27 / 28
27
しおりを挟む
「――到着だ。最短ルート、五十八秒」
セリウス閣下は、私を抱きかかえたまま寝室の扉を足で開け、そのまま天蓋付きのキングサイズベッドへと私を下ろした。
ふかふかの羽毛布団に身体が沈み込む。
部屋には、すでにムード満点のキャンドルが灯され、ほのかに薔薇の香りが漂っていた。
マダム・ボヌールの仕業だろう。余計な気を利かせている。
「さて、テレナ」
閣下は上着を脱ぎ捨て、ネクタイを緩めながら、獲物を狙う肉食獣のような瞳で私を見下ろした。
「邪魔者はいない。時間制限もない。……覚悟はいいか?」
ゴクリ、と私の喉が鳴る。
いよいよだ。
公爵夫人としての最初の大仕事。
そして、一人の女性としての未知の領域。
心臓が早鐘を打っている。
体温が上昇しているのが分かる。
だが、私はテレナ・フォン・ベルベット(今日からアークライトだが)。
ただ流されるだけの女ではない。
「……待ってください、閣下」
私は掛け布団を盾にするように引き寄せ、片手を突き出して制止した。
「業務(これ)に取り掛かる前に、確認すべき事項があります」
「……なんだ、この期に及んで」
閣下の手が、シャツのボタンにかかっている。
その指の動きがセクシーすぎて直視できないので、私は視線を少し逸らして言った。
「今後の『人生設計(ライフプラン)』についてです」
私は枕の下に隠しておいた(朝のうちに仕込んでおいた)羊皮紙の束を取り出した。
「こちらをご覧ください。私が作成した『アークライト家・中期経営計画書』です」
「……は?」
閣下の動きが止まった。
「ベッドの上で、経営会議をする気か?」
「重要です。家族が増えれば、支出も増えます。子供の養育費、教育費、社交費……これらを事前にシミュレーションし、予算を確保しておく必要があります」
私は羊皮紙を広げ、指差した。
「計画では、第一子は三年後。性別は問いませんが、帝王学と経営学を叩き込むための家庭教師代として、年間金貨五百枚を計上しています。第二子は五年後、第三子は……」
「テレナ」
「また、私の産休中の業務代行者リストも作成済みです。さらに、老後の隠居資金については……」
バサッ。
私の手から、羊皮紙が取り上げられた。
そして、無造作にベッドの下へ放り投げられた。
「ああっ!? 私の傑作プランが!」
「そんなものは後でいい」
閣下はベッドに片膝をつき、覆いかぶさるようにして私を閉じ込めた。
「三年後? 悠長なことを言うな」
「で、ですが、計画性が……」
「私は待てないと言ったはずだ」
閣下の顔が近づく。
その瞳は、熱を孕んで揺らめいている。
「子供など、授かりものだ。計算通りになどいくものか」
「確率論で言えば、排卵日と体調を管理すればある程度の予測は……」
「……君は本当に、ムードというものを知らないな」
閣下は苦笑し、私の唇を指で塞いだ。
「黙りなさい、私の可愛いCEO」
「んぐっ……」
「今夜は、数字も計算も忘れろ。……私のことだけを考えろ」
封じられた唇に、閣下の唇が重ねられる。
今までのどのキスよりも深く、甘く、そして情熱的な口づけ。
思考回路がショートする。
脳内の電卓が弾け飛び、数字がバラバラに崩れていく。
「……んっ、ぁ……」
「……やっと静かになった」
唇を離した閣下は、満足げに微笑んだ。
「君のその、理屈っぽい口を塞ぐには、これが一番効率的だな」
「……ずるいです、閣下」
私は息も絶え絶えに抗議した。
「これは……論理的議論の放棄です……」
「愛に論理など不要だ」
閣下の手が、私のドレスの背中に回る。
ジジジ……とファスナーが下ろされる音が、静かな部屋に大きく響いた。
肌が空気に触れ、そしてすぐに閣下の熱い掌に覆われる。
「っ……!」
「震えているな」
「……寒さのせいです」
「室温は適温だ。……怖いか?」
閣下の動きが止まり、優しい眼差しが私を包み込む。
その気遣いが、逆に胸を締め付ける。
私は観念して、小さく頷いた。
「……怖くはありません。ただ……計算できない事態が、不安なだけです」
私は正直に告白した。
「私はこれまで、全てを計算し、予測し、リスクを回避してきました。でも……この状況は、変数が多すぎます。私の制御を超えています」
「そうだな」
閣下は私の髪を優しく撫でた。
「だが、人生は計算通りにいかないから面白い。……私もそうだ」
「閣下も?」
「ああ。君と出会って、私の計算は狂いっぱなしだ。まさか、悪役令嬢と呼ばれた君に惚れ込み、公爵家の当主として迎え入れるなど、一年前の私には予測不可能だった」
閣下は私の額にキスをした。
「だが、今の私は、その『計算外』を最高に愛おしく思っている」
「……」
「テレナ。身を委ねてくれ。……私が君を、幸せという名の未知の領域へ連れて行く」
その言葉は、どんな完璧な事業計画書よりも、私を安心させてくれた。
「……分かりました」
私はゆっくりと、閣下の首に腕を回した。
「ただし、条件があります」
「まだあるのか?」
閣下は呆れつつも、愛おしげに笑った。
「どうぞ、おっしゃってください、奥様」
「……優しくしてください。痛いのは、非効率的ですので」
「善処する」
「それと……明日の朝、私が起きられなかったら、起こさないでください。公務は休みます」
「許可する」
「最後に……」
私は顔を赤く染めながら、閣下の耳元で囁いた。
「……大好きです、セリウス」
「……ッ」
閣下の喉が大きく動いた。
理性の糸がプツンと切れる音が、聞こえた気がした。
「……もう、喋るな」
閣下は低く唸り、私を強く抱きしめた。
そこから先は、言葉はいらなかった。
計算高い悪役令嬢の、最後の抵抗(プレゼン)はあえなく却下され。
私はただ、一人の愛される女性として、甘美な夜の波に飲み込まれていった。
◇
翌朝。
チュンチュン、という小鳥の声で目が覚めた。
カーテンの隙間から、眩しい朝日が差し込んでいる。
「……ううっ」
私は呻き声を上げて寝返りを打とうとし――全身の激痛に固まった。
「……痛い」
腰が。背中が。足が。
全身が筋肉痛だ。いや、それ以上だ。
まるで、ミナの特訓(スクワット五百回)を受けた翌日のような疲労感。
(……話が違うじゃない)
私は隣でスヤスヤと眠る、銀髪の男を睨みつけた。
「『善処する』って言ったくせに……全然優しくなかった……」
昨夜の閣下は、まさに野獣だった。
私の「人生設計書」など紙屑同然に吹き飛ばし、何度も何度も、私が「もう無理です、計算不能です!」と泣きを入れるまで愛を注いできたのだ。
「……詐欺だわ」
私は溜息をついたが、その口元は自然と緩んでいた。
ふと、サイドテーブルを見ると、昨夜閣下が投げ捨てた羊皮紙が拾い上げられ、置かれていた。
そこには、閣下の流麗な筆跡で、書き込みがされていた。
『計画書、承認。ただし、子供の数は修正を求む。野球チームが作れるくらい欲しい』
「……はあ!?」
私は思わず叫んだ。
野球チーム? 九人?
この男、私を産む機械か何かだと思っているのか。
「……却下よ、却下! 断固拒否します!」
私が枕を投げつけると、セリウスが目を覚ました。
「……ん? おはよう、テレナ。朝から元気だな」
彼は寝ぼけ眼で、しかし満足げに微笑んだ。
その笑顔があまりにも無防備で、幸せそうで。
私は脱力して、ベッドに倒れ込んだ。
「……おはようございます、あなた」
これからの結婚生活。
私の計算通りには、何一つ進みそうにない。
予測不能なトラブルと、過剰な愛と、そして終わらない攻防戦が待っているのだろう。
でも。
(……ま、それも悪くないかしら)
私は自分の薬指に光る指輪を見つめ、小さく笑った。
赤字覚悟の結婚生活。
でも、その収支決算は、きっと「プライスレスな幸せ」で黒字になるはずだ。
「……さて、二回戦といこうか?」
「行きません! 仕事です! 起きてください!」
「今日は休みだろう?」
「家事という名の業務があります! ほら、シーツを洗濯しますよ!」
私は強引に彼をベッドから引きずり出した。
新しい朝が始まる。
騒がしくて、愛おしい、私たちの日常が。
セリウス閣下は、私を抱きかかえたまま寝室の扉を足で開け、そのまま天蓋付きのキングサイズベッドへと私を下ろした。
ふかふかの羽毛布団に身体が沈み込む。
部屋には、すでにムード満点のキャンドルが灯され、ほのかに薔薇の香りが漂っていた。
マダム・ボヌールの仕業だろう。余計な気を利かせている。
「さて、テレナ」
閣下は上着を脱ぎ捨て、ネクタイを緩めながら、獲物を狙う肉食獣のような瞳で私を見下ろした。
「邪魔者はいない。時間制限もない。……覚悟はいいか?」
ゴクリ、と私の喉が鳴る。
いよいよだ。
公爵夫人としての最初の大仕事。
そして、一人の女性としての未知の領域。
心臓が早鐘を打っている。
体温が上昇しているのが分かる。
だが、私はテレナ・フォン・ベルベット(今日からアークライトだが)。
ただ流されるだけの女ではない。
「……待ってください、閣下」
私は掛け布団を盾にするように引き寄せ、片手を突き出して制止した。
「業務(これ)に取り掛かる前に、確認すべき事項があります」
「……なんだ、この期に及んで」
閣下の手が、シャツのボタンにかかっている。
その指の動きがセクシーすぎて直視できないので、私は視線を少し逸らして言った。
「今後の『人生設計(ライフプラン)』についてです」
私は枕の下に隠しておいた(朝のうちに仕込んでおいた)羊皮紙の束を取り出した。
「こちらをご覧ください。私が作成した『アークライト家・中期経営計画書』です」
「……は?」
閣下の動きが止まった。
「ベッドの上で、経営会議をする気か?」
「重要です。家族が増えれば、支出も増えます。子供の養育費、教育費、社交費……これらを事前にシミュレーションし、予算を確保しておく必要があります」
私は羊皮紙を広げ、指差した。
「計画では、第一子は三年後。性別は問いませんが、帝王学と経営学を叩き込むための家庭教師代として、年間金貨五百枚を計上しています。第二子は五年後、第三子は……」
「テレナ」
「また、私の産休中の業務代行者リストも作成済みです。さらに、老後の隠居資金については……」
バサッ。
私の手から、羊皮紙が取り上げられた。
そして、無造作にベッドの下へ放り投げられた。
「ああっ!? 私の傑作プランが!」
「そんなものは後でいい」
閣下はベッドに片膝をつき、覆いかぶさるようにして私を閉じ込めた。
「三年後? 悠長なことを言うな」
「で、ですが、計画性が……」
「私は待てないと言ったはずだ」
閣下の顔が近づく。
その瞳は、熱を孕んで揺らめいている。
「子供など、授かりものだ。計算通りになどいくものか」
「確率論で言えば、排卵日と体調を管理すればある程度の予測は……」
「……君は本当に、ムードというものを知らないな」
閣下は苦笑し、私の唇を指で塞いだ。
「黙りなさい、私の可愛いCEO」
「んぐっ……」
「今夜は、数字も計算も忘れろ。……私のことだけを考えろ」
封じられた唇に、閣下の唇が重ねられる。
今までのどのキスよりも深く、甘く、そして情熱的な口づけ。
思考回路がショートする。
脳内の電卓が弾け飛び、数字がバラバラに崩れていく。
「……んっ、ぁ……」
「……やっと静かになった」
唇を離した閣下は、満足げに微笑んだ。
「君のその、理屈っぽい口を塞ぐには、これが一番効率的だな」
「……ずるいです、閣下」
私は息も絶え絶えに抗議した。
「これは……論理的議論の放棄です……」
「愛に論理など不要だ」
閣下の手が、私のドレスの背中に回る。
ジジジ……とファスナーが下ろされる音が、静かな部屋に大きく響いた。
肌が空気に触れ、そしてすぐに閣下の熱い掌に覆われる。
「っ……!」
「震えているな」
