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王都を出てから三日。
私、メリアナ・ベルトルを乗せた馬車は、石畳の整備された街道を抜け、砂利と土が混じる地方道へと入っていた。
ガタゴトと車輪が跳ねるたびに、お尻に衝撃が走る。普通の貴族令嬢なら、「お尻が痛い」だの「埃っぽい」だのと文句の一つも言うだろう。
だが、私は違う。この揺れさえも、今は心地よいリズムに聞こえてくる。
何しろ、一歩進むごとに「未開の食材」に近づいているのだから!
「……メリアナ様。お加減はいかがですか?」
馬車の小窓がコンコンと叩かれ、護衛騎士の隊長であるバランの声がした。
彼は父の配下で、今回の「島流し」とも言える旅の護衛を任されている。四〇代のベテラン騎士だが、出発してからずっと、私を腫れ物に触るような扱いで見てくる。
「ええ、とても快適よバラン。空気も美味しいわ」
私は窓を開け、深呼吸をした。王都の排気ガス混じりの空気とは違い、緑と土の匂いがする。
「そ、そうですか……。気丈に振る舞われるのも結構ですが、辛い時は辛いと仰ってください。我々は誰も、貴女様が本当に毒殺を企てたなどとは思っておりませんので」
バランは痛ましげに眉を下げた。
どうやら彼は、私がショックのあまり空元気を出していると勘違いしているらしい。
「ありがとう。でも本当に平気なの。それより、そろそろお昼にしましょうか」
「はっ。では、あそこの木陰で休憩を取りましょう」
馬車が止まり、私は外へ出た。
従者がシートを広げ、簡素な食事の準備を始める。騎士たちは干し肉と固いパンをかじっている。
私は持参したバスケットを開いた。
「ふふふ。今日のランチは、出発前に仕込んでおいた特製サンドイッチですわ」
バスケットの蓋を開けた瞬間、周囲の騎士たちがピタリと動きを止めた。
そこから漂ってきたのは、食欲をそそる香り……ではなく、鼻の奥をツンと刺激する強烈な酸味と、どこか土臭い匂いだったからだ。
「メ、メリアナ様……その、中身は……?」
バランが恐る恐る尋ねる。
私は満面の笑みで、具材がたっぷりと挟まったパンを持ち上げた。
「『沼地ガエルの肝ペースト』と『痺れキノコのオイル漬け』のサンドイッチよ。パンには『悪魔草』の粉末を練り込んであります」
パンの色は、毒々しい紫色をしていた。
「カ、カエル……? 痺れ……悪魔……?」
「ええ。沼地ガエルは見た目こそヌメヌメして最悪ですけど、肝はフォアグラより濃厚なんです。痺れキノコでアクセントをつけて、悪魔草で消化を助ける。完璧な栄養バランスですわ」
私は大きな口を開け、ガブリとサンドイッチに噛み付いた。
ジュワッ。
口の中に広がる濃厚な旨味と、ピリリとした刺激。
「ん~っ! 最高! これなら旅の疲れも吹き飛びますわ!」
私が恍惚の表情で咀嚼するのを、騎士たちは青ざめた顔で見守っていた。
「……やはり、殿下が仰っていたことは本当だったのか……」
「あれを食って平気なのか?」
「魔女……いや、悪食令嬢……」
ひそひそ話が聞こえるが、気にしない。美味しいものを理解できないなんて、彼らこそ可哀想だ。
「バランも一ついかが? 精がつきますわよ?」
「い、いえ! 私は結構です! お気遣いなく!」
バランは全力で首を横に振った。
その時だ。
ガサガサッ! ドスンッ!
