万歳!国外追放?まあ、なんて素敵なのでしょう!

恋の箱庭

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白銀のアーマー姿で舞踏会の注目を独り占め(物理的にも視覚的にも)していたアニエスの元に、一人の怪しげな給仕が近づいてきた。
その男は、リリアーヌが放った刺客――「稀代の毒薬使い」として闇の世界で恐れられる、通称『暗黒の調合師』である。

「……アニエス様。こちら、ラ・メール王国のリリアーヌ様からの『和解の印』にございます。特製のプレミアム・アロエ・ジュースをどうぞ」

男が差し出したのは、不気味にどろりと濁った、禍々しい紫色の液体が入ったグラスだった。
それには、飲んだ者が三日三晩、人前で恥ずかしい寝言を言い続けるという魔導薬『羞恥の悪夢』が混入されている。

それを見たセドリックが、顔色を変えて叫んだ。

「待て! アニエス、それを飲むな! 色がどう見ても不吉すぎるだろう! それにリリアーヌからの差し入れだと? 罠に決まっている!」

アニエスはグラスを受け取ると、バイザーをカシャリと上げ、紫色の液体をまじまじと見つめた。

「まあ! セドリック殿下、何を仰いますの。この色……これぞまさに、今流行りの『スーパーフード・デトックス・スムージー』ではありませんこと!」

「スムージーだと!? 泥水を煮詰めたような色だぞ!」

「いいえ、殿下。この深紫は、ポリフェノールが限界まで濃縮されている証拠ですわ! リリアーヌ様、私がアーマーを着用して体力を消耗しているのを心配して、わざわざ『栄養ドリンク』を届けてくださったのね! なんて細やかなお気遣いかしら!」

アニエスは感動のあまり、震える手でグラスを掲げた。
毒薬使いの男は、内心で「ひっひっひ、早く飲め。明日からお前のあだ名は『寝言令嬢』だ」とほくそ笑んでいる。

「では、リリアーヌ様の友情に乾杯! 一気飲み(ショット)させていただきますわ!」

「アニエス、やめろ――!」

セドリックの制止も虚しく、アニエスは紫色の液体をごくごくと一滴残らず飲み干した。
会場に緊張が走る。
毒薬使いは、アニエスがその場で倒れ伏すのを期待して目を輝かせた。

「……ぷはあ! なんてスパイシーで、ガツンと来る刺激でしょう!」

アニエスは顔を真っ赤にし、目からビームが出そうなほどの輝きを放った。

「まあ……! 凄いですわ! お腹の底から、マグマのような情熱が湧き上がってきますの! これ、ただのジュースではありませんわね。細胞の一つ一つが『おはよう!』と挨拶しているような……まさに『魂の急速充電(クイック・チャージ)』ですわ!」

「……えっ? 倒れないのか? 恥ずかしい寝言は?」

毒薬使いが呆然とする中、アニエスの肌は目に見えてツヤツヤになり、アーマーの隙間から溢れるオーラが増大していく。

「ギルベルト様! 見てくださいまし! 私、なんだか今なら、このお城を背負ってスクワットができそうな気がしますわ!」

「……アニエス、君の代謝はどうなっているんだい? 毒……いや、スムージーの成分をすべて『生命エネルギー』に変換してしまったのか?」

ギルベルトが呆れ果てていると、アニエスはそのままの勢いで、近くにいた毒薬使いの肩をガシッと掴んだ。

「マスター! この素晴らしいドリンクのレシピ、ぜひ教えてくださいませ! これをお徳用の瓶詰めにして、国境の警備兵さんたちに配れば、世界から『疲れ』という言葉が消滅してしまいますわ!」

「ひ、ひいいいっ! 触るな、エネルギーが……ポジティブなエネルギーが逆流してくるぅぅ!」

あまりに強力なアニエスの「健康オーラ」に当てられ、毒薬使いは自ら作った毒の概念を破壊され、発狂して逃げ出していった。

「あら、シャイなマスターですこと。……あ、セドリック殿下! リリアーヌ様にお伝えくださいませ。『最高の喉越しでしたわ! おかげでアーマーが羽のように軽く感じます!』と!」

セドリックは、もはやツッコミを入れる気力も失い、ただただ健康体になった元婚約者を眺めていた。

「……リリアーヌ。お前の負けだ。あいつには、悪意という名の調味料は一切通用しない。……むしろ、栄養にしかならないんだ」

アニエスは「元気百倍ですわ!」と叫びながら、重厚なアーマーをガチャガチャと鳴らして、誰よりも高く、誰よりも激しくダンスを再開した。
その夜、アニエスが放つ「健康オーラ」によって、舞踏会に参加していた高齢の貴族たちの腰痛が軒並み完治したという伝説が生まれたのである。
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