「……寒さのせいです」
「室温は適温だ。……怖いか?」
閣下の動きが止まり、優しい眼差しが私を包み込む。
その気遣いが、逆に胸を締め付ける。
私は観念して、小さく頷いた。
「……怖くはありません。ただ……計算できない事態が、不安なだけです」
私は正直に告白した。
「私はこれまで、全てを計算し、予測し、リスクを回避してきました。でも……この状況は、変数が多すぎます。私の制御を超えています」
「そうだな」
閣下は私の髪を優しく撫でた。
「だが、人生は計算通りにいかないから面白い。……私もそうだ」
「閣下も?」
「ああ。君と出会って、私の計算は狂いっぱなしだ。まさか、悪役令嬢と呼ばれた君に惚れ込み、公爵家の当主として迎え入れるなど、一年前の私には予測不可能だった」
閣下は私の額にキスをした。
「だが、今の私は、その『計算外』を最高に愛おしく思っている」
「……」
「テレナ。身を委ねてくれ。……私が君を、幸せという名の未知の領域へ連れて行く」
その言葉は、どんな完璧な事業計画書よりも、私を安心させてくれた。
「……分かりました」
私はゆっくりと、閣下の首に腕を回した。
「ただし、条件があります」
「まだあるのか?」
閣下は呆れつつも、愛おしげに笑った。
「どうぞ、おっしゃってください、奥様」
「……優しくしてください。痛いのは、非効率的ですので」
「善処する」
「それと……明日の朝、私が起きられなかったら、起こさないでください。公務は休みます」
「許可する」
「最後に……」
私は顔を赤く染めながら、閣下の耳元で囁いた。
「……大好きです、セリウス」
「……ッ」
閣下の喉が大きく動いた。
理性の糸がプツンと切れる音が、聞こえた気がした。
「……もう、喋るな」
閣下は低く唸り、私を強く抱きしめた。
そこから先は、言葉はいらなかった。
計算高い悪役令嬢の、最後の抵抗(プレゼン)はあえなく却下され。
私はただ、一人の愛される女性として、甘美な夜の波に飲み込まれていった。
◇
翌朝。
チュンチュン、という小鳥の声で目が覚めた。
カーテンの隙間から、眩しい朝日が差し込んでいる。
「……ううっ」
私は呻き声を上げて寝返りを打とうとし――全身の激痛に固まった。
「……痛い」
腰が。背中が。足が。
全身が筋肉痛だ。いや、それ以上だ。
まるで、ミナの特訓(スクワット五百回)を受けた翌日のような疲労感。
(……話が違うじゃない)
私は隣でスヤスヤと眠る、銀髪の男を睨みつけた。
「『善処する』って言ったくせに……全然優しくなかった……」
昨夜の閣下は、まさに野獣だった。
私の「人生設計書」など紙屑同然に吹き飛ばし、何度も何度も、私が「もう無理です、計算不能です!」と泣きを入れるまで愛を注いできたのだ。
「……詐欺だわ」
私は溜息をついたが、その口元は自然と緩んでいた。
ふと、サイドテーブルを見ると、昨夜閣下が投げ捨てた羊皮紙が拾い上げられ、置かれていた。
そこには、閣下の流麗な筆跡で、書き込みがされていた。
『計画書、承認。ただし、子供の数は修正を求む。野球チームが作れるくらい欲しい』
「……はあ!?」
私は思わず叫んだ。
野球チーム? 九人?
この男、私を産む機械か何かだと思っているのか。
「……却下よ、却下! 断固拒否します!」
私が枕を投げつけると、セリウスが目を覚ました。
「……ん? おはよう、テレナ。朝から元気だな」
彼は寝ぼけ眼で、しかし満足げに微笑んだ。
その笑顔があまりにも無防備で、幸せそうで。
私は脱力して、ベッドに倒れ込んだ。
「……おはようございます、あなた」
これからの結婚生活。
私の計算通りには、何一つ進みそうにない。
予測不能なトラブルと、過剰な愛と、そして終わらない攻防戦が待っているのだろう。
でも。
(……ま、それも悪くないかしら)
私は自分の薬指に光る指輪を見つめ、小さく笑った。
赤字覚悟の結婚生活。
でも、その収支決算は、きっと「プライスレスな幸せ」で黒字になるはずだ。
「……さて、二回戦といこうか?」
「行きません! 仕事です! 起きてください!」
「今日は休みだろう?」
「家事という名の業務があります! ほら、シーツを洗濯しますよ!」
私は強引に彼をベッドから引きずり出した。
新しい朝が始まる。
騒がしくて、愛おしい、私たちの日常が。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
運命の人ではなかっただけ
Rj
恋愛
教会で結婚の誓いをたてる十日前に婚約者のショーンから結婚できないといわれたアリス。ショーンは運命の人に出会ったという。傷心のアリスに周囲のさまざまな思惑がとびかう。
全十一話
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる