40 / 83
三章:寝不足
40:一つだけのお守り
しおりを挟む
二人で話しながら歩いていると、何かを思い出したかのように穂が口を開く。
「そういえば……渉。お主、我が社で買った護りを持っておるだろう?」
「え、ああ……持ってるけど?」
「少し貸して貰えるか」
「うん」
差し出された穂の手に、渉は素直に鞄のポケットに入れていた厄除け守を渡す。
「量産品とはいえある程度の加護はあるが……渉の気質考えるとあまりに弱い」
(……まあ、お守り買って五日目にあれに取り憑かれてたっぽいし、ほとんど効果なかったんだろうな……)
穂の言葉に実感を感じながら、苦い笑みを浮かべてしまった。
「いささか、抵抗はあるだろうが……この護りに我が髪を一房入れようと思うのだ」
「……なんで?」
なぜ、厄除け守に穂の髪を入れるのだろうか?と、首を傾げる渉に穂は口を開く。
「前に口づけでお主の気質を隠しただろう」
「う、うん」
「あれと似たようなものだ。唾液では、隠しきれなくとも髪であれば、より強い神力が宿っている。持っているだけでも十分な効果があるだろう」
そう説明しながら穂は、厄除け守の口を開き、すでに切り落としていたらしい一房の髪をその中へと入れる。
「肌身離さず持っていろ」
厄除け守の口を閉じ、鞄から取り出した長めの赤い組紐を厄除け守の結び紐にくくりつけると、穂はその厄除け守を渉の首へとかけた。
「風呂は?」
「ビニール袋にでも入れて浴室内に置いておけばいい」
なんとなく尋ねた言葉に、予想外の返答が返ってきて渉は呆気に取られる。
「……なんだ?」
「いや……穂の口からビニール袋って言葉が出るとは思わなくて……」
古めかしい口調ゆえに、穂の語彙は古いものばかりだ。それゆえにカタカナ言葉が出てきた事に渉は驚いた。
「長く存在しているのだから今時の言葉もわかるに決まっておろう。……ほれ、スマートフォンも持っておる」
そう言って穂が鞄から取り出したのは、真新しいスマートフォンである。
「うわ、マジだ……しかも、最新機種だし……てか、戸籍と契約とかどうなってんだよ」
「秘密だ」
渉の問いに意味ありげに笑う穂。
(やっぱ、神様ってわかんねぇわ……)
謎過ぎる穂にじとりとした目を送る渉だが、穂は気にする事もなく、スマートフォンを操作する。
「ほれ、これが我の番号だ。登録しておけ」
「……わかった」
渉は、差し出された画面に移る番号を登録し、通話アプリへも同期させておく。
「助けを求められれば駆けつける事はできるが、かといって通常の連絡手段がないのも困るでな。何か、尋ねたい事でもあれば、それで連絡するといい」
「うん……何から何までありがとな」
謎の多い男だが、それでも渉を守ろうとしてくれている事は理解していた。その事に感謝しながら、渉は登録された番号を眺め、スマートフォンを鞄へとしまう。
「そろそろ大学も近い。現世に渡るぞ」
「うん」
穂から差し出された手に渉は手を重ねる。そして、ほんの瞬きの間に人の気配のする世界へと戻ってきた。
「そういえば……渉。お主、我が社で買った護りを持っておるだろう?」
「え、ああ……持ってるけど?」
「少し貸して貰えるか」
「うん」
差し出された穂の手に、渉は素直に鞄のポケットに入れていた厄除け守を渡す。
「量産品とはいえある程度の加護はあるが……渉の気質考えるとあまりに弱い」
(……まあ、お守り買って五日目にあれに取り憑かれてたっぽいし、ほとんど効果なかったんだろうな……)
穂の言葉に実感を感じながら、苦い笑みを浮かべてしまった。
「いささか、抵抗はあるだろうが……この護りに我が髪を一房入れようと思うのだ」
「……なんで?」
なぜ、厄除け守に穂の髪を入れるのだろうか?と、首を傾げる渉に穂は口を開く。
「前に口づけでお主の気質を隠しただろう」
「う、うん」
「あれと似たようなものだ。唾液では、隠しきれなくとも髪であれば、より強い神力が宿っている。持っているだけでも十分な効果があるだろう」
そう説明しながら穂は、厄除け守の口を開き、すでに切り落としていたらしい一房の髪をその中へと入れる。
「肌身離さず持っていろ」
厄除け守の口を閉じ、鞄から取り出した長めの赤い組紐を厄除け守の結び紐にくくりつけると、穂はその厄除け守を渉の首へとかけた。
「風呂は?」
「ビニール袋にでも入れて浴室内に置いておけばいい」
なんとなく尋ねた言葉に、予想外の返答が返ってきて渉は呆気に取られる。
「……なんだ?」
「いや……穂の口からビニール袋って言葉が出るとは思わなくて……」
古めかしい口調ゆえに、穂の語彙は古いものばかりだ。それゆえにカタカナ言葉が出てきた事に渉は驚いた。
「長く存在しているのだから今時の言葉もわかるに決まっておろう。……ほれ、スマートフォンも持っておる」
そう言って穂が鞄から取り出したのは、真新しいスマートフォンである。
「うわ、マジだ……しかも、最新機種だし……てか、戸籍と契約とかどうなってんだよ」
「秘密だ」
渉の問いに意味ありげに笑う穂。
(やっぱ、神様ってわかんねぇわ……)
謎過ぎる穂にじとりとした目を送る渉だが、穂は気にする事もなく、スマートフォンを操作する。
「ほれ、これが我の番号だ。登録しておけ」
「……わかった」
渉は、差し出された画面に移る番号を登録し、通話アプリへも同期させておく。
「助けを求められれば駆けつける事はできるが、かといって通常の連絡手段がないのも困るでな。何か、尋ねたい事でもあれば、それで連絡するといい」
「うん……何から何までありがとな」
謎の多い男だが、それでも渉を守ろうとしてくれている事は理解していた。その事に感謝しながら、渉は登録された番号を眺め、スマートフォンを鞄へとしまう。
「そろそろ大学も近い。現世に渡るぞ」
「うん」
穂から差し出された手に渉は手を重ねる。そして、ほんの瞬きの間に人の気配のする世界へと戻ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
【完結】おじさんダンジョン配信者ですが、S級探索者の騎士を助けたら妙に懐かれてしまいました
大河
BL
世界を変えた「ダンジョン」出現から30年──
かつて一線で活躍した元探索者・レイジ(42)は、今や東京の片隅で地味な初心者向け配信を続ける"おじさん配信者"。安物機材、スポンサーゼロ、視聴者数も控えめ。華やかな人気配信者とは対照的だが、その真摯な解説は密かに「信頼できる初心者向け動画」として評価されていた。
そんな平穏な日常が一変する。ダンジョン中層に災厄級モンスターが突如出現、人気配信パーティが全滅の危機に!迷わず単身で救助に向かうレイジ。絶体絶命のピンチを救ったのは、国家直属のS級騎士・ソウマだった。
冷静沈着、美形かつ最強。誰もが憧れる騎士の青年は、なぜかレイジを見た瞬間に顔を赤らめて……?
若き美貌の騎士×地味なおじさん配信者のバディが織りなす、年の差、立場の差、すべてを越えて始まる予想外の恋の物語。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる