灰かぶりの少年

うどん

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灰かぶりの少年26

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僕は走った お金をつくる為に…
お屋敷の門の近くまで精一杯



今日は人通りが多いみたいで大貴族の方や護衛を率いる騎士団長の方までいらしている
滅多に身近で見る事ができない光景である


こんな薄汚れた身分の低い自分がもしも声をかけてしまったら恐らくその場で斬り殺されるかもしれない

考えただけで恐ろしいがそうなっても仕方ないだろう
あの男料理人に無惨に殺されるよりマシだ


既に死を迎入れる準備はできていた






「あっ…恐れ入ります急にお声をかけて申し訳ございません、もしもですが皆様の休憩のお手伝いができれば幸いです。どうか僕をご利用して…お楽しみ下さいませ」


小さい声で辿々しく言う
恥ずかしい言葉を貴族の方に向かって語る自分がとても身の程知らずで浅ましい


「…何だ、誰だ貴様は?」


騎士団長様にジロッと睨まれる
とてつもない重い圧をかけられ思わず目線を下に向けてしまった


「っすみません、出過ぎた真似を…失礼致しました!」


頭を下げ、この場を離れようと顔を上げる
その時一瞬だけだが騎士団長様と目が合った


「ほう…」


「???」


「お前は男か?少女のように見えるが」


「っえ?はいっ僕は男です」


「ふむ、そうか…」


騎士団長の目つきが変わる


「みな…疲れが溜まっているからな、休息が必要だ」


「…僕っ、何なりとお申し付け下さったらご希望に添います!頑張ります!」


「お前は見たところとても貧相で貧弱に見えるが本当にできるのか?」


「はい…大丈夫です」


「名は何と言う?」


「…名前?」


名前と言う言葉に呆然とした
自分の名前…

「灰かぶり」「役立たず」「薄汚ない」
皆から今までそう呼ばれていた

自分の名前なんてあったのだろうか?
幼少期の頃から記憶がない


「名前は…灰かぶりです」


「…灰かぶり?」


「はい、そうです」


「嘘ではないだろうな?まさかそれが名前か?」


「本当です…たぶん」


「たぶんだと?…お前は自分の名前を知らないのか」


「っ…申し訳ございません」


正直、自分の名前に覚えがない
忘れているだけ?

質問に答えられようが無いので戸惑ってしまう


「おかしなヤツだ、まぁ危険性も無さそうだから一時だけ買ってやろう」


「…っありがとうございます、宜しくお願い致します」


「ついて来い」


緊張と不安を隠しつつ言われるがままついて行く

距離があるのか時々小走りになった
少し息も荒くなり始め、もう少しゆっくり歩いて欲しいがこんな自分を気に掛ける筈がない


遅れを取らないように必死だ
騎士団長の大きな男らしい背中を見つめ、心底自分とは比べ物にならないくらい正反対な高貴な方だとつくづく感じた


そう考え事をしていると白い建物らしきものが木の隙間から少しずつ見えてくる

御屋敷の近くにこんな建物が…?


御屋敷の敷地内から外へあまり出た事が無いので驚いた


「さぁ、ここだ」


「はい」


建物の前まで来ると綺麗な模様が刻まれている特製のドアに直面した
騎士団の称号マークだろうか?

もしそうなら、限られた人しか出入りできないのではないかと余計に緊張する


そんな場所に今から自分の足を踏み入れるのだ





コンッ コンッ





「おいっ、誰かいるか?」


騎士団長がドアの中心に付いている鉛製のノック輪で音を鳴らし、中に人がいるか確認する


「はいっ…いますよ!ドアを開けますので少々お待ち下さい」


カチャッ–


「ご苦労、他の皆は中にいるか?」


「ご苦労様です、団長…それがですね~さっきまで皆居たんですけど急な指令が上から出まして、全員行ってしまったのですよ…」


「何だと…それは知らなかった、私には何の伝達もきていないぞっ…」


「 それは…恐らく今団長は他の任務にあたっているので配慮されたのでしょう、ちょっとした上からの気遣いだと思います」


「そうか、確かに今は少し手間が掛かっている任務中だからな…申し訳ない」


「いえ…そう言えば団長は何の御用でこちらに来られたのですか?」


「…ぁあ、実は俺から皆へ差入れだ」


「差入れですか?」


「そうだ、気に入ってくれるといいが」


灰かぶりの背中をポンッと押す


「こんにちは…僕…あの…はじめまして、灰かぶりと申します」


言葉を準備していなかったので簡単な挨拶しかできなかった


「この子は…何ですか、団長?」


「先程、この少年を一時的に買ったのだ。皆の好きな様に扱えばいい」


「少年?すごい珍しいくらいの美品ですね…」


騎士団長と話していた男は少し若い
灰かぶりの目を目線を外さず見ている


「何でもお申し付け下さい」


「ほぅ…そう言う事ですか」


「では、私はそろそろ行くぞ、まだ仕事が残っているからな…ある程度時間がきたらソイツを迎えに行く。こんな所でウロウロされては困るのでな」


「っ…ごめんなさい、粗相がないよう御勤め致しますので…」


「従士殿…ではまた後で」


「はい、ありがとうございます」


灰かぶりの言葉を最後まで聞かず団長は忙しそうに去ってしまった


目の前には知らない男性の従士様
到頭ここからが自分に与えられた仕事だ


お金を得るためー


灰かぶりは完全に感情や心を押し殺したのであった…





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