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「――レイド。覚悟はいいな?」
建国記念祝賀会の壇上。
氷の宰相セリウス・アークライト閣下の声が、死刑宣告のように響き渡った。
手には、私が作成した『王太子宮予算管理・完全版(無駄遣いリスト付き)』が握られている。
対するレイド殿下は、腰を抜かしたまま、ガタガタと震えていた。
「ち、違うんだ叔父上! 僕は騙されたんだ!」
殿下は涙目で、捕縛されたキース男爵を指差した。
「こいつだ! キースが『いい方法がある』って言ったんだ! 僕は止めたんだよ!? 『嘘はいけない』って! でもこいつが無理やり……!」
「……殿下」
キース男爵が、信じられないものを見る目で殿下を見た。
「あ、貴方という人は……! 『成功したら借金を肩代わりしてやる』と言ったのはどこの誰ですか!?」
「う、うるさい! 平民の分際で王族に罪をなすりつける気か! 不敬罪だぞ!」
「見苦しい」
セリウス閣下の一言で、その場が凍りついた。
閣下はゆっくりと、キース男爵の前に歩み寄った。
「キース男爵。貴様には公文書偽造、および王族への詐欺教唆の容疑がかかっている。申し開きはあるか?」
「あ、ありません……! 借金に目が眩みました……!」
「連れて行け。衛兵、地下牢だ」
「ひぃぃっ! お慈悲をぉぉぉ!」
キース男爵がズルズルと引きずられていく。
会場の貴族たちは、その様子を冷ややかな目で見送った。自業自得である。
そして。
残されたのは、主犯格であるレイド殿下だ。
「さあ、レイド。次はお前の番だ」
「ひっ! お、叔父上……僕、は……その……」
殿下は助けを求めるように私を見た。
「テ、テレナ! 君なら分かってくれるだろう!? 僕が数字に弱いことは知っているはずだ! あんな複雑な偽造、僕にできるわけがない!」
「ええ、存じております」
私はマイクを握り直し、淡々と答えた。
「殿下の知能指数では、二桁の足し算ですら指を使わないと危ういですものね。高度な帳簿操作など不可能です」
「そうだろ!? 僕がバカで良かった!」
「ですが」
私はニッコリと微笑んだ。
「『バカだから無罪』という法律はありません」
「!?」
「それに殿下。今回の件、私は『偽造帳簿作成コンサルティング料』および『添削料』を請求させていただきます」
「て、添削料……?」
「ええ。あんな間違いだらけの帳簿を見せられて、私のプロ意識が傷つきました。赤ペンで修正した箇所、一箇所につき金貨一枚。合計五百箇所ありましたので、金貨五百枚です」
「ご、五百……ッ!?」
殿下の目が飛び出た。
「払えなければ、労働で返していただきます。王室礼拝堂の床磨き、期間延長ですね。あと三年ほど追加で」
「三年んんんん!?」
殿下の絶叫がこだまする中、セリウス閣下が静かに騎士たちに合図を送った。
「レイドを部屋に軟禁しろ。国王陛下のご体調が戻り次第、正式な処分を下す。それまでは一歩も部屋から出すな」
「いやだぁぁぁ! ミナぁぁぁ! 助けてぇぇぇ!」
「あ、殿下。頑張ってくださいね。私、明日も筋トレがあるので」
ミナは無慈悲に手を振った。
こうして、殿下による「一発逆転・冤罪作戦」は、自爆という形で幕を下ろした。
◇
騒動が収束し、夜会がお開きになった後。
私はセリウス閣下と共に、帰りの馬車に揺られていた。
車内は静まり返っていた。
いつもなら「報酬はどうする」「残業代を出せ」と軽口を叩き合うところだが、今日の閣下は一言も発さない。
窓の外を流れる夜景を見つめるその横顔は、夜会での冷徹さとは違い、どこか苦しげに見えた。
「……閣下?」
私は恐る恐る声をかけた。
「お疲れですか? あんな茶番に付き合わされて」
「……いや」
閣下はゆっくりとこちらを向いた。
「すまなかった、テレナ」
「え?」
「君を……侮辱させた」
閣下の拳が、膝の上で強く握りしめられている。
「レイドの愚行は予測していた。だが、まさか公衆の面前で、君を『横領犯』呼ばわりするとは……。すぐに止めるべきだった」
「……ああ、そのことですか」
私は拍子抜けして、ふっと笑った。
