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「――入室を許可する」
重々しい声が響き、国王陛下の私室の扉が開かれた。
そこは、薬品の匂いと、老いた権力者の威圧感が漂う空間だった。
天蓋付きの大きなベッドに、痩せ細った国王陛下が体を起こして座っている。
その枕元には、すでに到着していたレイド殿下が、縋り付くようにして泣きついていた。
「父上! 信じてください! 僕は被害者なんです! あの女が……テレナが、僕を陥れようとして!」
殿下はあることないこと……いや、ないことないことを吹き込んでいたらしい。
私とセリウス閣下が部屋に入ると、陛下は鋭い眼光をこちらに向けた。
「……来たか。セリウス、そしてテレナ嬢」
「お加減はいかがでしょうか、兄上」
セリウス閣下は恭しく一礼した。私もそれに倣ってカーテシーをする。
「見ての通りだ。死にかけていたが、城が騒がしくて目が覚めた。……レイドが申しておるぞ。『テレナが偽の帳簿を使って、自分を横領犯に仕立て上げようとした』とな」
「逆です、陛下」
私は即座に訂正した。
「殿下が偽の帳簿を使って私を告発し、それが小学生レベルの偽造だったために自爆されたのです」
「う、嘘だ! 父上、騙されないでください! こいつは口が達者なんです! 詐欺師なんです!」
殿下は必死だ。
ここで認めれば廃嫡、あるいは勘当されると分かっているのだろう。
国王陛下は深く息を吐き、疲れたように目を閉じた。
「……水掛け論だな。どちらも証拠はあるのか?」
「こちらには、殿下の直筆サイン入りの無駄遣いリスト(本物)がございます」
セリウス閣下が分厚いファイルを差し出した。
「対するレイド。お前には何がある?」
「ぼ、僕には……証人がいます!」
殿下は勝ち誇った顔で叫んだ。
「入ってくれ! この悪女の正体を知る者よ!」
陛下の許可を得て、部屋の奥から一人の女性が現れた。
質素なメイド服。少し猫背で、おどおどとした態度。
私は目を細めた。
「……あら。貴女は確か、我が家の元メイドの……ソフィア?」
「は、はい……お久しぶりでございます、お嬢様……」
ソフィア。
数年前、屋敷の備品を盗んで解雇された元メイドだ。
まさか、こんなところから引っ張り出してくるとは。
「父上! 彼女はテレナの実家で働いていた時、テレナの虐待を目撃しているんです!」
殿下が促すと、ソフィアは震える声で証言を始めた。
「……はい。テレナ様は……とても恐ろしい方でした。気に入らないことがあると、すぐに使用人を鞭で打ち……給金を不当に減らし……『私は未来の王妃なのだから、何をしても許される』と笑っていらっしゃいました……」
「なんと!」
陛下が眉をひそめる。
「さらに……横領したお金で、裏社会の人間と繋がりを持ち……『王子なんてちょろい』『国を乗っ取ってやる』と……」
ソフィアは嘘泣きを始めた。
完全な偽証だ。キース男爵の入れ知恵か、あるいは殿下が金で買収したのか。
「聞きましたか父上! これがテレナの本性です! こんな女が城にいたら、国が滅びます!」
殿下は勢いづいた。
「即刻、彼女を処刑してください! そして僕の名誉を回復し、慰謝料として彼女の全財産を僕にください!」
「……」
私は呆れて物が言えなかった。
ここまで露骨な嘘を、よくもまあペラペラと。
反論しようと口を開きかけた、その時だった。
「――黙れ」
