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二章:二度目の幽世

15:洗礼を乗り越え一息

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 僅かに落ち着いた深夜の厨房で、渉はぐったりとしながら好きに飲んでいいと言われているソフトドリンクを啜り、ポツリと呟く。

「……お客さんめっちゃ飲みますね」

 ようやく一息付けた体にコーラの糖分が染み渡るのを感じながら渉が虚空を見つめていると、フードの注文ラッシュを乗り越えた店長と先輩社員の一人が渉の様子に苦笑した。

「今日は、大学生が多いからねぇ……」
「大学生が多いと、飲み放題多いんですか?」

 しみじみと呟く店長に渉が尋ねると、店長ではなく先輩社員が口を開く。

「稲鍵も戸夜見大なんだから、サークルとかで酒飲める奴らが飲み散らかしてるのみてるだろ?」
「……そうですね」

 まだ十八の渉は飲めないが、ゼミやサークルの二十歳《はたち》を越えた上の学生達はこれでもかと浴びるように飲む姿を思い出し、渉は肩を落とす。

(たしかに、先輩達無茶苦茶飲むからな……二十歳になってない俺達みたいな一、二年に無理やり飲ませるってアルハラがない分いいけど……介抱要員として見られてるし……後輩って貧乏くじ引くよなぁ)
「若い子はホントよく飲むよねぇ」
「飲むのはいいけど、片付けるの俺達なんすよ店長」

 ゼミやサークルの先輩達の若さゆえの飲み方を思い出してげっそりとする渉だったが、そんな若さを店長は元気だなぁ。と、笑い、それを見た二十代後半だという先輩社員がため息を吐いた。

「俺も飲むのは、好きだけど……ほどほどにしろよ。って、思いますね。稲鍵も覚悟しとけよ。夜がふけてくるとトイレで吐き散らかしたまま……とか、あるからな」
「うぇ、マジですか……」
(先輩達介抱してたら、たまにあるけど……知らない人のは更に嫌だな)

 先輩社員からの忠告に渉が顔を引きつらせたら、店長が諫めるように口を開く。

「ちょっと、佐藤君。稲垣君怖がらせないの」
「いやいや、覚悟は早めに決めておいた方がいいですって」

 先輩社員である佐藤は、店長からの咎める言葉を気にする事もなく肩を竦めた。

「それもそうだけどさぁ……っと、稲鍵君。そろそろ、退勤の準備していいよ」

 佐藤と話していた店長が、壁に掛けてあった時計を見て、渉へと声をかける。その声に渉も時計へと視線を向ければ、確かに渉の退勤時間が二分ほど前に迫っていた。
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