「お気になさらないでください。あんな言いがかり、誰も信じていませんでしたよ。むしろ、私の優秀さを証明する良い機会になりました」
「君が傷ついていないとしても、私が許せないんだ」
閣下の声が、少しだけ荒げられた。
「私の大切な……部下が、謂れのない汚名を着せられるなど、あってはならない」
「……」
閣下は「部下」と言い直したが、その直前の「大切な」という言葉に込められた熱量は、聞き間違いようがなかった。
(……この人、本当に怒っているんだ)
自分のこと以上に、私の名誉が傷つけられたことに。
氷の宰相の中に眠る、意外なほどの情熱。
私は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
「……ありがとうございます、閣下」
私は素直に礼を言った。
「ですが、私は大丈夫です。閣下が信じてくださっていれば、他の誰に何を言われようと痛くも痒くもありません」
「……テレナ」
「それに、今回の件で『名誉毀損慰謝料』を殿下に請求する口実ができました。私の懐は温まるばかりです」
私が茶化すように言うと、閣下はようやく力を抜き、苦笑を漏らした。
「……君には敵わないな」
「当然です。私は閣下の『最強の補佐官』ですから」
「ああ。……そうだな」
閣下は自然な動作で、私の手を握った。
「だが、これ以上レイドを野放しにはできん。今回の件はあくまで『未遂』で終わったが、次はどうなるか分からん」
「そうですね。悪知恵だけは働くキース男爵もいなくなりましたが、殿下のことです。また斜め上の方向から攻撃してくるでしょう」
「陛下への報告書を作成する。レイドの廃嫡を本格的に進めるための、決定的な資料だ」
「お手伝いします。データなら全て頭に入っていますから」
「頼む」
握られた手から、閣下の決意が伝わってくる。
レイド殿下との腐れ縁も、いよいよ最終局面が近い。
そう予感させる夜だった。
◇
翌日。
宰相執務室は、昨夜の勝利ムード……ではなく、通常通りの激務に包まれていた。
「テレナ様! キース男爵の逮捕に伴い、彼の領地の権利書が押収されました!」
「競売の手続きを進めて! 高く売れるうちに売り払うのよ!」
「テレナ様! レイド殿下の部屋から、大量の『ミナ様グッズ』が発見されました!」
「焼却処分! いや待って、ミナ信者に売れるかも……オークションに出品して!」
私は司令塔として指示を飛ばし続けていた。
セリウス閣下も、昨夜の怒りを仕事のエネルギーに変えたのか、恐ろしい速度で決裁印を押している。
「順調だな」
「ええ。このペースなら、午前中に終わります」
そんな時だった。
「失礼します……」
扉が開き、一人の初老の男性が入ってきた。
王室専属の医師、ドクター・モレノだ。
「モレノ医師? どうされました?」
閣下が手を止める。
モレノ医師は深刻な顔で、帽子を胸に当てた。
「宰相閣下。国王陛下がお目覚めになられました」
「……!」
執務室に緊張が走る。
病床にあった国王陛下。レイド殿下の父であり、この国の最高権力者。
「意識ははっきりされているのですか?」
「はい。ですが……」
医師は言い淀んだ。
「陛下は、レイド殿下をお呼びです。『昨夜の騒ぎは何事か』と、説明を求めておられます」
「……耳が早いな」
閣下は立ち上がった。
「分かった。私が説明に行く」
「それが……陛下は『宰相ではなく、レイドと、当事者であるテレナ嬢を呼べ』と仰せでして」
「……私?」
私は自分を指差した。
国王陛下への謁見。
それはつまり、最終審判の場がいきなり設けられたことを意味する。
「……面白くなってきましたね」
私はニヤリと笑った。
「行きましょう、閣下。陛下に、現実(レイド殿下の成績表)をお見せする時が来たようです」
「ああ。……行くぞ」
私たちは顔を見合わせ、戦場へと向かう兵士のように頷き合った。
だが、私たちはまだ知らなかった。
目覚めた国王陛下が、とんでもない「爆弾発言」を用意していることを。
そして、レイド殿下が最後の悪あがきとして、とんでもない「証人」を用意していることを。
「……私の老後計画、また修正が必要かしら」
廊下を歩きながら、私は一抹の不安を覚えていた。
その予感は、的中することになる。
建国記念祝賀会の壇上。
氷の宰相セリウス・アークライト閣下の声が、死刑宣告のように響き渡った。
手には、私が作成した『王太子宮予算管理・完全版(無駄遣いリスト付き)』が握られている。
対するレイド殿下は、腰を抜かしたまま、ガタガタと震えていた。
「ち、違うんだ叔父上! 僕は騙されたんだ!」
殿下は涙目で、捕縛されたキース男爵を指差した。
「こいつだ! キースが『いい方法がある』って言ったんだ! 僕は止めたんだよ!? 『嘘はいけない』って! でもこいつが無理やり……!」
「……殿下」
キース男爵が、信じられないものを見る目で殿下を見た。
「あ、貴方という人は……! 『成功したら借金を肩代わりしてやる』と言ったのはどこの誰ですか!?」
「う、うるさい! 平民の分際で王族に罪をなすりつける気か! 不敬罪だぞ!」
「見苦しい」
セリウス閣下の一言で、その場が凍りついた。
閣下はゆっくりと、キース男爵の前に歩み寄った。
「キース男爵。貴様には公文書偽造、および王族への詐欺教唆の容疑がかかっている。申し開きはあるか?」
「あ、ありません……! 借金に目が眩みました……!」
「連れて行け。衛兵、地下牢だ」
「ひぃぃっ! お慈悲をぉぉぉ!」
キース男爵がズルズルと引きずられていく。
会場の貴族たちは、その様子を冷ややかな目で見送った。自業自得である。
そして。
残されたのは、主犯格であるレイド殿下だ。
「さあ、レイド。次はお前の番だ」
「ひっ! お、叔父上……僕、は……その……」
殿下は助けを求めるように私を見た。
「テ、テレナ! 君なら分かってくれるだろう!? 僕が数字に弱いことは知っているはずだ! あんな複雑な偽造、僕にできるわけがない!」
「ええ、存じております」
私はマイクを握り直し、淡々と答えた。
「殿下の知能指数では、二桁の足し算ですら指を使わないと危ういですものね。高度な帳簿操作など不可能です」
「そうだろ!? 僕がバカで良かった!」
「ですが」
私はニッコリと微笑んだ。
「『バカだから無罪』という法律はありません」
「!?」
「それに殿下。今回の件、私は『偽造帳簿作成コンサルティング料』および『添削料』を請求させていただきます」
「て、添削料……?」
「ええ。あんな間違いだらけの帳簿を見せられて、私のプロ意識が傷つきました。赤ペンで修正した箇所、一箇所につき金貨一枚。合計五百箇所ありましたので、金貨五百枚です」
「ご、五百……ッ!?」
殿下の目が飛び出た。
「払えなければ、労働で返していただきます。王室礼拝堂の床磨き、期間延長ですね。あと三年ほど追加で」
「三年んんんん!?」
殿下の絶叫がこだまする中、セリウス閣下が静かに騎士たちに合図を送った。
「レイドを部屋に軟禁しろ。国王陛下のご体調が戻り次第、正式な処分を下す。それまでは一歩も部屋から出すな」
「いやだぁぁぁ! ミナぁぁぁ! 助けてぇぇぇ!」
「あ、殿下。頑張ってくださいね。私、明日も筋トレがあるので」
ミナは無慈悲に手を振った。
こうして、殿下による「一発逆転・冤罪作戦」は、自爆という形で幕を下ろした。
◇
騒動が収束し、夜会がお開きになった後。
私はセリウス閣下と共に、帰りの馬車に揺られていた。
車内は静まり返っていた。
いつもなら「報酬はどうする」「残業代を出せ」と軽口を叩き合うところだが、今日の閣下は一言も発さない。
窓の外を流れる夜景を見つめるその横顔は、夜会での冷徹さとは違い、どこか苦しげに見えた。
「……閣下?」
私は恐る恐る声をかけた。
「お疲れですか? あんな茶番に付き合わされて」
「……いや」
閣下はゆっくりとこちらを向いた。
「すまなかった、テレナ」
「え?」
「君を……侮辱させた」
閣下の拳が、膝の上で強く握りしめられている。
「レイドの愚行は予測していた。だが、まさか公衆の面前で、君を『横領犯』呼ばわりするとは……。すぐに止めるべきだった」
「……ああ、そのことですか」
私は拍子抜けして、ふっと笑った。
「お気になさらないでください。あんな言いがかり、誰も信じていませんでしたよ。むしろ、私の優秀さを証明する良い機会になりました」
「君が傷ついていないとしても、私が許せないんだ」
閣下の声が、少しだけ荒げられた。
「私の大切な……部下が、謂れのない汚名を着せられるなど、あってはならない」
「……」
閣下は「部下」と言い直したが、その直前の「大切な」という言葉に込められた熱量は、聞き間違いようがなかった。
(……この人、本当に怒っているんだ)
自分のこと以上に、私の名誉が傷つけられたことに。
氷の宰相の中に眠る、意外なほどの情熱。
私は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
「……ありがとうございます、閣下」
私は素直に礼を言った。
「ですが、私は大丈夫です。閣下が信じてくださっていれば、他の誰に何を言われようと痛くも痒くもありません」
「……テレナ」
「それに、今回の件で『名誉毀損慰謝料』を殿下に請求する口実ができました。私の懐は温まるばかりです」
私が茶化すように言うと、閣下はようやく力を抜き、苦笑を漏らした。
「……君には敵わないな」
「当然です。私は閣下の『最強の補佐官』ですから」
「ああ。……そうだな」
閣下は自然な動作で、私の手を握った。
「だが、これ以上レイドを野放しにはできん。今回の件はあくまで『未遂』で終わったが、次はどうなるか分からん」
「そうですね。悪知恵だけは働くキース男爵もいなくなりましたが、殿下のことです。また斜め上の方向から攻撃してくるでしょう」
「陛下への報告書を作成する。レイドの廃嫡を本格的に進めるための、決定的な資料だ」
「お手伝いします。データなら全て頭に入っていますから」
「頼む」
握られた手から、閣下の決意が伝わってくる。
レイド殿下との腐れ縁も、いよいよ最終局面が近い。
そう予感させる夜だった。
◇
翌日。
宰相執務室は、昨夜の勝利ムード……ではなく、通常通りの激務に包まれていた。
「テレナ様! キース男爵の逮捕に伴い、彼の領地の権利書が押収されました!」
「競売の手続きを進めて! 高く売れるうちに売り払うのよ!」
「テレナ様! レイド殿下の部屋から、大量の『ミナ様グッズ』が発見されました!」
「焼却処分! いや待って、ミナ信者に売れるかも……オークションに出品して!」
私は司令塔として指示を飛ばし続けていた。
セリウス閣下も、昨夜の怒りを仕事のエネルギーに変えたのか、恐ろしい速度で決裁印を押している。
「順調だな」
「ええ。このペースなら、午前中に終わります」
そんな時だった。
「失礼します……」
扉が開き、一人の初老の男性が入ってきた。
王室専属の医師、ドクター・モレノだ。
「モレノ医師? どうされました?」
閣下が手を止める。
モレノ医師は深刻な顔で、帽子を胸に当てた。
「宰相閣下。国王陛下がお目覚めになられました」
「……!」
執務室に緊張が走る。
病床にあった国王陛下。レイド殿下の父であり、この国の最高権力者。
「意識ははっきりされているのですか?」
「はい。ですが……」
医師は言い淀んだ。
「陛下は、レイド殿下をお呼びです。『昨夜の騒ぎは何事か』と、説明を求めておられます」
「……耳が早いな」
閣下は立ち上がった。
「分かった。私が説明に行く」
「それが……陛下は『宰相ではなく、レイドと、当事者であるテレナ嬢を呼べ』と仰せでして」
「……私?」
私は自分を指差した。
国王陛下への謁見。
それはつまり、最終審判の場がいきなり設けられたことを意味する。
「……面白くなってきましたね」
私はニヤリと笑った。
「行きましょう、閣下。陛下に、現実(レイド殿下の成績表)をお見せする時が来たようです」
「ああ。……行くぞ」
私たちは顔を見合わせ、戦場へと向かう兵士のように頷き合った。
だが、私たちはまだ知らなかった。
目覚めた国王陛下が、とんでもない「爆弾発言」を用意していることを。
そして、レイド殿下が最後の悪あがきとして、とんでもない「証人」を用意していることを。
「……私の老後計画、また修正が必要かしら」
廊下を歩きながら、私は一抹の不安を覚えていた。
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