室内の空気が、一瞬にして凍りついた。
私ではない。国王陛下でもない。
セリウス閣下だ。
閣下は、これ以上ないほど静かな、しかし内臓が震えるような低い声で言った。
「……レイド。そしてそこの女。……今、なんとほざいた?」
「ひっ……!」
ソフィアが悲鳴を上げて尻餅をついた。
レイド殿下も、閣下の殺気に当てられて後ずさる。
「お、叔父上……? な、何怒ってるの……?」
「テレナが、鞭で打つだと?」
閣下はゆっくりと、ソフィアに歩み寄った。
「彼女は合理的だ。鞭などという非効率な道具は使わん。彼女が制裁を加える時は、給与明細と労働基準法を使う」
「は、はあ……」
「『国を乗っ取ってやる』だと? 笑わせるな」
閣下は冷笑した。
「彼女の夢は『南の国での優雅な隠居生活』だ。激務の王妃になど、頼まれてもなりたがらない。彼女がどれほど、この国の公務を『面倒くさい』と言いながら片付けてくれているか、貴様らに分かるか?」
閣下の怒りは、静かに、しかし青い炎のように燃え盛っていた。
執務室でペンを折った時とは違う。
もっと根本的な、許しがたい領域に踏み込まれた怒りだ。
「……私は、我慢ならんのだ」
閣下は拳を握りしめた。
「私の前で、私の大切なパートナーを……これ以上、安っぽい嘘で汚すな」
「お、叔父上……で、でも証人が……」
「その証人が偽物であることなど、調べるまでもない!」
ダンッ!!
閣下が床を強く踏み鳴らした。
「ソフィアと言ったな。貴様、先月『赤熊亭』の賭博場で借金を作ったな? その借金の肩代わりを条件に、レイドに雇われたか?」
「ッ!? な、なぜそれを……!」
「私の情報網を舐めるな。この国の金の流れは全て把握している」
閣下はソフィアを見下ろした。
その目は、完全にゴミを見る目だった。
「偽証罪は重いぞ。舌を抜かれるか、一生牢獄で過ごすか。……今すぐ真実を話せば、国外追放だけで済ませてやる。選べ」
「ひぃぃっ! ごめんなさい! 嘘です! 全部嘘ですぅ!」
ソフィアはあっさり陥落した。
土下座をして泣き叫ぶ。
「お金が欲しかったんです! 殿下が『テレナの悪口を言えば金貨百枚やる』って……!」
「……だ、そうだ。レイド」
閣下はゆっくりと振り返り、甥を見た。
「あ、あわわ……ち、違うんだ叔父上! これは……その、演出というか……」
「演出?」
セリウス閣下は、スッと腰の剣に手をかけた。
「なら、私も演出をしてやろう。お前を『反逆罪』でその場で切り捨てるという、悲劇の演出をな」
「ぎゃあああ! 助けて父上ぇぇぇ!」
レイド殿下は国王陛下のベッドの下に潜り込んだ。
あまりの情けなさに、私はため息をつくのも忘れた。
「……もうよい、セリウス」
国王陛下が、重く口を開いた。
「剣を収めよ。……情けない。我が息子ながら、ここまで腐っていたとは」
「兄上……」
「レイドよ。出てこい」
陛下に促され、殿下が恐る恐る顔を出す。
「テレナ嬢。……不愉快な思いをさせたな。詫びる」
陛下は私に向かって頭を下げた。
「滅相もございません、陛下」
私はカーテシーをした。
「慣れておりますので。殿下の嘘は、いつも計算が合わないのですぐ分かります」
「……ふっ。強いな、そなたは」
陛下は力なく笑った。
「セリウス。お前の怒りはもっともだ。……レイドの処遇について、考えねばならん。だが、廃嫡となれば次の王位継承者がおらん」
「その点については、ご心配なく」
セリウス閣下は、剣から手を離し、冷静な宰相の顔に戻っていた。
「テレナ嬢と共に、既に次善策を練っております。……王籍を剥奪する前に、彼に『最後のチャンス』を与えるのはいかがでしょう?」
「最後のチャンス?」
殿下が目を輝かせた。
「そ、そうだよ! チャンス! 僕にはまだ伸びしろがあるはずだ!」
「黙れ」
閣下は一喝した。
「チャンスと言っても、王太子としての仕事ではない。……一人の人間として、己の食い扶持を稼げるかどうかの試験だ」
「へ?」
「明日から一週間。レイド、お前を城下町へ放り出す。身分を隠し、誰の助けも借りず、自分の力だけで生活してみせろ」
「……はあ?」
「金は持たさん。住む場所も自分で探せ。一週間後、餓死せずに、かつ犯罪に手を染めずに戻ってこられたら……廃嫡だけは免除してやろう」
「な、なんだってー!?」
殿下が絶叫した。
「無理だよ! 僕は靴下も履けないんだぞ!?」
「なら裸足で歩け。それが現実だ」
閣下は冷酷に言い放った。
「テレナ。監視役はミナ嬢に頼めるか?」
「ええ。彼女なら適任です。最近、筋力もついてきましたし、殿下が逃げようとしたら物理的に止めるでしょう」
「決まりだな」
こうして、国王陛下の御前会議は、レイド殿下の「サバイバル生活試験」の実施決定で幕を閉じた。
部屋を出た後。
私は廊下で、セリウス閣下に声をかけた。
「……閣下。先ほどは、ありがとうございました」
「何がだ?」
「私のために、あんなに怒ってくださって」
私が言うと、閣下はバツが悪そうに顔を背けた。
「……忘れてくれ。少し、頭に血が上っただけだ」
「ふふっ。珍しいですね、氷の宰相が熱くなるなんて」
「……君のせいだ」
閣下はボソリと言った。
「君が関わると、どうも計算が狂う。……だが、悪くない気分だ」
そう言って、閣下は私の手をそっと握りしめた。
「さあ、戻ろう。レイドの放逐準備と……監視役のミナ嬢への『筋肉強化指令』を出さねばな」
「はい、閣下」
私は握り返された手の温かさを感じながら、明日の地獄(殿下にとっての)を楽しみに思うのだった。
しかし。
このサバイバル試験が、予想外の「奇跡」と「悲劇」を生むことになるとは、まだ誰も知らなかった。
重々しい声が響き、国王陛下の私室の扉が開かれた。
そこは、薬品の匂いと、老いた権力者の威圧感が漂う空間だった。
天蓋付きの大きなベッドに、痩せ細った国王陛下が体を起こして座っている。
その枕元には、すでに到着していたレイド殿下が、縋り付くようにして泣きついていた。
「父上! 信じてください! 僕は被害者なんです! あの女が……テレナが、僕を陥れようとして!」
殿下はあることないこと……いや、ないことないことを吹き込んでいたらしい。
私とセリウス閣下が部屋に入ると、陛下は鋭い眼光をこちらに向けた。
「……来たか。セリウス、そしてテレナ嬢」
「お加減はいかがでしょうか、兄上」
セリウス閣下は恭しく一礼した。私もそれに倣ってカーテシーをする。
「見ての通りだ。死にかけていたが、城が騒がしくて目が覚めた。……レイドが申しておるぞ。『テレナが偽の帳簿を使って、自分を横領犯に仕立て上げようとした』とな」
「逆です、陛下」
私は即座に訂正した。
「殿下が偽の帳簿を使って私を告発し、それが小学生レベルの偽造だったために自爆されたのです」
「う、嘘だ! 父上、騙されないでください! こいつは口が達者なんです! 詐欺師なんです!」
殿下は必死だ。
ここで認めれば廃嫡、あるいは勘当されると分かっているのだろう。
国王陛下は深く息を吐き、疲れたように目を閉じた。
「……水掛け論だな。どちらも証拠はあるのか?」
「こちらには、殿下の直筆サイン入りの無駄遣いリスト(本物)がございます」
セリウス閣下が分厚いファイルを差し出した。
「対するレイド。お前には何がある?」
「ぼ、僕には……証人がいます!」
殿下は勝ち誇った顔で叫んだ。
「入ってくれ! この悪女の正体を知る者よ!」
陛下の許可を得て、部屋の奥から一人の女性が現れた。
質素なメイド服。少し猫背で、おどおどとした態度。
私は目を細めた。
「……あら。貴女は確か、我が家の元メイドの……ソフィア?」
「は、はい……お久しぶりでございます、お嬢様……」
ソフィア。
数年前、屋敷の備品を盗んで解雇された元メイドだ。
まさか、こんなところから引っ張り出してくるとは。
「父上! 彼女はテレナの実家で働いていた時、テレナの虐待を目撃しているんです!」
殿下が促すと、ソフィアは震える声で証言を始めた。
「……はい。テレナ様は……とても恐ろしい方でした。気に入らないことがあると、すぐに使用人を鞭で打ち……給金を不当に減らし……『私は未来の王妃なのだから、何をしても許される』と笑っていらっしゃいました……」
「なんと!」
陛下が眉をひそめる。
「さらに……横領したお金で、裏社会の人間と繋がりを持ち……『王子なんてちょろい』『国を乗っ取ってやる』と……」
ソフィアは嘘泣きを始めた。
完全な偽証だ。キース男爵の入れ知恵か、あるいは殿下が金で買収したのか。
「聞きましたか父上! これがテレナの本性です! こんな女が城にいたら、国が滅びます!」
殿下は勢いづいた。
「即刻、彼女を処刑してください! そして僕の名誉を回復し、慰謝料として彼女の全財産を僕にください!」
「……」
私は呆れて物が言えなかった。
ここまで露骨な嘘を、よくもまあペラペラと。
反論しようと口を開きかけた、その時だった。
「――黙れ」
室内の空気が、一瞬にして凍りついた。
私ではない。国王陛下でもない。
セリウス閣下だ。
閣下は、これ以上ないほど静かな、しかし内臓が震えるような低い声で言った。
「……レイド。そしてそこの女。……今、なんとほざいた?」
「ひっ……!」
ソフィアが悲鳴を上げて尻餅をついた。
レイド殿下も、閣下の殺気に当てられて後ずさる。
「お、叔父上……? な、何怒ってるの……?」
「テレナが、鞭で打つだと?」
閣下はゆっくりと、ソフィアに歩み寄った。
「彼女は合理的だ。鞭などという非効率な道具は使わん。彼女が制裁を加える時は、給与明細と労働基準法を使う」
「は、はあ……」
「『国を乗っ取ってやる』だと? 笑わせるな」
閣下は冷笑した。
「彼女の夢は『南の国での優雅な隠居生活』だ。激務の王妃になど、頼まれてもなりたがらない。彼女がどれほど、この国の公務を『面倒くさい』と言いながら片付けてくれているか、貴様らに分かるか?」
閣下の怒りは、静かに、しかし青い炎のように燃え盛っていた。
執務室でペンを折った時とは違う。
もっと根本的な、許しがたい領域に踏み込まれた怒りだ。
「……私は、我慢ならんのだ」
閣下は拳を握りしめた。
「私の前で、私の大切なパートナーを……これ以上、安っぽい嘘で汚すな」
「お、叔父上……で、でも証人が……」
「その証人が偽物であることなど、調べるまでもない!」
ダンッ!!
閣下が床を強く踏み鳴らした。
「ソフィアと言ったな。貴様、先月『赤熊亭』の賭博場で借金を作ったな? その借金の肩代わりを条件に、レイドに雇われたか?」
「ッ!? な、なぜそれを……!」
「私の情報網を舐めるな。この国の金の流れは全て把握している」
閣下はソフィアを見下ろした。
その目は、完全にゴミを見る目だった。
「偽証罪は重いぞ。舌を抜かれるか、一生牢獄で過ごすか。……今すぐ真実を話せば、国外追放だけで済ませてやる。選べ」
「ひぃぃっ! ごめんなさい! 嘘です! 全部嘘ですぅ!」
ソフィアはあっさり陥落した。
土下座をして泣き叫ぶ。
「お金が欲しかったんです! 殿下が『テレナの悪口を言えば金貨百枚やる』って……!」
「……だ、そうだ。レイド」
閣下はゆっくりと振り返り、甥を見た。
「あ、あわわ……ち、違うんだ叔父上! これは……その、演出というか……」
「演出?」
セリウス閣下は、スッと腰の剣に手をかけた。
「なら、私も演出をしてやろう。お前を『反逆罪』でその場で切り捨てるという、悲劇の演出をな」
「ぎゃあああ! 助けて父上ぇぇぇ!」
レイド殿下は国王陛下のベッドの下に潜り込んだ。
あまりの情けなさに、私はため息をつくのも忘れた。
「……もうよい、セリウス」
国王陛下が、重く口を開いた。
「剣を収めよ。……情けない。我が息子ながら、ここまで腐っていたとは」
「兄上……」
「レイドよ。出てこい」
陛下に促され、殿下が恐る恐る顔を出す。
「テレナ嬢。……不愉快な思いをさせたな。詫びる」
陛下は私に向かって頭を下げた。
「滅相もございません、陛下」
私はカーテシーをした。
「慣れておりますので。殿下の嘘は、いつも計算が合わないのですぐ分かります」
「……ふっ。強いな、そなたは」
陛下は力なく笑った。
「セリウス。お前の怒りはもっともだ。……レイドの処遇について、考えねばならん。だが、廃嫡となれば次の王位継承者がおらん」
「その点については、ご心配なく」
セリウス閣下は、剣から手を離し、冷静な宰相の顔に戻っていた。
「テレナ嬢と共に、既に次善策を練っております。……王籍を剥奪する前に、彼に『最後のチャンス』を与えるのはいかがでしょう?」
「最後のチャンス?」
殿下が目を輝かせた。
「そ、そうだよ! チャンス! 僕にはまだ伸びしろがあるはずだ!」
「黙れ」
閣下は一喝した。
「チャンスと言っても、王太子としての仕事ではない。……一人の人間として、己の食い扶持を稼げるかどうかの試験だ」
「へ?」
「明日から一週間。レイド、お前を城下町へ放り出す。身分を隠し、誰の助けも借りず、自分の力だけで生活してみせろ」
「……はあ?」
「金は持たさん。住む場所も自分で探せ。一週間後、餓死せずに、かつ犯罪に手を染めずに戻ってこられたら……廃嫡だけは免除してやろう」
「な、なんだってー!?」
殿下が絶叫した。
「無理だよ! 僕は靴下も履けないんだぞ!?」
「なら裸足で歩け。それが現実だ」
閣下は冷酷に言い放った。
「テレナ。監視役はミナ嬢に頼めるか?」
「ええ。彼女なら適任です。最近、筋力もついてきましたし、殿下が逃げようとしたら物理的に止めるでしょう」
「決まりだな」
こうして、国王陛下の御前会議は、レイド殿下の「サバイバル生活試験」の実施決定で幕を閉じた。
部屋を出た後。
私は廊下で、セリウス閣下に声をかけた。
「……閣下。先ほどは、ありがとうございました」
「何がだ?」
「私のために、あんなに怒ってくださって」
私が言うと、閣下はバツが悪そうに顔を背けた。
「……忘れてくれ。少し、頭に血が上っただけだ」
「ふふっ。珍しいですね、氷の宰相が熱くなるなんて」
「……君のせいだ」
閣下はボソリと言った。
「君が関わると、どうも計算が狂う。……だが、悪くない気分だ」
そう言って、閣下は私の手をそっと握りしめた。
「さあ、戻ろう。レイドの放逐準備と……監視役のミナ嬢への『筋肉強化指令』を出さねばな」
「はい、閣下」
私は握り返された手の温かさを感じながら、明日の地獄(殿下にとっての)を楽しみに思うのだった。
しかし。
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