街道沿いの茂みが激しく揺れ、巨大な影が飛び出してきた。
「グルルルルッ……!」
現れたのは、熊のような体躯に、鋭い嘴(くちばし)を持った魔獣『オウルベア』だった。
「魔獣だ!! 総員、構えろ! メリアナ様をお守りしろ!」
バランが剣を抜き、騎士たちが一斉に展開する。
「キャアアア!」
従者のメイドが悲鳴を上げて馬車の陰に隠れる。
緊迫した空気が流れる中、私は食べかけのサンドイッチを持ったまま、目を輝かせて立ち上がった。
「まあ! あれは『オウルベア』! しかも、毛並みからして若い個体ですわ!」
「メリアナ様、下がってください! 危険です!」
「待ってバラン! そこ、右足を斬りつけちゃダメ!」
私はバランの制止を振り切り、戦場の最前線へと駆け寄った。
「なっ……!?」
騎士たちが驚愕する中、私はオウルベアを指差して叫ぶ。
「オウルベアの右太ももは、一番脂が乗っている部位なの! そこを傷つけたら肉汁が逃げてしまうわ! 狙うなら首! もしくは心臓を一突きになさい!」
「は、はい!?」
「あと、その嘴も砕かないで! すり潰して粉末にすると、極上の出汁(だし)が出るのよ!」
私の具体的すぎる指示に、騎士たちは困惑しながらも剣を振るう。
「そ、そこだ! 首を狙え!」
「嘴を避けて攻撃しろ!」
騎士たちの連携攻撃により、オウルベアはあえなく絶命した。
ドサリ、と巨大な体が地に伏す。
「ふぅ……。なんとか撃退したか……」
バランが額の汗を拭いながら剣を納める。
しかし、私の戦いはここからが本番だった。
私はスカートからマイ包丁(ミスリル製)を取り出し、倒れたオウルベアに駆け寄った。
「素晴らしい……! 旅の途中でこんな新鮮なジビエが手に入るなんて!」
「メ、メリアナ様? 何を……」
「血抜きですわ! 魔獣は死後十分以内の血抜きが味を左右するんです。さあ、手伝ってください!」
「て、手伝う!?」
「この巨体、私一人では吊るせません。そこの木にロープをかけて!」
私の気迫に押され、騎士たちは言われるがままにオウルベアを逆さ吊りにした。
私は鮮やかな手つきで頸動脈を切り、的確に血を抜いていく。その表情は、舞踏会でダンスを踊る時よりも生き生きとしていた。
「皮を剥ぐのも手伝って。内臓は傷つけないように……ああ、この肝臓! なんて綺麗なピンク色!」
騎士たちは無言だった。
恐怖と畏敬、そしてドン引きが入り混じった複雑な表情で、血まみれになって作業する公爵令嬢を見つめている。
解体作業が終わる頃には、私のドレスは返り血で真っ赤に染まっていた。
「ふぅ、良い仕事ができました」
私は血のついた頬を拭い、満足げに微笑んだ。
「今夜の夕食はオウルベアの熊鍋ですね。臭み消しのハーブも道中で摘んでおきましたし」
「……メリアナ様」
バランが、どこか遠い目をして私に話しかけた。
「はい?」
「……貴女様が辺境へ追放された理由が、今、なんとなく分かった気がします」
「あら、そうですか? やはり私の料理への愛が伝わったのですね!」
「……ええ、まあ。ある意味では」
バランは深いため息をついた。
その夜。
野営地で振る舞われた『オウルベアの味噌鍋』は、騎士たちの間で「人生で一番美味い肉」として語り継がれることになった。
最初は恐る恐る口をつけていた彼らも、一口食べた瞬間に目の色を変え、鍋の底まで奪い合うように完食したのだ。
「美味い! なんだこのコクは!」
「熊の肉ってこんなに柔らかいのか!?」
「メリアナ様、おかわりは!?」
私は空になった鍋を見て、ふふんと鼻を鳴らす。
「言ったでしょう? 下処理さえ完璧なら、魔物は宝の山なんです」
こうして、私と護衛たちの距離は「胃袋」を通じて急速に縮まった。
そして、旅は順調に進み――。
十日後。
私たちはついに、ヴォルグ辺境伯領の入り口にある峠に差し掛かった。
「うぅ……寒い……」
御者台の従者がガタガタと震えている。
窓の外は一面の銀世界。王都とは比べ物にならない冷気が、馬車の隙間から入り込んでくる。
「ここが、ヴォルグ辺境伯領……」
バランが険しい顔で前を見据えた。
「メリアナ様、ご覚悟を。ここから先は、人の住む環境ではありません」
荒涼とした大地。吹き荒れる吹雪。
遠くの空には、ワイバーンのような影が飛び交っている。
普通の令嬢なら、絶望して泣き崩れる光景だろう。
けれど。
私は窓から身を乗り出し、冷たい風を胸いっぱいに吸い込んだ。
「なんて……」
「なんて?」
「なんて美味しそうな匂いがするんでしょう!!」
私の鼻は捉えていた。
極寒の地だからこそ蓄えられる脂の匂いを。
厳しい環境で育った、凝縮された旨味の気配を。
「見て、バラン! あそこを走っているのは『スノーラビット』よ! 煮込みに最高だわ! あっちの空を飛んでいるのは『怪鳥ロック』!? あの卵は絶品なのよ!」
私は興奮のあまり、バランの肩を揺さぶった。
バランは「ダメだこの人」という顔をしていたが、私は止まらない。
「早く! 早く行きましょう! 私の厨房(別邸)が待っていますわ!」
馬車は雪煙を上げ、私の楽園(辺境)へと滑り込んでいった。
こうして私は、追放先のヴォルグ辺境伯領に到着した。
そこで待っているのが、廃墟のような屋敷と、強面で無口な辺境伯様だとは知らずに。
私、メリアナ・ベルトルを乗せた馬車は、石畳の整備された街道を抜け、砂利と土が混じる地方道へと入っていた。
ガタゴトと車輪が跳ねるたびに、お尻に衝撃が走る。普通の貴族令嬢なら、「お尻が痛い」だの「埃っぽい」だのと文句の一つも言うだろう。
だが、私は違う。この揺れさえも、今は心地よいリズムに聞こえてくる。
何しろ、一歩進むごとに「未開の食材」に近づいているのだから!
「……メリアナ様。お加減はいかがですか?」
馬車の小窓がコンコンと叩かれ、護衛騎士の隊長であるバランの声がした。
彼は父の配下で、今回の「島流し」とも言える旅の護衛を任されている。四〇代のベテラン騎士だが、出発してからずっと、私を腫れ物に触るような扱いで見てくる。
「ええ、とても快適よバラン。空気も美味しいわ」
私は窓を開け、深呼吸をした。王都の排気ガス混じりの空気とは違い、緑と土の匂いがする。
「そ、そうですか……。気丈に振る舞われるのも結構ですが、辛い時は辛いと仰ってください。我々は誰も、貴女様が本当に毒殺を企てたなどとは思っておりませんので」
バランは痛ましげに眉を下げた。
どうやら彼は、私がショックのあまり空元気を出していると勘違いしているらしい。
「ありがとう。でも本当に平気なの。それより、そろそろお昼にしましょうか」
「はっ。では、あそこの木陰で休憩を取りましょう」
馬車が止まり、私は外へ出た。
従者がシートを広げ、簡素な食事の準備を始める。騎士たちは干し肉と固いパンをかじっている。
私は持参したバスケットを開いた。
「ふふふ。今日のランチは、出発前に仕込んでおいた特製サンドイッチですわ」
バスケットの蓋を開けた瞬間、周囲の騎士たちがピタリと動きを止めた。
そこから漂ってきたのは、食欲をそそる香り……ではなく、鼻の奥をツンと刺激する強烈な酸味と、どこか土臭い匂いだったからだ。
「メ、メリアナ様……その、中身は……?」
バランが恐る恐る尋ねる。
私は満面の笑みで、具材がたっぷりと挟まったパンを持ち上げた。
「『沼地ガエルの肝ペースト』と『痺れキノコのオイル漬け』のサンドイッチよ。パンには『悪魔草』の粉末を練り込んであります」
パンの色は、毒々しい紫色をしていた。
「カ、カエル……? 痺れ……悪魔……?」
「ええ。沼地ガエルは見た目こそヌメヌメして最悪ですけど、肝はフォアグラより濃厚なんです。痺れキノコでアクセントをつけて、悪魔草で消化を助ける。完璧な栄養バランスですわ」
私は大きな口を開け、ガブリとサンドイッチに噛み付いた。
ジュワッ。
口の中に広がる濃厚な旨味と、ピリリとした刺激。
「ん~っ! 最高! これなら旅の疲れも吹き飛びますわ!」
私が恍惚の表情で咀嚼するのを、騎士たちは青ざめた顔で見守っていた。
「……やはり、殿下が仰っていたことは本当だったのか……」
「あれを食って平気なのか?」
「魔女……いや、悪食令嬢……」
ひそひそ話が聞こえるが、気にしない。美味しいものを理解できないなんて、彼らこそ可哀想だ。
「バランも一ついかが? 精がつきますわよ?」
「い、いえ! 私は結構です! お気遣いなく!」
バランは全力で首を横に振った。
その時だ。
ガサガサッ! ドスンッ!
街道沿いの茂みが激しく揺れ、巨大な影が飛び出してきた。
「グルルルルッ……!」
現れたのは、熊のような体躯に、鋭い嘴(くちばし)を持った魔獣『オウルベア』だった。
「魔獣だ!! 総員、構えろ! メリアナ様をお守りしろ!」
バランが剣を抜き、騎士たちが一斉に展開する。
「キャアアア!」
従者のメイドが悲鳴を上げて馬車の陰に隠れる。
緊迫した空気が流れる中、私は食べかけのサンドイッチを持ったまま、目を輝かせて立ち上がった。
「まあ! あれは『オウルベア』! しかも、毛並みからして若い個体ですわ!」
「メリアナ様、下がってください! 危険です!」
「待ってバラン! そこ、右足を斬りつけちゃダメ!」
私はバランの制止を振り切り、戦場の最前線へと駆け寄った。
「なっ……!?」
騎士たちが驚愕する中、私はオウルベアを指差して叫ぶ。
「オウルベアの右太ももは、一番脂が乗っている部位なの! そこを傷つけたら肉汁が逃げてしまうわ! 狙うなら首! もしくは心臓を一突きになさい!」
「は、はい!?」
「あと、その嘴も砕かないで! すり潰して粉末にすると、極上の出汁(だし)が出るのよ!」
私の具体的すぎる指示に、騎士たちは困惑しながらも剣を振るう。
「そ、そこだ! 首を狙え!」
「嘴を避けて攻撃しろ!」
騎士たちの連携攻撃により、オウルベアはあえなく絶命した。
ドサリ、と巨大な体が地に伏す。
「ふぅ……。なんとか撃退したか……」
バランが額の汗を拭いながら剣を納める。
しかし、私の戦いはここからが本番だった。
私はスカートからマイ包丁(ミスリル製)を取り出し、倒れたオウルベアに駆け寄った。
「素晴らしい……! 旅の途中でこんな新鮮なジビエが手に入るなんて!」
「メ、メリアナ様? 何を……」
「血抜きですわ! 魔獣は死後十分以内の血抜きが味を左右するんです。さあ、手伝ってください!」
「て、手伝う!?」
「この巨体、私一人では吊るせません。そこの木にロープをかけて!」
私の気迫に押され、騎士たちは言われるがままにオウルベアを逆さ吊りにした。
私は鮮やかな手つきで頸動脈を切り、的確に血を抜いていく。その表情は、舞踏会でダンスを踊る時よりも生き生きとしていた。
「皮を剥ぐのも手伝って。内臓は傷つけないように……ああ、この肝臓! なんて綺麗なピンク色!」
騎士たちは無言だった。
恐怖と畏敬、そしてドン引きが入り混じった複雑な表情で、血まみれになって作業する公爵令嬢を見つめている。
解体作業が終わる頃には、私のドレスは返り血で真っ赤に染まっていた。
「ふぅ、良い仕事ができました」
私は血のついた頬を拭い、満足げに微笑んだ。
「今夜の夕食はオウルベアの熊鍋ですね。臭み消しのハーブも道中で摘んでおきましたし」
「……メリアナ様」
バランが、どこか遠い目をして私に話しかけた。
「はい?」
「……貴女様が辺境へ追放された理由が、今、なんとなく分かった気がします」
「あら、そうですか? やはり私の料理への愛が伝わったのですね!」
「……ええ、まあ。ある意味では」
バランは深いため息をついた。
その夜。
野営地で振る舞われた『オウルベアの味噌鍋』は、騎士たちの間で「人生で一番美味い肉」として語り継がれることになった。
最初は恐る恐る口をつけていた彼らも、一口食べた瞬間に目の色を変え、鍋の底まで奪い合うように完食したのだ。
「美味い! なんだこのコクは!」
「熊の肉ってこんなに柔らかいのか!?」
「メリアナ様、おかわりは!?」
私は空になった鍋を見て、ふふんと鼻を鳴らす。
「言ったでしょう? 下処理さえ完璧なら、魔物は宝の山なんです」
こうして、私と護衛たちの距離は「胃袋」を通じて急速に縮まった。
そして、旅は順調に進み――。
十日後。
私たちはついに、ヴォルグ辺境伯領の入り口にある峠に差し掛かった。
「うぅ……寒い……」
御者台の従者がガタガタと震えている。
窓の外は一面の銀世界。王都とは比べ物にならない冷気が、馬車の隙間から入り込んでくる。
「ここが、ヴォルグ辺境伯領……」
バランが険しい顔で前を見据えた。
「メリアナ様、ご覚悟を。ここから先は、人の住む環境ではありません」
荒涼とした大地。吹き荒れる吹雪。
遠くの空には、ワイバーンのような影が飛び交っている。
普通の令嬢なら、絶望して泣き崩れる光景だろう。
けれど。
私は窓から身を乗り出し、冷たい風を胸いっぱいに吸い込んだ。
「なんて……」
「なんて?」
「なんて美味しそうな匂いがするんでしょう!!」
私の鼻は捉えていた。
極寒の地だからこそ蓄えられる脂の匂いを。
厳しい環境で育った、凝縮された旨味の気配を。
「見て、バラン! あそこを走っているのは『スノーラビット』よ! 煮込みに最高だわ! あっちの空を飛んでいるのは『怪鳥ロック』!? あの卵は絶品なのよ!」
私は興奮のあまり、バランの肩を揺さぶった。
バランは「ダメだこの人」という顔をしていたが、私は止まらない。
「早く! 早く行きましょう! 私の厨房(別邸)が待っていますわ!」
馬車は雪煙を上げ、私の楽園(辺境)へと滑り込んでいった。
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