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王立闘技場。
そこは普段、騎士団の演習や、国家の祝典で行われる御前試合に使われる神聖な場所だ。
しかし、今日。
その神聖な場所は、熱気とポップコーンの匂い、そして金貨が飛び交う喧騒に包まれていた。
「さあさあ、いらっしゃい! 世紀の決闘だよ! チケット残りわずか!」
「こちらのブースでは『恋のシビレジャム』決闘限定パッケージを販売中! お土産にどうぞ!」
「冷えたビールに焼き鳥はいかが! 観戦のお供に最高だよ!」
まるで縁日だ。
闘技場の入り口には屋台が並び、観客席は貴族から平民まで超満員。
私が仕掛けた「決闘興行」は、予想を遥かに超える大盛況となっていた。
「……素晴らしい」
私はVIP席(特設実況席)で、眼下に広がる満員の客席を見下ろして頷いた。
「チケット完売。グッズの売れ行きも順調。……アンナ、現在の収支は?」
「はい、お嬢様。経費を差し引いても、すでに金貨三千枚の黒字です」
「上出来ね。これでロナルド殿下の借金の半分くらいは返せそうだけど……残念ながら、これは全額公爵家の売上よ」
私は手元の分厚い帳簿を開いた。
ここからが本番だ。
私が取り仕切るのは、このイベントのメインコンテンツ――「賭け(ブックメーカー)」である。
「さあ、張った張った! 第一王子ロナルド対、氷の公爵ジェラルド! 勝つのはどっちだ!」
私の掛け声に、貴族たちが殺到する。
「ジェラルド公爵に金貨百枚!」
「俺も公爵だ! 五十枚!」
「私も! 全財産を公爵に賭けるわ!」
……問題が発生した。
全員がジェラルドに賭けているのだ。
「ちょ、ちょっと待って! ロナルド殿下に賭ける方はいらっしゃいませんか!? 今ならオッズ五十倍! 勝てば一攫千金ですよ!」
「無理だろ」
「あんなへっぴり腰の王子が、最強の公爵様に勝てるわけがない」
「ドブに金を捨てるようなもんだ」
観客は冷静だった。
ロナルドの人気と実力、ともに底辺である。
(まずい……このままでは賭けが成立しない。全員が勝ち馬に乗ったら、胴元の私が破産してしまう!)
私は脳をフル回転させた。
単純な勝敗予想ではダメだ。ならば、賭けの対象を変えるしかない。
「えー、変更します! 勝敗オッズは人気集中のため締め切りました! 代わりに、『ロナルド殿下がどのくらいの時間で負けるか』を予想する『タイムアタック・ベット』を開催します!」
私は黒板に新たなオッズ表を書き殴った。
『1.開始十秒以内で瞬殺(3倍)』
『2.一分持たずに降参(2倍)』
『3.奇跡的に三分以上粘る(10倍)』
『4.泣いて逃げ出す(1.5倍)』
「さあどうだ! これなら楽しめるでしょう!」
「おおっ、それなら『泣いて逃げる』に十枚!」
「俺は『十秒以内』に賭けるぜ! 公爵様の本気に期待だ!」
「意外と粘るかもしれないぞ、『三分以上』に一枚だけ!」
どっと金が動き出した。
よし、これで分散した。どの結果になっても胴元(私)の利益は確保できる。
その時。
闘技場にファンファーレが鳴り響いた。
「両者、入場!!」
東のゲートから、真っ赤なマントを羽織ったロナルド王子が現れた。
派手だ。無駄に剣を振り回し、観客に手を振っているが、観客の反応は「早く負けろー!」という野次ばかりだ。
西のゲートからは、黒い戦闘服に身を包んだジェラルドが現れた。
こちらは静かだ。
だが、その歩調は堂々としており、纏うオーラが違う。
「キャーッ! ジェラルド様ーっ!」
「抱いてーっ!」
「殺してーっ!(社会的に)」
黄色い歓声が飛び交う。
ジェラルドは私の方を一瞬見て、ニヤリとウインクした。
(稼げているか?)という合図だ。
私は親指を立てて(バッチリよ!)と返した。
二人が中央で対峙する。
「よく来たな、ジェラルド! 今日こそ貴様に吠え面をかかせてやる!」
ロナルドが叫ぶ。
「無駄口はいい。さっさと始めよう。……妻(予定)が退屈している」
ジェラルドは剣を抜き、構えた。
その構えには一切の隙がない。
「審判、始め!」
開始のゴングが鳴った。
「うおおおお! 死ねぇぇぇ!」
ロナルドが雄叫びを上げて突進した。
大振りの一撃。素人目にも隙だらけだ。
ジェラルドは一歩も動かなかった。
剣を軽く横に薙ぐ。
キンッ!
「ああっ!?」
ロナルドの剣が、あっけなく弾き飛ばされた。
クルクルと宙を舞い、地面に突き刺さる。
開始、わずか三秒。
「……え?」
ロナルドが自分の空の手を見て呆然とする。
「終わりか?」
ジェラルドが冷たく見下ろす。
「ま、待て! 今のは手が滑っただけだ! タイム! タイムだ!」
ロナルドが慌てて剣を拾いに行く。
観客席からは大ブーイングだ。
「おいコラ王子! 『十秒以内』に賭けたんだぞ! なんで待ってやるんだ公爵!」
「やれーっ! トドメを刺せーっ!」
私はストップウォッチを片手に実況した。
「あーっと、ロナルド選手、まさかの『待った』が入りました! しかしジェラルド選手、紳士的に待っています! これは『一分持たずに降参』コースか!?」
再開。
「くそっ、これならどうだ!」
ロナルドが再び斬りかかる。今度は少し慎重だ。
ジェラルドは涼しい顔で、全ての攻撃を受け流した。
右、左、突き。
まるで子供の遊び相手をするように、最小限の動きでいなしていく。
「はぁ、はぁ……! な、なぜ当たらない!」
「遅いからだ」
ジェラルドが一歩踏み込んだ。
剣の腹で、ロナルドの手首をパンッと叩く。
「いたっ!」
また剣を落とすロナルド。
さらにジェラルドは、ロナルドの足元に剣を滑らせた。
「うわっと!」
ロナルドが足を引っ掛けて転ぶ。
無様に地面を転がる王子。
「ひ、ひいい!」
ロナルドは四つん這いで逃げようとした。
その姿を見て、ジェラルドは冷酷に告げた。
「終わりだ」
ジェラルドの剣先が、ロナルドの鼻先に突きつけられた。
「こ、こうさん! 降参だ! 僕の負けだ!」
ロナルドが涙目で叫んだ。
カンカンカンカン!
終了のゴング。
「勝者、ジェラルド・アイゼンハルト公爵!!」
わあああああああ!!
闘技場が揺れるほどの大歓声。
私はストップウォッチを止めた。
「タイム、五十八秒! 『一分持たずに降参』の勝利です!!」
「やったー! 当たったぞ!」
「ちくしょう、『泣いて逃げる』だと思ったのに!」
悲喜こもごもの声が上がる中、私は大量の賭け金をかき集めた。
オッズ計算は完璧だ。
的中者への払い戻しを引いても、胴元の手元には山のような金貨が残る。
「……素晴らしい。時給換算で過去最高益だわ」
私は眼下の闘技場を見た。
勝者のジェラルドが、観客の声援に応えて剣を掲げている。
敗者のロナルドは、砂まみれになって泣いている。
「キャンディ!」
ジェラルドが私を見上げて叫んだ。
「約束通り、勝ったぞ!」
「はい! 最高のショーでしたわ!」
私は身を乗り出して叫び返した。
「次は『リベンジマッチ』を企画しましょう! 負けたロナルド殿下がハンデをもらって再戦! これならまた稼げます!」
「……君は鬼か」
ジェラルドが苦笑したが、その顔は晴れ晴れとしていた。
こうして。
世紀の決闘は、ロナルドの完敗と、私の大勝利(経済的意味で)で幕を閉じた。
ロナルドは「負けた方が勝者の言うことを聞く」という条件により、ジェラルドから「二度とキャンディに近づくな」と釘を刺され、さらに私が請求した「イベント会場使用料」と「警備費」の借用書にサインさせられることになった。
リリィ?
