6 / 28
6
しおりを挟む
平和とは、かくも脆いものである。
バラン侯爵を撃退し、午後のティータイムを兼ねた書類整理が順調に進んでいた、その時だった。
バンッ!!
宰相執務室の重厚な扉が、本日二度目の悲鳴を上げて開かれた。
「テレナ! いるのは分かっているぞ!」
聞き覚えのある、無駄に張りのある声。
入ってきたのは、金髪をなびかせた美青年――我が国の元婚約者、レイド・アークライト王太子殿下その人である。
彼は部屋の中を見渡し、文官たちへ指示を出していた私を見つけるなり、勝ち誇ったような笑顔で指を差した。
「はっ! やはりな! まだ城にいたのか!」
執務室の空気が、一瞬にして弛緩……いや、呆れの色に染まった。
文官たちは「またか」という顔で視線を逸らし、セリウス閣下は書類から目を離さずに大きな溜息をついた。
私は持っていたファイルを小脇に抱え、無表情で殿下に向き直る。
「……何用でしょうか、レイド殿下。ここは宰相閣下の執務室です。アポなしでの訪問はご遠慮いただきたいのですが」
「ふん、強がるな!」
殿下はズカズカと歩み寄り、私の目の前で仁王立ちした。
「国外追放と言われて泣いて出て行ったくせに、まだ城をウロウロしているとはな。さては……僕に未練があるんだな?」
「はい?」
私は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
未練? 私が? この歩く赤字製造機に?
「素直になれよ。昨日の今日で忘れられるはずがないもんな。僕の顔が見たくて、叔父上(セリウス)に頼み込んで城に置いてもらっているんだろう?」
殿下は前髪をファサッとかき上げた。
キラキラとした効果音が見えるようだ。顔だけは本当に良いのが腹立たしい。
「……殿下。大変申し上げにくいのですが、病院に行かれた方がよろしいのでは?」
「照れるな照れるな。可愛い奴め」
「……(イラッ)」
私のこめかみに青筋が浮かぶのが分かった。
この男の脳内フィルターは、一体どうなっているのか。世界が自分を中心に回っていると信じて疑わない、ある意味で幸せな回路だ。
私は深呼吸をして、努めて事務的なトーンで告げた。
「誤解を解かせていただきます。私がここにいるのは、貴方への未練などでは断じてございません」
「じゃあ何だと言うんだ」
「時給が発生しているからです」
「……は?」
「業務です。ビジネスです。私はセリウス閣下に雇われた『臨時補佐官』として、この部屋の惨状を片付ける対価として、極めて高額な報酬を受け取っております」
私は指を三本立てた。
「貴方の顔を見るためではなく、貴方が散らかした書類を片付けるため。そして、貴方が作った赤字を埋めるため。それ以外の理由は一ミリもありません」
「う、嘘だ! そんな金目当てみたいな……!」
「金目当てですが、何か?」
私は即答した。
「愛だの恋だのでお腹は膨れません。私は現実を見ています。殿下こそ、現実(と書いて請求書と読む)をご覧になった方がよろしいのでは?」
私は机の上にあった『レイド殿下私費請求書ファイル(未払分)』を手に取り、パタパタと扇いだ。
「ぐぬぬ……」
殿下は言葉を詰まらせたが、すぐに気を取り直してニヤニヤし始めた。
「ふっ、そうやって冷たくあしらって、僕の気を引こうという作戦か? 『ツンデレ』というやつだな? ミナが言っていたぞ」
「……ミナ嬢、余計な知識を……」
頭痛がしてきた。話が通じない。
この男とは周波数が違うのだ。AMラジオとWi-Fiくらい違う。
そこへ、これまで沈黙を守っていたセリウス閣下が、静かに口を開いた。
「レイド」
低い、地を這うような声。
「……な、なんだよ叔父上。僕とテレナの痴話喧嘩を邪魔しないでくれないか」
「誰が痴話喧嘩だ。不法侵入だ」
閣下はペンを置き、氷のような視線を甥に向けた。
「今すぐ出て行け。貴様の相手をしている暇はない。テレナの手を止めるな。彼女の時間は、貴様の一分よりも遥かに高価だ」
「ひどいな叔父上! テレナは僕の元婚約者だぞ!? 僕のものみたいなもんじゃないか!」
「元、だ。今は私の部下だ」
閣下は立ち上がり、私の肩をポンと抱き寄せた。
「彼女の所有権……いや、雇用権は私にある。彼女の能力も、時間も、全て私が買い取った。部外者が気安く触れるな」
「えっ」
私は思わず閣下を見上げた。
所有権? 買い取った?
なんだか微妙に聞き捨てならない単語が混じっていた気がするが、閣下の表情は真剣そのものだ。
「な、なんだよそれ! 叔父上までテレナに騙されてるんじゃないの!?」
殿下はジタバタと地団駄を踏んだ。
「テレナなんて、可愛げもないし、口うるさいし、金のことばっかり言うし、最悪な女だぞ!」
「その『口うるさい』諫言のおかげで、貴様は今まで王太子の地位を保てていたのだ。感謝こそすれ、侮辱するなど言語道断」
セリウス閣下の目が据わってきた。
「それとも、昨日の婚約破棄騒動の責任を、今ここで追及されたいか? 貴様の浪費リストを国王陛下に提出してもいいんだぞ?」
「ひいっ! そ、それは困る!」
「なら去れ。二度とこの部屋に顔を出すな」
「くっ、くそー! 覚えてろよテレナ! いつか泣いて謝ってきても知らないからな!」
殿下は捨て台詞を吐き、脱兎のごとく部屋から逃げ出した。
バタンッ!
再び静寂が戻る。
私はふぅ、と息を吐き、セリウス閣下から離れた。
「……助かりました、閣下。あの方と話していると、IQが下がる気がして」
「災難だったな。だが、これで少しは懲りただろう」
「そうだといいのですが……あのポジティブさは、ある種の才能ですね」
「悪性だがな」
閣下は苦笑し、椅子に座り直した。
「それにしても、閣下」
私は少し意地悪な質問をしてみることにした。
「先ほどの『私のもの』発言、少し独占欲が強すぎませんか? あくまで雇用契約上の上司と部下ですよね?」
「……訂正するつもりはない」
セリウス閣下は、書類に視線を落としたまま、さらりと言った。
「有能な人材を囲い込むのは、上に立つ者の義務だ。……それに」
「それに?」
「君が他の誰かのために働く姿など、想像したくもないのでな」
ボソリと呟かれたその言葉は、私の耳にだけ届く音量だった。
「……っ」
不意打ちだ。
この人、無自覚にこういうことを言うから心臓に悪い。
私は熱くなりかけた頬をごまかすように、手元の書類をバサバサと音を立てて整理し始めた。
「さ、さあ仕事に戻りますよ! 雑音が消えた分、集中して片付けないと!」
「ああ。頼むぞ、私の優秀な補佐官」
背中で閣下の笑う気配を感じながら、私はペンを握り直した。
だが、この時の私たちはまだ甘かった。
レイド殿下の「ポジティブな勘違い」が、単独犯で終わるはずがないことを。
その背後には、彼を焚き付ける本当の黒幕――天然(?)令嬢ミナの存在があることを、まだ軽く見ていたのだ。
バラン侯爵を撃退し、午後のティータイムを兼ねた書類整理が順調に進んでいた、その時だった。
バンッ!!
宰相執務室の重厚な扉が、本日二度目の悲鳴を上げて開かれた。
「テレナ! いるのは分かっているぞ!」
聞き覚えのある、無駄に張りのある声。
入ってきたのは、金髪をなびかせた美青年――我が国の元婚約者、レイド・アークライト王太子殿下その人である。
彼は部屋の中を見渡し、文官たちへ指示を出していた私を見つけるなり、勝ち誇ったような笑顔で指を差した。
「はっ! やはりな! まだ城にいたのか!」
執務室の空気が、一瞬にして弛緩……いや、呆れの色に染まった。
文官たちは「またか」という顔で視線を逸らし、セリウス閣下は書類から目を離さずに大きな溜息をついた。
私は持っていたファイルを小脇に抱え、無表情で殿下に向き直る。
「……何用でしょうか、レイド殿下。ここは宰相閣下の執務室です。アポなしでの訪問はご遠慮いただきたいのですが」
「ふん、強がるな!」
殿下はズカズカと歩み寄り、私の目の前で仁王立ちした。
「国外追放と言われて泣いて出て行ったくせに、まだ城をウロウロしているとはな。さては……僕に未練があるんだな?」
「はい?」
私は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
未練? 私が? この歩く赤字製造機に?
「素直になれよ。昨日の今日で忘れられるはずがないもんな。僕の顔が見たくて、叔父上(セリウス)に頼み込んで城に置いてもらっているんだろう?」
殿下は前髪をファサッとかき上げた。
キラキラとした効果音が見えるようだ。顔だけは本当に良いのが腹立たしい。
「……殿下。大変申し上げにくいのですが、病院に行かれた方がよろしいのでは?」
「照れるな照れるな。可愛い奴め」
「……(イラッ)」
私のこめかみに青筋が浮かぶのが分かった。
この男の脳内フィルターは、一体どうなっているのか。世界が自分を中心に回っていると信じて疑わない、ある意味で幸せな回路だ。
私は深呼吸をして、努めて事務的なトーンで告げた。
「誤解を解かせていただきます。私がここにいるのは、貴方への未練などでは断じてございません」
「じゃあ何だと言うんだ」
「時給が発生しているからです」
「……は?」
「業務です。ビジネスです。私はセリウス閣下に雇われた『臨時補佐官』として、この部屋の惨状を片付ける対価として、極めて高額な報酬を受け取っております」
私は指を三本立てた。
「貴方の顔を見るためではなく、貴方が散らかした書類を片付けるため。そして、貴方が作った赤字を埋めるため。それ以外の理由は一ミリもありません」
「う、嘘だ! そんな金目当てみたいな……!」
「金目当てですが、何か?」
私は即答した。
「愛だの恋だのでお腹は膨れません。私は現実を見ています。殿下こそ、現実(と書いて請求書と読む)をご覧になった方がよろしいのでは?」
私は机の上にあった『レイド殿下私費請求書ファイル(未払分)』を手に取り、パタパタと扇いだ。
「ぐぬぬ……」
殿下は言葉を詰まらせたが、すぐに気を取り直してニヤニヤし始めた。
「ふっ、そうやって冷たくあしらって、僕の気を引こうという作戦か? 『ツンデレ』というやつだな? ミナが言っていたぞ」
「……ミナ嬢、余計な知識を……」
頭痛がしてきた。話が通じない。
この男とは周波数が違うのだ。AMラジオとWi-Fiくらい違う。
そこへ、これまで沈黙を守っていたセリウス閣下が、静かに口を開いた。
「レイド」
低い、地を這うような声。
「……な、なんだよ叔父上。僕とテレナの痴話喧嘩を邪魔しないでくれないか」
「誰が痴話喧嘩だ。不法侵入だ」
閣下はペンを置き、氷のような視線を甥に向けた。
「今すぐ出て行け。貴様の相手をしている暇はない。テレナの手を止めるな。彼女の時間は、貴様の一分よりも遥かに高価だ」
「ひどいな叔父上! テレナは僕の元婚約者だぞ!? 僕のものみたいなもんじゃないか!」
「元、だ。今は私の部下だ」
閣下は立ち上がり、私の肩をポンと抱き寄せた。
「彼女の所有権……いや、雇用権は私にある。彼女の能力も、時間も、全て私が買い取った。部外者が気安く触れるな」
「えっ」
私は思わず閣下を見上げた。
所有権? 買い取った?
なんだか微妙に聞き捨てならない単語が混じっていた気がするが、閣下の表情は真剣そのものだ。
「な、なんだよそれ! 叔父上までテレナに騙されてるんじゃないの!?」
殿下はジタバタと地団駄を踏んだ。
「テレナなんて、可愛げもないし、口うるさいし、金のことばっかり言うし、最悪な女だぞ!」
「その『口うるさい』諫言のおかげで、貴様は今まで王太子の地位を保てていたのだ。感謝こそすれ、侮辱するなど言語道断」
セリウス閣下の目が据わってきた。
「それとも、昨日の婚約破棄騒動の責任を、今ここで追及されたいか? 貴様の浪費リストを国王陛下に提出してもいいんだぞ?」
「ひいっ! そ、それは困る!」
「なら去れ。二度とこの部屋に顔を出すな」
「くっ、くそー! 覚えてろよテレナ! いつか泣いて謝ってきても知らないからな!」
殿下は捨て台詞を吐き、脱兎のごとく部屋から逃げ出した。
バタンッ!
再び静寂が戻る。
私はふぅ、と息を吐き、セリウス閣下から離れた。
「……助かりました、閣下。あの方と話していると、IQが下がる気がして」
「災難だったな。だが、これで少しは懲りただろう」
「そうだといいのですが……あのポジティブさは、ある種の才能ですね」
「悪性だがな」
閣下は苦笑し、椅子に座り直した。
「それにしても、閣下」
私は少し意地悪な質問をしてみることにした。
「先ほどの『私のもの』発言、少し独占欲が強すぎませんか? あくまで雇用契約上の上司と部下ですよね?」
「……訂正するつもりはない」
セリウス閣下は、書類に視線を落としたまま、さらりと言った。
「有能な人材を囲い込むのは、上に立つ者の義務だ。……それに」
「それに?」
「君が他の誰かのために働く姿など、想像したくもないのでな」
ボソリと呟かれたその言葉は、私の耳にだけ届く音量だった。
「……っ」
不意打ちだ。
この人、無自覚にこういうことを言うから心臓に悪い。
私は熱くなりかけた頬をごまかすように、手元の書類をバサバサと音を立てて整理し始めた。
「さ、さあ仕事に戻りますよ! 雑音が消えた分、集中して片付けないと!」
「ああ。頼むぞ、私の優秀な補佐官」
背中で閣下の笑う気配を感じながら、私はペンを握り直した。
だが、この時の私たちはまだ甘かった。
レイド殿下の「ポジティブな勘違い」が、単独犯で終わるはずがないことを。
その背後には、彼を焚き付ける本当の黒幕――天然(?)令嬢ミナの存在があることを、まだ軽く見ていたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
運命の人ではなかっただけ
Rj
恋愛
教会で結婚の誓いをたてる十日前に婚約者のショーンから結婚できないといわれたアリス。ショーンは運命の人に出会ったという。傷心のアリスに周囲のさまざまな思惑がとびかう。
全十一話
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる