ですが、それではスタイルが……」
「スタイルなど、食べた後の満足感に比べれば些末な問題です。ウエスト周りは『可変式』……そう、ゴム仕様、もしくはアジャスター付きのベルトで調整可能な構造にしてください」
「ゴム……! 夜会服にゴム……!」
マダムが眩暈を起こしてよろめく。
私は構わず次の指示を出した。
「第二の要件。スカートの裾(トレーン)は不要です。足首が見えるくらいの丈で結構です」
「ま、待ってください! 王太子の夜会ですよ? 床に広がる長い裾こそがエレガントの象徴です!」
「エレガント? いいえ、それは『足枷』です」
私は机上の計算機を弾いた。
「長い裾は、他人に踏まれるリスクが三〇%、自分で踏んで転ぶリスクが二〇%。何より、料理を取りに行く際の移動速度(モビリティ)が著しく低下します。ローストビーフの列に並ぶ際、コンマ一秒の遅れが命取りになるのです」
「ろ、ローストビーフのために裾を切るのですか……?」
「当然です。動きやすさこそ正義。素材も、伸縮性のあるストレッチ素材を希望します」
マダムは「信じられない」と呟きながら、震える手でメモを取っている。
「第三の要件。これが最も重要です」
私は声を一段低くした。
「ドレスの両サイド、および太もものガーター部分に、『隠しポケット』を実装してください」
「……はい?」
「ポケットです。それも、ただのポケットではありません。内側に防水加工を施し、クッキーや焼き菓子を直接入れても油染みができない仕様のものです」
シーン……。
応接室が静まり返った。
ジェラルドが飲んでいた紅茶を噴き出しそうになっているのが視界の端に見える。
「ポ、ポケット……? ドレスに? しかも、お菓子を入れるための……?」
マダムの声が裏返った。
「キャンディ様、あなたは夜会で『お持ち帰り』をするおつもりですか!?」
「当然です。ビュッフェの料理はその場限りですが、焼き菓子は持ち帰れば翌日の朝食代(コスト)を削減できます。SDGs(持続可能な食費削減)の観点からも推奨されるべき行為です」
「そんな淑女はいません!!」
マダムが叫んだ。
「ありえません! 美しくありません! 私のデザイナーとしてのプライドが許しませんわ! ゴムウエストに短めの丈、あまつさえお菓子用ポケット!? そんなものはドレスではありません、作業着です!」
マダムはスケッチブックを床に叩きつけた。
「お断りです! これ以上、私の美学を侮辱するなら帰らせていただきます!」
さすが一流デザイナー。頑固だ。
しかし、私もここで引くわけにはいかない。
これは食料確保のための戦争なのだ。
「……マダム。あなたの美学は理解しました」
私は静かに言った。
「では、条件を追加しましょう。もし、私の要望を全て満たしつつ、かつ『誰が見ても美しい』デザインを完成させたなら」
私はジェラルドの方を向き、ニッコリと笑った。
「デザイン料として、相場の三倍をお支払いします。ね、ジェラルド様?」
ジェラルドは咳払いを一つして、頷いた。
「ああ。金に糸目はつけない。彼女の無茶な注文を、君の技術で『芸術』に昇華させてくれ。それができるのは、王都で君だけだ」
「……さ、三倍……」
マダムの目の色が変わった。
さらにジェラルドが畳み掛ける。
「さらに、今回のドレスが評判になれば、『アイゼンハルト公爵家御用達』の看板を掲げることを許可しよう」
「……!!」
マダムがゴクリと唾を飲み込んだ。
金と名誉。
プロフェッショナルを動かす最強の燃料だ。
彼女は床に落ちたスケッチブックを拾い上げ、バッと顔を上げた。
その瞳には、すでに職人の炎が燃え盛っていた。
「……面白い。やってやろうじゃありませんか!」
マダムは凄絶な笑みを浮かべた。
「ゴム? ポケット? 上等ですわ! それらを全て隠し通し、完璧なシルエットを作ってこそ一流の技! 私のプライドにかけて、あなたを『動ける妖精』にして見せます!」
「交渉成立ですね」
私はガッツポーズをした。
そこからは、まさに戦争だった。
「生地はこれよ! 光沢のあるシルクサテンなら、防水加工をしても不自然じゃないわ!」
「ドレープを多用してポケットの膨らみを隠すのよ! ここのタックを深くして……」
「ウエストは背中のリボンで調整可能に! 一見すると装飾だけど、実は緩められる構造にするわ!」
マダムとアシスタントたちが、猛烈な勢いで採寸し、型紙を引いていく。
私はただ、されるがままに立っていた。
ジェラルドはその様子を、楽しそうに眺めている。
「すごい熱気だな。魔獣討伐の作戦会議より激しい」
「ええ。彼女はプロですから。お金の匂いがする案件には全力で応えてくれます」
そして、数日後。
ついに「決戦装備(ドレス)」が完成した。
「……どうかしら?」
目の下にクマを作ったマダムが、自信満々でドレスを披露した。
それは、深いミッドナイトブルーのドレスだった。
一見すると、シンプルで洗練されたAラインのドレスだ。
しかし、その中身はハイテクの塊だった。
「素晴らしい……!」
私は試着して、その機能性に震えた。
「ウエスト、苦しくない! これならステーキ五枚はいけます!」
背中の編み上げリボンには特殊なゴムが仕込まれており、呼吸に合わせて伸縮する。
「丈も完璧! 全力疾走できる長さでありながら、計算されたドレープのおかげで優雅に見える!」
そして、何より。
「ポケット……! ここに深さ二十センチの空間があるなんて、外からは全く分かりません!」
私はサイドの縫い目に隠されたポケットに手を入れた。
スコーンが三個は入りそうだ。
「マダム、あなたは天才です! これぞ私が求めていた『機能美』の極致!」
「ふふふ……当然ですわ」
マダムはふらつきながらも、誇らしげに胸を張った。
「防水布を内蔵したせいで通気性は最悪ですが、汚れには無敵です。赤ワインをこぼされても、サッと拭けば元通りよ」
「最高です。これでクリーニング代も浮きます」
私は鏡の前でくるりと回った。
深い青色の生地が、照明を反射してキラキラと輝く。
ジェラルドが、ほう、と息を漏らした。
「……驚いたな。まさかあの無茶な注文で、ここまで仕上げるとは」
彼は私の前に歩み寄り、まじまじと見つめた。
「美しいよ、キャンディ。見た目だけは、どこに出しても恥ずかしくない淑女だ」
「見た目だけ、は余計です」
「だが、そのポケットにスコーンを詰め込む姿を想像すると……やはり君だ」
ジェラルドは苦笑しながら、私の手を取った。
「よく似合っている。そのドレスなら、隣国の王太子も君の胃袋の容量には気づかないだろう」
「ありがとうございます。これで心置きなく戦えます」
私は鏡の中の自分に向かって、ニヤリと笑った。
髪はアップにし、ジェラルドがくれたサファイアのネックレス(時価五百枚)も着けた。
(待ってらっしゃい、ビュッフェ! 私の胃袋とポケットが火を噴くわよ!)
こうして、最強の装備を手に入れた私は、いよいよ決戦の地――隣国ガルディア王国の夜会へと乗り込む準備を整えたのだった。
マダム・セシルには、約束通り通常の三倍の代金を支払い、さらに「お菓子用ポケット付きドレス」の特許権を共同申請することになった(これもまた、新たな利益を生む予感がする)。
公爵邸の応接室。
そこに、甲高い声が響き渡った。
目の前に立っているのは、王都で人気のオートクチュール・デザイナー、マダム・セシル。
派手な羽飾りのついた帽子を被り、両手には巻き尺とピンを持っている。
彼女の後ろには、大量の生地見本と、きらびやかなドレスを抱えたアシスタントたちが控えていた。
「よろしくお願いします、マダム。ですが訂正を。『妖精』ではなく『戦士』です」
私は仁王立ちで答えた。
「は?」
マダムの手が止まる。
「今回の夜会は、私にとって『隣国ビュッフェ攻略戦』という重要なミッションを含んでいます。よって、求めるドレスの要件は『可愛さ』ではありません。『機能性』と『収納力』です」
「き、機能性……? 収納力……?」
マダムが助けを求めるように、ソファで紅茶を飲んでいるジェラルドを見た。
ジェラルドは「俺は関知しない。彼女の望む通りにしてやってくれ」と肩をすくめるだけだ(ただし、顔はすでに笑っている)。
「では、キャンディ様。具体的にはどのようなデザインをご希望で?」
気を取り直したマダムが、スケッチブックを開く。
私はホワイトボード(自作)を用意し、指示棒でパンパンと叩いた。
「まず、第一の要件。コルセットは廃止、もしくは極限まで緩めてください」
「なっ……!?」
マダムが絶句する。
「正気ですか!? コルセットは淑女の嗜み! ウエストを細く見せ、美しいラインを作るための必須アイテムですわ!」
「美しいラインよりも、胃の容量(キャパシティ)が優先です」
私は断言した。
「今回の敵(ビュッフェ)には、フォアグラ、トリュフ、キャビアなどの強敵が待ち構えています。コルセットで胃を圧迫すれば、摂取可能カロリーが半減してしまう。これは明らかな機会損失です」
「い、胃の圧迫……ですが、それではスタイルが……」
「スタイルなど、食べた後の満足感に比べれば些末な問題です。ウエスト周りは『可変式』……そう、ゴム仕様、もしくはアジャスター付きのベルトで調整可能な構造にしてください」
「ゴム……! 夜会服にゴム……!」
マダムが眩暈を起こしてよろめく。
私は構わず次の指示を出した。
「第二の要件。スカートの裾(トレーン)は不要です。足首が見えるくらいの丈で結構です」
「ま、待ってください! 王太子の夜会ですよ? 床に広がる長い裾こそがエレガントの象徴です!」
「エレガント? いいえ、それは『足枷』です」
私は机上の計算機を弾いた。
「長い裾は、他人に踏まれるリスクが三〇%、自分で踏んで転ぶリスクが二〇%。何より、料理を取りに行く際の移動速度(モビリティ)が著しく低下します。ローストビーフの列に並ぶ際、コンマ一秒の遅れが命取りになるのです」
「ろ、ローストビーフのために裾を切るのですか……?」
「当然です。動きやすさこそ正義。素材も、伸縮性のあるストレッチ素材を希望します」
マダムは「信じられない」と呟きながら、震える手でメモを取っている。
「第三の要件。これが最も重要です」
私は声を一段低くした。
「ドレスの両サイド、および太もものガーター部分に、『隠しポケット』を実装してください」
「……はい?」
「ポケットです。それも、ただのポケットではありません。内側に防水加工を施し、クッキーや焼き菓子を直接入れても油染みができない仕様のものです」
シーン……。
応接室が静まり返った。
ジェラルドが飲んでいた紅茶を噴き出しそうになっているのが視界の端に見える。
「ポ、ポケット……? ドレスに? しかも、お菓子を入れるための……?」
マダムの声が裏返った。
「キャンディ様、あなたは夜会で『お持ち帰り』をするおつもりですか!?」
「当然です。ビュッフェの料理はその場限りですが、焼き菓子は持ち帰れば翌日の朝食代(コスト)を削減できます。SDGs(持続可能な食費削減)の観点からも推奨されるべき行為です」
「そんな淑女はいません!!」
マダムが叫んだ。
「ありえません! 美しくありません! 私のデザイナーとしてのプライドが許しませんわ! ゴムウエストに短めの丈、あまつさえお菓子用ポケット!? そんなものはドレスではありません、作業着です!」
マダムはスケッチブックを床に叩きつけた。
「お断りです! これ以上、私の美学を侮辱するなら帰らせていただきます!」
さすが一流デザイナー。頑固だ。
しかし、私もここで引くわけにはいかない。
これは食料確保のための戦争なのだ。
「……マダム。あなたの美学は理解しました」
私は静かに言った。
「では、条件を追加しましょう。もし、私の要望を全て満たしつつ、かつ『誰が見ても美しい』デザインを完成させたなら」
私はジェラルドの方を向き、ニッコリと笑った。
「デザイン料として、相場の三倍をお支払いします。ね、ジェラルド様?」
ジェラルドは咳払いを一つして、頷いた。
「ああ。金に糸目はつけない。彼女の無茶な注文を、君の技術で『芸術』に昇華させてくれ。それができるのは、王都で君だけだ」
「……さ、三倍……」
マダムの目の色が変わった。
さらにジェラルドが畳み掛ける。
「さらに、今回のドレスが評判になれば、『アイゼンハルト公爵家御用達』の看板を掲げることを許可しよう」
「……!!」
マダムがゴクリと唾を飲み込んだ。
金と名誉。
プロフェッショナルを動かす最強の燃料だ。
彼女は床に落ちたスケッチブックを拾い上げ、バッと顔を上げた。
その瞳には、すでに職人の炎が燃え盛っていた。
「……面白い。やってやろうじゃありませんか!」
マダムは凄絶な笑みを浮かべた。
「ゴム? ポケット? 上等ですわ! それらを全て隠し通し、完璧なシルエットを作ってこそ一流の技! 私のプライドにかけて、あなたを『動ける妖精』にして見せます!」
「交渉成立ですね」
私はガッツポーズをした。
そこからは、まさに戦争だった。
「生地はこれよ! 光沢のあるシルクサテンなら、防水加工をしても不自然じゃないわ!」
「ドレープを多用してポケットの膨らみを隠すのよ! ここのタックを深くして……」
「ウエストは背中のリボンで調整可能に! 一見すると装飾だけど、実は緩められる構造にするわ!」
マダムとアシスタントたちが、猛烈な勢いで採寸し、型紙を引いていく。
私はただ、されるがままに立っていた。
ジェラルドはその様子を、楽しそうに眺めている。
「すごい熱気だな。魔獣討伐の作戦会議より激しい」
「ええ。彼女はプロですから。お金の匂いがする案件には全力で応えてくれます」
そして、数日後。
ついに「決戦装備(ドレス)」が完成した。
「……どうかしら?」
目の下にクマを作ったマダムが、自信満々でドレスを披露した。
それは、深いミッドナイトブルーのドレスだった。
一見すると、シンプルで洗練されたAラインのドレスだ。
しかし、その中身はハイテクの塊だった。
「素晴らしい……!」
私は試着して、その機能性に震えた。
「ウエスト、苦しくない! これならステーキ五枚はいけます!」
背中の編み上げリボンには特殊なゴムが仕込まれており、呼吸に合わせて伸縮する。
「丈も完璧! 全力疾走できる長さでありながら、計算されたドレープのおかげで優雅に見える!」
そして、何より。
「ポケット……! ここに深さ二十センチの空間があるなんて、外からは全く分かりません!」
私はサイドの縫い目に隠されたポケットに手を入れた。
スコーンが三個は入りそうだ。
「マダム、あなたは天才です! これぞ私が求めていた『機能美』の極致!」
「ふふふ……当然ですわ」
マダムはふらつきながらも、誇らしげに胸を張った。
「防水布を内蔵したせいで通気性は最悪ですが、汚れには無敵です。赤ワインをこぼされても、サッと拭けば元通りよ」
「最高です。これでクリーニング代も浮きます」
私は鏡の前でくるりと回った。
深い青色の生地が、照明を反射してキラキラと輝く。
ジェラルドが、ほう、と息を漏らした。
「……驚いたな。まさかあの無茶な注文で、ここまで仕上げるとは」
彼は私の前に歩み寄り、まじまじと見つめた。
「美しいよ、キャンディ。見た目だけは、どこに出しても恥ずかしくない淑女だ」
「見た目だけ、は余計です」
「だが、そのポケットにスコーンを詰め込む姿を想像すると……やはり君だ」
ジェラルドは苦笑しながら、私の手を取った。
「よく似合っている。そのドレスなら、隣国の王太子も君の胃袋の容量には気づかないだろう」
「ありがとうございます。これで心置きなく戦えます」
私は鏡の中の自分に向かって、ニヤリと笑った。
髪はアップにし、ジェラルドがくれたサファイアのネックレス(時価五百枚)も着けた。
(待ってらっしゃい、ビュッフェ! 私の胃袋とポケットが火を噴くわよ!)
こうして、最強の装備を手に入れた私は、いよいよ決戦の地――隣国ガルディア王国の夜会へと乗り込む準備を整えたのだった。
マダム・セシルには、約束通り通常の三倍の代金を支払い、さらに「お菓子用ポケット付きドレス」の特許権を共同申請することになった(これもまた、新たな利益を生む予感がする)。
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