彼女は観客席の隅で、「私のロナルド様が……負け犬……」と白目を剥いて気絶していた。
祭りの後。
心地よい疲労感とともに、私は金貨の山を馬車に積み込みながら思った。
(喧嘩をお金に変える。これぞ究極のリサイクルね)
私の商魂は、留まるところを知らなかった。
そこは普段、騎士団の演習や、国家の祝典で行われる御前試合に使われる神聖な場所だ。
しかし、今日。
その神聖な場所は、熱気とポップコーンの匂い、そして金貨が飛び交う喧騒に包まれていた。
「さあさあ、いらっしゃい! 世紀の決闘だよ! チケット残りわずか!」
「こちらのブースでは『恋のシビレジャム』決闘限定パッケージを販売中! お土産にどうぞ!」
「冷えたビールに焼き鳥はいかが! 観戦のお供に最高だよ!」
まるで縁日だ。
闘技場の入り口には屋台が並び、観客席は貴族から平民まで超満員。
私が仕掛けた「決闘興行」は、予想を遥かに超える大盛況となっていた。
「……素晴らしい」
私はVIP席(特設実況席)で、眼下に広がる満員の客席を見下ろして頷いた。
「チケット完売。グッズの売れ行きも順調。……アンナ、現在の収支は?」
「はい、お嬢様。経費を差し引いても、すでに金貨三千枚の黒字です」
「上出来ね。これでロナルド殿下の借金の半分くらいは返せそうだけど……残念ながら、これは全額公爵家の売上よ」
私は手元の分厚い帳簿を開いた。
ここからが本番だ。
私が取り仕切るのは、このイベントのメインコンテンツ――「賭け(ブックメーカー)」である。
「さあ、張った張った! 第一王子ロナルド対、氷の公爵ジェラルド! 勝つのはどっちだ!」
私の掛け声に、貴族たちが殺到する。
「ジェラルド公爵に金貨百枚!」
「俺も公爵だ! 五十枚!」
「私も! 全財産を公爵に賭けるわ!」
……問題が発生した。
全員がジェラルドに賭けているのだ。
「ちょ、ちょっと待って! ロナルド殿下に賭ける方はいらっしゃいませんか!? 今ならオッズ五十倍! 勝てば一攫千金ですよ!」
「無理だろ」
「あんなへっぴり腰の王子が、最強の公爵様に勝てるわけがない」
「ドブに金を捨てるようなもんだ」
観客は冷静だった。
ロナルドの人気と実力、ともに底辺である。
(まずい……このままでは賭けが成立しない。全員が勝ち馬に乗ったら、胴元の私が破産してしまう!)
私は脳をフル回転させた。
単純な勝敗予想ではダメだ。ならば、賭けの対象を変えるしかない。
「えー、変更します! 勝敗オッズは人気集中のため締め切りました! 代わりに、『ロナルド殿下がどのくらいの時間で負けるか』を予想する『タイムアタック・ベット』を開催します!」
私は黒板に新たなオッズ表を書き殴った。
『1.開始十秒以内で瞬殺(3倍)』
『2.一分持たずに降参(2倍)』
『3.奇跡的に三分以上粘る(10倍)』
『4.泣いて逃げ出す(1.5倍)』
「さあどうだ! これなら楽しめるでしょう!」
「おおっ、それなら『泣いて逃げる』に十枚!」
「俺は『十秒以内』に賭けるぜ! 公爵様の本気に期待だ!」
「意外と粘るかもしれないぞ、『三分以上』に一枚だけ!」
どっと金が動き出した。
よし、これで分散した。どの結果になっても胴元(私)の利益は確保できる。
その時。
闘技場にファンファーレが鳴り響いた。
「両者、入場!!」
東のゲートから、真っ赤なマントを羽織ったロナルド王子が現れた。
派手だ。無駄に剣を振り回し、観客に手を振っているが、観客の反応は「早く負けろー!」という野次ばかりだ。
西のゲートからは、黒い戦闘服に身を包んだジェラルドが現れた。
こちらは静かだ。
だが、その歩調は堂々としており、纏うオーラが違う。
「キャーッ! ジェラルド様ーっ!」
「抱いてーっ!」
「殺してーっ!(社会的に)」
黄色い歓声が飛び交う。
ジェラルドは私の方を一瞬見て、ニヤリとウインクした。
(稼げているか?)という合図だ。
私は親指を立てて(バッチリよ!)と返した。
二人が中央で対峙する。
「よく来たな、ジェラルド! 今日こそ貴様に吠え面をかかせてやる!」
ロナルドが叫ぶ。
「無駄口はいい。さっさと始めよう。……妻(予定)が退屈している」
ジェラルドは剣を抜き、構えた。
その構えには一切の隙がない。
「審判、始め!」
開始のゴングが鳴った。
「うおおおお! 死ねぇぇぇ!」
ロナルドが雄叫びを上げて突進した。
大振りの一撃。素人目にも隙だらけだ。
ジェラルドは一歩も動かなかった。
剣を軽く横に薙ぐ。
キンッ!
「ああっ!?」
ロナルドの剣が、あっけなく弾き飛ばされた。
クルクルと宙を舞い、地面に突き刺さる。
開始、わずか三秒。
「……え?」
ロナルドが自分の空の手を見て呆然とする。
「終わりか?」
ジェラルドが冷たく見下ろす。
「ま、待て! 今のは手が滑っただけだ! タイム! タイムだ!」
ロナルドが慌てて剣を拾いに行く。
観客席からは大ブーイングだ。
「おいコラ王子! 『十秒以内』に賭けたんだぞ! なんで待ってやるんだ公爵!」
「やれーっ! トドメを刺せーっ!」
私はストップウォッチを片手に実況した。
「あーっと、ロナルド選手、まさかの『待った』が入りました! しかしジェラルド選手、紳士的に待っています! これは『一分持たずに降参』コースか!?」
再開。
「くそっ、これならどうだ!」
ロナルドが再び斬りかかる。今度は少し慎重だ。
ジェラルドは涼しい顔で、全ての攻撃を受け流した。
右、左、突き。
まるで子供の遊び相手をするように、最小限の動きでいなしていく。
「はぁ、はぁ……! な、なぜ当たらない!」
「遅いからだ」
ジェラルドが一歩踏み込んだ。
剣の腹で、ロナルドの手首をパンッと叩く。
「いたっ!」
また剣を落とすロナルド。
さらにジェラルドは、ロナルドの足元に剣を滑らせた。
「うわっと!」
ロナルドが足を引っ掛けて転ぶ。
無様に地面を転がる王子。
「ひ、ひいい!」
ロナルドは四つん這いで逃げようとした。
その姿を見て、ジェラルドは冷酷に告げた。
「終わりだ」
ジェラルドの剣先が、ロナルドの鼻先に突きつけられた。
「こ、こうさん! 降参だ! 僕の負けだ!」
ロナルドが涙目で叫んだ。
カンカンカンカン!
終了のゴング。
「勝者、ジェラルド・アイゼンハルト公爵!!」
わあああああああ!!
闘技場が揺れるほどの大歓声。
私はストップウォッチを止めた。
「タイム、五十八秒! 『一分持たずに降参』の勝利です!!」
「やったー! 当たったぞ!」
「ちくしょう、『泣いて逃げる』だと思ったのに!」
悲喜こもごもの声が上がる中、私は大量の賭け金をかき集めた。
オッズ計算は完璧だ。
的中者への払い戻しを引いても、胴元の手元には山のような金貨が残る。
「……素晴らしい。時給換算で過去最高益だわ」
私は眼下の闘技場を見た。
勝者のジェラルドが、観客の声援に応えて剣を掲げている。
敗者のロナルドは、砂まみれになって泣いている。
「キャンディ!」
ジェラルドが私を見上げて叫んだ。
「約束通り、勝ったぞ!」
「はい! 最高のショーでしたわ!」
私は身を乗り出して叫び返した。
「次は『リベンジマッチ』を企画しましょう! 負けたロナルド殿下がハンデをもらって再戦! これならまた稼げます!」
「……君は鬼か」
ジェラルドが苦笑したが、その顔は晴れ晴れとしていた。
こうして。
世紀の決闘は、ロナルドの完敗と、私の大勝利(経済的意味で)で幕を閉じた。
ロナルドは「負けた方が勝者の言うことを聞く」という条件により、ジェラルドから「二度とキャンディに近づくな」と釘を刺され、さらに私が請求した「イベント会場使用料」と「警備費」の借用書にサインさせられることになった。
リリィ?
彼女は観客席の隅で、「私のロナルド様が……負け犬……」と白目を剥いて気絶していた。
祭りの後。
心地よい疲労感とともに、私は金貨の山を馬車に積み込みながら思った。
(喧嘩をお金に変える。これぞ究極のリサイクルね)
私の商魂は、留まるところを知らなかった。
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