77 / 114
第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます
34:王の思い[シュロム視点]
しおりを挟む
疲れ果てたのか腕の中でディロスが穏やかに寝息を立てている。
加減をしようとは、思っているのだが……ディロスの薄紫色の瞳に見つめられると欲が昂る。
愛したいという思いに振り回されるように、その体を求め、愛で、貪ってしまうのは、反省すべき点だろう。
「ん……」
安らかな寝顔を眺めながら、ディロスの髪を梳けば、小さく身じろぎをしてすり寄ってくる。
その動きが愛おしく、自然と笑みが浮かんだ。
妃教育という難題を押しつけたというのにディロスは愚痴を言うこともなく日々頑張ってくれている。
子供達と過ごす時間すら減らした男を……俺をなじっても良いというのにな。
それにも関わらず、頑張っている事の褒美に俺を求める。
その健気さと欲の無さがディロスの魅力だと思うが、それゆえにディロスの献身に応える事は難しい。
もちろん求められたら応える。だが、それ以外に返せるものがなかった。
何か高価な物を欲しがるような者であったら惚れる事もなかっただろうが……欲しがる物が本しかないというのも困ったものだ。
本も高価な物ではあるが、俺の趣味でもあるし、ほぼ共有物に近い。
互いに共通の趣味がある事は良いことだが……ディロス個人の欲があれば贈る物にも困らずに済むのだがな……。
贅沢な悩みだと思いながら、穏やかに眠るディロスの頭を撫でる。
努力家で心優しい伴侶。だが、頑張りすぎるところと優しすぎるところのある人間だ。
側妃として、王配として、共に歩き、俺が守らねばならない。
むろん、肉体も心もだ。
抱え込みすぎる質だから今夜の事で少しでも気晴らしになっていたら良い。
……俺も、楽しんでしまったのは本当に反省すべき点だが。
改めて自分の欲に反省しながら、腕の中のディロスを抱き締める。
細い体は、俺の腕にちょうど良く収まり、抱き心地が良い。
抱きしめた際に香る匂いすら、甘く俺を惹きつける。
そんな事を言ったら、顔を赤くして照れるだろうが。
ディロスの照れている愛らしい姿を想像しながら笑みが浮かぶ。
どんな姿であろうと愛おしいと思えるのだから、不思議で仕方ない。
「お前は、どこまでも俺を魅了するな」
静かに眠るディロスに小さく囁き、その額に口づける。
「んん……」
額に唇が触れると少しだけ身じろいだが、またすぐに寝息をたてる姿に笑みを浮かべながら、その温もりを抱え込むように瞼を閉じた。
加減をしようとは、思っているのだが……ディロスの薄紫色の瞳に見つめられると欲が昂る。
愛したいという思いに振り回されるように、その体を求め、愛で、貪ってしまうのは、反省すべき点だろう。
「ん……」
安らかな寝顔を眺めながら、ディロスの髪を梳けば、小さく身じろぎをしてすり寄ってくる。
その動きが愛おしく、自然と笑みが浮かんだ。
妃教育という難題を押しつけたというのにディロスは愚痴を言うこともなく日々頑張ってくれている。
子供達と過ごす時間すら減らした男を……俺をなじっても良いというのにな。
それにも関わらず、頑張っている事の褒美に俺を求める。
その健気さと欲の無さがディロスの魅力だと思うが、それゆえにディロスの献身に応える事は難しい。
もちろん求められたら応える。だが、それ以外に返せるものがなかった。
何か高価な物を欲しがるような者であったら惚れる事もなかっただろうが……欲しがる物が本しかないというのも困ったものだ。
本も高価な物ではあるが、俺の趣味でもあるし、ほぼ共有物に近い。
互いに共通の趣味がある事は良いことだが……ディロス個人の欲があれば贈る物にも困らずに済むのだがな……。
贅沢な悩みだと思いながら、穏やかに眠るディロスの頭を撫でる。
努力家で心優しい伴侶。だが、頑張りすぎるところと優しすぎるところのある人間だ。
側妃として、王配として、共に歩き、俺が守らねばならない。
むろん、肉体も心もだ。
抱え込みすぎる質だから今夜の事で少しでも気晴らしになっていたら良い。
……俺も、楽しんでしまったのは本当に反省すべき点だが。
改めて自分の欲に反省しながら、腕の中のディロスを抱き締める。
細い体は、俺の腕にちょうど良く収まり、抱き心地が良い。
抱きしめた際に香る匂いすら、甘く俺を惹きつける。
そんな事を言ったら、顔を赤くして照れるだろうが。
ディロスの照れている愛らしい姿を想像しながら笑みが浮かぶ。
どんな姿であろうと愛おしいと思えるのだから、不思議で仕方ない。
「お前は、どこまでも俺を魅了するな」
静かに眠るディロスに小さく囁き、その額に口づける。
「んん……」
額に唇が触れると少しだけ身じろいだが、またすぐに寝息をたてる姿に笑みを浮かべながら、その温もりを抱え込むように瞼を閉じた。
73
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!
をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。
ボクの名前は、クリストファー。
突然だけど、ボクには前世の記憶がある。
ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て
「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」
と思い出したのだ。
あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。
そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの!
そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ!
しかも、モブ。
繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ!
ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。
どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ!
ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。
その理由の第一は、ビジュアル!
夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。
涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!!
イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー!
ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ!
当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。
ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた!
そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。
でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。
ジルベスターは優しい人なんだって。
あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの!
なのに誰もそれを理解しようとしなかった。
そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!!
ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。
なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。
でも何をしてもジルベスターは断罪された。
ボクはこの世界で大声で叫ぶ。
ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ!
ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ!
最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ!
⭐︎⭐︎⭐︎
ご拝読頂きありがとうございます!
コメント、エール、いいねお待ちしております♡
「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中!
連載続いておりますので、そちらもぜひ♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。